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2017-07

苦難や危機に見舞われる女性たち(野村胡堂「地底の都」より)

 数多い捕物帳の中でもダントツの知名度を誇る「銭形平次捕物帳」の作者として有名な野村胡堂氏は、昭和初期から終戦直後にかけて少年少女向け小説(以下、ジュブナイル物と表記)の分野でも大活躍していました。
 熱烈な愛読者ではないので誤認してるかも知れませんが、存在が確認されている野村氏の少年少女向け作品は全て単行本化されていると思われます(未完作品とされている長編「九つの鍵」でさえ、2007年に作品社から刊行された末國善己氏の編書『野村胡堂探偵小説全集』で読む事ができます!)。

 未来をになう少年少女には清く正しく育って欲しいという願いがあったのか、野村氏の書くジュブナイル物は勧善懲悪な物語構成と品行方正なキャラクターの登場が目立ち、お上品な読物という印象が強いです。
 偉そうに語れるほど野村氏のジュブナイル物を読んでいない読者が言うのもおこがましいのですが、起伏に富んだストーリー展開で作品世界に引き込ませはするものの、どの作品も似通った内容になっているように感じられてなりません。
 刺激的な描写が抑えられているせいかヒロイン役の少女が危機に陥る場面も物足りなさを覚え、少なくとも、私にとって野村氏のジュブナイル物は相性が悪いようです……。

 そんな中、昭和7年に『少年倶楽部』へ一年連載された「地底の都」という長編には、野村氏のジュブナイル物にしては珍しい受難シーンが描かれており、リョナラー読者の妄想を掻き立てるシーンが用意されていました。
 従兄弟にあたる春日一家を危難から救おうと勇気を振り絞って悪人に立ち向かう少女、鼓(つづみ)恵美子。
 火山の噴火で埋まった都に眠る財宝を発見した考古学者の妻、春日桃子。
 心ならずも悪者(わるもの)の手先となっていた、日本人の血を引く金髪の美少女、エムマ。
 彼女たちは様々な苦難や危機に見舞われ、ある者は縛られて誘拐されそうになったり、悪漢に羽がい締めにされたり、ある者は縛られたまま焼き殺されそうになったり、ある者は猛犬に襲われてスカートを切り裂かれたり、椅子に縛りつけられたまま放置されたり、なかなか刺激的な受難場面が描かれています。
 以下、順番に彼女たちの受難場面を抜き書きしてみましょう。

 
 飛ぶように行って見ると、猿ぐつわや縄目を解かれて、ようやく意識を取り返したばかりの恵美子が、狐につままれたように、自分を取り囲む警官の人垣を見回しているのでした。
【中略】
「あっ、陽一さん、大変よ、大変よ」
 美しい美恵子の、真珠色の頬は、ようやく紅(くれない)さして、もう涙が、長いまつ毛を伝わります。

【中略】
「ゆうべ――と言っても、もうあけ方だったでしょうね。いきなり、わたしは縛り上げられて、猿ぐつわをかまされて、自動車につまれたことだけ知っているの、自動車の中には、わたしばかりでなく、三、四人の人が、なんでも俵のように積まれてあったようよ、わたしは一番上積みになったので、次の人を積み込むためかなんかで、そばに誰もいない時、そっとからだを動かして見ると、いいあんばいに自動車の外へころげ落ちたのよ」
【中略】
 恵美子はそういって、自分の泥まみれになった寝巻きをきまり悪そうに見回しました。
≪少年小説文庫『地底の都』P30~31≫

「さあ、小僧ども、どうだ、降参だろう」
 穴倉の中では蟹沢が、美恵子のからだを羽がい締めにして、こんなことを言っておりました。
「そのピストルを撃つなら撃って見ろ、この娘ののど笛を締め上げてしまうぞ」

≪少年小説文庫『地底の都』P125≫

「よく言った、博士、わたしもこれ以上は言わないが、あれを見るがいい」
 ハリスの指さした先には、博士夫人の桃子、これも麻縄でひしひし
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)としばり上げられて、もう一つのテーブルの脚につながれたまま、あお白い顔をふせて、観念のまなこを閉じております。
「蟹沢、用意しろ」
「おっ」

【中略】
「博士、これは最新式の小爆弾だ。この口火が燃えつきると、夫人一人は完全に殺せるが、ほかには――窓ガラスくらいはこわれるだろうが、まず大した影響はないつもりだ、口火はようど十分で燃えつきる、それまでに言うことがあったら言ってもらいたい。言うことがなければ、だまって夫人の死ぬのを見ておられるがよろしい」
【中略】
「あなた、どうぞ、なんにもおっしゃらないでください、お国のため、学問のためなら、わたしは死んでも本望でございます」
≪少年小説文庫『地底の都』P210~211≫

「あっ」
 蘭堂は思わずピストルを投げ出しました。猛犬の牙に、拳をかまれたのです。
「エムマ来い」
 もうこうなっては、意地も我慢もありません。蘭堂は、側にあった椅子を、五郎目がけてたたきつけると、身を反してエムマを横抱きに、窓わくを超えて、玄関の庇(ひさし)の上に飛び出しました。
 それを追いすがって猛犬五郎、数日間の虐待と飢(うえ)がどんなに骨身にこたえたでしょう。容赦もなくエムマの腰へ腰へ
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)
 さいわい牙はわずかにそれましたが、スカートは無残にさかれ、五郎の顎(あぎと)にひらひら(引用者註:原文ではおどり記号を使用)と残ります。
「あっ、助けて――」
 その間に蘭堂は、必死にスレートを渡って、玄関の上を越すと、庇伝いに裏へ、非常梯子を伝わって屋上へ――、金髪娘のエムマを、傷ついた手で抱えては、ほかに逃げ道はなかったのです。
 しかし、五郎はそんなことで、あきらめはしませんでした。スカートの断片を捨てると、追いすがって屋根の上へ。

【中略】
「あ、蘭堂、助けて――」
 娘の声は、恐れに引き千切られた、朧の夜の空気を、紙のごとくふるわせます。が、蘭堂もたった一つの武器を失って、いまは全く手の下しようもありません。

≪少年小説文庫『地底の都』P166~167≫

 春日陽一少年や滝川博士の一行が、愛宕山の麓の『死石』を探りあてて、これから『地底の都』へ入ろうとしている少し前、御殿場の秘密の家では、ハリスと蘭堂が、金髪の美少女エムマをつかまえて、ひどい目にあわせておりました。
【中略】
「あっ」
 エムマが飛びのくひまもありませんでした。蘭堂の右手はさっとのびて、その襟髪
(えりがみ)をつかむと、左手は手提げを引ったくって、その中から、暗号電報の控えを抜き取ってしまいました。
【中略】
「暗号電報だよ、蘭堂、エムマをしばっておいて、こっちへ来るがいい。君のように日本で育ったものでないと、この暗号をとくのはむずかしい」
「承知しました」
 蘭堂はそう言うと、やにわに飛びついて、エムマをひきすえ、有り合わせのひもやらバンドやらを集めて、椅子の上へぐるぐる
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)としばってしまいました。
【中略】
 それから何時間の後――。
 いや、何時間どころではありません。日が暮れて、夜があけて、あくる日の太陽が、窓からあかあか
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)と射し込んで来るまで、エムマは椅子にしばられたまま、ほおっておかれたのですから、手も足も、からだも、すっかりしびれてしまって、身動きする気力もなくなってしまった頃でした。
【中略】
 エムマは、椅子を背おわされたまま立ち上りました。
「大変っ」
 いうまでもなく蘭堂は、一晩かかってあの暗号電報をといた上、どっかへ出かけて行ったに相違ないのです。
 もし、春日博士の子の陽一少年たちが、一時間でも暗号をとくのがおくれたらどんなことになるでしょう。エムマは椅子を背おったまま、傷ついた虫のように、部屋の外へはい出し、そこから長い廊下を、春日博士の幽閉されている密室の方へ、恐ろしい骨折りでたどりました。幸い、一台の自動車に、ハリスと蘭堂と蟹沢と乗って行った様子で、家の中には誰もいません。

【中略】
 美少女エムマは、小さい窓の下から、密室の中へ声をかけました。
「お、エムマさんか」
 春日万里博士は、古椅子の上に登って、小さい窓から見ると、廊下には椅子にしばられたエムマが、蜘蛛の巣にかかった、美しい揚羽の蝶のように、もがいているのでした。

≪少年小説文庫『地底の都』P256~258≫
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