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2017-06

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  Beyond the Love

【はじめに】
 PlayStation Portable専用ソフト「魔法少女まどか☆マギカ ポータブル」の発売を記念し、杏子の視点から描いたSSを書いてみました。
 内容は「さや×杏のカップル物」を狙ったつもりです。以前に書いた「「魔法少女まどか☆マギカ Another」  寒月」が不燃焼気味だった為、そのリベンジ的な意味合いも含めました。
 杏子の心理描写を詳しく描く必要から一人称形式を採用しましたが、思ったよりもスラスラ書けて自分でもビックリしています(一人称形式で物語を書き進めるのは苦手なので……)。
 本作のアイディアですが、桃屋チカ氏の同人誌『心あわせて億千万』(発行:やわらぎ瓶)より得ました。正確には同書の巻末へ収録された短編漫画を元ネタにさせて頂きました。作者の桃屋チカ氏には記して感謝致します。
 この他、さやかと杏子の私服描写については『ピチマギカ』(発行:まどマギが好きでしょうがない隊/発行責任者:たまごまご)を、魔女さやか救出方法のアイディアは『魔法少女まどか☆マギカファンブック ままま☆2』(著者:さなり/発行:Quarter Iceshop)を参考にさせて頂きました。『ピチマギカ』の発行に関わられた方々、『魔法少女まどか☆マギカファンブック ままま☆2』の作者であるさなり氏にも厚く御礼申し上げます。


 ここは……どこだ。ビルの屋上みたいだが、どうしてこんな所へ来たのか全く覚えていない。
 目の前には魔法少女になったさやかの姿があった。しかし、全身からは覇気が感じられず、その表情も暗く沈んでいる。
 さやか『杏子。今まで……ありがとう』
 突然、さやかが口を開いた。
 杏 子『え?』
 さやか『元気でね』
 次の瞬間、あたしに淋しげな笑顔を向けたまま、さやかの全身は光に包まれ消えてしまった。
 杏 子『さやか。おい、さやか
 さやかの名前を呼んでみたが返事はない。
 杏 子『さやかぁ~』

 リリリリリリ~ン。リリリリリリ~ン。
 杏 子「ハッ」
 黒電話の呼び出し音を思わせる目覚ましアラームが部屋中に響き渡り、あたしは掛け布団を跳ねのける勢いで体を起した。 
 杏 子「ゆ、夢……か」
 隣を見ると無邪気なさやかの寝顔があった。大丈夫、さやかはいる。
 ホッとしたあたしは目覚ましのアラームを解除し、跳ねのけた掛け布団を元通りにしてベッドから降りた。
 カーテンを開けると目の前には雲一つない青く晴れた空が広がっている。
 杏 子「なんか不吉な夢だったなぁ。あの時の事を思い出しちまった」
 窓から差し込む朝の日差しに顔を照らされても起きないさやか。その寝顔を見ながら、あたしは改変前の世界での出来事を思い出していた。
 杏 子「無邪気な顔して寝てやがる」
 ベッドに近づいてさやかの寝顔を見ているうち、だんだんと不安が薄らいできた。さすが癒しの祈りで契約した魔法少女。天使のように無垢で女神のように神々しい横顔がよみがえってきた苦い思い出を少しづつ消し去ってくれる。
 杏 子「あ~あ、なんだかホッとしたら眠くなっちまった」
 枕許の目覚まし時計を見ると午前6時。いつもより1時間早い起床だった。
 杏 子「なんだよ、まだ6時じゃねえか。さやかの慌て者、アラームを1時間早くセットしちまったんだな」
 カーテンを開けたまま、あたしは再び布団の中に潜り込んだ。
 杏 子「たまには二度寝するのも悪くないや。おやすみ、さやか

 さやか「杏子。ねえ、杏子ったら」
 杏 子「んん~」
 さやか「いつまで寝てんのよ。早く起きなさい。杏子ってばぁ」
 杏 子「なんだよ、うるせぇな。今朝は6時に起こされて眠いんだ。もう5分、いや3分でいいから寝かせてくれ」
 さやか「バカ。3分も寝てる余裕ないわ。遅刻よ、遅刻!」
 杏 子「いいじゃねえか、昨日は夜中まで魔獣を追いかけてたんだ。街の平和を守ったんだから早乙女先生だって見逃してくれるよ」
 さやか「そんなわけないでしょう。ほら、ゴチャゴチャ言ってないで起きなさいッ」
 バサッ。
 業を煮やして実力行使に出たさやかは有無を言わさず掛け布団をめくった。
 杏 子「何すんのさぁ」
 さやか「時計を見なさいよ、時計を。何時かわかる?」
 杏 子「そうガミガミ言うなよ、さやかあちゃん」
 さやか「……」
 さやかは返事をしなかった。オクタヴィアのような形相であたしを睨みつけている。
 あたしは眠いのを我慢して両目を開き、枕許の目覚まし時計を見た。ボンヤリして針がよく見えないから適当に時間を答えておこう。
 杏 子「7時過ぎか。ちょっと寝過ごしたな」
 さやか「あんたねぇ……。寝ぼけてるんじゃないわよ。ほら、よく見なさい」
 杏 子「はいはい」
 目の前に突きつけられた目覚まし時計を見た。その長針は『2』の辺り、短針は『8』の辺りにある。
 杏 子「まだ8時10分くらいじゃ……。えッ、8時10分!?」
 さやか「そうよ。だから遅刻って言ったの」
 溜息を吐(つ)きながら、さやかは諦めきった表情で言った。
 さやか「それに今日は飼育当番の日だったのよ。まどかほむらも一緒にね」
 杏 子「なるほど。だから6時に目覚ましをかけてあったのか」
 さやか「そうよ。昨日の夜に言ったでしょう、飼育当番だから6時に起きるって」
 杏 子「悪い。すっかり忘れてた」
 さやか「さっき電話を見たら留守録メッセージのランプが点灯してたわ。2件のメッセージが録音されてた」
 杏 子「早乙女先生からか?」
 さやか「ううん、違う。まどかからのメッセージよ。ほむらと二人でウサギ小屋の掃除とエサの取り替えを済ませたから心配しないでって」
 杏 子「ラッキーだったじゃん」
 さやか「何を言ってんのよ。二人に迷惑かけといてラッキーなわけないでしょう。次のメッセージには……」
 杏 子「言うな。たぶん『まだ寝てるの。遅刻しちゃうよ』って録音されてたんだろう」
 さやか「当たり。まどかの心配した通りだった。見事に遅刻よ」
 杏 子「固定電話の留守録にメッセージを吹き込んでおくんだったらさぁ、携帯でモーニングコールをしてくれりゃあよかったのに。まどからしくないな」
 さやか「あたしの携帯、電池切れで電源がおちてたの」
 自己嫌悪に陥った表情でさやかが言った。なるほど、そうだったのか。
 杏 子「そういうわけね。納得」
 さやか「いつもみたく携帯アラームと目覚ましのダブルパンチなら起きられたんだろうけど……」
 杏 子「携帯アラームと目覚ましか。さやかって寝起きが悪いんだな。知らなかったよ」
 さやか「あんたもさぁ、6時に目覚ましのアラームで起きたんなら、あたしの事も起こしてよね。二度寝するなんて信じらんないわ」
 杏 子「そんなムチャを言うなよ」
 さやか「寝る前に『今日は飼育当番で6時に起きなくちゃいけないから、もし寝過ごしてたら起こしてね』って頼んだのに……。杏子の役立たず」
 杏 子「役立たずで悪かったな。あんな大音量のアラームで起きなかったんだ、あたしが声をかけても起きなかっただろうよ」
 さやか「うッ……。と、とにかく」
 図星をさされて焦ったのか、無駄話で貴重な時間を消費した事を思い出したのか、さやかはパジャマを脱ぎながら話題を変えた。
 さやか「朝のホームルームは完璧に遅刻だわ。でも、急いで支度すれば1時間目の授業にはギリギリで間に合う。あんたも急いで着替えなさい」
 あたしはブラジャーとパンティだけになったさやかの全身を見ながら、「このまま今日は休まないか」とノドまで出掛けた言葉を呑みこんだ。
 杏 子「それじゃ遅刻を承知で登校するとしましょうか。着替えてる間にパンを焼くけど……」
 さやか「いらない。朝食を食べる時間の余裕も心の余裕もないわ」
 最後まで話を聞かずに返事するさやか。さすがツーカーの仲だ。
 杏 子「そうか。あたしは腹がへってるから遠慮せずに食べさせてもらうよ」
 さやか「どうぞ御自由に」
 こんな会話をしている間にもさやかは着々と登校準備を進め、今は全身が映る鏡の前に立って制服の胸元で赤いリボンを結んでいるが、下半身は下着一枚のまま。これは絵的に反則だろう。あたしの視線を釘付けにさせたいのかと邪推したくなる。
 さやか「ちょっと、どうしたのよ。ボケッとしてないで着替えたら」
 杏 子「あ、ああ」
 さやかの一言で我に返ったあたしは大急ぎで食パン2枚をトースターへ突っ込み、パジャマを脱ぎ捨てて着替え始めた。
 こうしている間に時計の針は無情に時を刻み続け、出発時間の最終リミットである8時25分に向かって長針を進ませる。
 あたしとさやかがいるマミのマンションから見滝原中学校までは民家の屋根やビルの屋上を一直線に行けば約5分で着く。朝っぱらから魔法少女に変身するのは気が進まないけど場合が場合だから仕方ない。
 リビングの掛け時計は午前8時18分になろうとしていた。
 杏 子(タイムリミットはギリギリまで見積もって7分か。その間に着替えと朝食を済ませなけりゃいけない。間に合うかなぁ)
 残り時間を気にしながらの行動。魔獣退治とは違った意味で緊張する。
 杏 子「まあ、考えても仕方ないや。さっさと出掛ける支度しよう」

 街頭スピーカーから流れる『Sunny Day』の曲が午後5時を告げる。マミから聞いた話によると見滝原市では午後5時に時報代わりとして『Sunny Day』を放送するそうだ。
 あたしが縄張りにしていた新房町じゃあ、こんなシャレた事はしなかったなぁ。
 杏 子「さやか~、頼むから機嫌なおしてくれよ。起こさなかった事は何度も謝っただろう」
 さやか「……」
 早乙女先生からありがた~い説教を聞かされ、遅刻の罰として教室掃除を二人でやらされた。その結果が午後5時の帰宅ってわけ。
 杏 子「だいたいさぁ、さやかだって悪いんだぜ。自分で目覚ましをセットしておきながら起きなかったんだからさぁ」
 さやか「そ、それは……」
 顔を俯かせながら口ごもる。さやかが弱気になった時の癖だ。よしッ、ちょっとイジメてやるか。
 杏 子「目覚ましのアラームだけで起きられる自信がないなら、携帯のアラームもセットしときなよね」
 さやか「だから、携帯は電池が……」
 杏 子「それは自分の不注意だろう。電池の残量が『1』になったら充電する、これは常識だよ」
 あたしは携帯を持ってないが、マミから教わった知識を「常識」として語ってみた。
 さやか「ううぅ」
 今度は唸り始めた。そろそろ陥落するな。少しキツイ言葉でトドメを刺してやろう。
 杏 子「だいたいさぁ、昨夜(ゆうべ)の戦い方だってダメダメだったよねぇ。敵に近づき過ぎて背後がスキだらけだったじゃない。あたしがフォローしてやらなかったら大ダメージをくらってたよ。猪突猛進な戦法、まるっきり昔のまんまじゃん」
 さやか「ご、ごめん」
 やばい、ちょっと言い過ぎた。この暗く沈んだ声、かなりマズイ状況だ。
 さやか「そうだよね。わたし、昨日から杏子に迷惑かけてばっかりだったね」
 杏 子「い、いや。そう改まらなくても……」
 さやか「携帯の充電を忘れる。目覚ましのアラームで起きられない。まどかほむらに朝の飼育当番をやらせる。自分が起きられなかった事を杏子のせいにする。あたしって……ほんとバカ」
 あ~あ、定番のセリフだ。落ち込みフラグが立っちゃった。
 杏 子「まあ、過ぎた事は仕方ないよ。昨夜(ゆうべ)の魔獣は手強かったし数も多かった。さやかだって一生懸命に戦ったんだ」
 さやか「でも、まどかほむらだって条件は同じだった筈よ。それにも関わらず二人は早朝の飼育当番として7時前に学校へ来たわ」
 杏 子「ま、まあな」
 さやか「杏子だって目覚ましで6時に起きたでしょう。何も知らずに熟睡していたのはあたしだけ」
 杏 子(落ち込み具合がハンパねえなぁ。こうなったら嘘も方便だ。悪いが名前を使わせてもらうよ、ほむら
 あたしは落ち込むさやかの肩に腕を回し、体を密着させながら思いついた嘘を口にした。
 杏 子「昼休みにさぁ、まどかから聞いちゃったんだ」
 さやか「なにを?」
 杏 子「あの二人が遅刻しなかったわけさ」
 さやか「どう言う事?」
 杏 子「魔獣退治を終えた後、ほむらまどかを自宅まで送って行っただろう。その後に……」
 あたしは『まどかを愛するほむら』のディープな愛情表現をデッチあげ、さやかに際どい話をして聞かせた。
 ほむらが聞いたら激怒しそうな(内心では『それが現実だったら』って喜ぶかも)嘘だが仕方ない。これもさやかを元気づける為だ、許してくれ。
 杏 子「……ってわけ。二人は朝まで徹夜して、そのまま寝ないで学校へ来たんだってよ。とんだ送り狼だよなぁ」
 さやか「まさかぁ」
 杏 子「本当だって。まどかから聞いた話だから間違いない。それとも、さやかまどかが嘘をついているって言うのか」
 さやか「そうは言わないけど……」
 微妙に疑っているようだ。まあ、かなり苦しい嘘だからなぁ。
 杏 子「とにかくだ!」
 あたしは強引に話をまとめようと思い、わざと大きな声を出した。
 杏 子「落ち込む事はないさ。それから自分を責める事もね。さやかは正義の為に剣を振るい、この街の平和を守ってるんだ。もっと自分に自信を持てよ。たった一回の寝坊くらい気にするな」
 全然フォローになってないし、支離滅裂な内容だが熱意は伝わったらしい。
 さやか「杏子……」
 あたしの名前を口にしながら、さやかは潤んだ眼差しを向けた。どうやら落ち込みフラグは回収できたらしい。
 さやか「ありがとう。あんたの一言で少しだけ自信が回復したわ」
 杏 子「そうそう、いつまでもクヨクヨと落ち込んでたって仕方ないじゃん。まどかほむらも今朝の件は許してくれてるんだし、この借りは別の形で返せばいいよ」
 さやか「そうだね」
 よし。さやかに笑顔が戻った。やはり落ち込んだ顔よりも笑った顔の方が可愛い。
 杏 子「かなり暗くなってきたし、早く帰ろうぜ。今夜もマミがいないから二人で夕食の用意をしないとな」
 さやか「うん」
 杏 子「夕食の支度をする前に携帯の充電を忘れるなよ」

 さやか「あッ、メールだ」
 充電を終えて電源を入れた直後、さやかの携帯がメールの受信を告げた。
 さやか「うわ~、受信が7件ある。半日以上も電源がおちてたからなぁ」
 ブツブツ言いながら、さやかは受信したメールをチェックしている。
 そう言えばマミから聞いた事があるなぁ。電源が入っていない時にメールを送られた場合、電源を入れると同時にメールチェック機能が働いてサーバーとかいうところに保管されてるメールを自動的に受信してくれるって。
 さやか「ねえねえ、杏子。マミさんからメールがきてるよ」
 杏 子「へえ、なんだって」
 さやか「え~とねぇ。『美樹さん、お元気ですか? こちらは沖縄旅行のスケジュールを順調に消化し、もうすぐ2日目の夕食となります。このメールはビュッフェ移動の待ち時間に打っています。昼間の観光名所巡りで首里城を見学中、やはり卒業旅行で沖縄に来ていた織莉子と会いました。両校とも3日目は自由行動なので明日は一緒にお買物をする事にしました。テレパシーでの会話はこういう時に便利ね。飛行機の遅延がなければ、予定通り、日曜日の午後4時頃に帰ります。わたしの留守中に杏子が迷惑をかけるかも知れないけれど、怒らないで面倒を見てやってね。よろしくお願いするわ。ちょっと早いけれど、おやすみなさい。巴マミ』だって」
 杏 子「チェッ。言ってくれるなぁ」
 さやか「織莉子さんも沖縄に行ってるんだ。すごい偶然ね」
 杏 子「似た者同士だからな。何か引かれ合う因縁でもあるじゃないか」
 さやか「似た者同士ねえ。確かに面倒見がいいところなんか似てるわよね。織莉子さんはキリカとゆまちゃんの面倒を見てるし、マミさんは杏子の面倒を見てる。二人とも優しいお母さんみたいだわ」
 杏 子(う~ん、優しいお母さんか。マミは怒らせると銃を出して脅かすし、織莉子には殺されかけた事があるからなぁ。面倒見がいいって事は否定しないけど……。危ないところまで似てやがる)
 さやか「このデコッたレイアウトのメールは出会い系サイトの案内だから削除。まどかからは今朝の件でしょう。あッ、かずみさんからもメールがきてた」
 杏 子「かずみって誰だ?」
 さやか「メル友よ。ネットの「魔法少女に憧れる女の子が集まる掲示板」で知り合ったの。彼女もリアルな魔法少女だったわ」
 杏 子「リアルな魔法少女? 嘘だろう」
 さやか「本当よ。実は一回だけ会った事があるんだけど、目の前で変身してくれたんだから間違いないわ。彼女の知り合いにも数人の魔法少女がいるみたい」
 杏 子「ふ~ん。まあ、魔法少女は世界中にいるからなぁ。見滝原市(ここ)以外にいても不思議はないか。実際、風見野には織莉子達がいるんだし」
 さやか「それから、かずみさんにはジュウべえって名前の妖精がついてたわ」
 杏 子「ジュウべえ? なんかパチモンっぽい名前だな。Qべえの知り合いだったして」
 さやか「まさか」
 杏 子「かずみって人に会った時、ジュウべえが何者か聞かなかったの」
 さやか「うん。あの時は初対面で緊張してたから聞きそびれちゃった。メール交換は日常的な事しか書かないし、ジュウべえの正体は聞いた事ないわ。まあ、深く追求するような事でもないから放っているけど」
 杏 子「ならさぁ、Qべえが沖縄から帰ったら聞いてみようぜ。ジュウべえってヤツが何者か、あいつなら何か知ってそうだ」
 さやか「あんまり私的な事には立ち入りたくないけど……。そうね、聞いてみましょう」
 杏 子「まったく、肝心な時にいないんだから。あの白饅頭」
 さやか「相変わらずQべえはチャッカリしてるわよね。一般の人には姿が見えないからって、マミさんの卒業旅行に同伴するんだから」
 こんな事を話しているうちに午後7時を過ぎた。いつもなら夕食の時間だが、今日は帰宅が遅かったのと、諸々の雑用を片付けていたせいで何の準備もしていない。
 杏 子「もう7時か。今から夕食の準備をすると食べられるのは8時を過ぎちまう」
 さやか「仕方ないわよ。今日は居残りだったんだし、帰ってからは洗濯や宿題に時間を取られちゃったんだから」
 杏 子「せっかくの金曜日だってのに居残りとはなぁ」
 さやか「ごめん。わたしのせいで……」
 やばい。また落ち込みモードに突入しそうだ。ここは話題を替えないと。
 杏 子「気にすんなって。それよりさぁ、な~んか夕食を作るのが面倒くさくなってこないか。今夜はカップラーメンで簡単に済ませようぜ」
 さやか「それだったらファミレスへ食べに行こうよ。わたしが御馳走するから」
 杏 子「本当か?」
 さやか「まっかせなさい。お小遣いをもらったばかりでリッチなのよ。それに……」
 杏 子「ん?」
 さやか「二人きりで外食するっていうのも悪くないでしょう」

 杏 子「布団に入ったか?」
 さやか「うん」
 杏 子「それじゃ電気を消すよ」
 さやか「オッケー」
 パチッ。
 スイッチを押すと同時に室内を煌々と照らしていた電燈が消え、寝室は黒一色の闇に包まれた。厚手のカーテンを閉めているので月の光も届かない。
 ソウルジェムを指輪から元の形態に戻し、その淡い光を頼りにベッドまで歩く。こうしないとカーペットのヘリに躓く事があるからだ。
 ベッドに辿り着いたあたしは布団の中へ潜り込み、天井を見つける恰好で横たわった。このまま目を閉じれば数分後には夢の世界へ旅立てるだろう。
 今夜の魔獣も異常に数が多く、苦戦はしなかったが疲れる戦いだった。
 あたしの槍、さやかの剣、まどかの弓は複数の敵が相手の戦いには向いておらず、目前の魔獣を一体ずつ地道に倒していくしかない。ほむらの重火器を使った戦い方も効率が良いとは言えず、一人一人の負担が少ないような戦い方を指示するマミのありがたみが改めてわかった。
 さやか「ねえ、杏子」
 突然、さやかが話しかけてきた。
 杏 子「どうしたぁ」
 さやか「今日はありがとう。いろいろ迷惑かけちゃったね」
 杏 子「気にすんなよ。それよりも御礼を言うのはあたしの方だ。夕食を御馳走になったんだからね。とても美味しかったよ」
 さやか「最近のファミレスもバカにできないでしょう。価格は安い、料理は美味しい、店内は清潔。後片付けもしなくていいし、最高よねぇ」
 杏 子「確かに料理は美味かった。でも……それはさやかと二人で食べたからかも知れない」
 さやか「え?」
 杏 子「前にも言ったけどさぁ、あたしはさやかが好きだ。もちろん恋愛感情としての好きって気持ちだ」
 さやか「……」
 杏 子「好きな人と一緒に食事できて嬉しかった。だから、御礼を言うのはあたしの方さ」
 さやか「杏子」
 杏 子「な、なんか変な話になっちまったな。今のは忘れてくれ。それじゃ、おやす……」
 さやか「わたしも好きだよ、杏子の事が」
 杏 子「さ、さやか
 さやか「あんたの事、最初は自己中心的なヤツだと思ってた。でも、本当は相手の事を誰よりも思いやれる優しさの持ち主だってわかったわ。その証拠に魔女化したわたしを命懸けで助けてくれたでしょう」
 杏 子「そんな事もあったな。まあ、改変前の世界での出来事だけどね」
 さやか「失敗する可能性が高い危険な賭けだったんでしょう。それなのにわたしを助けようと死ぬ気で魔女の胎内からグリーフシードを取り返してくれたのよね」
 杏 子「ま、まあな」
 さやか「Qべえは『濁りきったソウルジェムがグリーフシードに変化し、そこから魔女が生れる』って言ってたでしょう。普通だったら魔女になった時点でソウルジェムの奪還なんて諦める筈だわ。グリーフシードに変っちゃってるんだからね」
 杏 子「これでも神父の娘だ。一度くらいは奇跡を信じてみたかったんだよ。さやかを助け出すって奇跡」
 そう言いながら、あたしは改変前の世界で最も忘れがたい戦いを頭の中に思い出していた。
 全てに絶望して魔女となったさやか。絶望エネルギーの回収に成功してほくそえむQべえ。恐怖に震えながらも親友の名前を呼び続けたまどか。限りなくゼロに近い希望を信じる自分。
 コンサートホールのような結界。人魚のような魔女さやか。襲い来る無数の車輪。
 今の世界が構築される前の世界での出来事だが、一部始終をハッキリと覚えている。
 杏 子「魔女になったさやかが無事に生還した事、Qべえも不思議がってたよなぁ。きっと、あいつも知らない『ソウルジェムのシステム』ってのがあったんだろうね。まあ、深く考えず素直に奇跡を喜べばいいじゃないか」
 細かい事を考えるのは苦手だし、何より過ぎ去った事だ。あれこれ考えたところで今後も答えは見つからないだろう。あたしは結論を出して話を打ち切った。
 さやか「うん。そうだね」
 杏 子「そうだよ。あたし達はバカなんだからさぁ、難しい事を考えたって答えが見つかるわけないって」
 さやか「ねえ、杏子」
 杏 子「なんだ」
 さやか「寝る前に一言だけ言わせて」
 杏 子「どうしたんだよ。あたしとさやかの仲だろう。言いたい事があれば遠慮なく言いなよ」
 さやか「それじゃ言うね」
 杏 子「ああ」
 さやか「女の子が女の子を好きになるっていうのは変かも知れないけどさぁ、これから言う事はわたしの本心だからね」
 コホンと咳払いをしてから、さやかは続きの言葉を口にした。
 さやか「わたしは……美樹さやかは佐倉杏子が大好きです。誰よりも愛してます」
 杏 子「な、な、なんだって」
 あたしは思わず大きな声を出してしまった。いきなりの告白タイムかよ。せめて心の準備をさせてくれ。
 さやか「言いたい事は以上。おやすみなさ~い」
 杏 子「だ、誰よりも愛しているって……。ほ、ほ、本当か」 
 さやか「告白は一度だけよ。二度は言わない」
 杏 子「ちょ、ちょっと待て。心の準備ができてなかったから軽く聞き流しちまった。今度は身を入れて聞くからさぁ、もう一回言ってくれないか」
 さやか「二度は言わないって言ったでしょう。おやすみ~」

 さやか『佐倉杏子、いつまで寝ている。早く起きろ』
 杏 子『う~ん。どうしたんだ、もう朝か』
 さやか『今、何時だと思っている。午前10時を過ぎたぞ』
 杏 子『おい、さっきから喋り方が変だぞ。寝ぼけてんのかぁ』
 さやか『馬鹿者。わたしは寝ぼけてなどいない』
 杏 子『今日は土曜日だろう。学校も休みなんだし、ゆっくり寝かせてくれよ』
 さやか『休日だからと言って気を抜くな。佐倉杏子、生活態度30点』
 どうしたってんだ。さっきからおかしな喋り方をしている。
 あたしは掛け布団を跳ねのけ、さやかを見ながら言った。
 杏 子『おいおい、どうしたんだよ。さっきから変だぞ』
 さやか『えっへへ~。どうかしら。なかなか迫力あったでしょう』
 杏 子『はあ? 何を言ってんだ。わけがわかんないよ』
 さやか『みんなには内緒にしてたんだけどさぁ、あたし、バイトで声優やってたの』
 杏 子『マ、マジかよ』
 さやか『今のは「クイーンズ・スウォード 姫騎士レナの冒険」ってアニメのキャラよ。わたしはエルフの戦士長役を担当したわ。番組の放送開始は来月3日。深夜アニメだけど絶対に見てね』
 杏 子『あ、ああ。録画してでも見るよ』
 さやか『それを聞いて安心したわ。うふふふふ』
 はにかんだ笑顔を見せた直後、さやかの体は足下から霧散するように消えていく。
 杏 子『おい、さやか。体が……消えていくぞ』
 さやか『バイバイ、杏子。また……どこかで……会えると……いい……ね』
 この一言を遺し、さやかの姿は部屋の中から完全に消えてしまった。

 ガバッ。
 杏 子「さやかぁぁぁぁ」
 自分の声で目がさめた。昨日と全く同じパターンだ。
 また夢か。二日続けてさやかがいなくなる夢を見てるなんて……嫌な予感がする。
 さやか「うわッ、ビックリした。急に大きな声を出さないでよ。驚くじゃない」
 杏 子「あ、あれ? さやかが……いる」
 顔を上げた先には、いつもと変らぬさやかの姿があった。
 さやか「どうしたのよ、わたしの顔をジッと見つめて」
 杏 子「夢を見たんだ」
 さやか「どんな夢よ」
 杏 子「つまらない夢だよ」
 さやか「ふ~ん」
 この説明に納得したのか、それとも興味がなかったのか、さやかは短く言っただけだった。
 今日は土曜日で学校が休み。さやかは持参した私服を着ていた。
 水玉ドットの青いワンピースはスラリとしたさやかの体型に似合っている。雑誌の専属モデルも顔負けの可愛さだ。あたしがそう思っているだけかも知れないが……。
 さやか「9時を過ぎたから起こそうと思ったんだけど、別に声をかけてやる必要なかったわね」
 杏 子「もう9時過ぎか。ふぁ~あ。よく寝たなぁ」
 さやか「朝食ができてるわ。一緒に食べよう」
 杏 子「へえ、モーニングサービスか。気が利くじゃないか」
 さやか「まあね。3日間もお世話になる厄介者だから少しくらいはサービスしなきゃ」
 満面の笑みで答えるさやか。なんて愛(う)いヤツなんだ。
 さやか「マミさんから冷蔵庫に入ってる食材は自由に使っていいって言われてるから、お言葉に甘えてベーコンと卵、葉物野菜を使わせてもらったわ。朝食は美樹さやかのお手製サンドイッチよ」
 杏 子「いいねえ。さやかの手作りサンドイッチか」
 さやか「マミさんの手料理には勝てないと思うけど……」
 杏 子「そんな事ないさ。マミにはマミ、さやかにはさやかの味がある。勝つとか負けるとか関係ないよ」
 さやか「そう言ってもらえると嬉しいわ」
 杏 子「すぐ着替えるから先に行っててくれ」
 さやか「わかった。先にキッチンへ行ってるわね」
 杏 子「オッケー」
 あたしは大急ぎで着替えを済ませ、さやかの待つキッチンへ向かった。
 今日はショルダー付きのロングTシャツとフリルスカートで決めてみたが、さやかは気に入ってくれるかなぁ。
 いつだったか、マミから「動き易さを優先したホットパンツも悪くないけれど、たまにはスカートでもはいてみたら。美樹さんが惚れなおすかも知れないわよ」なんて冗談まじりに言われた事があったけど……。
 杏 子「お待たせ~」
 さやか「あれッ、どうしたのよ。あんたがスカートをはくなんて珍しいわね」
 杏 子「そ、そうか。いつも魔法少女になった時はスカートをはいてるぜ。学校の制服だってスカートだろう」
 さやか「まあ、そう言えばそうだけどさぁ。私服のスカート姿は始めてみたわ」
 そう言いながら、あたしの全身をジックリと観察するさやか。おいおい、そんなに見つめられたら照れるだろう。
 さやか「あんたの服さぁ」
 杏 子「や、やっぱり似合わないよな。こんな恰好」
 さやか「ううん。とても良く似合ってるよ」
 杏 子「本当か?」
 さやか「すっごくセンスがいいわ。これで街を歩いたらティーン向けファッション雑誌のモデルにスカウトされるかもよ」
 杏 子「大袈裟だなぁ。あたしなんかがスカウトされるわけないじゃん」
 さやか「わかんないわよ。物好きなカメラマンが好奇心から杏子にモデルを頼まないとも限らない」
 杏 子「物好きなカメラマンって……。ひでえなぁ」
 さやか「あっはははは。ごめん、ごめん。それは冗談だけど、その服はマジで似合ってるよ」
 杏 子「あ、ありがとう」
 さやか「改めて惚れ直したわ。あんたにね!」
 う、嘘だろう。マミの言った通りだ。たまにはファッションにこだわってみるのも悪くないな。
 杏 子「さ、さやか……」
 さやか「な~んてね。さあ、早く朝食を済ませちゃおう」

 今夜は魔獣の気配も感じられず、まどか達と相談して夜のパトロールを休止する事にした。
 最近は夜遅くまでパトロールや魔獣退治をしていたら疲労もたまってるし、夜中まで戦い続ける事も珍しくなかったから、今夜くらいはゆっくり体を休めたい。それが四人の一致した意見だった。
 明日にはマミが卒業旅行から戻り、さやかも自宅へ帰っちまう。さやかと二人きりの夜を悔いがないように過ごしたかったから、その意味でもパトロールの休止は幸いだ。

 さやか「ねえ、杏子。マミさんの部屋ってFMラジオの電波は入る?」
 ラジオチューナーを内蔵したCDコンポの前に立ち、さやかがあたしにきいてきた。 
 杏 子「ああ、入る筈だよ」
 さやか「ならさぁ、ちょっとラジオを聴かせてね」
 杏 子「別に構わないけど。何か好きな番組でもあるのか」
 さやか「うん。土曜日の夜は『喜多村梨恵のKnight of the night』って番組を聴いてるの。あたし、喜多村さんの大ファンなんだ。番組もトークあり、音楽あり、視聴者プレゼントありの盛り沢山な内容で面白いわよ」
 杏 子「へえ」
 さやか「これがスイッチね。チャンネル設定のツマミは……これかしら」
 選局しているうちに目的のチャンネルがセットできたらしく、スピーカーから女性の声が聞えてきた。
 梨 恵『一週間ぶりの御無沙汰でした。「喜多村梨恵のKnight of the night」、今夜も最後まで楽しんで下さいね~』
 さやか「おッ、ちょうど始まったところだわ」
 杏 子「これがさやかの好きな番組か?」
 さやか「そうよ」
 杏 子「喜多村って人の声、さやかの声と似てるね」
 さやか「そうかしら」
 梨 恵『まず最初のコーナー「梨恵の一週間」からいってみましょう。このコーナーでは、喜多村梨恵の来週一週間の予定をリスナーの皆さんにお知らせします。地方公演から公開録画の日程まで梨恵のお仕事を全て公開しちゃいますよぉ』
 あたし達はベッドの上に寝そべりながら、黙ってラジオ放送に耳を傾ける。
 この喜多村梨恵って人、なかなかノリが良いな。喋り方もハキハキしてるし、トークの内容も面白い。
 なるほど、さやかが夢中になるわけだ。
 アッと言う間に25分が経ち、早くも番組終了時刻となった。
 梨 恵『残念ながら、そろそろお別れの時間になっちゃいました。最後は恒例の「OLD MUSIC HOUR」で締めたいと思います。いっきますよ~。今夜のナンバーは1995年の曲、SEEKの「Round Trip ~その手を離さないで~」です。NHKのアニメ「飛べ!イサミ」の第一期エンディングテーマに使われました。この「飛べ!イサミ」ってアニメ、わたしも小学生の頃に見てましたよ。あッ、こんな事を言ったら年齢(とし)がバレちゃうなぁ。失言、失言。見知らぬ世界への旅立ちを後押ししてくれるような歌詞、すっごく気に入ってるんですよ。この曲、わたしの一押しです。それでは~、Let's play music!』
 イントロが流れ、歌が始まった。


 ♪ ちょっとスリルでロマンティックな二人だけの秘密さ
   眠れない夜 君が窓辺でウインクを投げかける
   見慣れた街の光をぬけて タイムマシンのように
   招待状も地図もいらない 不思議な旅に出ようよ ♪

 さやか「招待状も地図もいらない不思議な旅かぁ。シャレた歌詞だね」
 杏 子「そうだな」
 さやか「春休みになったらさぁ、五人で旅行に行かない?」
 杏 子「おッ、いいねぇ。どこへ行こうか」
 さやか「あんまり遠出もできないだろうし、近場の温泉なんかどう」
 杏 子「温泉か。まあ、安定の選択だな。(小声で)さすがは『安定のさやかちゃん』」


 ♪ 螺旋の星空にとけて 二人で風にな~ろ~おぉ
   遠くエスケープ その手を離さないでぇ
   永遠の夢に会えるなら 迷わずに今、君を抱きしめるよ
   切なさは出会った頃のよう 恋が微笑みだすよぉ ♪

 さやか「出会った頃……か」
 杏 子「ん? どうしたんだ」
 さやか「あたし達の出会いってさぁ、かなり険悪なムードだったよね」
 杏 子「ああ。同じ魔法少女が初対面から殺し合いのバトルを始めるなんて珍しいかもな」
 さやか「わたし達の出会いって、やっぱりレアケースだったのかなぁ」
 杏 子「そうでもないさ。縄張り問題や考え方の違いで初対面から魔法少女同士が対立するのはよくある事だよ。まあ、いきなり殺し合いのバトルにまでは発展しないだろうけど」
 さやか「考え方の違いか。そういえば、マミさんとほむらも最初は険悪ムードだったわ。さすがに二人とも相手への手出しはしなかったけど」
 杏 子「それは直情型と思考型の違いじゃないか。あたしもさやかも単細胞の直情型だから口より先に手が出ちゃったんだよ」
 さやか「単細胞の直情型ねぇ。悔しいけど否定できないわ」


 ♪ 誰より君が好きさぁ
   時には悲しみの中で とまどう夜がき~て~もぉ
   遠くエスケープ その手を離さないでぇ
   永遠の夢に会えるなら 愛しさに今、二人見つめあうよ
   トキメキは出会った頃のよう 同じ夢の中ぁ ♪

 杏 子(語呂が悪いけど「誰よりさやかが好きさ」って歌詞を変えてもいいなぁ。さやかのパジャマ姿、いつ見ても可愛いすぎる。……そういえば、二晩続けて嫌な夢を見たけど、もしかして不吉の前兆なのか)
 さやか(永遠の夢かぁ。マミさんも生きてるし、わたしも魔女になっていない。みんな一緒にいられる今の世界は夢のようだわ。以前の世界とは大違い。この現実が夢だったら……永遠に覚めないで欲しいなぁ)


 ♪ 明日を変えていく勇気 始めて感じあ~え~たぁ
   遠くエスケープ その手を離さないでぇ
   永遠の夢に会えるなら 迷わずに今、君を抱きしめるよ
   切なさは出会った頃のよう 時を越えてRound Trip ♪


 梨 恵『お聴き頂いたのはSEEKの「Round Trip ~その手を離さないで~」でした。お別れの時間になっちゃいましたので、また一週間後に会いましょうね。リスナーの皆さん、良い週末をお過ごし下さい。お相手は喜多村梨恵でしたぁ。See You Next Week。まったね~』

 杏 子「なあ、さやか
 さやか「なぁに?」
 杏 子「あ、あのさぁ。今夜は手をつないで寝てもいいかなぁ」
 さやかと並んでベッドの中に入ってから間もなく、あたしは思いきって言ってみた。
 こうしてないと寝ている間にさやかが消えてしまいそうな気がしてならない。
 たて続けに見た夢が不吉な予知でない事を願いつつ、それでも一抹の不安が拭えなかった。
 きっと笑われるだろうなぁ。「中学生にもなって夜が怖いのね」なんて言われて。
 だが、さやかの口から返ってきたのは意外な返事だった。
 さやか「いいよ」
 その言葉と同時にさやかの手があたしの手に触れた。温かい手だ。
 さやか「これでいい?」
 杏 子「うん。ありがとう、さやか
 さやか「急にどうしたのよ。手をつなぎたいだなんて」
 杏 子「実はさぁ、二日続けて嫌な夢を見たんだ」
 さやか「今朝も言ってたわね、そんな事。どんな夢を見たのよ」
 杏 子「さ、さやかが……消えちゃう夢」
 さやか「わたしが消える?」
 杏 子「うん。あたしに別れの言葉を言った後、あんたの体が消えちゃうんだ」
 さやか「……」
 杏 子「そんな夢を二晩続けて見たせいかさぁ、なんか嫌な予感がするんだよ」
 そう言って、あたしはさやかの手をギュッと握りしめた。
 さやか「痛ッ。どうしたのよ。そんなに力強く握らなくても離しはしないわよ」
 杏 子「さやか
 思わず握りしめた手の力を緩め、あたしは昨夜から心底に秘めていた言葉を口にした。
 杏 子「あたしに黙っていなくならないでよ。絶対に……いなく……ならない……でよ」
 さやか「ちょ、ちょっと。泣かないでよ、杏子」
 杏 子「この手を……離したら、明日の……朝には……さやかが……いなくなってるんじゃ……ないかって……不安で……仕方ない……んだ」
 気がつくとあたしは泣いていた。涙が頬をつたい、声も涙声になっている。
 さやか「大丈夫よ。あんたに黙っていなくなったりしないわ」
 杏 子「ほ……本当……か」
 さやか「正義の味方のさやかちゃんが嘘を言うわけないでしょう」
 杏 子「本当に……本当……だな」
 さやか「本当に本当だって。だから泣かないの。ほら、涙を拭いて」
 仰向けで寝ていたさやかはあたしの方を向く恰好になり、細い指であたしの頬に流れる涙を拭いてくれた。
 そして、両手であたしの左手を包み込むと優しい声で言った。
 さやか「あんたを残して消えたりしないわ。約束する。だから安心して眠りなさい」
 杏 子「ありが……とう。さやか
 さやか「おやすみ、杏子。今夜は良い夢を見てね」

 杏 子『今夜の魔獣は手強かったな』
 さやか『うん』
 杏 子『あれ? マミはどこ行ったんだ。さっきまで一緒だったのに……。まどかほむら、それにQべえの姿も見えない』
 気がつくとマミ達の姿が視界から消え、人通りが途絶えた深夜の路上にはあたしとさやかの二人だけが取り残されていた。
 カシャン。
 背後の音に振り向くと、視線の先には剣を取り落として蹲(うずくま)るさやかの姿があった。
 杏 子『どうした、さやか。大丈夫か』
 さやか『きょ、杏子』
 杏 子『しっかりしろ。どこか怪我でもしたのか』
 さやか『今の戦いで魔力を使い切っちゃったみたい。体から力が抜けていくわ』
 杏 子『ま、待ってろ。すぐにグリーフシードでソウルジェムの穢れを浄化してやるから』
 さやか『ううん。もう駄目よ、間に合わないわ』
 杏 子『そう簡単に諦めるな。……。あれッ、グリーフシードがない。ちくしょう、急いでるってのに』
 どうしたわけか携帯しているグリーフシードが見当たらない。確か服のポケットに入れておいた筈なのになぁ。
 杏 子『仕方ねえ。お~い、マミ。いないのかぁ。ほむらまどか、いたら返事をしてくれ。Qべえ、どこだ~』
 名前を呼ぶが誰も返事をしない。いったい、どこへ行きやがったんだ。
 杏 子『さやかが大変なんだ。お~い、誰か返事をしろ。グリーフシードが必要なんだ』
 さやか『ううッ。くうぅぅぅぅ』
 苦しそうに呻くさやかの声が聞える。待ってろ、さやか。すぐに助けてやるからな。
 杏 子『マミ~。ほむら~。まどか~。Qべえ~』
 さやか『もういいよ、杏子』
 杏 子『さ、さやか……』
 さやか『あんたと一緒に過ごした三日間、とっても楽しかった。うぐッ』
 杏 子『さやか、しっかりしろ。さやか
 さやか『後先を考えないで魔力を使ったツケがきちゃったみたい』
 杏 子『諦めるな。あたしが必ず助けてやる。だから諦めちゃダメだ』
 さやか『ごめんね、杏子。あんたとの約束、守れなかったわ』
 そう言い遺し、さやかの体は淡い光に包まれて消滅した。
 杏 子『さやか……。さやかぁぁぁぁ』
 
 ここで目が覚めた。さすがに三回目なので取り乱しはしなかったが嫌な目覚めである事に変わりはない。
 夢の中のあたしは悲しみに絶叫していたが、夢から覚める瞬間、その悲しみが現実でないと意識していた。
 うまく説明できないけど、夢から覚める瞬間がハッキリわかった。心の中で「ああ、また夢を見てたんだな」って思ったんだ。
 しばらくして、あたしは左手に違和感を覚えた。その違和感とは……。
 杏 子「あれッ。さやかの手がない」
 あたしの手はシーツの上にあり、さやかの温かくて柔らかい手には触れていなかった。
 杏 子「さやか?」
 顔を横に向けると、そこに寝ている筈のさやかがいない。
 ガバッ。
 驚いたあたしは跳ね起きて時計を見た。時刻は午前10時。今日も寝過ごしてしまった。
 急いでカーテンを開け、爽やかに晴れた空からそそぐ冬の柔らかい日差しを室内に取り入れる。パァ~っと部屋全体が明るくなった。
 さやかが寝ていた場所にはパジャマの上下が脱ぎ捨ててあるばかり。布団には僅かな温もりも感じられなかった。
 杏 子「ま、まさか……。あの夢は正夢だったのか」
 あたしの心臓は不安から早鐘のようにドキドキと脈打つ。今にも胸を突き破って心臓が飛び出しそうだ。
 杏 子「さやか、どこへ行ったんだ。さやか~」
 寝る前に見せてくれたであろう優しい笑顔を脳裏に思い描きながら、あたしはさやかの名を連呼した。
 キッチン。リビング。トイレ。さやかの姿はどこにもなかった。
 杏 子「さ、さやかぁぁぁ」
 寝室に戻ったあたしは大きな声でさやかの名を呼んだ。後から思えば、隣近所にまで聞えそうな大声だったかもしれない。
 杏 子「あたしに黙っていなくならないって約束したじゃないかよ。さやかぁぁぁ」
 脱ぎ捨てられたパジャマを抱きしめ、あたしは涙を流した。
 その時だ。
 素肌にバスタオルを巻きつけ、頭にタオルをかぶせたさやかが姿を現した。
 さやか「どうしたのよ、大きな声を出して。御近所に迷惑でしょう」
 杏 子「さ、さや……か」
 さやか「何やってんの? パジャマなんか抱きしめてさぁ」
 さやかの元気な姿を見て安心したあたしは我にかえってパジャマを手放した。
 さやか「マミさんの使ってるボディソープ、すごくいい香りがするわね。今朝も借りちゃった」
 杏 子「さ……やか。どこに……いたんだ……よ」
 さやか「わたし? お風呂に入ってたわ。いつも日曜日は朝シャンしてるから」
 杏 子「朝シャン……って?」
 さやか「朝にシャンプーする事よ。習慣っていうわけじゃないけどさぁ、日曜日は朝風呂と朝シャンが日課みたいになってるの」
 杏 子「……」
 さやか「ここのお風呂っていいわねぇ。広いし、清潔だし、二十四時間風呂だからいつでも入浴できる。何一つ文句ないわ」
 杏 子「バカ……」
 さやか「え?」
 杏 子「さやかのバカ~」

 さやか「ねえ、そろそろ機嫌なおしてよ~」
 髪を乾かした後、わたしは普段着に着替えて寝室に戻った。杏子はベッドの上に腰掛け、まだムクれている。
 さやか「心配かけた事は悪かったわ。心から謝る。ごめんね」
 杏 子「あれだけ大きな声で呼んでたのに、なんで返事をしてくんなかったのさぁ」
 さやか「浴室のドアが閉まってて聞えなかったのよ。引き戸だけど意外と外からの声や音を遮断するのね」
 杏 子「マジで心配したんだよ。さやかが本当に消えちゃったんじゃないかって」
 さやか「杏子」
 わたしは杏子の隣に腰を下ろし、デニムのホットパンツから伸びている太腿の上に手を乗せた。杏子の体が微妙に震えている。
 本当に怖かったみたい。わたしの姿が見えなかった事。
 さやか「二晩続けて嫌な夢を見たんだもの、杏子が不安になるのは当然だよね。あんたの気持ちを考たらさぁ、ノンキにお風呂へ入ってる場合じゃなかったわ。ごめんなさい」
 わたしは頭を下げて心から謝罪の言葉を口にした。許してもらえるとは思ってないけど、謝らずにはいられなかった。
 杏 子「わかればいいよ」
 辛うじて聞き取れるくらいの小さい声で杏子が言った。この言葉を最後に二人は無言のままベッドの上に座り続ける。
 どれくらい黙ってたんだろう。
 不意に杏子が俯いていた顔を上げ、わたしの方を向いたかと思った瞬間、杏子の唇がわたしの唇を覆っていた。
 杏 子「……」
 さやか「……」
 ビックリしたけど、わたしは抵抗せず杏子のキスを受け入れた。
 フルーツのように甘く、ビターチョコみたいに少し苦い。これがファースト・キスの味なんだ。
 杏子と唇を重ね合わせながら、わたしはそんな事を考えていた。

 楽しかった卒業旅行も終わり、わたし達は空港から貸切バスに乗って見滝原中学校へと戻ってきました。
 充実した四日間はアッと言う間に過ぎ去り、明後日からはいつもと変らない日常が始まります。
 体育館に集められた三年生全員は、学年主任から「自宅へ帰るまでが卒業旅行だ」と言う決まり文句を聞かされ、卒業式までの日程を知らされました。
 明日は代休なので次の登校は火曜日になります。卒業旅行も授業の一環であり、したがって日曜日の代休が翌日の月曜日へ振り替えられたのです。
 午後四時少し前に解散となり、わたしはQべえを肩の上へ乗せて帰路につきました。
 Qべえ「三泊四日の旅行は楽しかったね、マミ」
 マ ミ「そうね。卒業前に良い思い出が作れたわ」
 Qべえの言うとおり、沖縄への卒業旅行はとても楽しい旅行でした。魔法少女として非現実的な日々を生きているせいか、風光明媚な遠い地のバカンスによって心身どちらもリフレッシュできた気がします。
 マ ミ「美樹さんと杏子が待っているわ。さあ、早く帰りましょう」
 留守を守る二人の顔を思い浮かべながら、わたしは自宅に向かう足を急がせました。

 ふと長い眠りから目覚めた。顔を横に向けると視線の先にはさやかの可愛い寝顔がある。
 ベッドの上でキスをした後、あたし達は服を脱いで下着姿になり、そのまま口もきかずに布団の中へ潜り込んだ。
 服を脱ぐ必要はなかったけど、二人とも濃厚甘美なキスで興奮していた勢いからか脱衣した。
 別に変な事を考えてたわけじゃない。なんとなく雰囲気に流された感じでベッドインしたわけ。
 ベッドインなんて言うと誤解されそうだけど、まあ事実なんだから仕方ない。
 連日の戦いで疲れが溜まっていた事も手伝い、エアコンから吹き出る暖かい風に眠気を誘われたあたし達は二度寝してしまった。
 杏 子「ふぁ~あ。たまの二度寝は悪くないなぁ。おかげで溜ってた疲れも吹き飛んだ」
 上半身を起こし、大きく伸びをする。
 杏 子「それにしても時間が経つのは早いなぁ。もう夕方……。えッ、夕方だって」
 ビルの谷間に夕陽を見ながら、あたしは枕許の目覚まし時計に目をやった。時刻は午後4時10分を過ぎている。
 杏 子「やべえ、もう4時を過ぎてるじゃねえか」
 ノンキに寝てる場合じゃない。もうすぐマミが帰ってくる時間だ。
 杏 子「おい、さやかさやかってば。起きろよ」
 さやか「う~ん。どうしたのよ、大きな声を出して」
 杏 子「大変だ。4時を過ぎちまった。急いで服を着ろ」
 さやか「えッ、もう4時を過ぎたの」
 杏 子「ああ。こんな姿をマミに見られたら誤解される。早く着替えるんだ」
 さやか「わ、わかったわ」
 あたし達はベッドから下り、掛け布団の足元に脱ぎ散らかした服を手に取ろうとした。
 その時……。
 ガチャリ。
 玄関のドアが開いた。最悪のタイミングで部屋の主が帰還しちまった。
 マ ミ「ただいま~。美樹さん、杏子、帰ったわよ」
 何も知らない無邪気な声が玄関から聞える。
 さやか「どうしよう、マミさんが帰ってきちゃったわよ」
 杏 子「落ち着け、さやか。と、とりあえず服を着よう」
 さやか「そうね」
 Qべえ「やあ、二人とも」
 杏 子「うわッ。Qべえ」
 さやか「い、いつの間に部屋へ入ってきたのよ」
 Qべえ「たった今だよ。寝室からきみ達の声が聞えたものだから」
 杏 子「地獄耳の白饅頭め。少しは気を利かせろ」
 さやか「バカ。誤解させるような事を言うんじゃないわよ」
 杏 子「ご、ごめん」
 さやか「それより早く着替え……」
 マ ミ「ただいま。美樹さん、杏子」
 杏 子「マ、マミ」
 さやか「マミさん」
 マ ミ「あらあら、せっかくのところを邪魔しちゃったかしら」
 頬に右手を当てながら、マミは下着姿の同居人と後輩を見て言った。
 さやか「ち、ち、違うんです。マミさん。これには深いわけがあるんです」
 杏 子「そ、そうなんだ。ベッドの中でふしだらな事をしてたんじゃないんだ」
 さやか「あ~ん、もう。どうして誤解されるような事ばかり言うのよ」
 杏 子「あッ……」
 Qべえ「お楽しみのところを邪魔してしまったようだね。どうしよう、マミ」
 マ ミ「うふふふふ。こういう時は気を利かせるものよ、Qべえ」
 そう言うとマミはQべえを抱き上げ、あたし達に背を向けて寝室から出て行った。
 マ ミ「わたし達はお風呂に入ってくるわね。温かいお湯につかって疲れを取りたいの」
 杏 子「ちょっと待って、マミ」
 マ ミ「さあ、行きましょう。Qべえ」
 そう言ってQべえと一緒に部屋を出て行くマミ。
 本人は空気を読んだつもりだろうが、完全に誤解しているぞ。う~ん、困った。
 マミとQべえの後姿を見送ってからも、あたしとさやかは下着姿のまま立ち尽くしていた。
 さやか「マミさん、完全に誤解しているよね」
 杏 子「ああ」
 さやか「どうしよう」
 杏 子「とりあえずさぁ」
 さやか「とりあえず?」
 杏 子「服を着ようぜ」


≪参考書籍≫
 ・ウンテンプクイチ『my best friend』(発行:ぽんぽんお
 ・天沢夏久『Re:好きだよ』(発行:天夏屋
 ・ジャム王子『ロマンと呼ぶには熱すぎて』(発行:ジャム王国
 ・ヨスケ『Love Me Blue』(発行:Tricolore
 ・佐倉はなつみ『恋心はエントリピーを凌駕する』(発行:空想RIOT!
 ・神爆龍王『つまりANKO KAWAIIっつー事だよ!』(発行:SAGA Angel


【あとがき】
 参考書籍を御覧頂ければわかる通り、このSSが完成するまで数多くの同人誌に助けられました。作者の皆様には厚く御礼を申し上げます。いずれも原作愛を感じさせる二次創作漫画であり、読み応えるのある作品揃いでした。
 言わずもがなの解説ですが、ラジオパーソナリティとして登場する喜多村梨恵は声優の喜多村英梨さんをモデルにしています。「まど☆マギ」で美樹さやかの声を担当された為、いわゆる「中の人」ネタとして登場させました。番組タイトルは魔法少女さやかの戦闘スタイルが騎士(ナイト)を連想させるので「夜のnight」と「騎士のKnight」を引っかけたものです。マニアックなネタバレをすれば、横溝正史氏の予告倒れ作品「侠賊夜の騎士(ナイト・オブ・ナイト)」が発想の源でした。
 杏子のセリフで終わる唐突な幕切れに感じられるかも知れませんが、マミさんに誤解されたままの方が余韻を残せると思い、このような結末にした次第です。
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