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2017-06

受難の美少女(高木彬光「風雲の旗」より)

 40年以上に亙る作家活動で数々の名作を遺した高木彬光氏は、昭和23年初夏、江戸川乱歩の推薦を受けて出版された長編探偵小説「刺青殺人事件」で華々しく文壇デビューを飾りました。
 紙事情の悪い当時としては破格のデビューでしたが、それだけ実力のあった作家だったとも言えます。

 高木氏は時代小説も数多く発表しており、その数は捕物帳も含めて100編を超えますが、そんな時代小説群の中でも、昭和31年に『読売新聞』へ連載された「小太郎の旗」は異色の一作と言えます。
 少年少女を読者対象とした本作は、戦後時代の九州を舞台に快男児・山戸小太郎の活躍を描いた冒険活劇で、毎回、4コマの挿絵に文章をつける形で連載されました。
 波乱万丈に富んだ物語展開で読者を惹きつける構成は、RPG要素を取り入れたライトノベルスとして、現在の読者にも違和感なく読める作品だと思います。

 本作には、山賊に捕えられていた美少女・千菊がヒロインとして登場し、監禁場所から逃走した後、小太郎を慕って彼と旅路を共にします。
 この千菊ですが、山の中で転んで生爪を剥がしたり、海賊船の中に監禁され折檻を受けたり、縛られて木に吊るされたり、幾度も受難に遭います。


 ところがとつぜん、千菊はあっと声をあげ、ばたりとその場に倒れてしまった。
「どうした。どうしたのだ?」
 小太郎の問いに千菊は声をふるわせて、
「いま、ここの木の根につまづいて、生爪をはがしてしまいましたが……」
「生爪をはがした? それはいけない……」

≪ポピュラーブックス『小太郎の旗』P40≫

「誰にも手伝ってなどもらいません。わたくしが一人で逃げ出したのです」
「何をいう? 縄をきった刃物はどこからどうして手に入れたのだ」

【中略】
「かまわぬ。責めろ。裏切者の名前をいわないというなら、叩き殺してもかまわぬぞ。血を吐いてもその名前をいわせるのだ」
 風太郎の命令で、手下たちは二度三度と厚い板で千菊の体を血の出るように叩きのめした。
 たまりかねたように千菊もあっと悲鳴を上げて、
「申します……何もかも白状しますから、それだけはやめて下さい。わたくしを逃がしてくれたのはこのお方です!」

≪ポピュラーブックス『小太郎の旗』P146~147≫

「者ども、この女を連れ出して、吊し上げろ」
 などと口々にののしったが、かねて覚悟をきめている千菊は、別にさからおうともしなかった。そのまま裏庭へ連れ出されると、たちまち全身を荒縄でぐるぐる巻にされ、杉の木の枝に吊し上げられた。

≪ポピュラーブックス『小太郎の旗』P209≫


 本作は昭和46年に「風雲の旗」と改題され、初刊本以外の単行本では、書名が『風雲の旗』となっています。
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