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2017-10

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見滝原帝都探偵局  紺碧荘殺人事件(発端)

【はじめに】
 コミックマーケット80(開催:8月12日~14日)で発行された「魔法少女まどか☆マギカ」関連の新刊同人誌を読んでいたところ、これまで休止状態だった「まどマギ熱」が再燃してきました。
 購入した同人誌はクオリティが高く、最初から最後までタップリと楽しみながら大いに創作意欲も刺激され、自分でも「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作活動をしてみたくなり、当初の予定を変更して「~まどか☆マギカ」の二次創作作品を公開する事に決めた次第です。
 最初は「全員生存のハッピーエンド世界」が舞台のSSにしようと思ったのですが、どうも良いアイディアが浮かばず、軽い気持ちで読める探偵物に仕上げてみました。
 主要メンバー五人を登場させたものの、活躍の比重はマミさん&杏子に偏っています。また、キャラクター設定も原作に忠実ではありません。
 原作の世界観を崩した二次創作が苦手な方、シリアスな物語を好まれる方、オリジナル要素の濃い二次創作を敬遠される方、いずれか一つでも該当する場合、閲覧を控えて頂きますよう事前にお知らせ致します。
 各キャラクターのイメージを極度に壊すような描写は控えたつもりですし、グロテスク要素も皆無ですので、「~まどか☆マギカ」の二次創作作品に興味がありましたら御笑覧下さい。
 現時点では全四回(発端,事件編,捜査編,解決編)完結の予定ですが、その通りになるかは……何とも言えません(^▽^;)。隔日更新で八月中には完結させる予定であります。
 最後になりましたが、物語構成の都合上、時代考証や時代風俗の正確さに欠ける描写、表現があります。この点もよろしくお含み置き下さい。



 皆様、初めまして。鹿目(かなめ)まどかと申します。
 父は警視庁勤務の警察官、母は閨秀作家。祖父は貴族院議員、祖母は女学校の教員。
 特殊な家庭環境に育ったせいか気が付くと花嫁修業に精を出している同窓の友人とは異なった道を歩いており、K女学院を卒業後は同郷の先輩だった巴マミさんが局長を務める見滝原帝都探偵局へ就職、婦人探偵見習いとして忙しい毎日を送っております。
 一口に探偵と申しましても、雑誌や新聞紙上を賑わせる血なまぐさい犯罪ばかりを追っている訳ではございません。尾行から帳簿の調査、秘密書類の探索まで幅広く手掛ける他、世間様に知られない業務も行っているのです。

 積極的介入はございませんが、時には殺人事件にも対応する事もございます。
 その良い例が、K県の避暑地にある紺碧荘での事件です。
 わたしたちが紺碧荘でおこった殺人事件に巻き込まれたのは、見滝原帝都探偵局の創立十周年(探偵局の開業は大正12年)を祝う慰安旅行の最中でした。
 豪雨が去った蒸し暑い夏の夜、泊まり客の一人が刺身包丁で胸を刺され殺されたのです。
 捜査担当の司法主任がマミ局長の御父上と懇意だった為、後で申します事情も含め、見滝原帝都探偵局メンバーも犯人検挙に協力する事となりました。
 今日は……この事件についてお話を致しましょう。

 事件の舞台となる紺碧荘はS海岸を見下ろす高台にある西洋風の宿泊施設です。
 やや古びた印象を与える名前ですが、なかなか近代的な設備が整っており、撞球室(ビリヤード・ルーム)やサロンも用意されておりました。
 林を抜けた向こうには高原があり、その奥は鬱蒼とした森林が広がって雄大な山の自然を満喫させてくれます。
 利用者に踏み固められた道を下り、民家の脇の路地を抜けるとS海岸があるので、海までの徒歩15分は適度な運動にもなります。
 山と海の自然を満喫できる環境は、険しい山道を上り下りする地理的条件さえ苦でなければ一泊10円の価値は十二分(じゅうにぶん)にあると言えるでしょう。
 もっとも、わたしたちもマミ局長の引率でなければ気軽に泊まれるような宿ではないのですが……。

 前置きはこれくらいにして、それでは事件の話に移ろうと思います。
 ……。
 と、その前に。
 見滝原帝都探偵局のメンバーと被害者、そして五人の容疑者を以下に箇条書きで御紹介致します。
 被害者と容疑者は釣り好きの男女によって結成された「和竿必釣会(わざおひっちょうかい)」のメンバーです。
 彼ら五人の中に潜む殺人犯は誰か、皆様も話を聞きながら推理してみて下さい。
 物語を円滑に進行させるため、必要最低限の人物以外は登場させておりません。この省かれた宿泊客の中には犯人が存在しない事は語り手である鹿目まどかが保障致します。


【見滝原帝都探偵局】
 ・巴マミ……見滝原帝都探偵局長。紅茶好きで日に五杯は飲まれますが、茶葉の銘柄や淹れ方に拘りがあるのか御自身で用意されます。年下の局員にも優しく、頼りになる人生の先輩です。
 ・佐倉杏子……見滝原帝都探偵局事務局長。調査員長。甘い物を好まれ、お汁粉十二杯を完食して「甘味処 久兵衛」の店主から週三回以上の入店を遠慮してほしいと言われたそうです。大らかで明るい方ですが怒ると怖いです。
 ・美樹さやか……見滝原帝都探偵局経理担当。調査員。杏子事務局長よりも年下なのですが、幼馴染のせいか親しい口調で話しかけます。杏子事務局長の大食ぶりを皮肉る事も多く、いろいろな意味で息の合ったコンビネーションを見せてくれます。
 ・暁美ほむら……見滝原帝都探偵局交渉事務担当。調査員。口数が少なく存在感がないように思われがちですが、さりげない気配りで温かい人柄を感じさせてくれます。相手の名前をフルネームで呼ぶ不思議なクセがあるようです。
 ・鹿目まどか……見滝原帝都探偵局書類検査担当。調査員。企業秘密に関わる書類調査を担当しながら、この仕事について勉強する日々を過ごしております。さやかさん、ほむらさんと同期に採用されました。

【和竿必釣会メンバー】
 ・福田松雄(ふくだ まつお)……海産物流経理部長。
 ・福田栄(ふくだ さかえ)……福田夫人。旧姓・石野(石野勝男は実弟)。
 ・石野勝男(いしの かつお)……鴎商会営業部販売課長。
 ・金沢真奈子(かんざわ まなこ)……金沢不動産の社長令嬢。
 ・井坂甚六(いさか じんろく)……旭ヶ丘大学文学部教授。大衆作家・井坂南仏の次男。
 ・浪尾則助(なみお のりすけ)……雑誌編集者。福田松雄の友人。


【プロローグ】

 晴天にわかにかき曇り、という表現が相応しいくらいに天気が一転したかと思うと、たちまち黒雲に覆われた空から大粒の雨が降ってまいりました。
 折りからの強風も手伝い、まるで台風のような豪雨です。真夏の白昼とは思えない暗さに誰もが驚きを隠せません。
 自然とは、かくも偉大なものである。
 詩人(ポエット)ならば風流な気持ちで詩の二、三編でも書いてしまうのでしょうが、我々にそのような心の余裕はございません。
 御主人と従業員の皆様は大急ぎで鎧戸を閉めたり、干していた洗濯物を取り込んだり、大わらわです。わたしたちも戸締りを手伝いましたが、吹き込む雨や降りかかる豪雨で全身をビシャビシャに濡らしてしまいました。
 Modarn(モダン)な休息の場を提供する紺碧荘では女性用寝巻としてNegligee(ネグリジェ)が用意されているそうなので、わたしたちも濡れた服からNegligeeに着かえましたが、着なれない寝巻なので着心地は今一つです。
 マミ局長は胸部分のサイズが合わないらしく、傍から見ても胸元が相当にキツそうです。逆に、わたしやほむらさん、さやかさんは……。
 杏子事務局長もマミ局長と同年齢の筈ですが発育不良なのか胸元が寂しく見え、わたしたちの同志である事を確認できました。
 このような経緯があって入浴も済まないうちから「見滝原帝都探偵局」メンバーは寝巻姿で過ごす事となり、事情を知らない方に妙な印象を与える事になったのです。

【一】

 通り雨だったのか豪雨は午後五時前に治まり、それと同時に突風もピタリと止みました。まったく、人騒がせな天気です。
 この騒動が影響して食事の支度が少し遅れ、夕食が済んだのは午後七時半を過ぎた頃でした。
 食後、宿泊客は食堂から三々五々に散って行きます。
 天気がよければ高原での夕涼みや海岸散策を楽しめますが、あの豪雨の直後ですからとても外へ出られません。
 山を下る道はひどく泥濘(ぬかるみ)、この道を漆黒の闇夜に行き来する事は命がけの行為と言えます。
 必然的に宿泊客は館内娯楽で長い夜を過ごす事になりました。
 ミニ・ルーレット室で小さな博打に一喜一憂したり、遊戯室で和気藹々とカードゲームに興じたり、撞球室での球付き競技で得点と技術を競ったり、楽しみ方は人それぞれです。
 部屋へ戻っても眠るには早すぎますし、ルーレットやカードゲームをする気分ではございません。
 わたしたち五名は半年前に新設されたという別館のサロンへ赴き、そこでくつろぐ事に致しました。
 宿泊客は有閑階級の若い方ばかりなので静かな環境で語り合うよりも大勢で騒ぎながら遊ぶほうを選ばれたのでしょう、広いサロンにはわたしたち以外の人影は見られません。
 マ ミ「あら、気が利くわね。ダージリンやアッサムの茶葉が用意されているわ」
 入口近くに設けられた小さな給湯室へ入るなり、マミ局長が歓喜に満ちた声で喜びました。どうやら好きな紅茶の茶葉が置いてあったようです。
 杏 子「紅茶はいいから、何か甘い物はない? お饅頭とか、羊羹とか」
 さやか「えッ……。まだ食べるの」
 杏 子「なんか物足りない夕食だったんでね。あんたが作ってくれる梅干し握りの方が腹溜りがよかった」
 さやか「マミ局長、この大食漢な事務局長が食べられそうなものはありますか?」
 杏 子「た、大食漢って……」
 マ ミ「残念ながら食べ物はないわ。今日は我慢するしかないようね、杏子」
 さやか「残念でしたね、杏子さん」
 杏 子「ふん。まあ、無い物は仕方がない。マミ、あたしにも紅茶を頼むよ。ハチミツがあれば大目にね」
 マ ミ「はいはい」
 さやか「あッ、マミ局長。わたしが淹れます」
 杏 子「あんたに美味しい紅茶が淹れられるのかい」
 さやか「うッ。そう言われると自信がないわ」」
 杏 子「それじゃ、早くテーブルへ戻りなよ。マミの邪魔になるから」
 マ ミ「気遣ってくれて、どうもありがとう。ここは大丈夫だから美樹さんも席に座っていて」
 まどか「は、はい……」
 さやかさんが給湯室を出ると、マミ局長はハリきってアッサムティーの用意に取り掛りました。
 売り出されたばかりのガス瞬間湯沸かし器【註1】があるので、手間暇かけずにお湯を用意できるようです。
 杏 子「それにしても旅行初日から悪天候とはついてないな」
 まどか「本当ですね」
 さやか「そう言えば、昔から杏子さんが出掛ける時は高確率で雨が降るわね」
 杏 子「変な言いがかりはよしてよ」
 さやか「言いがかりじゃないわ、事実よ。ねえ、まどか
 まどか「う~ん。わたしは違うと思うわ。きっと偶然よ」
 杏 子「おッ、さすがにまどかは話せるねえ」
 さやか「そんなに気を遣う事ないわよ。ほむらはどう思う」
 ほむら「夏の雨は馬の背を分ける、と言う諺があるから。佐倉杏子さんの責任ではないと思うわ」
 杏 子「それって擁護してくれているの?」
 さやか「東京市内は晴れ、こちらは大雨って事でしょう。言いたい事が分からなくもないけど……。明後日の方角を向いた擁護ね」
 マ ミ「お待たせ。淹れたてのアッサムティーよ。ハイデルベルグのハチミツもあったから一緒に持ってきたわ」
 微妙な空気が流れ始めた時、ちょうどのタイミングでマミ局長が給湯室から出てまいりました。さすが局長、場の雰囲気を読んでおります。

【二】

 わたしたちがテーブルを囲んで談笑している時、入口から六名の男女が集団でサロンへ入ってまいりました。
 角刈りの小太りな男性を先頭に、坊主頭の青年、散切り頭をした長身の男性、前髪を三つにカールさせた細身の女性、ふくよかな体格をした女性、眼鏡をかけた神経質そうな若い男性。以上の方々です。
 ここで各人のお名前を申し添えますと、

 浪尾則助:角刈りの小太りな男性
 石野勝男:坊主頭の青年
 福田松雄:散切り頭をした長身の男性
 福田 栄:前髪を三つにカールさせた細身の女性
 金沢波奈:ふくよかな体格をした女性
 井坂甚六:眼鏡をかけた神経質そうな若い男性

 このようになります(わたしたちが各人の名前を知ったのは事件発生後ですが、それに先駆けて御紹介しておきます)。
 彼らのうち、石田勝男氏、福田栄夫人、伊坂甚六氏は大きな荷物を持っており、着席前に出窓へ立て掛けておられました。
 先にも申しました通り浪尾則助氏は殺害され、その加害者は残る五名の中に存在致します。
 賑々しくサロンへ入られた六名の男女ですが、わたしたちに会釈すると右手に曲がって奥へ用意されたテーブルの方に進んで行きました。
 サロンには二組の宿泊客が別れて談話できるようテーブルと椅子が配置され、給湯室寄りと反対側の柱時計寄りにテーブルと六脚の椅子が用意されております。
 簡単な見取り図は【図1】を、見滝原帝都探偵局メンバーの座り順は【図2】を参照して下さい。

【1】紺碧荘別館見取り図 【図2】座席表(見滝原帝都探偵局メンバー)

 広さを演出する意図があるのでしょうが、解放感を感じさせる反面、仕切りがないので互いに相手の様子が丸見えの状態となっており、せめて区切りのカーテンくらいは設けて欲しいと思いました。
 杏子事務局長も同じ意見らしく、相手に聞こえないよう囁きます。
 杏 子「解放感があるのも結構だけど、せめて仕切りくらい作ってほしかったな。これじゃ互いに気をつかって落ち着けないじゃないの」
 さやか「同感」
 マ ミ「いいじゃないの。こちらはこちら、向こう様は向こう様」
 マミ局長は頬笑みながら暖かい紅茶を口にします。その落ち着いた態度、わたしには到底マネできません。
 杏 子「向こう様は向こう様ねぇ。心が広いと言うか、人間ができていると言うか、そう思えるなんて立派だよ。あんたは」
 さやか「そこが局長の風格、大人の余裕ね。誰かさんとは大違い」
 杏 子「誰かって、誰の事を言っている? さやか
 さやか「さぁね」
 マ ミ「美樹さん。沈黙は金、雄弁は銀と言うわよ。せっかくの慰安旅行なんだから、あまり杏子をイジメないでね」
 さやか「はぁい」
 杏 子「銀……。そうだ。ちょっと席を外すわね」
 何かを思い出したのか、杏子事務局長は席を立ってサロンを出て行きました。
 それと同時に奥のテーブルを立った福田松雄氏が布巾をかけた皿を持って来て、笑顔でわたしたちに話しかけます。
 松 雄「くつろぎの時間をお邪魔して申し訳ありません。僕、福田松雄と言います。この栗饅頭、よろしければ皆さんで召し上がって下さい」
 そう言いながら松雄氏は皿を覆う布巾を取ります。その下からは六つの栗饅頭が出てまいりました。
 松 雄「あそこにいる小太りの男性、彼が栗饅頭を食べたいというので御主人から頂いたのですが我々だけでは食べきれないくらい貰ってしまって……」
 マ ミ「それは御丁寧に恐れ入ります」
 マミ局長が立ちあがり、わたしたちを代表して松雄氏の応対を致します。
 松 雄「大きな声では言えませんが、彼は強引でしてね。御主人の困り顔にも関わらず食べきれない量の栗饅頭を強奪してきたんです。ハッハハハハハ。それに僕も家内も甘い物が苦手なので、なおさら余ってしまったのですよ」
 マ ミ「左様でございますか。そのような事情であれば御厚意に甘えさせて頂きます。あら、これは失礼致しました。わたくし、巴マミと申します。以後、お見知りおき下さい」
 栗饅頭が盛られた皿を受け取りながら笑顔で挨拶をされるマミ局長。
 胸元のTight(タイト)なNegligeeを着ながら微笑むマミ局長の全身からは同性も魅了される色気が漂ってくるのですが、その色気に松雄氏もあてられたのでしょうか、お皿を渡した後もマミ局長から視線を逸らそうとはしません。
 淫らな視線を感じたのかマミ局長は言葉に詰まり、皿を持ったまま立ちつくしております。
 この沈黙には誰もが対応できず、場の空気が白けたところ、杏子事務局長が銀の小箱を手に戻ってまいりました。
 甘いものに目がない杏子事務局長は栗饅頭に気付き、一瞬、歓喜の表情を浮かべましたが、すぐに落ち着きを取り戻すと銀の小箱を持ったまま椅子に腰かけました。
 状況を把握できない杏子事務局長は、この白けた沈黙の空気を不思議がっております。
 気まずい時間が数十秒続きましたが、それを破ったのは女性の一括でした。
  栄 「あなた、何やってるのよぉ~」
 松 雄「ああ、今戻るよ。それでは失礼致します」
 マ ミ「ご、御馳走様です。ごきげんよう」
 奥方らしい女性に睨まれながら松雄氏は奥のテーブルへ戻って行きましたが、去り際まで視線は胸元から外さず、わたしたち五人を辟易させました。
 マミ局長が慌てた口調で立ち去る松雄氏に挨拶をされましたが、このようなお姿を拝見したのは初めてです。それだけ気が動転していたのでしょう。
 完全無欠なマミ局長も無遠慮で強引な男性は苦手なようです。

【三】

 杏 子「今の男は誰?」
 松雄氏が去った後、杏子事務局長がマミ局長に尋ねます。
 マ ミ「福田松雄さんと申される方で、これを差し入れて下さったわ」
 杏 子「おッ、栗饅頭か。気のきいた差し入れをしてくるじゃないの。乙女たちの休息を邪魔した償いとは良い心掛けね。いただきまぁす」
 喜色満面の杏子事務局長は、さっそく栗饅頭に手を伸ばされました。
 ほむら「佐倉杏子さん、よろしければ、わたしの分もどうぞ」
 まどか「わたしの分も食べて下さい」
 杏子「(ゴクリ)。いいのかい、二人とも」
 まどか「はい。夕食でお腹がいっぱいになりましたので、せっかくの御好意ですがお気持ちだけ頂きます」
 ほむら「わたしも」
 さやか「わ、わたしも遠慮するわ。見るだけで胸が苦しくなってきた。ウプッ」
 杏 子「ありがとう。さやかほむらまどか。こんな優しい後輩に恵まれて、あたしは嬉しいよ」
 まどか「お、大袈裟ですよ」
 杏 子「それじゃ、ありがたく頂戴するわね。あ~ん」 
 マ ミ「よかったら、これも食べて。わたし、お饅頭は苦手だから」
 さやか「あれ、マミ局長はお饅頭が嫌いなんですか」
 マ ミ「ええ。ちょっとね」
 杏 子「アッハハハ。そうそう、落語みたいな話だけど、マミは饅頭が怖くて仕方ないんだよな」
 口元に餡子がついたまま、豪快な笑いと共に杏子事務局長が爆弾発言をされました。
 マ ミ「きょ、杏子。その話は……」
 杏 子「いいじゃない、今日は無礼講なんだから」
 ほむら「(小声で)鹿目まどかさん」
 まどか「(小声で)どうしたの、小さなか声で」
 ほむら「(小声で)巴マミ局長があんなに慌てるなんて珍しいわね。いやらしい目で見られた事といい、今日は厄日なのかしら」
 まどか「(小声で)そういう時もあるよ。でも、何だか今まで以上に親しみが感じられたわ」
 ほむら「(小声で)わたしも」
 マ ミ「あんな恥ずかしい話、鹿目さんたちに聞かせないで。ねえ、杏子。お願いよ」
 頬を真っ赤にしながらマミ局長は杏子事務局長に懇願します。
 杏 子「どうしようかなぁ。いつも冷静沈着で弱点のない局長様を身近に感じさせる良い機会だしなぁ」
 からかうような口調で杏子事務局長が焦らします。
 マ ミ「もう、杏子ったら。この話は終わり。終わりにしましょう。これは局長命令よ」
 杏 子「局長命令か。その手で反撃されるとは一本取られたな」
 遂にマミ局長は実力行使に出ました。よほど、恥ずかしい事があったのでしょう。
 優しい局長の困った顔は見たくないので、この話が打ち切られ内心ではホッと致しました。
 杏子事務局長も悪ノリし過ぎた事を反省されたのでしょうか、素直に「了解です、局長」と命令に従います。
 これで一見落着と思ったのも束の間、今度はマミ局長が爆弾発言をされました。

【四】

 二つめの栗饅頭を食べ終えた杏子事務局長に向かい、マミ局長は少し照れたような表情を浮かべて言いました。
 マ ミ「きょ、杏子。口の周りに餡子がついているわよ。あ、杏子(あんこ)が餡子(あんこ)で口を汚すなんて笑えない話ね。ハ、ハンカチでお拭きなさい」
 この発言に(わたしも含めた)全員の視線がマミ局長へ集中しました。
 杏子事務局長は茫然とし、さやかさんは信じられないといった表情を浮かべ、ほむらさんは……いつもと同じPoker Face(ポーカーフェイス)のままです。
 杏 子「い、今……何て言った。マミ……」
 マ ミ「な、な、何でもないわ。ほら、あ、餡子を拭いてあげるから動かないで」
 杏 子「いいわよ、自分で拭けるから。それよりも今の一言だけど……。あれって冗談のつもり?」
 マ ミ「そ、そうよ。あなたが変な事を言い出すから、そのお返しよ」
 杏 子「ウフッ、ウフフフフ。アッハハハハ」
 餡子を拭う事も忘れ、杏子事務局長は大声で笑い出しました。その声は奥のテーブルに集まったグループを驚かせたのか、十二の瞳がわたしたちのテーブルに集まります。
 杏 子「アッハハハハ。まさか、あんたの口から冗談が聞けるとは驚いたわ」
 さやか「さすがマミ局長、冗談のセンスも一流でしたよ」
 ほむら「杏子(あんこ)と餡子(あんこ)の語呂合わせ、お見事です。巴マミ局長」
 まどか「今の一言、当意即妙でした」
 マ ミ「もう、みんなまで……。知らない」
 顔を真っ赤にしたマミ局長は恥ずかしそうに両手で顔を隠し、俯(うつむ)いてしまわれました。
 渾身と思われる冗談が大受けしすぎ、羞恥心を増長させてしまったようです。
 杏 子「まあまあ、マミ。そんなに恥ずかしがらないで。見てみな、さやかたちを。冷静で真面目な普段とは違った一面を見られたのか、より親しみを抱いた顔で見てるじゃない。気を張って仕事に取り組むのも結構だけど、たまには肩の力を抜きな。そうしないと部下の方が息詰まりするんだから。そうだろう、まどかほむらさやか
 相手を気遣う言葉をかける杏子事務局長。この決めセリフの後で三つめの栗饅頭を頬張らなければ、先輩としての威厳は満点だったのですが……。
 さやか「そうですよ、マミ局長。たまにはリラックスして下さい。いつも一番遅くまで事務所に残って決済業務を済ませ、一番早くに事務所へ来て調査報告に目を通して証印する。激務の毎日なんですから、こういう時こそ体を休ませて心を解放させないといけませんよ」
 まどか「冗談を言った時のマミ局長、とても輝いて見えました。凛としたお姿も素敵ですが、肩の力を抜いたマミ局長も素敵です」
 ほむら「巴マミ局長のお人柄が伺える一言でした。緊張の連続だけでなく、適度な休息もとって下さい」
 杏 子「なぁ。可愛い部下がこう言ってるんだ、機嫌を直しなよ」
 杏子事務局長が綺麗に話を纏めました。
 恥ずかしそうに俯いていたマミ局長ですが、この一言で自信を取り戻されたようです。顔を上げて紅茶を一口飲むと、ニッコリ微笑みながら優しい声で言いました。
 マ ミ「みんな、どうもありがとう。確かに、みんなの前では無理して気を張り詰め過ぎていたのかも知れないわ。ふつつかな局長ですが、これからもサポート、よろしく頼みますね」
 天使ようなの微笑みに、わたしたちもホッと致しました。
 さやか「それですよ、マミ局長。相手は部下なんですから、そんなに丁寧な挨拶をしないで下さい。サポート役も調査員の仕事なんですから」
 杏 子「そうそう。雑務は三人に、事務一切はあたしに任せて、あんたはドッシリ構えていなよ」
 さやか「ドッシリって言うのはひびきがよくないわね。いつも椅子に座って書類を書きながら物を食べている鯨飲馬食の誰かさんにはピッタリだけど」
 杏 子「げ、鯨飲馬食は言いすぎだろう。まったく、少しはマミへの尊敬の念を分けて貰いたいよ。あたしだって事務局の責任者なんだからね」
 まどか「ところで杏子さん。お手元にある銀の小箱には何が入っているんですか」
 杏 子「ん? ああ、これか。この中にはなぁ……」
 杏子事務局長が箱の蓋を取ると、その中には花林糖(かりんとう)がギッシリと詰まっておりました。
 さやか「なに、それ?」
 杏 子「見れば分かるでしょう。花林糖よ」
 さやか「まさか、これを食べるんじゃないでしょうね」
 杏 子「当然でしょう。空腹に備えて出掛けに用意してきたんだから。マミの「雄弁は銀」と言う一言で思い出したよ。みんなも食べるかい?」
 マ ミ「わ、わたしは結構よ。ありがとう」
 さやか「わたしも遠慮するわ」
 まどか「お気持ちだけ頂戴します」
 ほむら「お心遣いに感謝しますが……御遠慮させて下さい」
 杏 子「そう。それなら一人で食べるわね」
 この一言を聞いた誰もが杏子事務局長の健啖ぶりに改めて驚かされました。 
 いろいろと話題はつきず、こうしてサロンの夜はゆっくりと深けて行きます。


≪「紺碧荘殺人事件(事件編)」へ続く≫


【註1】国産湯沸かし器の第一号は昭和6年に陽栄製作所から発売されました。価格やスペックの詳細はこちらを御覧下さい。
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コメント

どこかで聞いたような名前です

v-362色付きの文字新京史朗さん今晩はどこかで聞いたような
名前です
おやすみなさい

聞き覚えがあるのは……

 そうです。あの国民的漫画です。
 ちょっと露骨なパロディかも知れませんが……。

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