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2017-10

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  真夏の海と魔法少女たち(中編)

<第二部・夜の浜辺>

 紺青の夜空に星が輝き、満月が夜の砂浜を明るく照らす。
 昼間の喧騒が嘘のように静まり返った夜の海辺。月明かりを照明に砂浜を散歩する五人の人影があった。
 マ ミ「やっぱり海風は涼しいわね。昼間の暑さが信じられないわ」
 杏 子「そうだな」
 まどか「これもマミさんが別荘に誘ってくれたおかげですね」
 さやか「本当ね」
 マ ミ「あの別荘も両親が遺してくれた不動産なのよ。みんなで楽しく集まれる場所になれば嬉しいわ」
 杏 子「マミの美味しい手料理まで食べられるし、至れり尽くせりだよな」
 ほむら「海まで徒歩十分程度。環境も申し分ないわね」
 マ ミ「うふふふ。どうもありがとう」
 まどか「それにしても静かですね」
 杏 子「昼間の騒々しさがウソみたいだよな」
 さやか「……。静かな夜を楽しく過ごせるのもまどかのおかげよね」
 マ ミ「ええ。自分自身の存在が消滅する危険も顧みず、ソウルジェムの永久浄化を成功させてくれたんだもの。この世界は鹿目さんが救ったも同然だわ」
 杏 子「まどかには感謝してるよ。あんたは正真正銘の女神だ」
 ほむら「本来、魔法少女は共存を否定し相容れない間柄の筈だったわ。グリーフシードを巡る争いで必ず共存の和が乱れる。その問題を根本的に解決してくれたまどかの業績は永遠(とわ)に称えられるべきよ」
 まどか「そ、そんな大袈裟だよ。わたしは……自分に与えられた役割を果たしただけなんだから」
 ほむら「役割を果たした。結果論として聞けば言葉の重みが薄れるけれど、どうなるか分からない状況で自分の命を賭けた行動を躊躇せずに取った勇気、わたしは心から尊敬するわ。そして心から愛している」
 まどか「ほ、ほむらちゃん」
 ほむら「感謝しているわ、まどか
 さやか「ありがとう、まどか
 マ ミ「どうもありがとう、鹿目さん」
 杏 子「ありがとう、まどか

 談笑しながら海岸を散歩する五人だが、マミは妙な違和感を覚えた。
 マ ミ(おかしいわ。いくら歩いても全く進んだ気がしない)
 杏 子「(小声で)マミ、気付いているか」
 マミの脇に歩み寄った杏子が小声で話しかけた。
 マ ミ「(小声で)ええ。この海岸、何かおかしいわ」
 杏 子「(小声で)どうやら魔女の結界に取り込まれようだ。道路の上を見てみろ、同じ街並みが延々と続いている」
 マ ミ「(小声で)本当だわ」
 杏 子「(小声で)それに霧も出始めている。油断するなよ」
 マ ミ「(小声で)分かってるわ」  
 ブオォォォォ。
 さやか「キャッ」
 まどか「凄い風。砂が目に入っちゃった」
 ほむら「くッ」
 マ ミ「どうやら……」
 杏 子「おいでなすったらしい」
 突如として強風が吹き荒れ砂塵を巻き上げた。五人は視界を封じられ、全身に細かい砂粒がピシピシと当たる。
 コオォォォォォ。
 やがて風も収まり、夜の浜辺は静けさを取り戻した。
 さやか「どうやら収まったようね」
 まどか「なんだったんだろう、今の風」
 ほむら「どうやら魔女の結界に取り込まれたらしいわ」
 まどか「え? 魔女の結界」
 さやか「そんな……」
 マ ミ「本当よ。周囲を見て。砂浜と海が果てしなく続いているでしょう」
 杏 子「海から来るか、砂浜から来るか。それが分かるまで下手に動かない方がいいようだな」
 マ ミ「ねえ、あれを見て。海面が盛り上がってくるわ」
 杏 子「すると海か」
 ほむら「出てくるわよ」
 ザバァァン。
 ほむらの言葉が終わると同時に海中から魔女が姿を現した。

 海中から現れたのは身長3メートルはあろうかと思われる美しい全裸の女性だった。その下半身は毒々しい外見の巨大なヒョウモンダコになっている。
 人魚の蛸バージョンと言うのだろうか。美女とヒョウモンダコの組み合わせが不気味さを強調している。
 杏 子「現れやがったな」
 さやか「なにあれ~。気持ち悪い」
 ほむら「どうやら魔女と使い魔が一体化しているようね。初めて見るタイプだわ」
 マ ミ「まさか避暑地で魔女退治する事になるとは思ってもみなかったわね」
 さやか「これも魔法少女の宿命かしら」
 杏 子「結界に取り込まれた時点で戦う以外の選択肢は選べない。しかたねぇ、相手をしてやるか」
 まどか「頑張ろう、ほむらちゃん」
 ほむら「ええ」(どんな時でもマイペースなまどか。そんなところも好きよ)
 杏 子「それじゃ……」
 マ ミ「楽しい休みを邪魔する……」
 さやか「KYな魔女と使い魔を……」
 ほむら「退治すると……」
 まどか「しましょう」
 ソウルジェムを取り出した五人は思い思いのアクションで魔法少女に変身した。

魔法少女勢揃い
(C)Magica Quartet/Aniplex/Madoka Partners/MBS

 マ ミ「まずは触手から退治しておいた方がよさそうね。みんな、ちょっと離れていて」
 そう言うとマミは空高く飛び上がり、大量のマスケット銃を召喚した。
 さやか「出たぁ、マミさんのマスケット銃大量召喚」
 まどか「あれなら複数のターゲットを攻撃するのにピッタリだね」
 マ ミ「射ぬけ、悪なる闇を。スペクタキュラー・デッド・オブ・アンリミテッド(Spectacular Dead of Unlimited)」
 杏 子「毎回毎回、決めゼリフと技名を叫んでるけど恥ずかしくねぇのかな。あたしには絶対にマネできない」
 さやか「いいじゃない、いかにも魔法少女って感じがして」
 まどか「わたしも技名を考えようかなぁ」
 ほむら「まどか、それはやめた方がいいと思うわ」
 まどか「そうかなぁ」

 こんな会話が地上でかわされている間にも、マミが召喚した数十丁のマスケット銃から一斉に発射されたエネルギー弾は魔女を中心とした海面一帯を撃ち続ける。
 杏 子「おいおい、ちょっとやり過ぎじゃねえか」
 さやか「きっとバカンスを邪魔されて怒ってるのよ」
 まどか「マミさ~ん、頑張ってぇ」
 数十秒後、ようやく一斉射撃が止んだ。同時にマミが地上へ降り立つ。
 マ ミ「ふう。ちょっとハリキリ過ぎちゃったわ」
 杏 子「ハリキリ過ぎだよ」
 マ ミ「それより使い魔は?」
 ほむら「よく見えないわ。あれだけの攻撃だから無傷って事はないと思うけど……」
 波際の砂が巻き上げた砂煙も晴れ、徐々に視界が開けてきた。
 杏 子「どうだ。決着か?」
 マ ミ「う、嘘でしょう。無傷よ」
 杏 子「なにッ!」
 ほむら「そんな馬鹿な……」
 さやか「バリアか何かで攻撃を防いだのかしら」
 杏 子「チッ。面倒くせぇヤツが出てきたな」
 まどか「あの触手に何か秘密があるんじゃないのかな」
 ほむら「そうかも知れないわね。わたしが様子を見てみる」
 杏 子「どうするんだ、ほむら
 ほむら「まかせておいて」
 そう言うとほむらは時限爆弾を三つ召喚し、魔女に向かって投げつけた。
 ボムッ。ボムッ。ボムッ。
 数秒後に三つの爆弾が同時に爆発した。爆風によって再び砂煙が周囲に立ち込める。
 杏 子「今度はどうだ?」
 さやか「……。駄目だわ。やっぱり無傷よ」
 まどか「そんなぁ」
 マ ミ「どうなっているの」
 さやか「攻撃が全く通用しない魔女がいるなんて」
 ほむら「いいえ、美樹さやか。攻撃が通用しないんじゃないわ。使い魔の触手が魔女本体を守っているのよ」
 さやか「え? ど、どういう事」
 ほむら「爆弾が爆発した直後に時間を止めて分かったわ。あの使い魔は八本の触手でドーム状の防御壁を作り、魔女本体を覆って爆発から守っていたのよ」
 杏 子「エネルギー弾の一斉射撃にも爆弾にも堪えられる触手か。やっかいだな」
 ほむら「これは推測だけど、無数の吸盤からエネルギーを排出して膜を作り、それで防御壁を保護しているのよ。吸盤一つから排出するエネルギーは微々たる量でも数が揃えば相当のエネルギーになるわ」
 マ ミ「暁美さんの推測は当たっているかも知れないわね。剥き出しの触手がエネルギー弾や爆弾に耐えられる筈がないもの」
 さやか「それじゃ、魔女本体を倒すには近距離からの直接攻撃しか方法がないわけ?」
 マ ミ「触手の防御壁を無効化できないのであれば、それしか方法はないわね」
 鉄壁の防御でマミとほむらの攻撃に耐えた魔女は逆襲のチャンスとさとったのか、目を赤く光らせ五人の魔法少女を睨みつけた。

 杏 子「今度はヤツの攻撃がくるみたいだぜ」
 マ ミ「みんな、気をつけて」
 魔 女「ギィエェェェ」
 魔女の奇声と同時に使い魔は前方の触手二本をクネクネと動かし、数秒後、その触手で浜辺の魔法少女たちに襲いかかってきた。
 杏 子「マミ、ほむらまどかを頼む。さやか、ぬかるなよ」
 さやか「分かってるって」
 さやかは月明かりに輝やく二本のサーベルを構え、杏子は巨大な槍を両手で持つ。
 さやか「でやぁ」
 杏 子「おりゃぁ」
 気合の掛け声と共に襲い来る触手を迎え撃つ二人。
 ザクッ。ザシュッ。
 ザクッ。ザシュッ。
 見事な一撃によって二本の触手は切断され、断面から赤黒い液体を吹き出しながら砂浜に落ちる。
 ピクピクと動く触手の断末魔はグロテスクだったが、その液体で周囲の砂が赤く染まっていく様子も不気味であった。
 魔女「ギニァアアア」
 悲鳴のように甲高い叫び声をあげた魔女は、途中から先が切断された二本の触手を引き戻す。
 杏 子「このままじゃ埒があかねえ。一気に仕掛けるか」
 ほむら「待って、佐倉杏子。まだ敵は手の内を明かしていない。もう少し様子を見るべきだわ」
 杏 子「そんな悠長な事を言ってられるかよ」
 さやか「ほむらの言う通りよ。魔女自身の攻撃方法も不明なんだし、下手に近づくのは危険だわ」
 杏 子「だけどよぉ……」
 ほむら「あぶないッ」
 杏 子「え? ……ほ、ほむら
 杏子がハッとした次の瞬間、彼女の体はほむらに抱きかかえられていた。
 まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」
 マ ミ「ケガはない?」
 杏 子「あ、ああ。しかし、何がどうなってるんだ」
 マ ミ「あなた方が言い合っている時、蛸の口から液体が吐き出されたのよ。ほら、そこを見て」
 マミが指さした所を見ると、紫色の液体がジュワジュワと音を立てながら砂浜に染み込んでいる。
 ほむら「あの毒々しい外見はヒョウモンダコよ。唾液には神経毒のテトロドトキシンが含まれているわ。皮膚から毒性が吸収される事はないと思う【註1】けれど、相手は使い魔だから動物学の常識は通用しないかも知れない。万が一の事を考えての行動よ」
 まどか「ほむらちゃんって物知りだねぇ」
 魔女との戦闘中でありながら、まどかが変なところで感心する。
 杏 子「す、すまねぇ。助かったよ」
 魔 女「キエェェェ」
 魔女が奇声を発すると、下半身のヒョウモンダコは口から紫色の液体を砂浜に向かって吐き出した。まるでホースから放水しているように見える。
 杏 子「同じ手を二度もくうかよ」
 不意打ちでない限り、この程度の攻撃ならば難なく回避できる。
 五人は吐き出される毒液を避けながら四方に散り、相手の出方を待った。

 魔女「グググググ。ゴモォォォォ」
 美しい顔に憤怒の形相を浮かべ、魔女は次の攻撃を仕掛ける。
 切断されていない六本の触手が海上へ出し、四方にバラけた魔法少女たちを狙って触手に付着している吸盤を手裏剣のように飛ばしてきたのだ。
 さやか「また飛び道具。いい加減にしてほしいわね」
 ザクッ。
 杏 子「まったくだ」
 ザクッ。
 文句を言いながらも迫り来る吸盤を撃墜していく二人。しかし、休む間もない襲撃におされ始め、だんだん動きが鈍くなってくる。
 ほむらは銃を召喚して応戦し、まどかとマミも正確なコントロールで次々と襲いくる吸盤を撃ち落としていくが、圧倒的数の前に自分の身を守るのが精一杯で仲間の援護射撃をする余裕がない。
 さやか「キャッ」
 悲鳴がする方を見ると、さやかが左腕から血を流しながら片手でサーベルを振るっている。足元には鋭い刃を光らせる一本のサーベルが落ちていた。
 杏 子「さやか、大丈夫かッ。くそっ、忌々しい吸盤だ」
 さやか「な、なんとかね……。痛ッ」(駄目だ、左肩が痛くて思うように動かない。このままじゃ……やられる)
 吸盤自体に特別な攻撃能力はないものの、触手から剥離して飛来する際のスピードが速いので弾丸と同じ殺傷力がある。
 左肩をかすめただけとはいえ、まだ中学生のさやかには相当なダメージであった。
 痛みに耐えながら右手だけで戦い続けるさやか。しかし、その動きは徐々に鈍ってくる。
 さやか「もう駄目だ……」
 自分に向けて新たな吸盤が発射されたのは確認できたが、それを迎撃する力も余裕もない。
 さやか(癒しの祈りで契約しながら、自分自身の傷は回復させられないなんて……。わたしって、ほんとバカ……。まどかほむら、マミさん、さようなら。杏子、今までありがとう)
 さやかが目を閉じて死を覚悟した時、奇蹟は起こった。
 ザシュッ。
 杏 子「お休みの時間には早いぜ」
 さやか「きょ、杏子……」
 さやかが目を開けると目の前には杏子の背中があった。四方から迫り来る吸盤の大群を華麗な槍さばきで撃ち落としていく。
 杏 子「こんなところで大切な仲間に死なれちゃ寝覚めが悪いからな」
 さやか「な、仲間」
 いつも口喧嘩ばかりしている杏子の口から自分に向けて「仲間」という言葉が発せられ、さやかは面食らった。
 杏 子「ぼんやりするな、もう少しの辛抱だ。そろそろ敵も弾切れらしい」
 そう言えば雨霰(あめあられ)と飛び来る吸盤の数が目に見えて減ってきている。
 魔 女「キョオォォォ」
 負傷したさやかと彼女を庇う杏子。ターゲットを切り替えた魔女は負傷した前方の触手まで海面へ出し、二人に向かって残りの吸盤を惜し気なく集中放射した。
 杏 子「チッ。なんて数だ。マミのマスケット銃乱射よりもタチが悪いぜ」
 さやか「ごめん、杏子。わたしのせいで……あんた一人に苦労かけちゃって」
 杏 子「気にするな。仲間が困ってる時に手を貸すのが友情ってもんだろ」
 さやか「きょ、杏子……。グスッ。どうも……あり……が……とう」
 杏 子「さぁて、覚悟を決めるか」
 杏子があきらめかけた時、銃声と共に幾つかの吸盤が砂の上へ落ちた。
 マ ミ「やらせないわよッ」
 杏 子「マミッ!」
 続けて飛来する吸盤も次々と撃墜され、杏子とさやかの周辺に吸盤の山が築かれた。
 まどか「さやかちゃんも杏子ちゃんも傷つけさせない」
 ほむら「二人はわたしたちが守ってみせる」
 さやか「まどか! ほむら!」
 杏 子「へへへ。最後の最後まで奇蹟は信じてみるもんだな」
 さやか「そうね」

 全ての吸盤を撃ち尽くした魔女はツルツルになった触手で海面を叩きながら悔しがっている。
 ほむら「どうやら吸盤を撃ち尽くしたようね。巴マミ、今なら触手の防御壁を破壊できるかも知れないわよ」
 マ ミ「分かったわ」
 空高く飛び上がり、マミは再び大量のマスケット銃を召喚した。
 マ ミ「負の世界からの使者よ、永久(とこしえ)の闇に沈め。エンド・オブ・デストラクション(End of destruction)」
 まどか「あれ? さっきと技の名前が違うね」
 杏 子「思い付きで技名を叫んでるんじゃねえか」
 ほむら「そうかも知れないわね」
 さやか「あれはマミさんだから似合うのよ」
 そんな事を言っている間に一斉射撃も終わり、マミが地上へ降り立った。
 マ ミ「ふぅ。今度はどうかしら?」
 杏 子「……」
 まどか「……」
 さやか「……」
 ほむら「……。見て、今度の攻撃は効果があったわ」
 杏 子「すげぇ。ドーム状の防御壁がハチの巣じゃねえか」
 魔 女「ウグググゥゥゥ」
 ほむら「今がチャンスよ。一気にトドメを刺しましょう」
 杏 子「あたしが行く。この槍で魔女の心臓を一突きして決着だ」
 マ ミ「鹿目さん、暁美さん、あなたたちは杏子の後方支援をお願い。死角からの攻撃に注意してあげて」
 まどか「はいッ」
 ほむら「分かったわ」
 マ ミ「さあ、美樹さん。傷を見せて頂戴。……。あらあら、こんなに血が流れているわ。痛かったでしょう。もう少し我慢してね」
 さやか「は、はい……。うくッ」
 杏 子「この野郎、よくもさやかに傷を負わせやがったな。あたしが落し前をつけてやるぜ」
 傷の痛みに顔をしかめるさやかに一瞥をくれ、杏子は槍の柄をグッと握り締めながら魔女に向かって走って行く。
 さやか「きょ、杏子ったら」
 まどか「杏子ちゃん、よっぽどさやかちゃんの事が好きなんだね」
 さやか「なに言ってんのよ、まどかったら」
 ほむら「自分の気持ちに少しは素直になりなさい、美樹さやか」
 さやか「ほ、ほむらまで……」
 マ ミ「仲良きことは美しきかな。友情は大切にしないとだめよ」
 さやか「ゆ、友情……ですか」
 マ ミ「そうよ。夕食の時に杏子は「今日の休み時間にさやかが……」とか「さやかと一緒のグループになっちまってよぉ」とか美樹さんの事ばかり話すの。照れ隠しもあって自分の気持ちを素直に表現できないのね。不器用って言っては口が悪いけれど、そんなところが杏子の可愛いところでもあるわ」
 諭すように言いながらマミは治癒魔法でさやかの傷を癒す。肩の肉が少し抉れただけなので傷痕も残らず、治癒は数秒で完了した。
 この程度の傷ならば、マミの治癒魔法でもじゅうぶんに完治させられるのである。

 波際まで走り寄った杏子は勢いをつけて飛び上がり、魔女までの距離を一気に詰めた。
 杏 子「でやぁぁぁ」
 触手をボロボロにされた満身創痍の魔女は反撃するパワーも失くしたのか、杏子の雄たけびに何の反応もしない。
 ズブッ!
 杏子の槍が魔女の心臓を貫いた。
 魔 女「ギシャアアァァァァ」
 まどか「やったぁ」
 さやか「杏子……」
 マ ミ「どうやら勝負あったようね」
 ほむら「ええ」
 杏子が槍を引き抜くと魔女の姿は黒い霧になって無影無踪した。
 魔女の消滅で結界が破れ、再び静かな夜の浜辺に戻る。
 マ ミ「御苦労様、杏子」
 杏 子「ああ」
 ほむら「あの魔女は孵化した直後だったのかも知れないわね。あるいは変異種だったのかしら」
 杏 子「使い魔と一体化した魔女なんて聞いた事ねえし、その可能性はあるな」
 マ ミ「後先考えない力押しの攻撃、単調な攻撃パターン。思った以上の敵ではなかったのが幸いだったわね」
 ほむら(ソウルジェムの呪縛がなくなったにも関わらず、使い魔や魔女が存在する理由。その謎を解くカギが、このような変異種の誕生にあるのかも知れない……)
 杏 子「まあ、今回も無事に勝てたし、結果オーライってとこだな」
 さやか「……きょ、杏子」
 杏 子「ん? どうした、さやか
 さやか「さっきは……ど、どうもありがとう。危険を顧みず助けに来てくれた杏子、すごく格好よかった」
 杏 子「気にすんなよ」
 さやか「……」
 杏 子「さやかの為なら自分の命だって賭けられる。だって、あ、あたしは……あんたが……す、す、す……」
 さやか「なによ、『す』って?」
 杏 子「だから……。その……」
 マ ミ「(小声で)ああん、もう、じれったいわねぇ」
 ほむら「(小声で)好きなら好きと素直に告白すればいいじゃないの」
 まどか「(小声で)夜の浜辺で愛の告白なんて漫画みたい」
 杏 子「す、す……。す、少しは察しろ、この鈍感娘」
 さやか「ど、鈍感娘ぇ? 失礼ね、なんて言い方。あ~あ、ガサツな戦闘バカに御礼なんか言うんじゃなかったわ」
 杏 子「ガサツな戦闘バカだと? それが恩人に対する態度か」
 さやか「助けてくれって言った覚えはないわ」
 杏 子「かわいくねぇ奴だな。目をウルウルさせながら『危険を顧みず助けに来てくれた杏子、すごく格好よかった』なんて言ってたくせに」
 さやか「うッ。そ、それを言われると……」
 まどか「はははは。さやかちゃんと杏子ちゃん、いいコンビだね」
 ほむら「お似合いのカップルと言うべきかしら」
 マ ミ「喧嘩するほど仲がいい。さすが名コンビね」
 杏 子「へ、へへへへ。あ~っはははは」
 さやか「くすっ。あははははは」
 杏 子「せっかくの旅行だ、喧嘩はやめようぜ」
 さやか「そうね。ごめん、杏子」
 杏 子「あ、あたしの方こそ。悪かった」
 マ ミ「どうやら仲直りしたようね。さあ、帰って冷たいスイカでも食べましょう」
 杏 子「スイカだって。さすがマミ、気がきくなぁ」
 さやか「食べ過ぎてお腹を壊さないでよ」
 杏 子「分かってるって」


⇒ To be continued



【註1】テトロドトキシンは一部の真正細菌によって生産されるアルカロイド。基本的には経口摂取した場合に効果を発揮すると言われています。皮膚から浸透した事例は確認できず、皮膚浸透による効果の有無については調べきれませんでした。余談になりますが、アメリカの推理ドラマ「刑事コロンボ 美食の報酬」ではテトロドトキシンを利用した殺人が描かれています。
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