FC2ブログ

2017-07

見滝原帝都探偵局  紺碧荘殺人事件(事件編)

【五】

 則 助「今日は生憎の天気でしたが、明日こそは大物を釣りあげたいですねぇ」
 松 雄「まあ、一時的な大雨だったから明日は大丈夫だろう」
 話題が途切れて一瞬の沈黙が訪れた時、サロン奥のテーブルで話し合う男性の声が聞こえてきました。
 甚 六「明日の釣果一等は僕が頂きますよ。この竿は、創業百五十年の暖簾を誇る「品川屋」の専属職人が半年かけて作り上げた会心の作ですからね。そこらの職人が作った竿とは物が違いますよ、物が」
 勝 男「釣りは道具じゃありませんよ、甚六さん。自慢じゃありませんが僕は自作の竿で一時間に21匹という大記録を数えた事があるんですよ。お忘れではありませんか、第三回和竿必釣会遠征旅行での好成績」
  栄 「あら、何と言っても年季の入った竿が一番よ。使い込んで手になじんだ竿に勝る名品はないわ」
 いつの間にか杏子事務局長とさやかさんが向こうテーブルの方に視線を送り、自慢話に耳を貸しています。
 杏 子「おいおい、何だか訳の分からない話が聞こえてこないか」
 さやか「腕自慢をしているのか、道具自慢をしているのか、どっちなのかしら」
 杏 子「ちょっと、見なよ。連中、竿まで取り出して自慢を始めたわよ」
 さやか「あの大荷物は竿だったのね。こんな所にまで持ち込むなんて何を考えているのかしら」
 杏 子「病肓に入る。あんな棒を自慢して何が面白いのかしら」
 マ ミ「趣味は人それぞれでしょう。釣りが好きな方にとっては竿と腕が自慢のタネなのだから、良い物が手に入ると吹聴したくなるものよ」
 さやか「誰かさんが甘い物を見境なく食べたり飲んだりするのも趣味なのかしら」
 杏 子「それは関係ないだろう、さやか
 両テーブルで話が盛り上がり始めた頃、紺碧荘の経営者である穴子海司(あなご かいじ)氏がサロンへ姿を見せました。
 穴 子「皆様、このたびは紺碧荘を御宿泊先にお選び頂き、まことにありがとうございます。本日は生憎の悪天候でしたが、ラジオ放送の天気予報【註2】によりますと明日は快晴のようです。海釣りや山歩きを存分にお楽しみ下さいませ」
 勝 男「よぉし、明日は釣りに行けるぞ~」
 穴 子「こちらの別館でございますが、本日は午後九時半より別館二階の劇場にてアメリカのトーキー映画「MAGICA」を上映致します。よろしければ、皆様お誘い合わせのうえお越し下さいませ」
 勝 男「へえ、「MAGICA」を上映するんですか」
  栄 「勝男、この活動写真を知っているの?」
 勝 男「探偵小説好きなら誰でも知っている仏国作家の短編作品を大胆に脚色した探偵映画で、たった二十分の長さだけど、最初の十分で不可解な謎が続々と提出され、残り十分で巴里警視庁のシャルロッテ探偵が一気に謎を解明するんだって。一分たりとも目が離せない傑作だって中島が言ってたんだ。確か、去年の『新生青年』に「探偵映画「MAGICA」を見る」ってコラムが中島の署名原稿で載っていたよ。僕は上映初日に見たんだ」
 則 助「それは面白そうだなぁ。この劇場では、そんな新しい作品まで見られるのかい?」
 穴 子「はい。配給元の博文社を経営される森下天渓社長とは古い付き合いがありまして、その関係で外国の新作活動写真のフィルムを借り受けております。当観劇場では活動写真上映の他、東京市内から劇団を招いて演劇を上演する事もございますし、年末にはサロンを利用して年忘れ舞踏会を開催する予定もございます」
 杏 子「サロンを解放して舞踏会。だから仕切りがないわけか」
 穴 子「左様でございます。ですが、過去に御利用されたお客様より「簡単な仕切りを設けて部屋を区分してほしい」との御意見を頂戴しております為、現在、検討中でございます」
 ようやく、仕切りのないサロンの謎が解けました。この広さを活かして舞踏会を開くとは考えたものです。
 穴 子「それでは、これにて失礼させて頂きます。お楽しみのところ、お邪魔様でした」
 則 助「ああ、ちょっと御主人」
 穴 子「はい、なんでございましょう」
 則 助「活動写真の上映は九時半からだったよね。これから仮眠をするので、九時になったら起こしてくれないかなぁ。勝男くんの話を聞いていたら、僕も「MAGICA」を見たくなってしまったんだ。女中さんにヘアのドアをノックして声をかけるよう言っておいてくれ。頼むよ」
 穴 子「かしこまりました。それでは、これにて」
 深々と頭を下げ、穴子氏はサロンを出て行きました。
  栄 「仮眠って、具合でも悪いの? 則助さん」
 則 助「いいえ。実は昨日、井坂先生の原稿が入稿時間ギリギリに届いたので差し込み作業やレイアウト調整をしているうちに徹夜しちゃいましてねぇ。みなさんの自慢話を聞いていても退屈なので、一眠りしてこようと思ったんですよ。まだ八時十分過ぎだから、一時間くらい眠れるでしょう。それじゃ、とりあえず失礼しますね」
 言うだけの事を早口で言った則助氏は、これ見よがしにアクビをしてサロンから出て行かれました。
 松 雄「いやぁ、あいかわらずの毒舌だね。則助くんは」
 勝 男「自慢話を聞きたくなければ最初から来なければいいじゃないか。自分だって釣りとは関係ない仕事の自慢話を鼻高々で喋るくせに」
 甚 六「親父の原稿を貰う時は見苦しいくらいに媚び諂(へつら)いながら、裏に廻るとアレだよ。ハイエナ社と縁を切る事、本気で親父を説得しないといけないな」
 金 沢「へぇ。浪尾さんって意外と評判が悪いんですね」
  栄 「金沢さんは入会したばかりだから知らないわよね。則助さん、いつも余計な一言でトラブルを呼ぶのよ。ちょっと大きな獲物を釣り上げただけでも話を何倍にも膨らませて自慢するし、あまり関わらない方がいいわよ」
 甚 六「そうそう。ハイエナ社の浪尾則助は文芸業界でも評判がよくないからね。下手に好かれるとロクな事がないよ」

【六】

 杏 子「王手!」
 さやか「ちょ、ちょっと。嘘でしょう」
 杏 子「ヘボ将棋 王より飛車を 可愛がり。角飛車の動きばかり見てるから油断するんだよ。まだまだ修行がたりないな、さやか
 さやか「くぅぅぅ。もう一回。もう一回、勝負よ」
 杏 子「いいわよ。何から、今度は角と飛車を落としてやろうか」
 さやか「ば、馬鹿にしないでよ」
 こちらのテーブルでは、杏子事務局長とさやかさんが将棋で熱い勝負を繰り広げている……と言いたいのですが、実力の差が大きい為か杏子事務局長の3戦3勝、しかも全ての勝負は数分という短時間で決着しております。
 一方、奥のテーブルでは釣り談義や竿自慢が続いており、今も栄夫人が竿を持ちながら性能の良さを熱く語っておりました。
  栄 「……と言う構造になっているの、この竿は。穂先に真鍮の管を用いると同時に絹糸で補強しているから、アタリが取れた時に見事な流線形を描くのよぉ。でも、普段はピシッと気持ち良いくらいに真っ直ぐ伸びているでしょう。わたしの性格と同じでね。この撓(しな)りで獲物の大きさを推測できるし、見た目よりも性能を重視した一品なんだからぁ」
 勝 男「姉さんの竿が凄いのは分かったから、あまり振り回さないでよ。危ないじゃないか」
  栄 「大丈夫よ、あんたを鰹と間違えて釣りあげたりしないから」
 勝 男「いや、そういう問題じゃなくて……。あッ、いたぁ」
  栄 「あら、ごめんなさい」
 勝 男「ほら、言わんこっちゃない。早く竿を下(おろ)して」
  栄 「分かったわよ。あ、そうだ。ねえ、見てよ。勝男」
 勝 男「今度は何さぁ」
  栄 「この印籠継ぎ、段差を全く感じさせないのよ。甚六さんの竿は年季の入った職人が作ったようだけど、わたしの竿だって負けちゃいませんからねぇ~。ほらほら、こんなにスムーズに穂先を分離させられるのよ。それでいて、差し込んだ後は抜けにくい。その秘密はねぇ……」
 杏 子「みっともない。いい年した女が仁王立ちして竿なんか振り回して」
 さやか「あの姉弟のコンビも笑えるわね。今の見た? まるで漫才をやってるみたい」
 杏 子「凸凹コンビってヤツね」
 ほむら「ふふふ」
 マ ミ「クスッ」
 まどか「うふふふふ」
 杏子事務局長のお言葉は御自分とさやかさんの会話にも当てはまるのですが、その事に当事者二人だけが気付いていないようです。
 杏 子「さて、こちらも勝負再開だ。次も平手【註3】で勝負よ」
 さやか「望むところ」
 マ ミ「ねえ、美樹さん」
 さやか「何ですか、マミ局長」
 マ ミ「よかったら、この勝負の相手を代わってくれないかしら」
 さやか「マ、マミ局長が杏子さんと指すんですか」
 マ ミ「ええ。なんだか二人の勝負を見ていたら、久しぶりに将棋を指したくなってしまったわ」
 杏 子「あたしは構わないよ。弱い相手には飽き飽きしていたところだし、マミなら相手にとって不足はない」
 さやか「杏子さんに異存がなければ、わたしも構いませんよ。それでは席を換りましょう」
 マ ミ「ありがとう。悪いわね」
 まどか「マミ局長と杏子さんの対局、どっちが勝つんだろう。ほむらちゃんの予想は」
 ほむら「巴マミ局長の勝利だと思うわ」
 まどか「そ、即答ね。さやかちゃんは」
 さやか「わたしもマミ局長の勝利に一票」
 ほむら「鹿目まどかさんの予想は」
 まどか「う~ん。難しいけれど、やっぱりマミ局長が勝ちそうな気がする」
 杏 子「あ、あんたたち……。いいわよ、いいわよ。あたしは憎まれ役がピッタリなんだ、喜んでマミの引き立て役を買ってやるわ」
 さやか「まあまあ、拗ねないの。これを起爆剤に棋聖の腕前を存分に発揮して下さいな」
 杏 子「ふん。見えすいた事を言って。まあ、いいや。マミ、勝負よ」

【七】

 杏 子「ぐッ……。ま、負けた」
 さやか「さすがマミ局長。杏子さんに勝ってしまったわ」
 ほむら「佐倉杏子さんのネバりも見事でした。勝負を捨てずに最後まで王将を守ろうとする姿勢は誇り高い棋士そのものです」
 まどか「実力者同士の対局は凄いですね。見ている側にも指し手の熱気が伝わってきましたよ」
 マ ミ「どうもありがとう」
 さやか「まさに熱戦でしたね。あんなに長い勝負は見た事がありませんでした」
 各人が名勝負の感想を述べていると、奥のテーブルから栄夫人の金切り声が聞こえてきました。
  栄 「いたぁ~。あたたたた」
 勝 男「ど、どうしたの、姉さん」
 松 雄「だ、大丈夫かい、栄?」
  栄 「きゅ、急にお腹が痛くなってきたの。あたぁ~。ちょ、ちょっと、お手洗いへ行ってくるわ」
 言うが早いか、竿を柱時計の脇に立て掛けると同時にドタドタ足音を響かせながらサロンから出ていきます。
 杏 子「淑女の嗜みがまるで感じられないわね」
 さやか「日がな一日、何かを食べている誰かさんも淑女の嗜みに欠けると思うけど」
 杏 子「何とでも言いなさい」
 甚 六「もう九時を過ぎた事だし、どうします。部屋に引き揚げましょうか」
 松 雄「本当だ。九時五分じゃないか。まだ九時まで十分くらいあると思っていたよ」
 松雄氏の言葉につられ、わたしたち五人は柱時計に目をやりました。文字盤は確かに九時五分を指しております(柱時計が壁に掛っている位置は【図3】を参照して下さい)。

【図3】座席表(和竿必釣会メンバー)

 松 雄「それじゃ、栄が手洗いから戻ったら本館へ戻ろう。明日は午前四時起床だったね」
 甚 六「ええ。午前五時半にはS海岸まで降りていなければなりませんので、ここを五時少し前には出ましょう」
 勝 男「あ~あ、明日が楽しみだなぁ」
 金 沢「わたし、海釣りは初めてなんです。緊張するわ」
 甚 六「僕も今から腕が鳴るよ。早く、この竿で大物を釣り上げたいなぁ」
 さやか「まだ言ってるわよ、あの人たち」
 杏 子「放っておきなよ。それより、マミ。もう一局だ。次は負けないからな」
 マ ミ「ちょっと待って、杏子。ねえ、鹿目さんも暁美さんも見ているだけじゃ退屈でしょう。どう、二人で対局してみない」
 ほむら「やりましょう、鹿目まどかさん」
 ほむらさんが信じられない反応を見せて即答します。 
 杏 子「そうね、この二人の対局というのも面白そうだし。まどか、一局指してみなよ」
 マ ミ「遠慮しなくてもいいのよ」
 さやか「そうよ。まどかほむら、こんな勝負はめったに見られないわ。さあさあ、こっちへ座って。駒の動かし方は知っているでしょう」
 まどか「え、ええ。それじゃ、お邪魔します」
 あまり将棋には詳しくないのですが、せっかくの御指名ですし、ほむらさんもヤル気充分なので一局指す事に致しました。
 ほむら「それでは、お願いします」
 まどか「こ、こちらこそ」
 杏 子「それじゃ、対局開始」
 パチ。パチ。パチ。パチ。パチ。パチ。・・・・・・・・・
 まどか「ええと、こうなるから。王手」
 杏 子「そこで飛車を成らせて王手を仕掛けるとは、なかなかの勝負師ね」
 ほむら「……」
 マ ミ「暁美さん、頑張って」
 さやか「わたしより将棋が強いじゃないの、二人とも」
 ほむら「駄目だわ。逃げ場がない。まいりました」
 マ ミ「二人とも、お疲れ様」
 杏 子「熱い勝負だったわね。まどかの勘とほむらの戦略、どちらが勝ってもおかしくはなかったわ」
 わたしたちの対局が終わった時、サロンの入り口から栄夫人が戻って参られました。
  栄 「ああ、サッパリした。それで、これからどうするの」
 松 雄「甚六くんとも話し合ったんだが、明日は早いんで本館へ戻る事にしたよ。まあ、例の活動写真が見たいなら二階で見てきてもいいけど、僕は休ませてもらう」
 勝 男「僕も。活動より釣りの方が好きだから」
 甚 六「明日は午前五時前に出発予定ですから、寝すごさないように気をつけて下さい」
 金 沢「わたしも早起きに自信がないので休む事にします」
  栄 「みんなが戻るんなら、わたしも戻るわ。ちょっと待ってて、竿をしまうから」
 勝 男「早くしてよぉ、姉さん」
  栄 「分かってるわよ」
 勝 男「もう、姉さんに付き合ってられないよ。先に出てるからね」
 金 沢「わたしも、お先に失礼します」
 甚 六「僕は竿の手入れをしないと。それじゃ、また明日」
 そう言うと三名の男女は次々にサロンから出て行きました。個性が強い方の集まりだからでしょうか、チームワークが今一つ欠けているようです。
 栄夫人が片付け作業をしている最中、再び松雄氏がやってきました。
 松 雄「どうもお騒がせしました。さぞ、うるさかった事でしょう。うちの連中、釣りの事になると周囲が見えなくなってしまいまして……」
 マ ミ「いいえ。とんでもない事でございます。こちらの方こそ、かしましいばかりで。さぞ、御迷惑だった事と存じます」
 松 雄「いやいや、そんな事はありませんよ。こんな美しい御婦人連のお喋りなら、まる一日でも聞いていたいくらいです」
 マ ミ「お、恐れ入ります」
  栄 「松雄さん、何をしているの。行くわよ」
 松 雄「それでは、僕達は明日が早いので解散します。後は皆さんでゆっくりとくつろいで下さい。では」
 マ ミ「ごきげんよう」
 言うだけの事を言い、松雄氏は栄夫人の厳しい視線を全身に浴びながらサロンの入口に向かって走って行きました。
 さやか「さて、邪魔者も消えたわ。勝負再開よ、杏子さん」
 杏 子「いいよ、相手してあげる。まあ、今回も五分以内に決着がつくだろうけどね」
 さやか「失礼な。そんな大口を叩くなら……。ねえ、まどか
 まどか「なに?」
 さやか「本当に五分以内の決着となるか、あの時計で計ってくれないかしら」
 まどか「いいわよ」
 顔をあげて柱時計を見ると……何と言う事でしょう。まだ九時十分でした。
 まどか「あれ、まだ九時十分なんだ。もっと時間が経っていたかと思っていたのに……」
 杏 子「なんだって」
 さやか「嘘でしょう」
 わたしの言葉に全員の視線が柱時計を注がれます。しかし、誰が見ても時計の針が指し示す時刻は九時十分。これは動かしがたい事実なのです。
 マ ミ「時間の感覚が先程とは逆ね」
 杏 子「時間に縛られない旅行だから感覚が鈍ったのかしら」
 さやか「それはあり得る」
 ほむら「そうでしょうか?」
 マ ミ「まあ、いいじゃないの。のんびりできるのだから」
 ほむら「……そうですね」
 杏 子「手洗いから五分で御帰還とは、あの女の次は使いたくないわね」
 さやか「同感」
 まどか「ひ、ひどい言われようね」
 ほむら「確かに、あまり品のよい御婦人とは言えないわ」
 杏 子「よし。今度の勝負は雪隠詰めで終わらせてやるか」
 さやか「そう思い通りにはいかせないわ」
 賑やかな中、四度目になる杏子事務局長とさやかさんの対戦が始まりました。
 
【八】

 杏 子「ほら。これで王手。予告通りの雪隠詰めだ」
 さやか「うぅぅ。また負けた」
 杏 子「さやかは目の前しか見てないから駄目なんだよ。さっきも言ったでしょう」
 さやか「こうなったら……。マミさん、ほむらまどか
 まどか「え?」
 ほむら「まさか」
 マミさん「どうしたの?」
 さやか「一局、お相手願います」
 杏 子「やめておきなよ、さやか。さっきの対局を見ていただろう。あんたじゃ勝てないよ、ほむらにも、まどかにもね。ましてや、あたしを倒したマミに勝てるわけないでしょう」
 さやか「そ、そんな事……。やってみないと分からないわ」
 まどか「どうしましょう、マミ局長」
 マ ミ「まあ、美樹さんが望むなら」
 ほむら「お相手しましょう」
 さやか「よぉし。今度は負けないわよ」
 張りきって対局に臨むさやかさんでしたが……。結果は申すまでもございません。さやかさんの全敗です。いずれも40手未満で勝負がつきました。
 さやか「やっぱり杏子さんの言う通りだったわ。わたしには目の前の事しか見られないし、将棋の才能もないんだ」
 マ ミ「そう力を落とさないで。将棋では役に立たなかったけれど、目の前の事に全力で集中できるのは美樹さんの良い所だわ。将棋だって、もっと場数を踏めば強くなれるはずよ。だから元気を出して」
 さやか「は、はい」
 気落ちしているさやかさんを優しく励ますマミ局長。母性溢れる優しさ、心から尊敬できます。
 杏 子「(小声で)何だか詭弁で相手を丸め込む講釈師みたいな慰め方だなぁ。マミも口がうまいや」
 マ ミ「杏子、聴こえたわよ」
 杏 子「えッ……。き、聴こえたって、何の話かしら?」
 マ ミ「まったく、とぼけるのがうまいんだから」
 杏 子「もうすぐ九時半か。そろそろ部屋に戻ろうかな。あたしは活動を見る気がしないし」
 マ ミ「みんなはどうするの? 活動写真を見たければ、まだ間に合うわよ」
 まどか「わたしも部屋に戻ります。あまり活動には興味がありませんから」
 ほむら「わたしも」
 さやか「同じく」
 杏 子「それじゃ、片づけを済ませましょう。マミ、テーブルを拭いてくれる。あたしはカップとソーサーを片付けておくから」
 マ ミ「わかったわ」
 まどか「後片付けなら……」
 杏 子「いいから、あんたたちは座ってな。いつも下働きさせているんだから、こんな時くらいは先輩がサービスしてあげないとね」
 マ ミ「そうそう」
 こう言いながらもマミ局長と杏子事務局長は手際よく後片付けを済ませ、数分で洗い物からテーブル掃除まで終わらせてしまいました。思いやりある二人の先輩に恵まれ、わたしは(わたしたちは、と言うべきでしょうか)「見滝原帝都探偵局」という職場での激務に耐える事ができます。
 息の合った連携プレイにより、片付けは五分もかからずに済みました。
 マ ミ「さあ、照明を消すわよ」
 全員がサロンの外へ出たのを確認すると、マミ局長は壁際のスイッチを押して照明を消しました。最前まで賑やかだったサロンが暗闇の沈黙に沈みます。
 廊下へ出ると、杏子事務局長は銀の小箱から残りの花林糖を取り出し、ポリポリと齧りながらマミ局長に尋ねました。
 杏 子「明日はどうするんだい」
 マ ミ「そうね、天気が良ければ高原の向こうにある森へ行ってみましょう。なんでも、福禄茸という美味しい茸【註4】が自生しているそうよ。一人二本までは採ってもよいそうなので、みんなで探してお昼に頂きましょう」
 杏 子「福禄茸か。聞いた事はある。特殊な土壌でないと育たない食用茸だろう。高級料亭では一本食べるのにも大枚をはたくって言う茸が二本も食べられるとは幸せだ」
 マ ミ「それより、杏子。歩きながら物を食べるのはお止しなさいと言ったでしょう。あまり見っともいいものじゃないわ」
 杏 子「はいはい。蓮っ葉な女で申し訳ありません。以後は慎みます」
 さやか「そう言って、次の日には元の黙阿弥。まったく、杏子さんは口だけなんだから」
 このような会話をしながら渡り廊下を通って本館へ戻ってきたのですが、何やら慌ただしい雰囲気を感じます。
 杏 子「なんだか騒々しいが不審者でも入り込んだのかしら」
 マ ミ「ちょっと聞いてくるわね」
 さやか「きょ、局長。それなら、わたしが……」
 さやかさんの返事も待たず、マミ局長は自ら聞き込みに行かれました。
 しばらくしてマミ局長が戻られましたが、その口から驚くべき報告がもたらされました。
 マ ミ「緘口令が敷かれているのか、あまり詳しい話は聞けなかったけれど、どうやら人が亡くなったらしいわ」
 杏 子「なんだって!」
 マ ミ「午後八時過ぎにサロンを出て行かれた角刈りの頭の小太りな男性、覚えてるでしょう。亡くなったのは、この男性のようよ」


≪「紺碧荘殺人事件(介入編)」へ続く≫


【註2】ラジオ放送による天気予報は大正14年3月22日から開始されたと記録に残されています。
【註3】全20枚の駒を所定の位置に置いた状態から指される将棋の事。
【註4】福禄茸(ふくろくたけ)は架空の茸です。特に物語とは絡んできませんので、存在を覚えておく必要はありません。
スポンサーサイト
デリヘルもソープもイメクラも気に入った子がきっと見つかる
超大型リニューアル中の大好評風俗情報サイト!
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ryonablog475.blog2.fc2.com/tb.php/273-ebb5761d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

FC2カウンター

プロフィール

新 京史朗

Author:新 京史朗
好きな技(1):バスター技
好きな技(2):股裂き関節技
好きなシチュエーション:リョナ

最新記事

カテゴリ

小説 (85)
アニメ (33)
ゲーム (31)
アメコミ (23)
フィギュア (5)
映像・写真 (16)
DOA・無双 (114)
イラスト企画 (43)
鉄拳・スト鉄 (92)
漫画・絵物語 (107)
イラスト・挿絵 (51)
映画・イベント (34)
ウルトラヒロイン (12)
MUGEN・ドット絵 (2)
オリジナルヒロイン (8)
御挨拶・お知らせ・交流 (131)
魔法少女まどか☆マギカ (59)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR