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2017-04

「ラブ☆MAGI」 最終話:雨降って、地固まる

Part1.杏子の頼み、キリカの条件

 友人A「オッハヨー、アンコ。朝から難しい顔しちゃって何読んでんの?」
 杏 子「これか? せ、生徒会の書類だよ」
 マミから押し付けられた「恋愛実習プログラム」だとは言えず、とっさにゴマカす杏子。
 杏 子「こんな分厚い書類読まなきゃいけねーんだから、生徒会役員ってメンドーだよ」
 友人A「そんなこと言って。ホントは楽しんでるくせにー」
 杏 子「た、楽しんでなんか……」
 友人A「今まで『学校なんてツマンネー』が口癖だったのに、役員になってからは一度も言ってないじゃん。あんたがそんなにマジメで仕事熱心だったとはねぇ」
 杏 子(そう言えば……役員になってから学校がツマンナイって思わなくなったなぁ。補佐になったのもマミのゴーインな押し付けだったし、ホントにイヤなら行かなければいいだけだもんな)
 ゆ ま「し、失礼します。あの、佐倉先輩……い、いらっしゃるでしょうか」
 杏 子「なんだ、ゆまじゃないか。ここにいるよ。どうしたんだ」
 ゆ ま「佐倉先輩。た、大変です。巴先輩が体育の授業中に倒れて保健室へ運ばれたそうです」
 杏 子「なんだって」

 ゆまと一緒に保健室へ急ぐ杏子。
 杏 子「マミッ!!」
 保健医「静かに!」
 杏 子「ス、スミマセン」
 奥のベッドには青い顔で横たわるマミの姿があった。
 杏 子「マ、マミ……」
 ゆ ま「巴先輩……」
 保健医「過労と寝不足ね。この学校の生徒会は仕事が多いから」
 杏 子「か、過労……」
 保健医「巴さん、責任感が強くて抱え込みタイプだから気をつけてあげてね」
 杏 子(知らなかった……)
 保健医「その辺をサポートすることも補佐の役目よ」
 杏 子(ウソだ。知ってた……。知ってたけど、あたしはマミの好意に甘えていた)
 真実の寝顔を見た杏子は駆けだして保健室を出た。
 ゆ ま「佐倉先輩!」

 キリカ「第一項、魅力的なうなじの見せ方……。何回読んでも理解できないわ」
 織莉子「男のコの気を引くテクとか素敵な出会い方とか、バッカみたいよねぇ」
 執行部室から持ち出した冊子のコピーを手にする織莉子とキリカ。
 織莉子「明日の委員長会議で使う資料にコレを混ぜて、読んで騒然としているトコに私が登場する。そうすれば、マミも私を無視できな……」
 キリカ「イヤガラセの犯人にさぁ」
 織莉子「え?」
 キリカ「連想されなかったのはいいことじゃないの? 織莉子はそんな卑怯なマネをしないと思われてるってことでしょ? フツーなら気づかれるよ」
 織莉子「……」
 キリカ「まぁ、単に忘れられてるだけって気もするけど、前向きに考えてみたわ」
 織莉子「最後の一言は余計よ」
 キリカ「この作戦、あたしは卑怯な作戦だって思うんだけど、織莉子はホントにそれでいいわけ?」
 織莉子「……。い、いいに決まってるでしょう。そろそろコピー室の予約時間になったから、混ぜる分のコピーをとってくるわ」
 織莉子が廊下の向うへ消えるのと入れ違いに、今度は杏子が姿を現わした。
 杏 子「見つけたッ! 守銭奴!」
 キリカ「初対面の先輩に向かって守銭奴とは失礼な後輩だねぇ」
 杏 子(やべえ。ついホンネを口にしちまった)
 キリカ「どうしたのさ。あたしに用があるんじゃないの?」
 杏 子「く、呉先輩」
 キリカ「へえ、あたしのこと知ってるんだ。どこかで会ったっけ?」
 杏 子「いいえ、マミから聞いたんです。あなたが生徒会の会計だったこと」
 キリカ「そうだったの。それじゃ守銭奴って言われても仕方ないわね」
 杏 子「生徒会の会計に……戻りませんか?」
 キリカ「この守銭奴に会計を任せる? どういう風の吹き廻しよ」
 杏 子「……マミが倒れたんです」
 キリカ「!」
 杏 子「先輩は仕事が早いってマミが言ってました。だから……」
 キリカ「だから?」
 杏 子「マミを……手伝ってやって下さい」
 キリカ「……」
 杏 子「……」
 キリカ「いいよ。でも、一つだけ条件がある」
 杏 子「ま、まさか。金を自由に使われろなんて言うんじゃ……」
 キリカ「あっはははは。まあ、いきなり守銭奴なんて言うくらいだ、そう思われても仕方ないわね」
 杏 子「あ、あれは違くて。その……」
 キリカ「こっちの条件は簡単よ。織莉子を会長に戻してくれないかしら?」
 杏 子「織莉子を……会長に戻せ? 織莉子って誰です?」
 キリカ「うわ。そっから説明しなきゃダメなんだ」
 ゆ ま「み、美国先輩のことですか? 元会長の……」
 杏 子「元会長? すると先輩達はグルだったのかよ。二人はどーいうカンケーなんだよ」
 キリカ「ど、どういうって、幼馴染……」
 杏 子「幼馴染が手を組んで生徒会を乗っ取ろうってハラか? あんたが会計に戻るのが目的じゃないのかよ」
 キリカ「急にタメ口になったわね。あたしが会計に戻りたいってのもあるけど、本当は織莉子を生徒会長に復帰させ……」
 杏 子「次々と新事実を出すんじゃねーよ。こっちはマミが倒れたってだけで混乱してんだぞッ」


Part2.交渉決裂

 杏 子(マミの奴、何が心当たりがないだッ。コイツと仲いい元会長なんて怪しすぎるよ)
 キリカ「条件、のんでくれる?」
 杏 子「……あたしは『会長の』マミを手伝ってほしいんです。マミが会長じゃなくなるなら頼みません。取引になってませんから」
 キリカ「マミが会長? それは違うわね。会長は織莉子よ。そう思っている生徒はいないだろうけど」
 杏 子「それは当然です。職務を放棄したんだから」
 キリカ「確かにね。でもさぁ、居座る前に織莉子を怒って説得すればよかったのに。会長代行になったら全部一人でやろうとしてるじゃない」
 杏 子「それは……そうだけど」
 キリカ「マミが有能のは認めるけど人を信用しなさすぎ。織莉子とは違うわ」
 杏 子「……」
 ゆ ま「……」
 キリカ「まあ、肝心なところが抜けてて、子どもっぽくて、ワガママで、カンシャク起こしてばかりだけどね」
 杏 子「短所の方が上回ってないか?」

 織莉子「『恋愛研究成果』は普通の資料みたいにまとめてある。出てくる名前も『会長』や『補佐』だし。混ぜてしまえばパッと見は気づかない……」
 コピーを取りながら「資料」の一部に目を通す織莉子。
 織莉子(でも、キリカの言う通り卑怯かも。人の日記を勝手に公開するようなものだし……)
 早乙女「美国さん、割り込みで申し訳な……ん? 『議題1。ハンカチ落とし』?」
 ビリッ。
 背後から早乙女先生に声をかけれ、動揺した織莉子は持っていたコピーを引き裂いてしまった。
 織莉子「さ、さ、早乙女先生。あの……これは……その……明日の委員長会議で使う資料なんです。激論をかわすんですッ」
 早乙女(な、何を話し合うのかしら……)
 織莉子「コ、コピーでしたら、私がとりますから置いといて下さい」(焦ったわ。事前に使用時間を申請してたから誰も来ないと思ってたのに)
 早乙女「あら、いいの?」
 織莉子「はい」
 早乙女「それじゃ、お願いしようかしら。五時からの職員会議で使う追加資料なのよ。各十部づつコピーして、そこの棚に置いておいてね。後で取りにくるわ」
 織莉子「わかりました」
 早乙女「ホントに美国さんは頼りになるわね」

 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 狭い室内に響くコピー音が織莉子に虚しさと寂しさを覚えさせる。
 織莉子(キリカ、来ないわね……)
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「……」
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「……」
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「し、仕方がないわね。迎えに行ってあげるわッ」

 織莉子「まったく、キリカったら……」
 コピー室を出て廊下を走る織莉子。曲がり角近くまで来た時、キリカの声が聞こえてきた。
 キリカ「織莉子は私がいい加減なことをしたら、ちゃんと怒ってくれる」
 織莉子(えッ? 何よ、この状況?)
 廊下で見知らぬ生徒と真面目な顔で話すキリカ。曲がり角の影に身を隠しながら、織莉子は彼女達のやりとりに耳を傾ける。
 キリカ「でもね、また信じて任せてくれるよ。私はマミよりも織莉子が会長の方がいい」
 織莉子(キリカ……)
 キリカ「まあ、それを補って余りある程の欠点は問題だけどね」
 杏 子「子どもっぽかったり、ワガママだったり、カンシャク起こしたり?」
 キリカ「まだるわ。八つ当たりも早とちりもするし、泣き虫だし……」
 織莉子「ちょっと、キリカ。いくらなんでも言い過ぎじゃなくて?」
 内心の怒りを隠しながら、織莉子は曲がり角から姿を現わした。
 キリカ「あッ。彼女が織莉子。噂の会長様よ」
 織莉子「え?」
 キリカ「織莉子、彼女が噂の会長補佐だ。挨拶したら?」
 織莉子「は、はじめまして。美国織莉子です」
 杏 子「どうも。会長補佐の佐倉杏子です」
 ゆ ま「しょ、書記の千歳ゆまです」

 織莉子「話の展開が見えないんだけど、私の方が会長にふさわしいってことよね。当然だわ」
 杏 子「でも、自分のプライドのために職務放棄したんだろう?」
 織莉子「そ、それは……」
 杏 子「確かにマミもよくないとこはある。だけど、無責任に仕事を投げ出したりはしない」
 織莉子「……」
 杏 子「あたしが会長にふさわしいと思うのはアンタじゃない。マミだけだ」
 キリカ(言ってくれるねー)
 ゆ ま(さっすがー。チェリーブロッサム)
 織莉子「マミが……会長に……ふさわしい? そんなこと、私が一番よくわかっているわ。だから……。少し困らせて、私を頼ってきたら、『仕方ないわね』って補佐するつもりだったのに……」
 杏 子「いやがらせの犯人はアンタだったのか」
 織莉子「そうよ。私の実績を無視し、生徒会とは無関係な同級生を会長補佐に指名するから、いやがらせをしたのよ」
 杏 子「つまり……マミに頼られたかったのに無視されたうえ、あたしを補佐に指名したのがムカついたってわけ?」
 キリカ「子どもっぽいでしょ?」
 杏 子「ホントだな」
 織莉子「と、とにかく。あなたは補佐を辞めなさい。そしたら意地悪するのを止(や)めるわ」
 杏 子「いやーだね。アッカンベー」
 織莉子「こ、子どもっぽい事を……」
 杏 子「アンタに言われたくねーよ」

 織莉子「いいわ。交渉決裂ね。覚えていなさい。きっと後悔させてあげるから。行くわよ、キリカ」
 捨てゼリフを残し、キリカの手を取って走り去る織莉子。
 杏 子「やれやれ。そういうことだったのか。ゆま。これからはマミに無理させないよう、二人でサポートしようぜ。あたしも仕事するから教えてくれ」
 ゆ ま「は、はい」
 杏 子「生徒会役員の先輩として頼りにしてるぜ」
 ゆ ま「はいッ!」(うわ~い。チェリーブロッサムから頼りにされたぁ)
 杏 子「それからさぁ、あたしのことは佐倉先輩って呼ばなくてもいいぜ。好きなように呼んでくれ」
 ゆ ま「えッ? いいんですか?」
 杏 子「ああ」
 ゆ ま「じゃあ『チェリー先輩』と呼ばせて下さい」
 杏 子「な、なんでだよ……」


Part3.委員長会議にて

 マ ミ「そうだったんですか。美国先輩が……」
 杏 子「そんなわけで人手はふえねーけどさ」
 ゆ ま「これからは二人で巴先輩をサポートさせて下さい」
 マ ミ「で、でも……」
 ベッドから身を起こし、マミは遠慮がちに口を開いた。
 マ ミ「二人に迷惑をかけるわけにはいきません。キョーコは仕事をしないって条件で会長補佐になってもらいましたし」
 杏 子「うるせー。お前はもっと人を頼れってーの」
 マミの額を指で弾きながら杏子が言った。
 マ ミ「い、痛いです。キョーコ」
 杏 子「困った時に助け合うのも『友達』だろう。だから、遠慮しないで仕事を言いつけてくれよ」
 マ ミ「……はい。ありがとうございます。それでは……」
 杏 子「ん?」
 マ ミ「明日までに恋愛練習教材を各自10案ずつ出して下さい」
 杏 子「そこを頼るのは控えよーぜ、マミさんよぉ」
 マ ミ「あら、ごめんなさい」
 杏 子「ふふふふ。あ~っははははは(笑)」
 マ ミ「うふふふふ(笑)」
 ゆ ま「あはははは(笑)」
 マ ミ「でも、ホントによかった。いやがらせが続いたから、もう来てくれないんじゃないかと思っていました。キョーコは元々、ムリして役員になってもらいましたし」
 杏 子「あたしは別にムリなんか……」
 マ ミ「誰かとワイワイやるの……初めてで……すっごく楽しくて……。だから、絶対になくしたくなかったんです」
 杏 子「マ、マミ……」
 マ ミ「キョーコがいなくなったら、千歳さんもいなくなっちゃうんじゃにかって不安だったんです」
 ゆ ま「そ、そんな。私なんか……」
 マ ミ「今まで、ずっと一人でやっていたから。だから、友達と一緒に仕事するの、すっごく楽しいんです」
 杏 子(そうか。マミは人を信用しないんじゃなくて、頼り方を知らないだけなんだ)
 マ ミ「有能すぎるのも困ったものですわね」
 杏 子(まあ、この性格に問題がありそうだけど……)

 キリカ「まったく。織莉子ってば、ホントにワガママだねー。会長に戻りたいって言ったり、補佐を辞めろって言ったり」
 織莉子「お黙りなさい!」
 キリカ「私……笑えるアホをする織莉子は面白くて好きだけど、笑えないアホをする織莉子は好きじゃないな」
 織莉子「……」
 キリカ「……」
 織莉子「決めたわ。もう、つまらない小細工は止(や)める! 明日の会議で生徒会に戻りたいことを正々堂々と言うわ。それで支持がなければ潔く諦めるわ」
 キリカ「マミに認めさせなくていーの?」
 織莉子「いいのよ」
 キリカの方へ向き直り、笑顔で応える織莉子。
 織莉子「会長になれなかったら、副会長の座を狙うから!」
 キリカ「それって潔いの?」
 織莉子(会長に戻れなくてもいいわ。「織莉子が会長の方がいい」。あなたから、もっと嬉しい言葉を聞いたから……)

 織莉子「そうと決まればコピーを処分しないと」
 キリカ「例の『恋愛研究成果』?」
 織莉子「ええ。すぐに回収してくるわ」
 そう言ってUターンし、織莉子はコピー室めざして走りだした。
 織莉子「あら? コピーが二束ある。そうだわ。早乙女先生に職員会議用資料のコピーを頼まれていたんだわ」
 部屋を出る前、作業用ラックに置いたコピーの束は『恋愛研究成果』の一束だけだった。それが二束に増えている。
 普段の彼女ならば変に思っただろうが、コピーを処分するばかり考えていたのでコピーの束が二つになっていることを疑問に感じなかった。
 織莉子「えーと、私のコピーは……」
 早乙女「あら、美国さん。さっきは助かったわ」
 織莉子「さ、早乙女先生」
 早乙女「会議用資料のコピーだけど……」
 織莉子「先生の資料は作業用ラックの上です。それでは失礼しまーす」
 早乙女「み、美国さん。ちょっと待ちなさい」
 早乙女先生の言葉が聞こえないのか、織莉子は猛ダッシュで廊下の向うへと走り去って行った。
 早乙女「美国さんが頑張り屋だけど、落ち着きないのがネックなのよねぇ」
 織莉子の背中を見つめながら早乙女先生が呟いた。
 早乙女「ちょっと前に室内を覗いた時、コピーが終わっていたから複写資料は貰っていったと言うつもりだったのに。きっと、これが明日の委員長会議で使う資料ね。巴さんは保健室で休んでいるようだし、部室の鍵も私が預かっているから、執行部室へ届けておきましょう」
 アバウトな性格の早乙女先生、書類の内容も確認せず執行部室へ『恋愛研究成果』のコピーを運んで行った。

 翌日。
 視聴覚室に各委員会の委員長が集まり、生徒会の司会進行による委員長会議が始まった。
 マ ミ「お手元の資料を御覧下さい。各委員会の活動成果、目標や課題。今春から校内各所へ設置された目安箱への投書など、生徒会の見解をまじえてまとめてあります」
 ゆ ま「これが目安箱です。校内十五箇所に設置してあります」
 マ ミ「ご質問やご意見はのちほど……」
 ガラッ。
 織莉子「異議あり!」
 機材準備室のドアが豪快に開き、織莉子とキリカが現れた。
 杏 子(ゲッ。厄介な連中が出て来たなぁ)
 ゆ ま(先輩達、ずっと準備室に隠れいたのかなぁ。気がつかなかった……)
 マ ミ「美国先輩!? 異議って、まだ議論してませんわよ」
 杏 子「そこはどーでもいいだろう。ツッコムところが違ってんぞ」

 マ ミ「か、関係ない方の入室はお断りして……」
 織莉子「関係なくないわ。正式には私がまだ会長でマミは私を補佐する副会長よ!」
 マ ミ「で、ですが……」
 織莉子「私がここへ来たのは……」
 生徒A「あのぅ、美国会長」
 織莉子「あら、私? 何かしら」
 生徒A「この恋愛研究成果って……なんですか?」
 織莉子「え?」
 マ ミ「え?」
 杏 子「え?」
 ゆ ま「え?」
 キリカ「……」
 マミは慌てて手元の冊子を手に取り、ページをパラパラと捲ってみた。表紙と最初の数ページは会議用資料だったが、残り十ページは『恋愛研究成果』のコピーであった。
 生徒B「巴さん、こんなことをしてたんですか?」
 マ ミ「こ、これは……」
 杏 子(あいつらの仕業か。ヒドイことしやがって)
 ゆ ま「と、巴先輩……」
 杏 子(どうする。どうすれば……そうだッ)「違う。この会長ってのは美国織莉子のことだ」
 織莉子「えッ。な、何を言い出すの。私は関係ないわ」
 杏 子 「たった今、自分で言ったじゃねーか。『会長』はまだ自分で、マミは『補佐』だって!」

 生徒C「恋愛研究って……生徒会で?」
 生徒D「ちょっと見せて」
 生徒E「この学校、男女恋愛禁止なのに大胆ねー」
 キリカ「ちょっと……」
 織莉子「いいのよ、キリカ。黙っていて……」
 何か言おうと身を乗り出したキリカだったが、それを織莉子は制止した。
 衝撃の資料を目にした各委員長と副委員長のザワメキは、ますます大きくなっていく。
 生徒F「こんなこと真剣に取り組んでたのー?」
 生徒G「文面読むとマジメよね」
 生徒H「でも美国さんならやりそうよねぇ」
 織莉子「……」
 杏 子(せ、先輩……)
 生徒I「確かに。ちょっと思い込みが激しいとこあるし」
 生徒J「ついてくの大変そう」
 生徒K「本気でやってたのかなぁ、これ」
 生徒L「ウソでしょー」
 織莉子「うッ……うぐッ……」
 容赦ない言葉に瞳をうるませる織莉子。だが、彼女は黙ってヤジに堪えている。
 杏 子(……)
 生徒M「コレって、なんかハズかしーわね」
 生徒N「ちょっと幻滅だなぁ」
 嘲りの言葉や嘲笑も聞こえ始めた時、杏子はマイクを手にして会場を一括した。
 杏 子「うるせぇぇぇぇぇ!!」
 マ ミ「キョ、キョーコ」
 ゆ ま「うわッ! びっくりした~」
 織莉子「……」
 キリカ「……」
 杏 子「みんなのために頑張ってきた奴を簡単に笑うな! そうやって笑ってるけど、カッコいい彼氏が欲しいとか、可愛く思われたいとか、一度も妄想したことない奴はいるのか?」
 杏子の一言に室内は水を打ったように静まり返る。
 杏 子「恥ずかしいけど、あたしだって妄想したことあるよ。そんなのフツーだろ。生徒会役員だろーが、優等生だろーが、同じ年頃の女だったら一緒じゃねーか。だから……その……」
 キリカ「だから調べてあげたんだよね。『匿名希望の一生徒』のために」
 杏 子「はッ?」(コイツ、何を言い出すんだ……)
 キリカ「そういうこと知り立って投書があったんだよね。ここ(目安箱)に」
 目安箱を軽く叩きながらキリカがフォローをする。 
 キリカ「そのコのために調べてたんだよね。恋愛研究って」
 杏 子「そう! そのコのために調べてたんだよ。『恋愛研究成果」ってのは、その調査に関する資料なんだ。製本過程でまぎれこんだのかも。お騒がせして申し訳ない」
 生徒A「そーだったんだ」
 生徒B「優しいのね。美国さんも、巴さんも」
 生徒C「お二人とも面倒見がいいものねぇ」
 生徒D「早まって悪いこと言っちゃったわ」
 生徒E「ホントねー」
 ゆ ま(よ、よかったぁ)
 杏 子「(小声で)……た、助かったよ。先輩」
 キリカ「(小声で)どういたしまして」
 杏 子「(小声で)でもさぁ、もっと早く言ってくれよ」
 キリカ「(小声で)だって、これ(目安箱)を見てて思いついたんだもん」
 杏 子「(小声で)ウソくせーなぁ」
 キリカ「(小声で)やれやれ。信用ないなぁ」

 会場のざわめきが一段落したタイミングを見計らい、杏子は再びマイクを握った。
 杏 子「いろいろ不備があってスミマセン。後日仕切り直すってことで、今日は解散とさせて下さい」
 生徒F「そうね」
 生徒G「部活の夏季特別予算なんかで生徒会も大変みたいだし、今月の委員長会議は中止でいいんじゃない?」
 生徒H「私も賛成」
 生徒I「それじゃ今日は解散しましょう」
 杏 子「せっかく集まってくれたのに申し訳ありません。今回の件は「一生徒」の気持ちを考えて秘密に願います。それからエラソーに怒鳴ってスミマセン」
 生徒J「気にしないで」
 生徒K「これからも会長補佐、頑張ってね」

 杏 子「ふぅ。危なかったけど、なんとかなってよかったな」
 生徒会メンバーを除く生徒全員が視聴覚室を出て行った後、ガラガラの会場を見まわしながら杏子はマミに向かって声をかけた。
 杏 子「マ、マミ……?」
 返事がないのでマミの方を振り向くと、彼女は目から涙を流して泣いていた。
 杏 子「お、おい……泣くなよ。ショックだったろうけどさ―」
 マ ミ「キョーコ、ありがとう」
 杏 子「え?」
 マ ミ「私は何もできなくて……。でも、あんなふうに怒ってくれて……。私、すごく嬉しい……」
 杏 子「マミ……」
 マ ミ「あの時、キョーコに見られてホントによかった。ホントに……。うわ~ん。ごれがらも仲(なが)よぐじてくだざい~」
 杏 子「あ、当たり前だろう。あたしら友達じゃねーか。だから泣くな、バカッ」
 マ ミ「当たり前だって……。嬉しいですぅ。うわ~ん」
 ゆ ま「チェリー先輩、男前ですぅぅぅぅ」
 さりげなく本音をもらしながら、ゆままで貰い泣きを始めた。
 杏 子「あー、もう。デュエットするなぁ」


 エピローグ

 織莉子「私のせいで大変なことになってしまって……。ホントにごめんなんさい」
 騒ぎを引き起こしてしまった織莉子は神妙な面持ちで三人に謝罪した。
 深々と頭を下げる織莉子を見ながら、マミは優しく言う。
 マ ミ「もう、いいんですわ。今回の件、私にも責任がありますから」
 杏 子「あたしこそ、そっちのせいにして悪かったよ」(否定せずに耐えてくれたし……)
 織莉子「お詫びにバリバリ働くわ。もちろん、副会長としてね」
 キリカ「それじゃ、私も会計やるー」
 マ ミ「美国先輩。呉先輩」
 杏 子「ちょっと待てッ。なんだよ、それ。ドサクサまぎれに復帰宣言するんじゃねー」
 ゆ ま「お、落ち着いて下さい。チェリー先輩」
 キリカ「プッ。チェリー先輩? へえ、そう呼ばれてるんだぁ」
 杏 子「ち、ちげーよ。ゆま、誤解されるよな発言すんな」
 ゆ ま「す、すみません」
 マ ミ「うふふふ(笑)」
 織莉子「くすくすくす(笑)」
 キリカ「ふふッ。あ~っはははは(笑)」
 ゆ ま「あはははは(笑)」
 杏 子「あはッ。あ~っはははは(笑)」

 朗らかな笑い声が視聴覚室に響く頃、校舎内に設置された目安箱の一つへ恋愛相談の手紙が投函されようとしていた。
 周囲を気にしながら素早く投書を投げ込む一人の女子生徒。
 わだかまりをなくして笑い合う五人が、後に『恋愛(ラブ)ラボ』と呼ばれる芳文女子中学校の最初の依頼を目にするのは、もう少し先のことであった……。

 『好きな人に贈り物をしたいのですが、どんなものがいいでしょうか?  匿名希望』


【あとがき】
 終盤は急ぎ足となりましたが、どうにか「ラブ☆MAGI」を完結させられました。【はじめに】にも書きましたが、本作は宮原るり先生の学園ラブコメディ『恋愛ラボ』第1巻を元ネタにしています。全体の2/3程度にダイジェストし、セリフや状況の一部を加筆・修正しながら『恋愛ラボ』第1巻の内容を再構成しました。
 主役メンバーを「魔法少女おりこ☆マギカ」で再現している為、鹿目まどかと美樹さやか、そしてキュゥべえの出番はありません(脇役扱いで出演させてもよかったのですが……)。
 好きな作品をコラボレーションさせるという試みが成功している保証はありませんが、自分としては力の限りを尽くしたつもりです。
 アニメ放送を今夏に控えた「恋愛ラボ」、新作映画公開を今秋に控える「魔法少女まどか☆マギカ」、if物語の漫画連載が好評の「魔法少女おりこ☆マギカ」。これら三作品からは、まだまだ目が離せません。
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