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2017-05

禁断の愛の結末(横溝正史「噴水のほとり」より)

 昭和7年の夏、横溝正史氏は勤めていた出版社を辞めて専業作家となりました。
 それまで以上に旺盛な執筆活動を展開する筈だったところ、肺結核の悪化によって転地療養を余儀なくされ、不本意ながらも作家業を休業しなければならなくなります。
 療養の甲斐もあったのか昭和10年に再起を果たし、翌年からは様々な雑誌や新聞へ多数の長短編を発表するようになりました。
 この量産期に書かれた作品は数多く、しかもヴァラエティに富んでおり、横溝氏が生まれながらにしてストーリーテラーだった事を伺わせます。

 異常に聴覚が発達した少年を主役にした短編「噴水のほとり」も量産期に書かれた作品の一つであり、靴音を手掛かりに公園での殺人事件が解き明かされる趣向となっています。
 推理小説研究家の中島河太郎氏は「聴覚だけによる犯罪劇の推移と、その究明という、風変わりな作品」と本作を評していますが、短いながらも作品の特徴を正確に伝えるレビューと言えるでしょう。
 ネタバレを避ける意味から詳しくは書きませんが、ある人物を加害者だと特定する経緯は論理的な推理によるものであり、現代の横溝ファンが読んでもラストの意外性に驚ける佳作だと思います。

 この「噴水のほとり」ですが、事件の背景に女性同士の恋愛が設定されています。
 女性同士の肉体関係(例えば恍惚とした表情でキスをする女性の姿)を具体的に描写した場面こそありませんが、そういう場面を脳裏に描かせる巧みな描写は随所に見られました。
 妖艶な世界を描いた作品が数多く発表された耽美派時代(ここでは、戦前の代表作「鬼火」や「蔵の中」が書かれた昭和10年頃を耽美派時代と定義しています)の短編として、金田一耕助シリーズしか知らない横溝正史ファンの方に改めて読んで頂きたい一作です。
 と言っても、収録書籍である角川文庫の『誘蛾灯』は永らく絶版状態となっており、手軽には入手できないのですが……。


 「貝子!」
 「ミミ?」
 若い女の、美しいアルトの声が、闇の中を透かすようにひびいてきた。
 「うん、ぼく」
 次ぎの瞬間、貝子の体とミミの体が一つになったらしい。
【後略】
≪角川文庫『誘蛾灯』P94≫

 「堪忍して、ミミ、堪忍して。あたしは誰にもあなたを渡したくなかったの。あなたをいつまでもいつまでも、あたし一人のものにしておきたかったの、あなたは御存じじゃなかったのだわ。どんなにあたしがあなたを愛していたか。……どんなに狂おしい愛情を、あなたに対して注ぎかけていたか。……許してね、あたしを可哀そうだと思って、昔どおりに愛してちょうだいね」
≪角川文庫『誘蛾灯』P97≫

 龍吉は憐れむように少女の眼を見た。それから、静かに、さとすようにいった。
 「ミミはこう言ったのです。ぼくが――つまりミミのことです――ぼくが愛するのは貝子一人だ。ぼくは貝子に殺されたけれど、ちっとも恨みに思わない。いや、かえってうれしいくらいだ。どうかこの薔薇を愛の印として、このことづてとともに貝子に贈ってくれ――と、そう言って、ミミはこの薔薇をぼくに渡したのです」

≪角川文庫『誘蛾灯』P104≫
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