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2017-10

地下道の水責め(横溝正史「真珠塔」より)

 戦後、横溝正史氏は新聞記者・三津木俊助と給仕の御子柴進少年を主役にした少年少女向けの探偵小説を数多く発表しました。
 疎開中に書かれた「神楽太夫」が仙台の雑誌へ掲載されて以降、横溝氏は旺盛な執筆活動で数多くの小説を雑誌や新聞へ発表していますが、その一方で少年物の長編「怪獣男爵」を昭和23年に書下ろしています。

 昭和20年代末期に発表された「真珠塔」も量産期に書かれた作品で、『少年画報』へ1年に亙って連載されました。
 真珠で作られた塔の模型を巡り、どくろ仮面の怪人と三津木・御子柴の探偵コンビが大活躍します。
 本作には、ある富豪の娘が悪者に捕えられ水責めにされる場面がありますが、読者層を考慮してか扇情的な描写ではなく、比較的おとなしめな描かれ方でした。


「あれっ!」
 弥生はまっさおになって、逃げようとしたが、うしろからおどりかかった金コウモリのためにがんじがらめにしばりあげられてしまった。

≪角川文庫『真珠塔・獣人魔島』P74≫

 俊助はいまさらのように、柚木博士の恐ろしい悪だくみに気がついたが、しかし、いまとなってはもうおそい。まっ黒に濁った水が、ごうごうとアワを立てながら、トンネルのむこうから押しよせてくる。そして、またたくまに階段のしたのほうから、水びたしにしていくのである。
「あっ、三津木先生、それじゃ、あたしたちここで、水攻め(ママ)になって死んでしまうの。いやよ、いやよ、あたし死ぬのいや!」
 弥生は恐怖におののきながら、死にものぐるいの声をあげた。

【中略】
「そして、そのつぎにはあたしたちが死ぬのね。ネズミのように水におぼれて」
 弥生はすすり泣きをしている。

【中略】
「三津木先生……御子柴さん……あたし、もう、だめだわ……」
 すすり泣くような声をのこして、弥生は俊助の胸に抱かれたまま、ぐったりと気をうしなってしまった。

≪角川文庫『真珠塔・獣人魔島』P85~90≫
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