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2017-04

少年探偵の女装と少女探偵の危機(江戸川乱歩「魔法人形」より)

 江戸川乱歩氏による少年少女向け探偵小説は戦前から書かれていましたが、その執筆が本格化するのは戦後になってからです。昭和24年から一年間にわたって『少年』へ連載された「青銅の魔人」を第一作とし、病没する直前まで(代作も含め)数多くのジュブナイル作品を遺しました。
 探偵小説界の巨匠が書いた小説だけあり、その骨格には本格ミステリーの要素(不可能犯罪を思わせる演出や奇術的トリックの使用)を持っており、完成度の高さから「さすが乱歩」と言いたくなる作品も多々あります。

 しかし、それらの中には独特のエロチシズムを漂わせ、多感な少年少女を妖しい官能美の世界へ導いてくれる作品も存在します。
 今回の紹介作品「魔法人形」には十八歳の若き美少女や女装の美少年の受難場面が用意されており、ヒロイン受難シーンが好きな方は必読とも言える一作に(私見ですが)仕上がっています。

 探偵助手の花崎マユミさんが大活躍する「魔法人形」は『少女クラブ』昭和32年1月号から12月号にかけて連載されました。彼女は同時期に別雑誌へ連載された「妖人ゴング」、昭和33年に雑誌連載された「夜光人間」及び「塔上の奇術師」にも登場しています(花崎マユミの登場作品については、こちらのサイトを参照させて頂きました)。
 本作では、事務所を留守にしている明智探偵や小林少年の代理として不可思議な事件の謎に挑みます。

 慌ただしい師走ですから、ストーリー紹介や書誌的な解説は省き、偏った視点からの見所だけを一気に引用文で御紹介します。
 テキストには『江戸川乱歩推理文庫38 魔法人形/サーカスの怪人』を用いました(絶版本からの引用で申し訳ないのですが、これしか収録書籍を持っていません……)。
 現在、この作品はポプラ社の『少年探偵17 魔法人形』(文庫版あり)と光文社文庫の『江戸川乱歩全集第20巻 堀越捜査一課長殿』でも読む事ができます。

 まずは、妖しい老人に誘拐されたルミちゃんが拷問されているかも知れない事を暗示する場面の紹介から。


 そのときおかあさんは、なにかに気づいて、ハッとしたように甲野さんの顔を見あげました。
「ねえ、あなた。この洋服は、たしかにルミちゃんのですわ。ここに、かぎざきをなおしたあとがあるでしょう。これは、わたしがじぶんでなおしてやったのですもの、よくおぼえてますわ。」
 すると、人形のからだに、ルミちゃんの洋服が着せてあるのでしょうか。いったい、どうしてそんなことをしたのでしょう。あるいは、ルミちゃんは、洋服をぬがされ、はだかにされて、どこかに閉じこめられているのではないでしょうか。
 おかあさんは、まっ暗なつめたい部屋に、はだかのルミちゃんがころがされている姿が、まざまざと目の前に浮かんでくるようで、もう気が気ではありません。ルミちゃんがかわいそうで、またしても、目にいっぱいの涙があふれてくるのでした。

≪講談社『江戸川乱歩推理文庫38 魔法人形/サーカスの怪人』P35≫


 お次は小林少年の女装シーン。作中には女装姿で怪しい西洋館へ乗り込み、そこでピンチに陥りますが……長さの都合から受難場面の引用は省きました。御了承下さい。


【前略】それには、このままの姿ではだめです。ぼく、女の子に変装します。そして、人形じいさんと知恵くらべをやるのです。」
 てきぱきと、こともなげにいう小林君の顔を、甲野さんは感心して見つめていましたが、
「あんたが女の子にばけるんだって? 相手に気づかれないように、そんな変装ができるかしら。」
と、心配らしくたずねました。
「だいじょうぶです。ぼく、なんどもやったことがあるんです。いつも、ばれたことはありません。ぼくのからだにあう女の子の洋服も和服も、いつもでつかえるように、事務所にちゃんと用意してあります。」

≪講談社『江戸川乱歩推理文庫38 魔法人形/サーカスの怪人』P40~41≫


 最後はマユミさんの受難シーン。人造の地底ジャングルに迷い込み、不気味な樹木に襲われる場面です。


 ふと気がつくと、背中のほうで、ごそごそ動いているものがありました。なんだか人間の手のようです。ギョッとしてふりむくと、ふとさ五センチもあるような長いつるが、へびのように、マユキさんに巻きつこうとしているのです。
 びっくりして逃げようとしましたが、そのつるは、まるで生きもののように、とっさにパッとのびて、あっというまに、マユミさんのおなかを、ひと巻きしてしまいました。
 恐ろしい力です。一度巻きつけば、もうはなすものではありません。つるは、ぜんまいのように、くるくると、木のみきのほうへちぢんでいって、あっというまに、マユミさんを、空中につりあげてしまいました。
 マユミさんは、手足をばたばたやって、のがれようとしましたが、ぐんぐん、上につりあげられるばかりです。
 マユミさんは、いつか本で読んだことがあります。南洋のジャングルの中には、恐ろしい木があって、つるで人間を巻きこんで、たべてしまうというのです。人をくう木です。
 これはきっと、その、人をくう木にちがいないと思いました。

≪講談社『江戸川乱歩推理文庫38 魔法人形/サーカスの怪人』P138~140≫
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