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2017-07

縛られた人妻と剣鬼の言葉責め(中里介山「大菩薩峠」より)

 2013年は中里介山氏の「大菩薩峠」が『都新聞』へ初めて連載(中里生・名義)されてから百年目の記念年にあたります。
 何度も映画されており、現在は青空文庫でも全テキストが公開されているので、内容は知らなくてもタイトルを聞いた事がある方は大勢いるのではないでしょうか。
 この小説は約30年に亙って複数の新聞へ連載され、机龍之助の数奇な運命と蜘蛛糸のように縺れる人間模様を虚実入り乱れた世界観の中で展開させながら、仏教思想に基づく因果応報と人間の業を描いています。
 世界最長の小説を目指して執筆が続けられたそうですが、作者の死によって未完のまま中絶となりました。

 物語は大菩薩峠で老巡礼が斬殺されるショッキングな場面から幕を開けます。
 老巡礼を斬り殺した下手人は机龍之助。甲源一刀流なる剣術の使い手でした。
 彼は鬼神の如き強さと残忍な性格を持ち合せており、行く先々で血ぬられた凶刃を振いながら悲劇と災厄の痕跡を刻みます。

 近年の作品研究で『都新聞』連載版と初刊本には相当の異同があるという新事実が判明し、一般に流布している単行本は大幅に削除されたテキストである事が確認されたようです。
 テキスト差異の詳細については不明ですが、1913年(大正2年)9月2日から翌1914年(大正3年)2月9日までの全150回連載分だけでも相当の文章削除があるとか……。

 好奇心半分で『都新聞』連載版の「大菩薩峠」最初の150回分に目を通してみたところ、面白い描写(と言っては不謹慎かも知れませんが)を見つけました。
 物語の序盤、武芸試合で殺めた男の女房を誘拐して縄で縛りあげたうえ、ネチネチとした口調で相手を尋問する場面があり、そこで龍之助のサディスティックな性格を描いているのです。
 無抵抗な人妻を精神的に責める龍之助の姿、根拠はないのですが、熱海の海岸で鴫沢(しぎさわ)宮を足蹴にする間寛一(尾崎紅葉「金色夜叉」参照)と重なって見えました。
 この場面を介山氏は以下のように書いています(旧漢字を常用漢字に変換し、おどり記号をなくした以外、基本的に原文通りに引用字しました)。


『この無体な狼藉はお前様の差し金か、卑怯な龍之助さま、宇津木の妹に何の恨みがあって』
『いや、拙者の差し金ではない、馬鹿の悪戯じゃ』
龍之助は苦笑(にが)りきって斯う答へたまま、立つて縄を解かうともしないので、
『そんなら早く縄を解いて下さりませ』
『まあ待て、最前の話し残りがある、その侭で聞いて貰いたい』
龍之助の面(おもて)に、いつもの冷やかな色が浮ぶ、それは人の苦しむのを見て、愉快を感ずるような色でもあります、
『宇津木文之丞殿には妹はない筈』
『…………』
『且又(それに)、文之丞殿には甲州八幡村から来たといふ恋女房がある筈』
『…………』
お浜は下に俯向ひたままに、何とも返事をせぬ、龍之助の問ひぶりは、底意地が悪く、人の弱味に指を当がって引き裂くやうで、
『さあ、無い筈の文之丞が妹は今日(けふ)机龍之助を尋ねて来たげな、それは幽霊か』

≪中里生「大菩薩峠」第14回 『都新聞』大正2年9月25日付≫


 余談ながら、この回には井川洗崖画伯による挿絵(縛られたお浜、彼女を見据える龍之助)が載っています。
 できれば挿絵画像を掲載したかったのですが、諸事情によりスキャナが使えない状況なので画像掲載は見合わせました。御容赦下さい。
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