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2017-08

襲われる明智夫人(江戸川乱歩『少年探偵44 人間豹』より)

 詳しい素性が曖昧なまま生死不明となった怪人・人間豹。
 猫属の舌を持つ人間豹=恩田は、江戸川乱歩氏が昭和9年から昭和10年にかけて『講談倶楽部』へ連載した長編「人間豹」に登場し、その残虐性も含めて読者に強烈な印象を与えました。
 この「人間豹」は謎解きよりもスリリングな物語展開で読ませる通俗長編に分類される作品ですが、「魔術師」事件で明智小五郎と結婚した文代夫人が絶体絶命の危機に陥る場面が見られ、一読忘れ難いインパクトの受難シーンによって乱歩ファン以外にも広く知られています。

 本作は私的乱歩作品ベスト5の上位にランクインしている作品であり、その魅力について書き出すと長文になってしまう(本筋から離れた点にまで話が及ぶかも知れません……)ので内容紹介や書誌的なデーターについては割愛させて頂きますが、あまりにも有名な文代夫人受難シーンだけは当ブログで紹介したいと前々から思っていた為、年少読者向けにリライトされた「人間豹」の再読をキッカケとして取り上げる事にしました。
 筆を抑えた描写になっていますが、人間豹に襲われた文代夫人が棺桶のような木箱へ力まかせに押し込まれる場面、檻の中に閉じ込められて虎と対決させられる場面、どちらもリョナ度満点です。
 大人向けの原作とは一味違った文代夫人の受難シーンを一人でも多くの方に知って頂きたく、あえて「少年探偵」版を取り上げる事にしました。
 なお、テキストにはポプラ社の単行本『少年探偵44 人間豹』を用い、『少年少女譚海』へ連載された武田武彦氏のリライト版には言及しませんので、その点のみ御注意下さい。

 まずは、明智の留守中に事務所へ現れた恩田が文代夫人を襲う場面から紹介します。
 本当はオリジナル作品の文章も掲載し、比較できるようにしたかったのですが……この趣向は諸事情により見送りました。
 興味のある方は現行本を購入して(または図書館から借りて)読み比べてみて下さい。


 人間豹はのっそり立ちあがると、文代さんに近づいてきた。ああ、どうして、いままで気がつかなかったのだろう。明智の目がこんなに光るはずはない。それはまるで青い火のようにもえているではないか。
 文代さんはしびれたようになったからだから、やっと力をふりしぼって、さっと立ちあがると、悪魔の手の下をくぐりぬけて、廊下へとび出して行った。

【中略】
 怪物はおそろしい力で、文代さんのからだを棺おけのような人形箱の中におしこんだ。そしてポケットからますい薬をひたしたハンカチをとりだすと、ぐっと文代さんの鼻と口におしつけた。
 人間豹は木箱のふたをその上からそろそろとかぶせた。すっかり、ふたをしてしまうと、箱のそばにちらかっているなわをあつめて、ふたの上からぐるぐるにまきつけた。あとはおもてのくらやみに待っているふたりの手下をよび入れて、人形箱をかつぎ出すばかりだ。

≪ポプラ社『少年探偵44 人間豹』P146~147≫


 岩井泰三氏の描く挿絵(挿絵変更前の旧版では北田卓史・画)では、恩田の怪力にかなわないと知りつつ必死の抵抗を試みる文代が見られます。
 一方の旧版ではクロロフォルムと思われる液体を湿られた布で口を塞がれて意識を失った瞬間が描写されており、これはこれで良い挿絵でした。

 そして、この作品の最大の見所とも言える「檻の中で虎と戦わされる文代」の場面。
 オリジナルでは非常に扇情的な書き方がされていましたが、子供向けのリライト版では行間にエロスを感じさせる書き方となっています。


 いまや、おりの中では、みごとに熊ののどぶえをひきさいた猛虎が、かちほこったように、すさまじいうなり声をあげていた。
 ところが、これはどうしたことか! メリメリひきさかれた熊の皮の下から、あらわれたのはひとりのわかい、美しい女だった。いうまでもない、文代さんだ。
 文代さんは泣きさけんでいた。かの女は、はじめ立ちあがるまでは、ますい薬で気をうしなっていたのだが、とつじょ、気がついたとき、熊の皮の下で、二つのガラスの目玉にうつったのは、かの女におそいかかってくる一ぴきの猛虎だった。文代さんは気ちがいのように、にげまどった。たすけをもとめて、泣きさけんだ。その悲鳴がさっきから、見物席に聞こえてきたのであった。

【中略】
 文代さんの足はよろめき、胸ははげしく波うち、声はもうかれて出ないのだ。
≪ポプラ社『少年探偵44 人間豹』P226~228≫


 岩井氏の挿絵では熊の毛皮を着せられた文代しか見られませんが、北田氏の挿絵では襲い来る猛虎への恐怖に怯える文代の姿が描かれています。
 首から下の裸体は熊の毛皮で隠されていますが、幼さの残る顔立ちに独特の色気が感じられました。

 ポプラ社の『少年探偵44 人間豹』は絶版となっていますが、1990年代中頃まで増刷はされているので市立クラスの図書館でも所蔵している所は多いと思います。
 まだ「人間豹」を読んだ事のない方がいれば、まずは「少年探偵」版で物語の概要を掴み、その後で大人向けの原作に挑戦してみては如何でしょう。
 オリジナル版のテキストには、初出誌から復刻された嶺田弘氏の挿絵が全て復刻されている創元推理文庫版をお薦めします。



【付記】
 この他、柳瀬茂氏や山内秀一氏、稲垣三郎氏が挿絵を描いている『人間豹』(柳瀬氏と山内氏の挿絵はポプラ社版、稲垣氏の挿絵は講談社版に掲載)もあるようですが未見により詳細は分かりません。


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