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2017-10

見滝原帝都探偵局  「悪魔の種」事件 第一部・午後の依頼人

【はじめに】
 久しぶりとなる「魔法少女まどか☆マギカ」二次創作SSは原作のif物語ではなく、「まど☆マギ」のキャラクターを借りた探偵物「見滝原帝都探偵局」の続編にしました。
 2011年8月に全四回でアップした「紺碧荘殺人事件」は初めて書いた「まど☆マギ」二次創作SSとして特に思い入れがあり、推理小説としての完成度は低いものの、自分でもお気に入りの一編となっています。
 いつかシリーズ第2弾を書いてみようと思っていながらネタが浮かばず、永らく続編に着手できませんでしたが、某リサイクル本屋で買った雑学本から植物に関する面白いネタを拾えたので「見滝原帝都探偵局」第2の事件を書いてみました。
 今回は「魔法少女おりこ☆マギカ」の主要メンバー三人も登場させ、オールスター総登場の趣向を狙ってみましたが……意気込みだけで成功していないかも知れません(汗)。
 前作同様、キャラクター設定も原作に忠実ではありませんので、原作の世界観を崩した二次創作が苦手な方、シリアスな物語を好まれる方、オリジナル要素の濃い二次創作を敬遠される方は御注意下さい。



 皆様、お久しぶりです。見滝原帝都探偵局調査員の鹿目(かなめ)まどかでございます。
 いつぞや、K県の避暑地でわたしたちが巻き込まれた殺人事件についてお話し致しましたが覚えておいででしょうか。
 紺碧荘の事件は思いつくまま実行された犯罪が成功した一例だけに、探偵小説を愛読される好事家の皆様には物足りない事件報告だったかも知れません。
 当局が過去に扱った事件から、今日は少し変わった事件をお話ししようと思います。根気と綿密な計画によって実行されながら、どことなくユーモラスな一面の見られる犯罪を討議だけで解き明かす、わたしにとっても忘れ難(がた)い一件でした。
 探偵小説を好まれる方々に御満足頂ける内容かどうか分かりかねますが、よろしければ最後までお付き合い下さい。

 犯罪がひそかに進行していた場所は大森にある煉瓦作りの西洋館です。
 広大な敷地を持つ大邸宅が建てられたのは明治時代末期であり、持ち主を転々とした末、最後は宝石商に買い取られたそうでございます。
 この大邸宅を買い取った宝石商の名前は狩野(かの)勉造。二十歳(はたち)の時に生まれ育った山陰地方の漁村を捨てて上京し、宝石店経営者の家に書生として住み込んで宝石の勉強をしながら店の経営を手伝い、四十歳の時に暖簾分けの形で独立されました。
 有価証券や不動産を併せた総資産は五万円とも十万円とも噂されながら、狩野氏には配偶者がいらっしゃらない為、莫大な財産は事業に失敗して狩野邸へ寄宿している弟御が相続する事になるそうでございます。
 探偵小説の題材に相応しい条件が揃いながら、そこに展開される事件はなんとも単純な犯罪でした。不謹慎ながら失笑を禁じ得ません。
 この屋敷で如何なる犯罪が進行していたのか。
 さぞかし皆様も気になるでしょうから、前置きを終わらせて事件の話へ移る事に致しましょう。
 ……。
 と、その前に。
 今回も見滝原帝都探偵局のメンバーと事件関係者を簡単に御紹介させて頂きます。
 大森の西洋館に住まう使用人は総勢六名を数えますが、事件と直接の関係がない方には登場を御遠慮願いました。この省かれた使用人の中に主犯や共犯者が存在しない事は語り手である鹿目まどかが保証致します。


【見滝原帝都探偵局】
 ・巴マミ……見滝原帝都探偵局長。才色兼備の淑女探偵として活躍する職業婦人。
 ・佐倉杏子……見滝原帝都探偵局事務局長。面倒見が良い姐御肌の頼れる調査員長。
 ・美樹さやか……見滝原帝都探偵局経理担当。調査員。杏子事務局長の幼馴染み。
 ・暁美ほむら……見滝原帝都探偵局交渉事務担当。調査員。両親も探偵所に勤務。
 ・鹿目まどか……見滝原帝都探偵局書類検査担当。調査員。本件の語り手。

【狩野邸の住人】
 ・狩野勉造(かの べんぞう)……地方出身の宝石商。
 ・尖正二(とんがり しょうじ)……狩野勉造の弟。事業の失敗で破産。
 ・尖民子(とんがり たみこ)……尖昭二の妻。
 ・熊田八百八(くまだ やおはち)……狩野邸の使用人。庭師。
 ・茂手木英一(もてぎ えいいち)……狩野邸の使用人。料理人。


【一】

 昭和九年九月のある金曜日。
 見滝原帝都探偵局の事務室で静かに時を刻む置時計が午後五時を告げました。
 いつもならば勤務の終了する時間ですが今日は違います。暮れるには、まだ間(ま)がある夏の空を窓の向こうに見ながら、わたし達はマミ局長の帰りを待ちづけておりました。
 杏 子「もう五時を過ぎたっていうのに、いつまで長居しているのかしら」
 さやか「マミ局長が出て行ったのって四時くらいだったわよね。そんなに長居してはいないんじゃないかしら」
 ほむら「込み入ったお話しのようだから時間がかかっているのよ。もう少し待ちましょう」
 まどか「マミ局長が無駄に時間を消費するはずがないもの。きっと相手に解放されないのかも知れないわ」
 ほむら「仕事の話が終わった後も喫茶室でノンビリされる方ではないし、もう少し待ってみましょう」
 こんな事を言い合いながら、四人は局長不在の事務局で無為の時間を過ごしておりました。
 わたし達が御帰還を待っているマミ局長の不在は、次のような理由によるものでございます。
 本日午後四時頃、狩野勉造と名乗る痩せた長身の男性が当事務局を尋ね、マミ局長に面会を求められました。
 マミ局長にとっては顔見知りの御方らしく、手に持っていた書類の束を机の上に置き、名刺を貰う前に席を立って自ら対応されたのです。
 マ ミ「あら、狩野さん」
 勉 造「どんも、お久しぶりダス」
 マ ミ「お久しゅうございます。こちらこそ御無沙汰しておりましたわ」
 勉 造「実は巴さんに御相談したい事がありましてぇ、こうしてお邪魔したんスけど……」
 マ ミ「御相談と申されますと調査依頼でしょうか」
 勉 造「ええ、まあ。そんなことろッス」
 マ ミ「まずは応接室の方へ御案内致しますわ。さあ、こちらへどうぞ。美樹さん、お茶の用意をお願いね」
 さやか「はい、局長」
 さやかちゃんが席を立ち、マミ局長は来客を隣の応接室へ案内しようとなさいましたが、狩野と呼ばれた男性は手を振って断られました。
 勉 造「あいや、お気遣いは無用で結構ッス。勝手を言って申し訳ねえッスけど、できれば別の場所で話を聞いて頂けねッスか」
 マ ミ「別の場所ですか」
 勉 造「すんません。みなさん、気分を悪くされるかも知んねえッスけど、あまり御婦人方が聞いて気分のよい話じゃねえもんで……」
 マ ミ「左様でございますか。それでは階下に喫茶室がございますので、そちらにてお話しを伺いますわ」
 勉 造「無理を言ってすまねえッス」
 このような会話があり、マミ局長は狩野氏と連れ立って事務局が入っているビルの一階にある喫茶室『藍』へ向かったのでした。

【二】

 暇を持て余した杏子事務局長は給湯室から菓子箱を持ち出し、その中に入っていた月餅(げっぺい)を食べ始めました。
 さやかちゃんは婦人雑誌の読書に没頭。ほむらちゃんは……瞑想でしょうか、目を瞑って微動だにしません。わたしは週明けに日延べしようと思っていた調査書類の整理に取り掛かりました。
 どれくらいの時間が経ちましたでしょうか。ガチャリとドアノブの廻る音が聞こえ、太陽を背にしたシルエットが事務所のドアを静かに押し開きました。
 杏 子「おッ、我が探偵局長の御帰還だな。お疲れ様」
 さやか「お疲れ様です」
 ほむら「お帰りなさい、巴マミ局長」
 まどか「お疲れ様でした」
 マ ミ「あらッ、みんな待っていてくれたの」
 さやか「当然ですよ」
 ほむら「局長が仕事をしているのに部下だけ帰るわけにはいきません」
 まどか「そうですよ」
 マ ミ「お気遣い、どうもありがとう。優しいのね、みんな」
 疲れ気味の顔に微笑みをうかべながらマミ局長は一同を見まわして言いました。
 マミ局長が自分の席へ戻られると、杏子事務局長は待っていたかのように質問をします。
 杏 子「それで依頼人の相談はなんだったわけ」
 マ ミ「身辺警護の依頼……といったところかしら」
 杏 子「誰かに高価な宝石を狙われているから身辺を警護してほしいって事ね」
 マ ミ「当たらずとも遠からずよ」
 杏 子「なんだか歯切れの悪い答えだなぁ。あの男は何を依頼してきたのよ。ハッキリ言ってくれないかしら」
 ほむら「佐倉杏子さんの仰る通りです、巴マミ局長。具体的な答えをきかせて下さいませんか」
 マ ミ「そうね。こんな言い方では分からないわよね」
 杏 子「ああ。簡単明瞭な説明を頼むよ」
 マ ミ「その前に夕食を済ませてしまいましょう。こんな時間まで待たせてしまったのだから、今夜はわたしが御馳走するわ。明日は事務局もお休みだし、少しくらい帰宅が遅くなっても大丈夫よね」

【三】

 わたし達は帰り支度を済ませ、午後六時半過ぎに事務局を出ました。
 消灯と窓の戸締りを確認したマミ局長は外側からドアに鍵をかけ、見えにくい場所へ仕掛けた侵入者防止の南京錠を施錠します。
 機密書類も多い探偵事務局だけに局長自ら戸締りを行うのです(マミ局長が不在の時は杏子事務局長が戸締りの責任者となります)。
 マ ミ「夕食だけど鰻でいいかしら」
 ドアの鍵を小箱に収めながら、マミ局長は我々に尋ねました。
 杏 子「鰻かぁ。いいね、久しぶりに鰻重ってのも悪くない。あたしは異議なし」
 さやか「ちょ、ちょっと杏子さん」
 ほむら「巴マミ局長の御厚意に甘え過ぎではありませんか。一時間程度の居残りで鰻を御馳走になるのは申し訳ないと思うのですが」
 まどか「そ、そうですよね。さすがに鰻を御馳走になるのは……」
 マ ミ「遠慮しなくてもいいのよ。たまには贅沢な食事も悪くないでしょう」
 さやか「そうかも知れませんが……」
 杏 子「せっかく御馳走してくれるって言うんだからさぁ、ここはマミの顔を立ててやろうよ」
 煮え切らない態度の後輩三人を納得させるような口調で杏子事務局長が言います。
 マ ミ「美味しい食べ物は大勢で食べるから美味しいのよ。さあ、遠慮しないで行きましょう」
 笑顔で諭すマミ局長の一言に後押しされ(少なくとも、わたしはマミ局長のひと言で決心がつきました)、わたし達は「それでは遠慮なく御馳走になります」と三人揃って返事を致しました。
 杏 子「よし、これで衆議一決だな。それで店はどこにするんだ」
 マ ミ「須田町の『千和』にしましょう。あそこは全席個室になっているから狩野氏からの相談を詳しく話せるわ」
 ほむら「『千和』といえば江戸時代から続く老舗ではありませんか。そんな上等のお店へ連れて行っていただけるのですか」
 マ ミ「名点の味を知っておいても損はしないわよ、暁美さん」
 ほむら「は、はあ……」
 杏 子「さあ、立ち話をしていても時間が過ぎるだけよ。さっさと行きましょう」
 さやか「せっかくなんだから御馳走になろう、ほむら
 ほむら「そうね。それでは御馳走になります、巴マミ局長」
 こうして、わたし達は五人揃って神田須田町の老舗鰻屋を目指して歩き出しました。
 言い忘れておりましたが見滝原帝都探偵局は日本橋猿楽町(さるがくちょう)にあり、ここから須田町までは歩いて十分程度の距離なのでございます。

【四】

 創業百三十年の『千和』は歴史を感じさせる店構えをしておりました。道々にマミ局長から伺ったお話しでは何度か改修はされているものの建物自体は江戸の昔から変わっておらず、かの『江戸名所図会』にも繁盛する店の様子が描かれているとの事です。
 開放されている入り口の左手脇では鰻割(うなぎさき)の職人さんが慣れた手つきで鰻を捌いており、その反対側では焼かれた鰻が香ばしい香りを表通りへ漂わせております。
 わたし達は暖簾をくぐって店内に入り、女中さんの案内で六畳一間の個室へ通されました。
 特上の鰻重とお吸い物を注文し、それを受けた女中さんが部屋を出て行きます。
 足音が廊下の向こうへ消えて行くのを確認した杏子さんは、さっそく、マミ局長に狩野さんの用件がなんだったのかを尋ねられました。
 杏 子「さて、それじゃ例の依頼人が何を相談しに来たのか話してもらおうか」
 さやか「話してもらおうか……って。なんだからマミ局長を脅迫するような尋ね方をするわね」
 杏 子「さやか、あたしは真面目に聞いているのよ。半畳(はんじょう)を入れるんじゃない」
 さやか「は~い」
 珍しく真剣な面持ちで杏子事務局長がさやかちゃんをたしなめました。普段ならば「脅迫とは人聞きが悪いわね」と反撃し、さやかちゃんの軽口に応戦するのですが……。
 ほむら「(小声で)佐倉杏子さん、どうしたのかしら。いつもはあんな厳しい言い方をしないのに」
 まどか「(小声で)そうだよね。わたしもビックリしちゃった」
 杏 子「休憩中はおふざけもいいけど、仕事の話をする時は真面目にしなさい。休憩中と仕事中の区切りをつけないと駄目よ、三人とも」
 ほむらちゃんとの会話が聞こえたのか、さやかちゃんも含めた三人の後輩に言って聞かせるような口調で杏子事務局長が注意をされました。確かに仰る通りです。
 杏 子「今は仕事中じゃないけど、狩野とかいう男の調査依頼をマミが話してくれるんだ。仕事中だと思ってシャキリしなさい」
 まどか「はい」
 ほむら「申し訳ありません」
 さやか「これから気をつけます」
 杏 子「うん。聞き分けのいい子だ」
 頷いた三人の顔を見廻し、杏子事務局長は微笑みながら仰いました。

【五】

 マ ミ「午後に見えた狩野さんの依頼というのは簡単に言えば身辺警護なのよ」
 さやか「その事は事務局を出た時に……」
 杏 子「そうやって先走らない。まずはマミの話を聞きましょう」
 さやか「はい」
 マ ミ「狩野さんは銀座と高輪(たかなわ)、京橋にお店を持つ宝石商なの。わたしが藤倉婦人探偵所で見習いをしていた頃に知り合った方だけれど、かれこれ五年近く会っていなかったわ」
 マミ局長は御自身と狩野氏の出会いからお話しを始められましたが、そのような調査依頼とは直接の関わりがない事まで逐一申し上げるのも御退屈様でしょうから、ここでは必要最低限な情報だけを簡潔に申し上げたく存じます。
 あくまでマミ局長のお話しを要約するに過ぎず、わたしの独断で省いた情報に事件の重要な手掛かりを含んではおりません。その点については見滝原帝都探偵局の名前に誓って明言致します。
 マミ局によるお話しの大意は次の通りでございます。
 奉公していたお店から暖簾分けの形で独立した狩野氏は『悠木堂』という宝石店を京橋に開き、奉公中に学んだ経営戦略と持ち前の商才を発揮させ、無名の店を一流宝石店へと成長させました(僅か三年で銀座と高輪へ支店を出すまでに繁盛した事実からも狩野氏の商才は大したものと言えるでしょう)。
 現在は大森の豪奢な西洋館を買い取って住まいとし、大陸での事業で失敗して帰朝した弟夫妻と同居されているそうです。
 総資産は定かではないものの、軽く見積もって五万円、大雑把な計算では十万円とも言われているとか……。
 狩野氏には配偶者がいらっしゃらず、遺産相続人は唯一の肉親である弟御になるようです。
 マ ミ「狩野さんからの依頼は、事業に失敗した弟さんが財産目当てに自分を殺そうとしているから守ってほしい、という事だったの」
 杏 子「なるほど。ある意味では高価な宝石を狙う者からの身辺警護だわね」
 黙って話を聞いていた杏子事務局長が納得した口調で仰いました。
 マミ局長のお話しが一段落つくのを待っていたかのように、襖の向こうから女中さんの声が聞こえてまいりました。どうやら待望の鰻が焼き上がったようです。
 女 中「ごめん下さいませ。鰻重とお吸い物、五人前をお持ち致しました。お邪魔してもよろしゅうございますか」
 マ ミ「あら、鰻重ができたようね。この続きは食事を済ませてからにしましょう。お食事の前に聞かせるのは躊躇われる内容も含んでいるし……」
 苦笑しながら一同に告げた後、マミ局長は廊下で待機している女中さんに声をかけられました。
 マ ミ「どうぞ、お入りになって下さい」


≪「「悪魔の種」事件 第二部・宝石商の不安」へ続く≫
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