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見滝原帝都探偵局  「悪魔の種」事件 第二部・宝石商の不安

【六】

 マ ミ「御馳走様でした」
 杏 子「御馳走様。脂がのっていて美味しい鰻だったわ。さすがマミの選んだ店ね」
 さやか「あ~、美味しかった。マミ局長、御馳走様でした」
 まどか「老舗の味を堪能させて頂きました。御馳走様です」
 ほむら「御馳走様です。美味しゅうございました」
 マ ミ「みんなに喜んでもらえて良かったわ」
 杏 子「さて、それじゃ本題だ。話の続きを聞かせて頂戴」
 全員が食事を済ませた後、杏子事務局長に促されたマミ局長は再び話を始められました。
 マ ミ「狩野さんのお話しでは、弟さんが食事に異物を混入して命を縮めようと企んでいるそうなのよ」
 杏 子「財産狙いの兄殺しってわけね」
 マ ミ「狩野さんが仰るには、お腹がくだって食べた物を一時間もしないうちに出してしまわれるそうなの」
 杏 子「なによ、それ。食べた物を排出するのは当然の生理現象じゃない」
 マ ミ「わたしもそう思ったわ。でもね、事態は随分と深刻らしいのよ」
 杏 子「どういう事」
 マ ミ「昔の狩野さんは恰幅のよい男性だったわ。でも、事務局に見えた時の狩野さんは鶴みたいに痩せていたでしょう」
 さやか「はい。吹けば倒れる枯れ木のようでした」
 まどか「うぇひひ。うまい例えだね、さやかちゃん」
 杏 子「さやかの例えには同感だ。ガリガリに痩せた男で驚いたよ。こんな言い方は失礼だけど」
 マ ミ「みんなが驚くのも無理ないわよ。喫茶室で聞いた話だと、半年前までは三十貫(約112kg)近くあった体重が現在は半分程度の十五貫(約56kg)まで減ってしまったんですって。六尺三寸(約190cm)の身長に釣り合わない体重だわ」
 ほむら「本人の意思で減量したというのであれば話は別ですが、約半年で体重が半分もおちるのは尋常ではありませんね」
 マ ミ「狩野さんは腹下(はらくだ)しのような薬を食事に混入され、その影響で食べた物が全て排出されるんじゃないかと仰るのよ」
 さやか「つまり、強力な下(くだ)し薬を知らないうちに飲まされて……そのぉ……」
 ほむら「ひどい下痢が止まらないというわけですか」
 赤面して言い淀むさやかちゃんに代わり、ほむらちゃんがズバリと言ってのけました。

【七】

 マ ミ「かかりつけの病院で検診を受けても病気の兆候は見られなかったそうだし、食あたりにしても体重の減り方が異常だわ」
 杏 子「弟を疑うようになったキッカケはなんなのさ。いくら破産したといっても肉親でしょう。それを疑うには理由がある筈よ」
 マ ミ「弟さんは水橋薬局の本店で薬剤師として働いていたそうなの。三年前に独立して大陸へ渡り、大連で薬局を開いたけど事業の拡大に失敗して破産したんですって。店をたたんで帰朝する際、強力な整腸作用のある薬を日本へ持ち帰り、それで腹痛を起こさせているのだと狩野さんは疑っているわ。また、民子夫人の実家は薬局で、御自身も結婚するまでは喜多村製薬のタイピストとして働いていたんですって。自社製品の効能や処方箋をタイプしていたそうよ。御夫妻揃って薬学に精通している事が狩野さんを疑心暗鬼にしているのかも知れないわね」
 まどか「水橋薬局といえば東京市内でも指折りの老舗薬局ですね。地方にも幾つか支店がありますし」
 さやか「喜多村製薬も業界では大手の企業だわ。薬剤師に薬局の娘。どちらも薬の縁があるんですね」
 杏 子「腹下しによる衰弱と弟夫妻の薬学知識ねぇ。ただの被害妄想なんじゃないかしら」
 さやか「そうとも言えないわ、杏子さん。お嫁さんの食事に水銀を混ぜて赤ん坊を流産させようとした鬼畜な姑がいたじゃない。栃木県まで出張した例の事件、覚えてるでしょう」
 杏 子「あの事件ね。もちろん、覚えているわよ。亭主からの調査依頼がもう少し遅れていたら取り返しのつかない事になるところだったわね」
 ほむら「あの時も犯行動機は財産絡みでした。妊娠した後妻を流産させて家から追い出し、実の息子を殺したうえで幼い跡取りの長男を名目上の当主にし、自分が財産の管理人になろうと企んでいたんですよね」
 さやか「とんでもない鬼畜婆さんだったわ。思い出してもゾッとする」
 杏 子「古い事件の話は別にして、あんた達は今回の変事が破産した弟による財産目当ての犯罪だと思っているのかしら」
 さやか「その可能性は高いんじゃないかしら」
 まどか「わたしも同感です」
 ほむら「美樹さやかさんと同意見です」
 マ ミ「食べた物を数時間で排出してしまっては栄養にならない。激しい下痢が続いた場合、体力の消耗や脱水症状から死に至る事もあるというし、衰弱死を狙った犯罪の可能性も否定できないわよ」
 杏 子「時間と根気がいる方法だね。それに相手が死ぬという保証もない。兄の莫大な財産を確実に相続したがっている弟が、そんな七面倒くさい手段に訴えるっていうのは納得しかねるわ」
 まどか「いわゆる『可能性の犯罪』になりますね」
 杏 子「それ以下じゃないかしら」
 さやか「そう言われると自信がなくなってくるなぁ」
 マ ミ「こう考えてみてはどうかしら。手間と時間はかかるけれど、弟さんは狩野さんが衰弱死しても不審死扱いされない確信をもっている。意図的に衰弱死させた痕跡が見つからなければ犯罪は露見せず、堂々と財産を相続できるわ」
 まどか「一服盛っておきながら、表面上は体力の低下による衰弱死を装わせようというわけですね」
 ほむら「巴マミ局長のお話しでは狩野家の財産総額は軽く見積もっても数万円との事です。贈与税を差し引いても庶民には夢のような大金が相続できるわけですから、兄殺しの動機となっても不思議はありません」
 杏 子「なるほど。そういう考え方もあるわけね」
 このような話をしているうちに店は混雑の時間を迎えたのか、先程から廊下や階段を行き来する女中さんの足音が後をたちません。
 マ ミ「どうやら混み合ってきたようね。食事の後で長居するのも悪いから、とりあえず店を出ましょうか」
 マミ局長は部屋番号の書かれた木札を手に取り、スックと立ち上がりました。
 マ ミ「先に降りてお会計を済ませてくるわ。みんな、忘れ物をしないようにね」

【八】

 さやか「ふは~、満腹満腹。元気百倍になったし、来週からも元気でお仕事を頑張っちゃいますよ~」
 マ ミ「お気に召してよかったわ」
 大満足のさやかちゃんにマミ局長は笑顔で応じられました。
 杏 子「さて、これからどうする。ここで解散かしら。それとも『美国庵』で続きを話し合う」
 さやか「やっぱり杏子さんは鰻だけじゃ足りなかったようね。シメは甘味かしら、それともお蕎麦かしら」
 杏子事務局長の仰る『美国庵』とは神田区淡路町にある甘味処の事です。夜遅くまで営業しており、甘味の他に蕎麦やお握りも提供してくれるお店なのでございます。
 杏 子「シメはやっぱり甘味に決まって……って、そうじゃないわ。もっと詳しくマミの話を聞きたいと思っただけよ」
 さやか「本当ですかぁ」
 杏 子「ほ、本当よ」
 図星をさされたらしく劣勢に追い込まれた杏子事務局長。そこへマミ局長が助け舟を出されました。
 マ ミ「狩野さんの件についてはみんなからも意見を聞きたいと思っていたし、とりあえず『美国庵』へ行きましょうか。美国さんとは知らない仲でもないし、多少の長居は許してくれるでしょう。もちろん、甘味くらいは注文しなければならないけれど。杏子、お腹に余裕があれば甘味の担当をお願いするわ」
 そう言いながら、マミ局長は杏子事務局長に向かって軽く目配せをされました。さやかちゃんの死角をついて合図するあたり、さすがの配慮です。
 まどか「(小声で)マミ局長、粋な計らいだね」
 ほむら「(小声で)ええ。まさに以心伝心ね」
 それから間もなく、わたし達五人は甘味処『美国庵』へやってまいりました。
 マ ミ「こんばんは」
 織莉子「あら、巴さん。いらっしゃい。お久しぶりね」
 引き戸を開けて店内へ入ると女将(おかみ)の美国織莉子さんが帳場にいらっしゃいました。マミ局長のお顔を見ると算盤を脇に置いて立ち上がり、自ら対応に出られます。
 マ ミ「お久しぶり、美国さん」
 織莉子「金曜日の夜に来店なんて珍しいわね」
 マ ミ「最近は甘味とも御無沙汰していたから、たまには五人で甘いものでもと思ってお邪魔したわ」
 織莉子「どうもありがとう。まあ、ともかく中へお入りなさいな。キリカさん、お冷やを五つお願いするわ」
 キリカ「はい。すぐにお持ちします」
 美国さんは店の奥に向かって声をかけ、女給さんに冷水を持ってくるよう言いつけました。
 マ ミ「こんな時間に大勢で押しかけて申し訳ないわね」
 織莉子「かまわないわ。宵の口でお客さんもいないし、皆さんの来店は大歓迎よ」
 マ ミ「歓迎されて嬉しいわ」
 織莉子「さあ、お好きな席へどうぞ。テーブル席でもお座敷でも好きな場所へ御案内するわ」
 マ ミ「実は込み入った話があるの。夕食後の一杯に立ち寄る方々でお店が混雑してきたら話しづらくなる内容だから、厚かましいようだけれど、お座敷を貸して頂けるかしら」
 織莉子「お座敷を御希望ね。了解したわ。すぐに用意をさせるから待っていてちょうだい」
 マ ミ「ごめんなさいね、わがままを言って」
 織莉子「気にしないで。この時間帯にお座敷を利用するお客さんはいないもの。ゆまちゃ~ん」
 ゆ ま「お呼びですか、女将さん」
 織莉子「五名様、お座敷を御利用よ。御案内できるように準備をお願いするわ。キリカさんにもお冷やをお座敷へ運ぶように伝えてね」
 ゆ ま「はい」

【九】

 お座敷へ案内された後、杏子事務局長は「久しぶりに来たんだからさぁ、ちょっとは奮発しましょう」と仰り、カステラと草餅、さらに甘酒を注文されました。
 わたし達は鰻重だけで満腹になっており、この他に食べ物を口にする余裕はございませんでしたので甘酒を注文するに留めましたが、それを聞いた杏子事務局長は甘味に加えて甘酒も注文されたのです。
 ゆ ま「カステラ、草餅をお一つ。甘酒を五つ。これでお間違いございませんか」
 マ ミ「ええ、大丈夫よ」
 ゆ ま「御注文を承りました。それでは失礼致します」
 女給のゆまさんが廊下へ下がると、マミ局長は『千和』で中断した話を再開されました。
 マ ミ「狩野さんから伺ったお話しについてだけれど、何か意見があれば聞かせてくれないかしら」
 杏 子「狩野氏が本当に命が狙われているのか、そうならば犯人は弟なのか、どのような手段で衰弱死させようとしているのか。この三点について意見を聞きたいって事かしら」
 マ ミ「ええ。わたしとしては弟さんによる犯罪の匂いを感じているのだけれど、その根拠を具体的に説明しろと言われたら言葉に詰まってしまうわ。この仕事をしていて身についた勘……と言ったところかしら。みんなには笑われるかも知れないけれど」
 杏 子「そういった勘だってバカにしたものじゃないよ。笑いはしないわ」
 マ ミ「ありがとう。杏子」
 まどか「杏子さんの御意見ですが、やはり被害妄想説ですか」
 杏 子「あたしは……マミの言う犯罪説に賛成かなぁ」
 さやか「あれッ、さっきとは逆の意見ですね。意見を変えるに至った根拠はなんですか」
 杏 子「やっぱり、狩野氏の異常な痩せ方かしら。ほむらも言っていたけど、半年で体重が半分も減るのは尋常じゃないもの」
 さやか「なんか、自説を撤回するにはあっけない理由だなぁ」
 杏 子「そう言うなって。ここへ来るまでに頭の中で情報を整理してみた結果なんだから」
 ゆ ま「失礼いたします。カステラ、草餅、甘酒、お待たせ致しました」
 注文した甘味が運ばれ、ここで杏子事務局長のお話しが途切れました。
 ゆまさんは手際よく甘酒の注がれた湯飲みを五人全員に配り、カステラと草餅の乗った皿を食卓の中央へ置いてから「ごゆっくり」と言って一礼され、そのまま引き下がって行かれます。
 まどか「減量の件については、わたしも杏子さんと同意見です。第三者による作為を感じてなりません」
 杏 子「毒キノコを食べてしまった患者の体内から毒物を排出させる為、下剤効果のある粉薬を患者に飲ませて毒を出させる医療法があるらしいわ。確か民間療法だったと思うけど、この方法を犯罪に応用したんじゃないかしら」
 さやか「民間療法を応用した間接的な殺人方法という事ですか」
 杏 子「狩野氏の体力消耗と栄養失調による死亡を犯人が望んでいた場合、死亡診断書を書く医師に不審な点を微塵も感じさせてはいけないから、確実に命を奪える毒薬を使う筈はない。駄目で元々、成功すれば御(おん)の字、って感じかしら。最初は迂遠すぎる方法に疑問を感じていたけれど、だんだんと衰弱死を狙った犯罪説じゃないかって思うようになってきたわ」


≪「「悪魔の種」事件 第三部・暴かれた犯罪」へ続く≫
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