FC2ブログ

2017-08

河童と戦う女子中学生(梶尾真治「妖怪スタジアム」より)

 のっけから私事となりますが、世田谷文学館で開催中の企画展「日本SF展・SFの国」(会期:2014年7月19日~9月28日)を見てきました。
 二階展示室をフル活用し、わかりやすい説明と多数の資料から日本SF黎明期の動向が伺えるよう工夫されており、見応えある企画展で楽しかったです!
 展示を見終えた後、帰る前に入口の物販コーナーで来場記念に梶尾真治氏の少年向けSF作品『妖怪スタジアム』を買いました。
 本書は日本SF作家クラブと岩崎書店がコラボレーションした「21世紀空想科学小説」シリーズの一冊として2013年10月に刊行されたソフトカバーの単行本です。

 表紙には妖怪三匹と主人公らしい少年二人に加え、セーラー服を着たショートカットの少女が空手(?)の構えをしたポーズで描かれており、ジャケットに惹かれてパラパラと中身を捲ってみました。
 スカートを履いたままハイキックを繰り出す少女のイラスト、続いて、毛むくじゃらの巨大な怪物に握り締められ苦悶する少女のイラストが見られ、この挿絵に後押しされレジへ直行!
 少年向けSFに興味は持っていませんが、こうした形でSF物の新刊本を買う事になろうとは……。
 活字が大きかったせいか40分ほどで読了し、帰りの電車内で読み終える事ができました。

 本作のヒロインは中学一年生の光島亜香里。頼りがいのある心優しい芯が通った少女です。
 彼女の父親が作った次元転移機の影響で妖怪の存在する異世界が出来てしまい、ひょんな偶然からレンとリューセイは異世界へワープしてしまいました。
 元の世界へ帰る方法を探して歩き回るレンとリューセイは、河童の群れと戦う亜香里を見つけ、彼女に加勢してボス河童を倒します。
 倒した河童のボスから「妖怪ナンバーワン決定戦」の話を聞き、その優勝賞品にされている奇妙な物体が次元移転機だと知った三人。現実世界へ戻るためには、危険な「妖怪ナンバーワン決定戦」の会場へ乗り込み、タイムリミットまでに次元転移機を操作しなければりません。
 味方になったボス河童の協力を得て、三人は現実世界への帰還作戦を開始します。

 シリーズ化を見越したのか、それとも竜頭蛇尾となったのか、正直に言って作品への私的評価は低いです。
 ネタバレとなるので詳しくは書きませんが、物語の完結しない中途半端な結末にはガッカリしました。
 こうした終わらせ方もSF小説としては珍しくないのかも知れませんが、SF初心者としては中途半端な終わり方にモヤモヤ感を覚え、もう少し分量を多くしてでも物語を完結させてほしかったです。

 それはともかく、本作では亜香里の活躍シーンやピンチシーンが見られ、読んでも損はありませんでした。
 彼女が“河童”の集団と勇ましく戦う場面、“がしゃどくろ”にスカートを捲られ恥じらいながら怒る場面、“さとるの化け物”に握り締められ苦悶する場面、それぞれを抜粋して以下に紹介します。


 声は、光島亜香里さんと思った。だが、亜香里さんは悲鳴をあげていたのではないことを知った。
 亜香里さんが、両手にこぶしをつくり腰にあてていた。左足を前に出し、腰を少し沈めている。恐怖に脅えている様子ではない。
 そのまわりに、妖怪が三匹いた。そして、亜香里さんの足もとに妖怪が二匹うずくまっている。
 どの妖怪もそれほど大きくはない。蓮やリューセイよりも身の丈は小さいくらいだ。その妖怪のうちの一匹が新たに亜香里さんに襲いかかろうとした。
【後略】
【中略】
 そう蓮とリューセイがぐずぐずいいあっている間に、五匹の“かっぱ”に亜香里さんはぐるりととり囲まれていた。
 またしても“河童”がとびかかる。今度は、左右同時だ。そのとき、亜香里さんの右足が上がった。そのまま亜香里さんの身体が回転する。あまりにスピードが速いので、連にはなにが何だかわからなかった。
 二匹の“河童”は、悲鳴をあげてふきとんだ。そのとき、さっと遠くで女性の悲鳴と思っていたのは、亜香里さんの声ではなかったということがわかった。
 亜香里さんの攻撃を受けた“河童”の悲鳴だったのだ。
「亜香里さん強い……」
 と思わず蓮はいう。

【中略】
 これまでの“河童”は蓮たちより小さかったが、今度の奴は桁ちがいだ。
 亜香里より首一つ身の丈がでかい。きっと、貯水池“河童”軍団のボスではないだろうか?
 “ボス河童”は、低いうなり声を漏らしながら、池から一歩を踏みだし、亜香里さんを見下ろした。さすがに、亜香里さんは圧倒されたように、一歩下がる。
 “ボス河童”は、両腕を広げ亜香里さんをつかまえようとする。その寸前、亜香里さんの必殺回し蹴りが放たれる。亜香里さんの足は長いのだ。うまく右足が“ボス河童”の左ほおにくいこんだ。
「やった!」

【中略】
 それどころではない。亜香里さんの右足首をしっかりとつかまえていた。
 亜香里さんは動きを封じられてしまっている。このままでは“ボス河童”にやられてしまう。

【中略】
 目の前で、右足を握られたままの亜香里さんが左足で“ボス河童”の左ほおをたたいた。今度は“ボス河童”の頭がかたむく。“ボス河童”は亜香里さんの足を離した。着地した亜香里さんは、体勢を立て直し、両手でこぶしをつくって腰を低くする。そのまま、何のためらいもなく“ボス河童”の下あごを蹴り上げた。【後略】
「亜香里さんが勝った!」
【中略】
「ありがとう。おかげで助かったわ。助けてもらえなかったらやられていたわ」
≪岩崎書店『妖怪スタジアム』P41~81≫

 “がしゃどくろ”は、
「ふうむ。どのように化けているんだ。かぶりものなら、人間の皮膚をどんなふうにつくっているんだね」
と右手の人差し指をのばして、亜香里さんのスカートの裾を持ち上げる。
 それまで肩をすくめて目立たぬように神妙にしていた亜香里さんが、一瞬にしてキレた。
「なにするんですか!」
 亜香里さんは、左足を軸にしてバレエダンサーのように右足を上げて回転させた。そのまま右足は、“がしゃどくろ”の人差し指を粉砕した。それだけに終わらなかった。回転を続ける右足は、そのまま“がしゃどくろ”の顎を直撃した。

【中略】
 亜香里さんは、“がしゃどくろ”を指差して叫んだ。
「あなたが悪いのよ。スカートをめくろうなんてするから。自業自得なんだから」

≪岩崎書店『妖怪スタジアム』P101~102≫

 “さとるの化け物”は、「どいつから喰ってやるか」と大きな口から涎を垂らす。
「三つの方向に別々に逃げれば誰かが次元転移機にたどり着ける……そう考えたな」
とリューセイを指差した。
「そうは、いかないさ」
と、右腕を伸ばし、亜香里さんの身体を握りしめた。それから目にも留(と)まらぬ速さで左腕を伸ばす。リューセイは逃げ出そうとしたが、同じようにつかまれてしまった。

≪岩崎書店『妖怪スタジアム』P142≫
スポンサーサイト
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!
[PR]

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ryonablog475.blog2.fc2.com/tb.php/594-e1089150
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

FC2カウンター

プロフィール

新 京史朗

Author:新 京史朗
好きな技(1):バスター技
好きな技(2):股裂き関節技
好きなシチュエーション:リョナ

最新記事

カテゴリ

小説 (86)
アニメ (33)
ゲーム (31)
アメコミ (23)
フィギュア (5)
映像・写真 (16)
DOA・無双 (114)
イラスト企画 (43)
鉄拳・スト鉄 (92)
漫画・絵物語 (107)
イラスト・挿絵 (51)
映画・イベント (34)
ウルトラヒロイン (12)
MUGEN・ドット絵 (2)
オリジナルヒロイン (8)
御挨拶・お知らせ・交流 (132)
魔法少女まどか☆マギカ (59)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR