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閉鎖的集落のサディスティックな支配者(川野京輔「猿神の呪い」より)

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(C)ORUYA/a-ru/にゃく/爆音丸/YOSHITORA/Tem @ Y.F./くりっぱあ(CLIPPER)/倉井/耳山貴一/きてぃさん/RPK/新京史朗



 川野京輔氏の長編「猿神の呪い」は、島根県の山奥にある集落で繰り広げられる惨劇を描いた探偵小説です。
 昭和35年に『島根新聞』へ半年間連載され、初出発表から43年経った平成15年、新風舎にて単行本化されました。
 本作の主人公にラジオ局の敏腕プロデューサーを設定し、ラジオ局で働く人々を活き活きと描写したシーンから物語を始めるあたり、NHK局員だった川野氏らしい趣向と言えます。

 作品のタイトルから、古き良き時代の探偵小説の香りを感じ取られる方も多いと思いますが、その嗅覚は正解です!
 物語序盤こそ広島県の地方都市が主な舞台となっていますが、中盤以降は閉鎖的環境にある集落での怪事件にスポットが当てられ、化け物のような五右衛門猿が背景に見え隠れする殺人事件を不気味な筆致で描いています。

 主人公の郡英之を山奥の集落へと招き寄せた猿田春彦はサディスティックな性癖の持ち主であり、その性癖が一連の事件に深く関っています。
 集落の支配者であり、呪われた血を引く者であり、怪事件の中心にいるキーマンでもある猿田春彦。
 自己中心的な男が自分よりも弱い者を肉体的&精神的にいたぶるシーンを本文中から可能な限り抜き出してみました。


 白木の棺の前で、一人の女が、肌もあらわに横たわっている。激しい息づかいで全身をおののかせながら女は必死になって逃れようとしていた。
 その横に仁王立ちになっているのは、春彦であった。
 片肌脱いで、手には長い鞭を持っていた。
「……旦那様……」
 女は低く哀願するように云った。苦痛に歪んだ顔だが、それは意外に若く美しい顔だった。死んだ乃里子に似た面ざしで、もっと若かった。
「……私は何も知りません。本当です。お許し下さい」
 だが、春彦は一言も答えなかった。荒い息づかいが部屋の外にまで、はっきりと分かるくらいだった。
「ちくしょう」
 春彦の手が上がり、次の瞬間、鞭が女の背中にはい回った。
「ヒーッ」
 郡は思わず目を閉じた。悪鬼のような春彦の目の輝きが、おぞましかった。
「お前は乃里子が邪魔だったんだろう、だから殺したんだろう」
 春彦が憎々しく云った。
「違います、違います」
「ふん、おれはちゃんと知っているんだ。乃里子はな、五右衛門に殺されたんじゃないぞ」
「エッ」
 女は、身を堅くして春彦を見守った。

≪新風舎『猿神の呪い』P64≫

 ふと郡は、猿田家の番頭助太郎が話した春彦の妖しい夜の生活を思い出した。
 妻の乃里子を、あく事なき欲望のままに死ぬまで奴隷の如く扱い、しかもそれだけでは満足せず、美しい女中の高子を乃里子の棺の前でもてあそぶような破廉恥な性癖の持ち主である。
 彼の趣味は、正常な夫婦の生活ではなk、刺戟にみちたアブノーマルな男女の営みだった。爛熟した文化が生み出すサドとマゾの悪魔の果実をむさぼり食おうとする変質者なのだ。何不自由なく、勝手気儘にふるまえる境遇にあると人間誰しもそうなるのだろうか。

【中略】
 郡は、春彦が、乃里子の棺の前で、女中の高子の裸身に鞭をふるっていた光景を、まざまざと思い出した。
≪新風舎『猿神の呪い』P160~161≫

 高子は、丹前をひっかけると、すっと部屋を出ていった。しまは、その後を、追ったのだった。高子の行く先は、やはり予想した通り、春彦の部屋であった。
 しまは、堅く閉ざされた扉の外に耳をよせて中の様子をうかがった。素足に廊下の板の冷たさが痛かったが、しまは、じっと待っていた。
 と、そのうちに、微かな高子の悲鳴がもれて来た。
 それは苦痛の叫びと云うよりは、妖しい陶酔のうめきに近かった。しまはにんまりと笑った。彼女が思った通りの行為が行われているのだ。
 彼女は、高子の抜けるように白い肌のあちこちに、みみず張れ(ママ)になったり、ひっかかれたり、無残な傷がたえないのを垣間見て知っている。
 部屋の中の男女のうめき声は、次第に高くなった。時には、魂切るような女の悲鳴もあった。そして、急に静かになった。

≪新風舎『猿神の呪い』P173~174≫


 残忍で自己中心的な春彦のサディストぶりは、甘い言葉と紳士的な態度で好意を寄せさせ、結婚して新妻となった女性にも容赦なく発揮されました。


 春彦は暴君であり、絶対君主だったが、それは番頭や召使いに対するだけではなく、やがて新妻の乃里子に対しても、押しつけがましく服従を要求しだしたのだった。ちょっと気に入らぬ事があると、大声でわめき、容赦なく新妻を殴った。
 親にも殴られた事はなかった乃里子は、呆然としてなすにまかせたが、直ぐに激しい屈辱と怒りで全身をわなわなとふるわせたのだった。
「何だ、その顔は」
 春彦は狂った野獣のように再び襲いかかり、乃里子を殴り倒した。素直な女だったが、気性の激しい乃里子は負けていなかった。
「謝って下さい。私は貴方に殴られるほど悪い事をした覚えはありません。謝って下さらないと、この家から帰ります」
 だが春彦はフンと冷笑した。
「馬鹿な事を云うな。どうしてここから出られるのだ。お前は一生、おれの妻だ。おれの奴隷なんだ」
「奴隷とは何です」
 乃里子は心の底から春彦との結婚を悔やんだ。
 春彦は、乃里子の怒りを楽しむかのように、ニヤニヤと笑いながら見つめた。美しいだけに、乃里子の怒りの表情には、 冒し難い威厳があった。
「フッフッ、その美しい顔を……」
 春彦は、いやしく舌なめずりをした。
 乃里子は眉をひそめた。
「いやしい人!」
「何だと」
 がらりと春彦の表情が変わった。金壺眼がらんらんと光って妖しくまばたいた。

【中略】
「待っていたんだ。待っていたんだ」
 春彦は、呪文を唱えるように、ぶつぶつとつぶやいた。
 乃里子は乱れた膝を合わせて、ずるずると退った。
「こいつ」
 春彦は、両手を拡げて、飛びかかった。もの凄い力だった。

【中略】
 薄れていく意識の中で、乃里子は自らが、淫らなかっこうで縛られているのを感じていた。そして、荒々しい獣のような春彦の息づかいを耳もとに、焼けつくような痛さと共に覚えていた。
 春彦は忌まわしい性癖の持ち主だった。
 新婚旅行中に示した優しさといたわりの心は、獲物をなぶる猫のずるさだったのだ。

【中略】
 次第に乃里子は無口になった。物事に対する感激性も薄れていった。ただ生きているだけの身体であった。幾度か、猿田の家から逃れようと試みたが、その度に発見され、手ひどい仕打ちを受けたのだった。
≪新風舎『猿神の呪い』P68~69≫


 女性登場人物の受難場面は猿田集落に住む者だけではなく、本作のヒロイン役である岡山妙子にも用意されています。
 春彦の奸計で猿田家に監禁された妙子。そんな彼女の前に行方不明となっていた五右衛門猿が現れ、威嚇しながら襲いかかってくるのです。
 寝着を引き裂かれるも幸いにして凌辱される事はなく、命にも別状はありませんでしたが、五右衛門猿と対峙した悪夢のような時間は妙子の心に深い傷跡を残したのは間違いないでしょう。


 どの位経っただろうか。妙に寝苦しく、胸の上が重いので、ふと目を覚ますと、まず第一に妙子の目の中に飛び込んで来たのは銀白色の毛むくじゃらの物だった。
「アッ」
 息をのんだ瞬間、目の前にぬっと、おおいかぶさったのは、真っ赤な燃えるような獣の顔だった。
 人間と同じ位の大きさの、おぞましい、化物猿の顔だった。
「ウォーッ」
 猿は一声吠えると、妙子を抱きしめにかかった。五右衛門猿だ。

【中略】
「ウォーッ」
 五右衛門猿は、妙子の体にむしゃぶりついた。ざらざらした、こわい体毛がはだけた胸や、顔をこすりつける。
 ぞっとするような、金つば眼がじっと妙子の目を射すくめた。じーんと、全身がしびれてしまいそうな、妖しい輝きを持つ目だった。
 生臭い荒々しい息が、妙子の顔一面にかかる。
「ウォーッ」
 五右衛門猿は、急に妙子を突き飛ばすと、さっと身を躍らせて後ろに退った。
 そのすきに、妙子は寝着の裾を合わせてじりじりと出口の方ににじり寄った。

【中略】
「ヒッ、ヒッ、ヒッ……」
 五右衛門猿は、その場で手を叩いて躍り上がった。
 じっと妙子が出口にたどりつくまで、待っていたのだ。逃げられると喜びにふるえて、戸を開けようとして、開かずに失望におののくのをじっと見つめていたのだ。
 何と云う邪悪な心だろうか。

【中略】
 そして、また、じっと両手をたらしては、妙子の全身を見下すのである。まるで猫が鼠を玩ぶように、五右衛門猿は舌なめずりをして美しい獲物を、なぶっているのだった。
 ぬっと毛むくじゃらの手がのびて、妙子の寝着を掴んだ。物凄い力だ。びりびりと寝着は裂けた。
 キッキッキー。五右衛門猿は躍り狂った。
 次に、帯がとられた。
 その度にはいだ物を、見せびらかすように五右衛門猿は、高くかかげて躍り回った。
 余りの緊張で、妙子の神経は、くたくたに疲れ果てた。気力だけは、確かなのに目の前が、ぼうっとかすんで行くのを、どうしよもなかった。

【中略】
 その後、何が行われたか妙子は知らない。
 悪夢の連続だった。
 
≪新風舎『猿神の呪い』P179~181≫


 以下、余談となりますが……。
 版元の新風舎は自費出版商法で一時代を築きましたが、平成20年に経営破綻して倒産しました。本書も少部数の発行と思われるため、現在、『猿神の呪い』を入手する事は難しいかも知れません。
 ただし、プレミア価格がつけられる希少本ではなく、多少の出費さえすれば古書として購入できます。
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