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2017-08

浴室の艶やかな女王蜂(横溝正史「女王蜂」より)

 名探偵・金田一耕助が活躍する探偵譚は、少年物も含めて合計百作近く書かれており、横溝正史氏の代表シリーズとも言えます。
 TVドラマの影響もあり、金田一耕助探偵譚は『岡山県の農村を舞台にした残虐な殺人事件を描いた作品』という印象が強いと思いますが、大都会を舞台にした通俗スリラーやロマンス要素の色濃い作品も多く、どの作品を最初に読んだかでシリーズへの印象が世間一般の評価と異なる事があるかも知れません。

 昭和26年から昭和27年にかけて『キング』へ連載された「女王蜂」は後者に属する長編作品で、全編にラブロマンスの要素が強く、陰惨な殺人事件に色気を添えています。
 下田を主な舞台に繰り広げられる連続殺人事件の背景には、昭和初期から現代(=昭和26年当時)まで連綿と続く様々な恋愛模様が絡んでいました。
 二十年に亙る因縁を受け継がされ、殺人事件の渦中に立たされる人物の名前は大道寺智子。本作のヒロインでもあります。
 彼女は「募いよる男どもをかたっぱしから死にいたらしめる運命にある」少女であり、高貴な一族の血を引く「うまれながらにして女王」でもありました(前者は角川文庫『女王蜂』P38、後者は同書P235より引用)。

 男たちを惹きつけて止まない智子の魅力的な容姿を作者は次のように描写しています。
 ちなみに同作が映像化された際、久慈あさみ(1952年・映画)、中井貴恵(1978年・映画)、片平なぎさ(1978年・連続TVドラマ)、井森美幸(1990年・TVドラマ)、墨田ユキ(1994年・TVドラマ)、初瀬かおる(1998年・TVドラマ)、栗山千秋(2006年・TVドラマ)が大道寺智子を演じており、一部の作品では母親の大道寺琴絵も同じ役者が演じていました(敬称略)。


 【前略】彼女は純日本風にも、また、現代式にもむく顔である。瓜実(うりざね)顔といえば瓜実顔だが、いくらかしもぶくれがして、両のえくぼに愛嬌がある。それでいて、おすましをしているときの智子は、神々しいばかりの気高さと威厳にみちていた。といって、冷たい感じがするというのではない。なんといったらいいのか、智子の美しさにはボリュームがあった。
 【中略】
 とにかく諸君があらん限りの空想力をしぼって、智子という女性を、どんなに美しく、どんなに気高く想像してもかまわない。それは決して、思いすぎということはないのだから。
≪角川文庫『女王蜂』P11~12≫


 平和な島で何不自由なく暮らしていた智子ですが、東京に住む父親との同居が決まった十八歳の誕生日前後、波乱に満ち溢れた数日を送ります。
 目の前に迫った過酷な運命を知らないまま、地図にも載らない小さな島から海を越えて修善寺を訪れた智子。
 松籟荘というホテルで最初の殺人事件に遭遇する直前、人との面会を前に智子は朝風呂へ入りますが、男性読者への配慮からか横溝氏は智子の入浴シーンを事細かく描写しています。
 自分の裸体を「われながら美しい」と思う心情も描かれており、智子に若干のナルシストぶりが感じられました。
 さらに付け加えれば、初出誌では富永謙太郎氏による智子の全裸ショットも挿絵として掲載されいます(ただし、後ろ向き姿ですが……)。


 浴室は三つとも空いていたので、智子はいちばん手前のにとびこむと、脱衣場にあった使用中の札を、廊下柱にぶらさげた。
 脱衣場と浴室とのあいだには、磨りガラスのはまった戸がついており、それを開くと、大理石でたたまれた浴室はひろく明るく、一坪あまりの浴槽から、豊富な湯が溢れているのも気持ちがよい。
 智子は浴槽のなかに身をしずめかけたが、ふと、廊下のドアに内側から、かけがねをかけておくのを忘れたことを思い出した。智子ははんぶん身をしずめたまま、どうしようかと考える。しかし、そのまま、湯のなかに身をしずめてしまった。
 廊下に使用中の札がかけてあるのだし、よしまた誰かが入って来たとしても、浴室の戸には内側からかけがねがかけてある……。
 智子はだから、すぐにそのことを忘れて、思いきり湯のなかで手脚をのばした。
 すんなりと形よくのびた四肢の均斉を、智子はわれながら美しいと思わずにはいられない。日本人としては胴がつまって、脚ののびのびしているのも好もしい
(原文ママ)。むっちりとボリュームのある肉付きはゆたかで、しかも、精悍な活力を秘めてひきしまっている。
 智子はちょっと湯のなかで、全身をくねらせてみる。と、その拍子に皮膚の表面から、無数の小さい泡がわきあがって、からだのあちこちをくすぐるのである。
 智子はくつくつ笑いながら、興にのっていろんなポーズをつくってみる。ゆらゆらゆれる湯のなかで、智子の美しい肉体が、人魚のようにあやしい曲線をえがき出す。智子はしだいに大胆になって、蛇のように全身をくねらせながら、浴槽のなかを泳ぎまわっていたが、そのうちにふっと気がついて、あわててあたりを見まわした。
 「いやだわ、あたし……こんなはしたない真似をして……」
 と、ひとりで赧(あか)くなりながら、
 「今日はよっぽどどうかしてるわ」
 そうなのだ。今朝の智子はたしかにどうかしているのだ。何かしらむずがゆい官能が身内にたぎっていて、皮膚の毛孔のひとつひとつが、かきむしりたいほどのうずくのである。
 智子はかるく息をはずませ、両手でぎゅっと乳房をおさえると、浴槽のふちに頭をよせて眼をとじた。と、瞼のうらにうかぶのは、昨夜の思い出なのである。

≪角川文庫『女王蜂』P100~101≫


 本作の官能描写は智子の入浴シーン以外にも用意されており、作者は物語終盤に二つのサービスシーンを読者へプレゼントしてくれました。
 生まれ育った屋敷にある【開かずの間】の秘密を探る智子は、九十九龍馬という怪人物の道場を尋ねますが、好色漢である龍馬の毒牙に純潔を汚されそうになります(前掲書P327~331ページ)。
 危機一髪の瞬間、予期せぬ闖入者によって龍馬は欲望を果たせませんでしたが、その直後に殺害され、同時に彼が多くの女性を弄んできた妖しい隠し部屋の存在が暴露されました(同P335ページ)。

 金田一耕助探偵譚としては異色作の部類に属するため、比較的早い段階で本作へ手を出すのはお薦めできませんが、横溝氏の多彩な作風を楽しみたいという読者にはお薦めの一作です。
 角川文庫(1996年発行の「金田一耕助ファイル」へ改版される前の旧版)で450ページを越す長編ですが、サスペンシブルな展開が続くうえに場面転換も早く、長さを全く感じさせません。
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