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2017-08

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  うららかな春の日に……

【はじめに】
 卒業シーズンは過ぎた葉桜の季節となってしまいましたが、マミさんと織莉子の卒業をネタにした短編を書いてみました。
 互いに信頼し合う魔法少女達の「絆」を絡めながら、先輩を慕う後輩からの感謝の気持ち、後輩を思いやる先輩の優しさに重点を置いてみましたが、ペース配分を細かく考えなかったせいか後半の展開が駆け足となってしまい、筆足らずな点や整合性の合わない点が出てしまったかも知れず反省しています……。
 キリカの口調ですが、原作を読み返しても話し方の癖(=特徴)が掴めなかったので「ちょっと電波ちゃん」な口調にしてみました。
 卒業を目前に控えたマミさんと後輩4人の話は前々から書いてみたいと思っており、やや時期遅れとなりながらも実現させる事ができてホッとしています。
 本当ならば「魔法少女まどか☆マギカ」の放送終了一周年記念としてアップしたかったのですが、僅か1日の差で間に合いませんでした。
 完成度に不満がないと言えば嘘になりますが、読物として及第点が与えられるレベルにはなっているのではないかと手前味噌ながら思っています……。


1.満開の桜の下で

 暖かい春の日差しが桜並木へ降りそそぎ、満開に咲き誇る桃色の花を明るく照らす。
 レンガで舗装された通学路を歩く見滝原中学校の生徒達は、心地よい春風を全身に浴びながら帰路に向かって歩を進める。
 今年は暖冬だったせいか3月初旬から桜の花が咲き始め、気象庁は早くも3月中旬に開花のピークを迎えるだろうと発表した。
 見滝原中学校の卒業式を1週間後に控えた、ある土曜日の午後。
 人影まばらになった通学路を目指し、校舎を出た四人の少女が楽しそうにおしゃべりしながら歩いていた。
 鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむら、佐倉杏子の四人である。
 まどかを除く三人は過去に些細(ささい)な誤解とスレ違いから対立した事があり、かつては仇敵同士のような間柄だった。
 しかし、最強最悪の魔女である「ワルプルギスの夜」討伐を目的に一致団結し、それが達成された今では姉妹とも言えるような親しい仲となって親睦を深めている。
 解放されたまどかの魔力によって改変された世界では互いを憎み合う事もなく、見滝原市の魔法少女4人は今日も平和な時間を満喫していた。
 杏 子「今日で全教科の補習が終ったし、明日から遊びまくれるな」
 さやか「ショッピング、カラオケ、ゲーセン。一足早い春休みって感じよねぇ」
 ほむら「うかれるのも結構だけれど、もっと勉強に身を入れなさい。わたし達は4月から受験生になるのよ。二人とも、今の成績では巴さんと同じ学校へ入学するのは不可能だわ」
 まどか「よ、容赦ないね。ほむらちゃん」
 杏 子「なんだよ。せっかく補習が終わってハッピーな気分だったのにシラケちまうじゃねえか。4月なんて半月も先だろう」
 さやか「そうよ。受験本番まで半年以上あるんだからさぁ、せめて今だけは楽しく遊びまくろう」
 ほむら「あなた達の幸せ思考、こういう時は羨ましく思えるわ」
 杏 子「悪かったな。万年ハッピー思考で」
 ほむら「忘れているようだから言わせて頂くわ。わたしとまどかは二人の補習に付き合って帰り時間が遅くなったのよ。デキの悪い二人に付き合ってね。その事を忘れないでもらいたいわ。残念なオツムのお二人さん」
 杏 子「残念なオツムで悪かったな。そんなに『二人』って強調しなくてもいいじゃねえか。なあ、さやか
 さやか「く、悔しいけど言い返せないわ……」
 まどか「まあまあ、そんなに落ち込まないで。さやかちゃんも杏子ちゃんもやればデキる子なんだから、春からはみんなで受験勉強を頑張ろう。ほむらちゃんも少し言い過ぎだよ。一緒に残って補習を受けたいって言い出したのはわたしなんだし、ほむらちゃんだって付き合ってくれるって言ったでしょう。二人を責めちゃダメ。ねッ」
 ほむら(そうだった。すっかり忘れていたけれど、さやかや杏子に付き合って補習を受けると言い出したのはまどかだったんだわ。グチを言うべきではなかった……。まどかと一緒に春休みが迎えられる事で浮かれていたせいかしら。わたしも知らず知らずのうちに気が弛(ゆる)んでいたみたいね)
 コホン、と小さく咳払いをしてから、ほむらまどかの視線を意識しながら杏子とさやかに詫びた。
 ほむら「まどかの言う通りね。自発的に補習の受講を申し出たのはわたし自身、あなた達を責めるのはスジ違いだったわ。ごめんなさい」
 杏 子「いや、あんた達に迷惑をかけたのは事実だ。それが好意であってもね。謝るのはこっちだよ。悪かった」
 さやか「ごめんね。ほむらまどか
 まどか「これで仲直りできたね。よかった~」
 まどかは喜色満面の笑みで言った。
 杏 子「それじゃ、これで辛気くさい話は終わりしようぜ。それで明日だけどさぁ」
 足を止めた杏子は首を少し捻り、後方を歩くさやかに向かって挑戦的な言い方で話しかけた。
 杏 子「マミも誘って、みんなでカラオケ勝負をしないか」
 まどか「カラオケ勝負?」
 杏 子「一番高い得点を出したヤツが一番低い得点を出したヤツに昼メシをおごってもらう。どうだ、やらないか?」
 さやか「ほほお、昼食を賭けたカラオケ勝負ですか。いいわよ、受けて立とうじゃない。見滝原中学校の歌姫と言われた美樹さやかちゃんの美声に酔いしれるといいわ」
 ほむら「そんな話は初耳ね。声を枯らした人魚姫かと思っていたわ」
 さやか「なんですってぇ」
 杏 子「あっはははは。声を枯らした人魚姫か、こりゃ傑作だ。あ~っはははは」
 さやか「杏子まで人をバカにしてぇ」
 まどか「うぇひひ~。今のジョーク、面白かったよ。ほむらちゃん」
 さやか「なによ、まどかまでほむらの肩を持つわけ」
 ほむら「ありがとう、まどか。あなたに喜んでもらえて嬉しいわ」
 杏 子「まどかは別に喜んでるわけじゃないと思うが……」
 かしましい四人娘のおしゃべりは際限なく続き、その後姿を見送るかのように桜の枝は小さく美しい花びらを散らした。


2.疑問の美国織莉子

 ワイワイ騒ぎながら通学路を抜けて大通りへ出た時、右手前方から四人を呼びとめる声が聞こえた。
 キリカ「やあ、見滝原の魔法少女。久しぶりだね。有限に無限な愛を満喫しているかい」
 杏 子「この妙なセリフは……やっぱりキリカだったか」
 ほむら「どうやら春の陽気でオツムの配線がショートしてしまったようね」
 さやか「キリカにも容赦ないわね、ほむら
 まどか「そ、そうだね」
 杏 子「こいつの場合、オツムの配線は万年ショート状態だろう」
 キリカ「失礼な事を言ってくれるね。少なくともキミよりは頭がいいつもりだよ、佐倉杏子嬢。どうせ居残りをしていたんだろう。後ろの御三方は彼女に付き合っていたのかな。残念なオツムの友人を持つと苦労するねぇ」
 杏 子「な、なんだと。キリカのくせに偉そうな事を言いやがって」
 ほむら「しかし、彼女の言う通りでしょう」
 杏 子「うぐッ。ほむらまでキリカの味方をしやがるのか」
 ほむら「わたしは冷静な人の味方で、無駄な争いをするバカの敵。事実を口にしたまでよ」
 杏 子「さやかだって居残り組だったじゃねえか。その事はツッコまないのかよ」
 ほむら「ええ」
 杏 子「そりゃなしだろう。あたしだけ悪者かよ」
 ほむら「誰も悪者なんて言っていないわ」
 さやか「あんたにはヒール役がお似合いよ」
 キリカ「漫才の邪魔をしてすまないが……」
 杏 子「誰も漫才なんかしてねえよ」
 キリカ「そうか。それならば結構。さて、見滝原の諸君。キミ達に尋ねたい事があるのだが」
 杏 子「なんだよ」
 キリカ「織莉子の行方を知らないか」
 杏 子「織莉子の行方? さあ、知らないなぁ。ほむらは?」
 ほむら「知らないわ」
 キリカ「キミ達はどうかな。鹿目まどか嬢、美樹さやか嬢」
 さやか「さあ、わたしも知らないわ」
 まどか「わたしもわからないなぁ。キリカちゃんが織莉子さんを探すなんて珍しいけど、どうかしたの?」
 キリカ「まあ、聞いてくれ。ここ最近、愛しい織莉子の様子が変なんだ。あたしに内緒で不審な行動をとっているんだよ」
 杏 子「不審な行動?」
 キリカ「ああ。先週の日曜日の事だ。織莉子は「ちょっと出掛けてくるわ」と言って行き先も言わずに家を出て行った。もちろん、私は即座に同行を申し出たが拒否されてしまった。そして月曜日から金曜日までの五日間だが、織莉子は生徒会の会合を理由にあたしとの下校を拒否し続けているのだ。これは由々しき時間だと思わないかい」
 杏 子「織莉子は生徒会長だろう。いろいろ引き継ぎもあるじゃねえのか」
 キリカ「卒業式を間近にして引き継ぎを行うのは不自然だ。今日だって午後から会合があると言って一緒に帰ろうとしなかった。生徒会本部まで一緒に行くと言ったのだが、その前に職員室で学年主任と話があると言われ、先に帰るよう指示される始末さ」
 杏 子「生徒会の集まりに学年主任との話。さすが優等生は忙しくていらっしゃる」
 キリカ「それだけでない。昇降口へ向かう廊下で顔見知りの生徒会役員と会ったから尋ねてみたのだが、今年度の生徒会活動は1月をもって終了しているそうなんだ。生徒会長の役目を終えていながら、嘘をついてまで下校時間をズラす織莉子の意図がわからない。いくら考えても答えが見つからない」
 ほむら「そんなに不審な点が多いのならば、美国さんが下校するまで昇降口で待っていればよかったのではないかしら」
 さやか「そうね。今までだってさぁ、織莉子さんが下校するまで待っていればよかったのよ」
 キリカ「そうか! その方法があったじゃないか。私とした事が迂闊だった」
 杏 子「バカだなぁ。せっかくのチャンスを自分でムダにしてやがる。今日なんか絶好の機会だったじゃないか。あんたのオツムだって残念なレベルだな」
 キリカ「まあ、過ぎた事は仕方がない。この作戦は週明けの月曜日から決行するとしよう。しかし、日曜日の不思議な外出は如何なる理由によるものだろうか。まさか日曜日にまで学校へ行くわけはないし……。う~ん、わからない。わからないよ~」
 まどか「確かに不思議な話だね。織莉子さんは何を隠しているんだろう」
 杏 子「織莉子にゾッコンなキリカにも予測できない行動かぁ」
 ほむら「明日も外出するようならば美国さんを尾行してみてはどう。考えてもわからなければ行動あるのみよ」
 杏 子「そうだな。ストーキングして織莉子の行方を確かめてみろよ」
 キリカ「私としては織莉子の行く所ならば地獄の果てでも同行したい。しか~し」
 そう言いながら、キリカは人差し指を杏子の鼻先に突きつけた。
 キリカ「残念ながら織莉子の行く先は突き止められなかった。才色兼備にして完全無欠な女神は従順なる下僕がついてくる事を望まないのか、先週の日曜日に尾行を試みたが途中でまかれてしまい失敗に終わっているのだよ」
 杏 子「キリカのストーキング技術が通用しないのか。さすがは美国織莉子、一筋縄じゃいかないなぁ」
 キリカ「わが妹分のゆまにも協力を求めたいのだが彼女は小学生だ。いい知恵を授けてくれるとは思えない。そこで……」
 その先は言わずもがな、とばかりにキリカは黒曜石のような瞳で見滝原魔法少女の4人を見廻す。
 杏 子「あたし達に協力しろって言うのか?」
 キリカ「この通りだ。呉キリカが頭を下げて頼む。キミには理解できないであろう言葉を使えば、七重のひざを八重に折ってお願いする」
 杏 子「お願いしてんのか、バカにしてんのか、どっちなんだよ」
 キリカ「おっと、これは失言だった。気にさわったのならば謝ろう。申し訳ない。私はキミを含めた4人の優秀な魔法少女にお願い……ん?」
 杏 子「今度はなんだよ」
 キリカ「わが恩人である巴マミ嬢の姿が見えないようだが、彼女とは一緒じゃないのかい」


3.喫茶店にて(1)

 カラ~ン。
 喫茶店『葉の影』のドアベルが軽やかな金属音を響かせながら、美しい来客の到来を告げた。
 近郷近在の紅茶愛好家から注目されている『葉の影』は風見野町の隠れた名店として知られる喫茶店である。
 店内に足を踏み入れたスタイル抜群な美少女の名前は美国織莉子。皮肉にもキリカの探している相手は地元にいたのであった。
 マ ミ「織莉子。こっちよ~」
 窓際の席に座っていたマミは読んでいた文庫本を閉じ、小さく手を挙げながら織莉子の名前を呼んだ。その声に笑顔で応じた織莉子は足早に窓際席へと向かう。
 織莉子「ごめんなさいね、遅れてしまって。ずいぶんと待ったでしょう」
 マ ミ「大丈夫よ。ちょうど読みかけの本が面白いところだったから気にしないで」
 かつての敵であり、現在では親友。マミと織莉子の出会いも最初は敵同士としてだった。
 今でこそ笑顔で話し合える間柄だが、こうなるまでには幾度となく血で血を洗う『同業者』同士の激しい戦いが繰り広げられたのだ。
 しかし、ガラス窓から差し込む陽の光に照らされた二人から、過ぎ去りし日々の因縁は微塵も感じられない。
 織莉子「キリカとの下校をさけるようにしてから今日で6日目でしょう。さすがに不審感を覚えたのか生徒会本部まで付き合うと言い出したのよ」
 マ ミ「呉さんの気持ち、わからなくもないわ」
 織莉子「キリカを強引に帰宅させた後、運悪く学年主任に見つかって雑用を言いつけられ……って、これでは遅刻の言い訳ね」
 そう言うと織莉子はテーブルの上に置かれた伝票を取り上げ、ニッコリと微笑みながら言った。
 織莉子「遅れたお詫びよ。紅茶代はわたしが払わせてもうらうわ」
 マ ミ「いいわよ。そんなに気を使わなくても」
 織莉子「いいえ、わたしに払わせて頂戴」
 マミの返事も聞き入れず、織莉子は伝票を手にレジへ向かって歩く。
 そんな織莉子の後姿を苦笑しながら見つめ、マミは文庫本をカバンの中にしまって彼女の後(あと)を追った。
 会計を済ませて店の外へ出た二人の頬を生温かい春風が撫ぜる。
 マ ミ「いよいよ明日が本番ね」
 織莉子「ええ」
 マ ミ「たった数日の間にあそこまで腕を上げるとは驚いたわ」
 織莉子「あなたの教え方が上手いからよ」
 マ ミ「今日が最後の練習だから、わたしはアドバイスも手伝いもしないわ。あなた一人で全てをこなしてみてね」
 織莉子「最終テストというわけね。いいわ。巴マミ先生の厳しい審査、見事にパスしてみせましょう」
 マ ミ「期待しているわよ。織莉子」


4.喫茶店にて(2)

 マミと織莉子が『葉の影』で合流したのと同時刻。見滝原魔法少女の4人と呉キリカは見滝原市内の喫茶店『Kuroe』に腰を落ち着けていた。
 キリカ「なるほど。キミの話は非常に深い」
 杏 子「だろう。な~んか隠してるっぽいんだよなぁ」
 さやか「まさかマミさんの帰りも遅かったなんて……」
 ほむら「進学先も決まった事だし、遅くまで学校に残る理由はない筈よね」
 まどか「学校が終わるのは4時頃でしょう。帰宅するのが6時過ぎなら、それまでの2時間近くはどこにいるんだろう」
 キリカ「もしかしたら、織莉子と恩人は一緒に行動しているのではないだろうか」
 ほむら「その可能性は高いわね」
 キリカ「恩人と愛しの織莉子、二人は何をしているんだ。気になる。気になって仕方がない。暁美ほむら嬢、この謎をキミならば如何に解き明かす。頭脳明晰なキミの意見を聞かせてもらいたい」
 ほむら「わたしに言える事は何もないわ」
 キリカ「キミほどの才女にもわからないのか」
 ほむら「あまりにも手掛かりが少なすぎるわね。巴さんと美国さんの不可解な行動が時を同じくしている。美国さんはキリカに嘘をついてまで下校時間をずらしている。これだけの情報で答えを導き出す事は不可能よ」
 今週になってからマミの帰宅時間が普段より遅いという杏子の証言は、五人に新たな謎を突き付ける結果となった。
 織莉子の不思議な行動から広がっていく謎の波紋。その答えを求めるも闇の彼方に潜む答えの片鱗さえ掴めない。
 杏 子「あ~、面倒くせぇ。やめだ、やめだ。やめようぜ」
 推理の行き詰まりから一座は沈黙に支配されたが、しばらくして、カップに残った僅かなカフェモカを飲み干した杏子が口を開いた。
 さやか「どうしたのよ。何をやめるって言うの?」
 杏 子「あれこれ考えたってさぁ、あたし達のオツムじゃ答えなんて見つかりっこないよ」
 キリカ「キミと一緒にしないでほしいな。少なくとも……」
 杏 子「あたしよりはマシだって言いたいんだろう。わかってるよ」
 キリカ「そうか。わかっていればいい」
 杏 子「織莉子やマミの帰りが遅くたっていいじゃねえか。悪い事を企んでるわけじゃないだろうし、来月からの高校生活について二人で話し合いたいんだろうよ」
 さやか「そうねぇ。その可能性は高いかも知れないわ」
 ほむら「杏子にしては珍しく冴えた意見ね」
 まどか「さっすが杏子ちゃん。マミさんの一番弟子だけあるね。てぃひひ」
 杏 子「いやいや、一番弟子って事は関係ないだろう」
 キリカ「同じ屋根の下で暮らす師匠と弟子の間に芽生えた禁断の愛かぁ。私も織莉子の弟子になればよかったなぁ」
 杏 子「どんな妄想してんだよ。お前だって織莉子と同棲してんだからいいじゃねぇか」
 キリカ「だが師弟の間柄ではない。義理の姉妹ではあるがね」
 杏 子「だったら師弟よりも固い絆で結ばれている筈だろう。あたしを羨(うらや)むんじゃねえよ」
 キリカ「キミは本当の愛ってものを知っているかい? 愛は全てだ。愛は無限に有限だ。愛を単位で表すようなヤツは愛の本質を知らないッ」
 杏 子「愛の本質? わけがわかんねえよ」
 ほむら「漫才の邪魔をして申し訳ないけれど」
 杏 子「漫才なんかしてねえ……って、このセリフはさっきも言ったなぁ」
 キリカ「同じセリフしか言えないだなんて、キミはボキャブラリが乏しいようだね」
 ほむら「これで話し合いが終わりなら、わたし達は帰らせてもらうわ。これでも忙しい身なのよ。さあ、行きましょう。まどか
 まどか「う、うん」
 さやか「ちょい待ち。二人してどこへ行くのよ」
 ほむら「どこでもいいでしょう。あなたには関係のない事だわ」
 さやか「ムカッ。その言い方、なんか気に入らないわね」
 ほむら「どんな言い方なら気に入るのかしら」
 さやか「なんですって~」
 まどか「ほむらちゃん、そんな言い方をしちゃ駄目だよ」
 ほむら「ま、まどか
 まどか「せっかくだし、明日のケーキ作りはみんなでやらない?」
 ほむら「……」
 まどか「ねッ、いいでしょう。ほむらちゃ~ん」
 ほむら(うッ。まどかの「お願いスマイル」。これを見せられたら不本意だけれど頷くしかないわね)
 ほむらにとってまどかの笑顔は一撃必殺とも言える威力を発揮する。今回も「お願いスマイル」の威力により、まどかの訴えは聞き入れられた。
 ほむら「まどかのお願いならば仕方ないわね。いいわ、好きなようになさい」
 さやか「明日のケーキ? なんの事よ」
 まどか「うん。実はねぇ……。……。……」


5.Let's Cooking

 織莉子「それじゃ行ってくるわね」
 キリカ「気をつけてね」
 ゆ ま「行ってらっしゃ~い」
 織莉子「行ってきます。お昼頃には帰る予定だから、それまで出掛けないで待っていてね」
 キリカ「留守は任された」
 ゆ ま「バイバ~イ」
 バタン。
 玄関のドアが閉まり、織莉子の姿が見えなくなった。
 キリカ「さあ、これからは時間との勝負だ。ゆま。見滝原の4人へ電話連絡を頼むよ。私はキッチンで必要な道具と材料を揃えておく」
 ゆ ま「オッケー」
 キリカ「織莉子の喜ぶ顔が目に浮かぶなぁ」
 30分後。
 美国家のキッチンには慌ただしく動き回る6人の少女がいた。
 ほむら「さやか、少し火力が強いわ。もう少し火を弱め、弱火で混ぜながら溶かして頂戴。火力が強いとゼラチンの固まる力が弱くなるから気を付けて」
 さやか「了解です。ほむら料理長」
 キリカ「暁美ほむら嬢。メレンゲの様子を見てくれないか」
 ほむら「いいわよ。……。……。上出来ね。次は生クリームの泡だてを頼むわ」
 杏 子「ほむら~。クリームチーズの練り具合、チェックしてくれ」
 ほむら「ちょっと待って。すぐに行くから」
 ゆ ま「ねえ、まどかお姉ちゃん。バターと粉末コーヒーが混ざったよ」
 まどか「どれどれ。うん、ちゃんと混ざってる。ゆまちゃん、お料理が上手なんだね」
 ゆ ま「ありがとう」
 Qべえ「暁美ほむら、紙箱の組み立てが終わったよ」
 ほむら「御苦労様。次は使い終わった調理器具の洗い物を頼むわ」
 Qべえ「わかった」
 キリカ「あのインキュベーターに雑用をさせるなんて、さすがは暁美ほむら嬢。私にはマネのできない芸当だよ」
 まどか「今はQBだって大切なお友達なんだよ。だから協力してくるの。ねッ、Qべえ」
 Qべえ「ぼく自身にも不思議でならないんだが、まどかによって世界が改変された事で感情というものが備わったらしい。だから友達と呼ばれても悪い気がしないんだ。正直に言えば嬉しいね」
 キリカ「インキュベーターの口から「嬉しい」なんて言葉が聞けるとは思わなかった。鹿目まどか嬢、やはりキミは偉人だよ。全ての魔法少女を絶望から救い、陰険で強欲で残忍な詐欺師のインキュベーターに感情を与えて改心させてしまうのだから」
 杏 子「珍しく意見が合うな。あたしも同感だ」
 さやか「まどかのおかげで今の世界があるんだもんね。感謝してるわ、まどか
 ほむら「ほらほら、手が止まっているわよ。制限時間がある事を忘れたのかしら。口よりも手を動かしなさい。(小声で)まどか、わたしも貴女(あなた)に感謝しているわ」
 杏 子「はいはい、了解です」
 さやか「わかりましたよ、料理長様」
 キリカ「さ~て、織莉子の為にも頑張るかぁ」
 ゆ ま「みんな楽しそうだね、まどかお姉ちゃん」
 まどか「そうだね、ゆまちゅん」


6.マミからの電話

 ♪ いつか君が 瞳に灯す 愛の光が 時を超えて
   滅び急ぐ 世界の夢を 確かに一つ 壊すだろう ♪

 さやか「ん? 誰の携帯が鳴ってるの」
 杏 子「あたしのだ」
 キリカ「キミの着うたは『magia』か。すばらしい選曲センスだね。この曲は織莉子も大好きなんだ」
 杏 子「そんなムダ知識はいらねえよ」
 そう言いながら、杏子はポーチの中から携帯電話を取り出した。もちろん、この携帯電話はマミに買ってもらった物だ。
 楽しいケーキ作りも終わり、あとはレアチーズケーキが固まるのを待つだけであった。
 アイスティーを飲みながらケーキの完成を待っている時、杏子の携帯電話が着信を告げたのである。
 液晶ディスプレイには発信者として巴マミの名前が表示されていた。
 杏 子「マミからだ」
 そう言いながら、杏子は携帯電話の通話ボタンを押す。
 ピッ。
 杏 子「もしもし」
 マ ミ『もしもし、杏子? わたしよ、マミよ』
 杏 子「マミか。どうしたんだ、電話なんかしてきて。用事は澄んだのか」
 マ ミ『ええ。たった今ね』
 杏 子「そうか」
 マ ミ『ねえ、杏子。今日は何か予定がある?』
 杏 子「今日か? いいや。特に予定はないよ」
 マ ミ『それなら織莉子の自宅へ来てくれないかしら』
 杏 子「はあ? 織莉子の家に来いだって?」
 マ ミ『ええ』
 杏 子「どうしたんだよ。織莉子の家で何かあるのか」
 マ ミ『まあね』
 杏 子「その声。何か企んでる声だな」
 マ ミ『し、失礼ね。何も企んでなんかいないわ』
 杏 子「あたしが嫌だって言ったらどうする」
 マ ミ『そう言わない事を期待しているわ』
 杏 子「……」
 マ ミ『……』
 杏 子「わかったよ。行くよ。行けばいいんだろう」
 マ ミ『そう言ってくれると思っていたわ。うふふふふ』
 杏 子「その笑い。やっぱり何か企んでるな」
 マ ミ『さあ、どうかしら。御想像におまかせするわ』
 杏 子「ところでさぁ、織莉子も一緒にいるのか。実はキリカが織莉子を探してるみたいなんだ」
 マ ミ『……』
 杏 子「おい、マミ。聞こえてるか? お~い」
 マ ミ『……』
 杏 子「マミ。マミ~。返事しろよ。聞こえねえのか」
 マ ミ『ごめんなさい。電波の調子が悪かったみたい。ええと、織莉子の事だったわね』
 杏 子「ああ」
 マ ミ『わたしと一緒にいるわ。駅前の喫茶店で会ったのよ』
 杏 子「そうか」(喫茶店で会ったなんて嘘だろう。声が震えてるよ。ホントに嘘が下手なヤツだなぁ)
 マ ミ『これから買物をして一緒に帰るところなの。あと30分くらいで織莉子の御自宅へ着くわ。なるべく早く来てね』
 杏 子「はいはい、わかりましたよ」(もう織莉子の家にいるんだけどね)
 マ ミ『それじゃ、またあとでね』
 杏 子「織莉子の家で会おうぜ」


7.マミからのメール

 杏 子「聞いての通りだ。やっぱり織莉子とマミはつるんでやがった。30分くらいで帰るってさ」
 さやか「30分かぁ。ギリギリで間に合いそうね」
 ほむら「デコレーション用の生クリームを早めに作り始めれば大丈夫よ」
 まどか「マミさんと織莉子さん、喜んでくれるかなぁ」
 キリカ「心配無用だよ、鹿目まどか嬢。愛情を込めて作ったんだ。きっと喜んでくれるに違いない」
 こんな事を話していると、今度は3つの携帯電話が同時に鳴った。
 まどか「あッ、わたしの携帯だ」
 さやか「あたしのも鳴ってる」
 ほむら「わたしの携帯電話もよ」
 杏 子「違う着メロが同時に聞こえるのって、なんか不気味だなぁ」
 キリカ「同じ場所に居合わせた人の携帯電話が同時に着信を告げる。これは天文学的な確立の偶然だね」
 ゆ ま「天文学的な確立って?」
 ほむら「とても低い確率という意味よ」
 ゆ ま「ふ~ん」
 さやか「おッ、マミさんからのメールだ」
 まどか「わたしも」
 ほむら「こちらもよ」
 杏 子「すげぇ、3人に同時送信かよ。どんだけメールを打つのが早いんだ」
 さやか「あんた、それマジで言ってるわけ」
 ほむら「あなたはどこまで愚かなの。同じメールアドレスへ同時送信するCC機能を使ったのよ」
 杏 子「へえ、そんな機能があるのか。知らなかったよ。どうやれば使えるんだ」
 ほむら「携帯電話の取扱説明書を読む事ね。使い方が書いてあるわ」
 杏 子「あのブ厚い本を読めって言うのかよ。めんどくせぇ。あとでマミに聞けばいいや」
 さやか「まったく、横着なんだから」
 まどか「うぇひひ~。杏子ちゃんらしいね」
 杏 子「まどか。その笑い方、ちょっと怖いよ」
 まどか「え? そ、そうかなぁ」
 ほむら「佐倉杏子、今の発言は聞き捨てならないわね。まどかの微笑みに難癖をつけるのならば、わたしが相手になるわよ」
 杏子を睨みつけながら、ほむらは魔法少女に変身して左腕の盾から小型の拳銃を取り出した。
 杏 子「うわ~。バ、バカ。物騒な物を出すな。間違って発射したらシャレになんねえぞ」
 Qべえ「心配いらないよ、杏子。ソウルジェムが無事なら心臓を撃たれても問題はないさ」
 杏 子「そういう問題じゃないだろう」
 まどか「ほ、ほむらちゃん。お、落ち着いて。喧嘩は駄目だよ」
 さやか「喧嘩? まどかには喧嘩に見えるの? あれは正真正銘の殺し合いよ」
 杏 子「あ~、もう。さやかまで話をややこしくするな」
 ほむら「謝罪か、殺し合いか。好きな方を選びなさい、佐倉杏子」
 まどか「なんか大袈裟な話になってきちゃったなぁ」
 杏 子「わかった、わかったよ。あたしが悪かった。謝るよ。謝るから銃を戻せ。まどか、変な事を言って悪かった。許してくれ」
 まどか「うん」
 まどかは笑顔で頷くと、ほむらに向かって諭すような口調で言った。
 まどか「ほら、ほむらちゃんも落ち着いて。手に持ってる銃をしまおう。杏子ちゃんに悪気はないんだから銃口を向けちゃ駄目だよ」
 ほむら「わかったわ。まどか
 まどかに諭されたほむらは銃を盾の中に戻してから変身を解く。
 ほむら「杏子、口は災いの元よ。これからは不用意な発言を控える事ね。まどかの優しさに感謝なさい」
 キリカ「なかなか見ごたえある小芝居だったよ。やはり見滝原魔法少女のコンビネーションは抜群だ。私達も見習うべきかな」
 杏 子「ほざいてろ。言い返す気力もなくなったよ」
 ゆ ま「ねえ、マミお姉ちゃんからのメールはなんだったの」
 さやか「あッ、そうだ。すっかり忘れてた」
 今の騒動で3人はマミからのメール着信を忘れていたらしい。ゆまに指摘され、慌ててメール本文に目を通した。
 3人へ送信されたメールには『暁美さん、鹿目さん、美樹さん。突然のメール、ごめんなさいね。急な事で申し訳ないけれど、今日の予定が空いているなら美国織莉子の自宅へ来てくれないかしら。大切な話があるの。杏子は来てくれると言っていたわ。詳しい事は会ってからお話するわね。取り急ぎ。巴マミ 追伸:来られない場合は返信を下さい。来てくれるのなら返信はいりません』と書かれていた。


8.チョコモンブラン

 織莉子「ただいま。キリカ、ゆま。帰ったわよ」
 マ ミ「お邪魔します」
 中学生とは思えないスタイルの美少女が二人、美国家の大きな玄関に佇んで帰宅と来訪を告げた。
 この声を聞いたキリカとゆまが奥の部屋から現れる。
 キリカ「お帰り、愛しの織莉子。ようこそ、私の恩人」
 ゆ ま「マミお姉ちゃん、いらっしゃい」
 マ ミ「お久しぶり。呉さん、ゆまちゃん」
 織莉子「お留守番、御苦労様。今日は二人にお土産があるのよ」
 ゆ ま「うわ~い。お土産だぁ。嬉しいな~」
 キリカ「その白い箱がお土産なのかい」
 織莉子「ええ、そうよ」
 織莉子とマミは白い四角形の紙箱を持っていた。この中身がお土産らしい。
 キリカ「中身はなんだい?」
 織莉子「ふふふふ。まだ秘密。あとで教えてあげるわ。とりあえず上がらせて頂戴。さあ、マミも遠慮しないで」
 マ ミ「ええ、ありがとう」
 靴を脱いでスリッパに履き替え、3人の住人と1人の来客は一階奥にあるリビングへと向かう。
 ガチャッ。
 リビングのドアを開けると、そこにはマミの見知った面子が揃っていた。
 まどか「こんにちは。マミさん」
 さやか「ちわ~ッス」
 ほむら「こんにちは。巴さん」
 杏 子「よう。言われた通り、来てやったぜ」
 マ ミ「あら、もう来ていたの。ずいぶんと早いわね。急がせてしまったかしら」
 まどか「いえ、そんな事ありません」
 さやか「普通に歩いてきましたよ」
 ほむら「それぞれの自宅から風見野の美国邸までは徒歩10分から15分。それほど急いだわけでもありません」
 マ ミ「そうだったの。急に呼び出してしまって、ごめんなさいね」
 まどか「いいんですよ。どうせ今日はヒマでしたから」
 さやか「そうそう。一緒に過ごすような恋人だっていないし」
 杏 子「さやかが言うとシャレにならないんだけど……」
 さやか「それよりも巴さん、大切な話とはなんですか」
 マ ミ「うふふふふ。織莉子、あれを披露する時よ」
 織莉子「ふふふふ。わかったわ」
 杏 子「なんだよ、気味悪いなぁ。二人して何を企んでるんだ」
 キリカ「あの箱の中には何が入っているのだろうか」
 マ ミ「鹿目さん、美樹さん、暁美さん、杏子」
 織莉子「キリカ、ゆま
 二 人「わたし達からのプレゼントよ」
 マミと織莉子はリビングのテーブルに置いた白い紙箱を器用に解体し、そこに入っている中身を取り出した。
 中に入っていたのは6つのカップケーキだった。それを年下の6人は唖然とした表情で見ている。
 マ ミ「どうかしら。わたしと織莉子で作ったチョコモンブランよ」
 織莉子「こっちの少し形が崩れているのはわたしが作り、売り物みたいに綺麗なのはマミが作ったのよ」
 マ ミ「一緒に魔女や魔獣を相手に戦ってくれる御礼よ。杏子、あなたは隣町から見滝原市に来て治安維持に協力してくれたわ。暁美さんには【お菓子の魔女】との戦いを始め、何度も戦闘中にフォローしてもらったわね。鹿目さん、美樹さん、二人が魔法少女になってくれて嬉しかった。一緒に戦ってくれると言ってくれた時は心から感謝したわ」
 杏 子「マミ」
 ほむら「巴さん」
 さやか「マミさん」
 まどか「マミさん」
 織莉子「キリカ、いつも家事や料理を手伝ってくれて感謝しているわ。あなたはわたしの誇りよ。ゆま、魔獣との戦いで傷ついた体を癒してくれて、どうもありがとう。あなたは小さくても立派な魔法少女よ」
 キリカ「織莉子」
 ゆ ま「織莉子……お、お姉……ちゃん」
 織莉子「中学校卒業は一つの節目でしかないけど、せっかくだから日頃の感謝を形として表してみたの」
 マ ミ「わたしと織莉子からのプレゼントよ、気に入って頂けるかしら」


9.先輩から後輩へ

 キリカ「織莉子、その指は……」
 織莉子「ああ、このヤケドね。オーブンから取り出すときに失敗しちゃったのよ。練習中は一度もヤケドなんてしなかったのに、やっぱり本番には弱いわ」
 キリカ「そんなにまでしてカップケーキを作ってくれたなんて。嬉しい。本当に嬉しいよ」
 織莉子の傷ついた指を見つめ、キリカは目を潤ませた。
 キリカ「ゆま、織莉子のヤケドを治癒できるかい?」
 ゆ ま「うん。まかせて」
 そう言うとゆまは魔法少女に変身し、小さな両手で織莉子のヤケドした指に触れる。
 ポワッ。
 患部を光の輪が包み、次の瞬間には織莉子のヤケドが治っていた。
 ゆ ま「もう大丈夫だよ、織莉子」
 織莉子「どうもありがとう、ゆま
 キリカ「愛しの織莉子。一つ質問させてくれ。ここ数日の不審な行動は恩人に習ってスイーツ作りの練習をしていたからなのかい」
 織莉子「そうよ。キリカとゆまに手作りのスイーツを食べてもらいかったの。それでマミに指導をお願いしたのよ」
 杏 子「あんたがマミに指導を頼むなんて珍しいな。なんでもこなせるスーパーセレブなのにさぁ」
 織莉子「お菓子作りは子供の頃から苦手だったのよ。それで……」
 杏 子「マミの出番ってわけか」
 織莉子「本当はもっと時間に余裕を持つべきだったけど、いろいろと事情があってギリギリになってしまったわ。もう少し時間があればと残念に思っているの」
 マ ミ「織莉子の上達には驚かされたわ。たった数日でカップケーキが作れるようになってしまったのだから」
 織莉子「あなたの指導が上手かったからよ。感謝しているわ、マミ」
 さやか「さっすがマミさん。織莉子さんの師匠でもあったなんて驚いたわ」
 マ ミ「美樹さん、鹿目さん、暁美さん、杏子。感謝の気持ちをこめたプレゼント、貰ってくれるかしら」
 さやか「もちろんですよ」
 まどか「どうもありがとうございます。マミさん」
 ほむら「御厚意、ありがたく頂戴します」
 杏 子「食べ物と聞いて、あたしが断るわけないだろう」
 マ ミ「よかったわ。ふつつかな先輩だけれど、これからもよろしくお願いするわね」
 織莉子「キリカ、ゆま。あなた達も貰ってくれるかしら」
 キリカ「もちろんだよ。私が織莉子の申し出を断る筈ないじゃないか」
 ゆ ま「どうもありがとう、織莉子お姉ちゃん。ゆま、すっごく嬉しい」
 マ ミ「よかったわね、織莉子。みんなに喜んでもらえて。頑張ったかいがあったじゃない」
 織莉子「ええ。とても嬉しいわ。マミ、本当にありがとう。あなたにも心から感謝しているわ」
 マ ミ「困った時はお互い様よ。わたしの方こそ感謝しているわ。鹿目さん達に日頃の御礼を言う機会ができたのだから」


10.レアチーズケーキ

 さやか「マミさん、織莉子さん」
 マ ミ「どうしたの、美樹さん」
 さやか「わたし達からもお二人にプレゼントがあるんです。後輩からのプレゼント、受け取って貰えますか」
 杏 子「考える事は同じみたいだな。あたし達もマミと織莉子にプレゼントを用意してたんだよ」
 マ ミ「プレゼント? 何かしら」
 キリカ「これを見てくれ。私達の愛と努力が詰まったプレゼントだ」
 いつの間に席を立ったのか、キッチンの方から紙箱を持ったキリカが現れた。
 キリカ「恩人、織莉子。その箱を開けて中を見てほしい」
 織莉子「わかったわ。マミ、開けてみましょう」
 マ ミ「ええ」
 マミと織莉子は二人で協力しながら四角い紙の箱を分解し始めた。そんな二人の姿を6人は黙って見つめる。
 解体された箱の中には紙皿に乗った小さいホールケーキが納められていた。
 織莉子「あら。これはケーキじゃない」
 マ ミ「香りからするとレアチーズケーキかしら」
 さやか「御名答。さすがは見滝原のパティシエ。正解で~す」
 杏 子「お菓子作りの素人揃いだけどさ、料理の本を見ながら6人で作ったんだ」
 さやか「そうなんです。まどかほむらが中心になって連携プレーで大作に挑戦してみました」
 ほむら「本当は巴さんと美国さんの分を一つずつ作りたかったのですが……」
 まどか「慣れない作業だったので一つしか作れなかったんです」
 キリカ「小さくて不格好だけど味には自信がある。二人への愛情を込めながら作ったのだから」
 杏 子「そういう事。おい、Qべえ」
 Qべえ「了解だ」
 杏子の一声に反応したQべえはソファーを飛び降りてキッチンへ向かい、ナイフとサーバー、フォークと小皿を持って戻ってきた。
 杏 子「これが後輩から先輩へのプレゼントだよ」
 キリカ「是非とも受け取って貰いたい。おんじ……いや、巴マミ嬢。そして織莉子……ね、ね、姉さん」


11.後輩から先輩へ

 キリカ「織莉子、キミには心から感謝している。親に捨てられた私を本当の妹みたいに可愛がり、御両親に相談して家族の一員にしてくれた。改めて言うが、私の身も心も全て織莉子に捧げるよ」
 ゆ ま「織莉子、今まで本当にありがとう。パパもママもいなくなっちゃったゆまの面倒を見てくれて。優しい織莉子、だ~い好き」
 織莉子「あ、あなた達……」
 まどか「マミさん、いつもお疲れ様です。わたし達が死なずに魔獣との戦いを生き延びられるのはマミさんの的確な指示があるからです。マミさんには心から感謝しています」
 さやか「わたし、マミさんを尊敬してます。魔獣退治で疲れていてもネをあげず、学校の成績もトップクラス。こんな素敵な先輩と出会えて本当に嬉しかったです」
 ほむら「巴さん、あなたには感謝してもしきれない恩があります。わたしが魔法少女になったばかりの頃、戦闘の基礎から魔力の活用方法まで全ての御指導を受けました。もちろん、別の時間軸での出来事ですが、あなたの指導がなければ今のわたしはありません」
 杏 子「マミ……さん、あたしなんかの面倒をみてくれて、どうもありがとう。戦闘指導をしてくれたうえ、家族を失ってヤケになったあたしを優しく迎えてくれたよね。あんたこそ魔法少女のカガミだよ」
 マ ミ「み、みんな……」
 織莉子「お互い、素晴らしい友人と家族に恵まれたわね」
 マ ミ「ええ。そうね」
 そう言う二人の目尻には涙の粒が輝いていた。
 窓から見える庭の桜は今が満開。枝を揺らす風が桃色の花をヒラヒラと散らし、美しい吹雪となって広大な美国邸の敷地に降り注ぐ。
 うららかな春の日差しが差し込む部屋の中、8人の少女は尊敬する先輩や愛しい後輩の作ったスイーツを口に運んでいた。
 まどかとマミの慈悲でQべえもお相伴にあずかれたが、その代償として片付け一切の雑用を杏子やほむらから命じられた事は言うまでもない。
 巴マミと美国織莉子の卒業を目前に控えた、ある春の日の一挿話である。


【あとがき】
 本作はpixiv先行アップ作品「うららかな春の日に……」(2012年4月19日2時28分付)の再掲載です。
 作品タイトルはNHKの長寿番組「小さな旅」2012年4月15日放送分タイトル「うららかな光の中で」からヒントを得ました。
 和気藹々とした物語に仕上げるまでは試行錯誤の連続でしたが、吉野貝氏のイラスト「Happy Ending」と巫女人氏のイラスト「画面を横にするか顔を横にしてご覧下さい」に助けられ、最後までシリアス調を崩さず話が進められました。吉野貝氏と巫女人氏の御二人には記して感謝致します。
 ケーキ作りのシーンを書くにあたり、WEBサイト「午後のひととき」で紹介されている「ふんわりレアチーズケーキ」のレシピを参照させて頂きました。HP運営者のYUKI氏には、この場を借りて御礼申し上げます。
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