FC2ブログ

2017-10

怖ろしき拷問風景(江戸川乱歩「大暗室」より)

 善と悪の対決を壮大なスケールで描いた江戸川乱歩氏の大長編作品「大暗室」は、美しい女性への嫉妬に狂う殺人鬼が暗躍する「妖虫」の終了から約2年後に『キング』へ連載されました。
 連載期間が20ヶ月近くに及び、乱歩氏自身は晩年に「私の連載小説のうちでは最も長くつづいた」と述懐しています。

 本作は冒険活劇要素の強い小説ですが、振子ギロチンに恐怖する美少女や巨大な水槽の中で悶え苦しむ人魚を描写した場面が見られ、その意味ではリョナラー必読の作品と言えます。
 責め絵的世界を独特の文体で綴り、読者を妖艶怪奇な世界へ案内する「大暗室」。かなり長い作品ですが、時間をかけて読んでも損はありません。
 また、ポプラ社から刊行された子供向けのリライト版には女装した小林芳雄少年(少年探偵団長)が柱に縛りつけられて火責めにされる場面が加筆されました。
 武田武彦氏の助力を得て「大暗室」を年少読者向けにリライトした際、乱歩氏は「残酷な箇所をけずり、冒険的な部分だけをのこし」たとコメントしていますが、こちらはこちらで読む価値があります。

 今後に予定しているサプライズの伏線として、今回も乱歩作品からリョナ度の高い「大暗室」を選んで該当場面の紹介を行いますが、基本的には大人版の原作をテキストとしました。
 子供向けのリライト版については、美しい人魚が苦悶する場面と小林少年が火責めにされる場面のみ紹介します(テキストはポプラ社の『少年探偵30 大暗室』を使用)。
 武田氏によるリライト版は学年誌へも連載されていますが、こちらは未見なので今回は言及を避けています。

 まずは、本作のヒロインである星野真弓の容姿について。


 電灯の下にうなだれて、しきりと編みものをしている真弓の横顔は、絵のように美しかった。少しもおめかしをしていないけれど、十九の春が、ほんのりと頬を桃色にいろどって、睫毛(まつげ)の長い眼が、美しくうるんで、夢見るような物思わしげの風情である。
≪創元推理文庫『乱歩13 大暗室』P105≫


 簡潔ながら星野真弓という少女の美しさを端的に表現した文章。これだけでも十分に彼女の美貌が伺い知れます。
 この美少女・真弓が麻酔薬で失神させられ、怖ろしい振子ギロチンに恐怖し、そこから脱出する捨て身の作戦として横たえた体を鼠まみれにさせます。
 文字による描写だけでも興奮させられる真弓のピンチ場面、ここから一挙連続で紹介します。


 醜い獅子鼻と、異様に赤い厚ぼったい唇のあいだから、むせ返るような生暖かい臭気が、まともに真弓さんの顔を打った。
 あまりの恐ろしさに、悲鳴を上げて腕を振りほどこうとした。だが、悲鳴を上げる前に、何かしら柔かい白いものが真弓さんの鼻と口を蔽(おお)ってしまった。しめつける腕の力は一そう強くなって、もう身動きすることもできなかった。鼻と口を蔽ったものは、形容もできない烈しい臭気を持っていた。その魂もしびれるような臭気が、胸の奥へしみ渡ったかと思うと、眼の前がぼんやり白茶けた感じになって、音が聞こえなくなり、やがて思考力が靄(もや)のようなものの中へ溶けこんで行った。

【中略】
「美しい仏さまだなあ」
 一人が舌なめずりをしながら、指先で真弓さんの頬をつつく。

≪創元推理文庫『乱歩13 大暗室』P151~153≫

 だが、しばらくして再び天井に眼をやった時、彼女はギョッとしないではいられなかった。あの大振子は、大きく左右に揺れながら、いつの間にか二尺ほども彼女の方へ近づいていたではないか。振子はただ揺れるばかりでなく、徐々に地上へさがってくるのだ。
【中略】
 今では振子の玉の先端の、三日月型の銀色の部分が、ハッキリと見分けられる。それは謂わば巨大な鎌のようなものであった。そして、その鎌の刃はまるで剃刀のように鋭いのだ。
【中略】
 真弓さんは徐々に徐々にさがってくる大振子と、その先端の巨大な剃刀の刃を見つめているうちに、全身の産毛がことごとく逆立ち、歯の根がガチガチと鳴りはじめた。
【中略】
 真弓さんはもう全身にビッショリ汗をかいていた。心臓が早鐘のように鳴っていた。
【中略】
 振子の揺れ方はちょうど彼女のからだと直角をなして、数十分或いは十数分の後には、彼女のふっくらとした胸の上を真一文字に斬り裂くような位置になっていた。
 真弓さんは、歯の根も合わぬ悪寒の中で、剃刀のような半月刀が、彼女の胸に触れる刹那を想像した。
 それは先ず彼女の服の上をスーッとなでこすって、その布地をごく僅かばかりけばだてるにすぎないであろう。しかし、二度、三度、四度、振子の往復が度かさなるにつれて、布地は刻々に烈しくけばだって行くであろう。そして、服地が完全に断ち切れてしまうと、次には下着が、それから、ああ、あのドキドキと光ったやつが、彼女の乳房の白い皮膚を、シューッとかすめて通るであろう。

【中略】
 下へ! 下へ! それは人間業ではどうすることもできない、必然の運命のように、彼女の柔肌へと肉迫してくる。
 振子の一往復ごとに、彼女は火のような息を吐いて、喉をゼーゼーいわせながら喘いだ。
 ああ、振子の半月刀は、もう乳房の上三寸の近さに迫っていた。今三十往復、或いは二十往復の後、あの鋭い刃は、いよいよ彼女の服地をこすりはじめるに違いない。

≪創元推理文庫『乱歩13 大暗室』P168~172≫

 彼女の頭に、実に異様な考えがひらめいた。魔法のような、奇蹟のような、不思議な思案が浮き上がってきた。
【中略】
 真弓さんは、右手でその残りの米粒を掴み取ると、胸や服の上に巻きついている太い麻縄に、所きらわずこすりつけた。手の自由の利く限り、縄の一本々々に、丹念の米粒を塗り込むようにした。そして、じっと身をすくめ、息さえ殺して、その効果の現われるのを待った。
【中略】
 真弓さんの胸と腹は、無数の鼠によっておおい隠されてしまった。それはウジャウジャと絶え間なくうごめく、大きな黒いかたまりのように見えた。彼らが麻縄を齧じる音が、まるで嵐のように聞こえた。
 鼠どもはただ麻縄に群がるばかりでなく、真弓さんの喉から顎にかけて這いまわった。ある者は彼女の唇をさえ嗅ぎはじめた。
 真弓さんはもう生きた心地もなかった。じっと眼を閉じて、歯を食いしばって、気も狂うほどの恐怖に耐えていた。もう一つの、もっと大きな恐怖を逃れたいばっかりであった。

≪創元推理文庫『乱歩13 大暗室』P173~176≫


 鼠に唇を奪われそうになる辱めに耐えながら、どうにか振子ギロチンから脱出した真弓。いよいよヒロインの活躍が始まるかと思いきや、ここで彼女の出番は終わってしまい、物語終盤まで顔を見せません……。

 話は進み、いよいよタイトルにもなっている大暗室が姿を現します。
 異様な空間で異様な体験をした六人の新聞記者による「魔界見聞記」が新聞に掲載され、その報告に東京市民は誰もが記者達の正気を疑いますが、それについては今回の記事と関係ないので省きます。
 ここで取り上げるべきは「魔界見聞記」の中盤あたりに見られる溺れる人魚について。
 そうは言っても架空の生物とされる人魚が実在するのではなく、人魚の格好をさせられた美女が水槽の中で水責めの拷問を受けているのです。
 事細かに描写された凄惨にして妖艶な拷問場面、乱歩氏は以下のような文章で描かれました。


 おお、それには大きな二つの眼が、恨みに燃えた二つの眼が、皿のように見ひらかれた二つの眼が、ランランと光っているではないか。それから鼻が、そしてまっ赤な唇が、苦悶に引きゆがんだ唇が!
 水底に苦悶する美しい女の顔。二つのヒトデがその両手であったことはいうまでもない。
 私は生れてから、あんなにも美しく、あんなにも恐ろしく、あんなにも悲しい顔を一度だって見たことがあるだろうか。

【中略】
 私たちは大曾根のいわゆる「地底の極楽」において、池に泳ぎ戯れる美しい人魚の群れを見たが、この「地底の地獄」では、人魚は同じ人魚ながら、遊び戯れるのではなく、今にも窒息しそうに水底にもがい苦しむ人魚を見せつけられた。
【中略】
 やがてその美女が思う存分苦しんだころを見はからって、裸形の悪魔大曾根竜次は、岩肌に仕掛けた黒いボタンのようなものを押したが、すると、水槽の上部から、二本の鉄製の熊手の形をしたものが、ニューッと水底に降りてきて、両側から、もがく美女の腹部を挟み、そのまま水面へと運んで行くのが、えたいの知れぬ巨獣の触手が獲物を攫いでもするように、無気味に眺められた。
「諸君、あれは人魚の見世物ではない。地底の国の拷問です。地上から連れてきた女のうち、稀には非常に強情なやつがある。そういう女を飼い馴らすための手段なのですよ。
【後略】
≪創元推理文庫『乱歩13 大暗室』P342~345≫


 この人魚拷問シーンはリライト版でも残されていましたが、さすがに読者層を考慮してかソフトな描写になっていました。


 ガラス張りの水槽の中には、一ぴきのかわいらしい人魚が、のたうちまわっていたのです。まだ十二、三才にしか見えない、かわいらしい女の子が、きみのわるい人魚の水着をきせられて、水槽の中へ投げこまれていたのです。
「ワッハハハ……、おどろいたかね諸君、これが怪人二十面相じまんの生きている人魚さ。よくおがんでおきたまえ……」
 ああ、なんという恐ろしいことでしょう。水槽の中の生きている人魚は、もう呼吸(いき)ができなくなって、アップ、アップやっているのです。あと五秒もたてば、この女の子は、死んでしまうかも知れません。

【中略】
「おれは、なにも殺す気はない。地底の国の法律さえまもっておれば、あの子などは、この国の王女でいられる身なのだ。ただ、あの女の子は、おれにそむいた。あれにかぎらない、おれにそむくやつは、みな人魚の水着をきせられて、この水槽へ投げこまれるんだ」
≪ポプラ社『少年探偵30 大暗室』P251~255≫


 最後に、リライト版だけの特典、女装した美少年が柱に縛りつけられて火責めにされるシーンを紹介します。
 紅顔の美少年である小林少年が女装姿で火あぶりにされる場面、ショタ好きな方でなくても色気を感じるのではないでしょうか。


 もちろん、箱の中には、かわいいナナ子ちゃんが、あおむけに寝ていました。腰をかがめてのぞきこんだ怪人二十面相の顔が、サッとかわりました。そのはずです。寝ているナナ子ちゃんの顔が、ポッカリ目をひらいて、ニッコリわらったからです。
「き、きさまは……?」
 はげしい怒りと驚きに、怪人二十面相の顔は、みにくくゆがみました。とびかかろうとする怪人のうでを、するっとぬけて、ゆかの上に起(た)ちあがったのは、ナナ子ちゃんに変装した小林君でした。

【中略】
 こうやって警官隊がぐずぐずしているうちに小林君は、かわいそうに二十面相のため、押さえつけられ、ふとい柱に縛りつけられてしまいました。
「さ、これでおわった。もういくらあばれても、逃げられやしないぜ。気の毒だが小林君、きみはそこで明智の身がわりに、火あぶりになるんだぜ。うれしいかい。ウフフフ……」

≪ポプラ社『少年探偵30 大暗室』P231~234≫
スポンサーサイト
[PR]

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ryonablog475.blog2.fc2.com/tb.php/252-661f7826
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

FC2カウンター

プロフィール

新 京史朗

Author:新 京史朗
好きな技(1):バスター技
好きな技(2):股裂き関節技
好きなシチュエーション:リョナ

最新記事

カテゴリ

小説 (86)
アニメ (33)
ゲーム (31)
アメコミ (23)
フィギュア (5)
映像・写真 (16)
DOA・無双 (114)
イラスト企画 (43)
鉄拳・スト鉄 (92)
漫画・絵物語 (107)
イラスト・挿絵 (51)
映画・イベント (35)
ウルトラヒロイン (12)
MUGEN・ドット絵 (2)
オリジナルヒロイン (8)
御挨拶・お知らせ・交流 (134)
魔法少女まどか☆マギカ (59)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR