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2017-07

異性へのアブノーマルな愛情(室生犀星「性に目覚める頃」より)

 作家としてよりも詩人として知られる室生犀星氏の小説処女作は大正8年に『中央公論』へ発表された「幼年時代」という短編です。
 義母との微妙な関係、出戻った姉との幸せな生活、実母の失踪、お寺への養子縁組。
 断片的に綴られる様々なエピソードを通じ、人生の辛苦を味わいながら成長していく室生少年の姿を描いた作品であり、物語は一応の完結をみた後で「性に目覚める頃」や「或る少女の死まで」へと引き継がれます。
 立て続けに『中央公論』へ掲載された上記の短編3作は室生氏の自伝的小説でもあり、一般的には「自伝的三部作」として一括りにされています。

 第2作「性に目覚める頃」では、住職の養子になってから4年後、室生が17歳になった時のエピソードが書かれました。
 古今東西を問わず、ハイティーンの頃と言えば最も多感な時期であり、異性への興味が最も高まる年頃でもあります。
 本作では、賽銭箱の中身を盗んで行く素行不良の美しい娘に興味を覚えた室生青年の常軌を逸した行動が描かれており、なかなかのアブノーマルぶりを見せてくれます。

 ある夏の晩、華美(はで)な帯を締めた娘が境内へ入り込むのを目撃した室生は、その女性が賽銭箱の錠を器用に開けて賽銭を盗み出す一部始終を記帳場の節穴から見てしまいます。
 盗みを働く娘の姿に性的な興奮を覚えた室生は、この秘密を弱点にして彼女へ冒涜的な事ができるという妄想にとらわれるのでした。


 私はそうした彼女の行為(引用者註・賽銭泥棒)を見たあとは、いつも性慾的な昂奮と発作とが頭に重りかかって、たとえば、美少年などを酷くいじめたときに起るような、快い惨虐な場面を見せられるような気がするのであった。それと一しょに、彼女がああした仕事に夢中になっている最中に飛び出して行って、彼女をじりじりと脅かしながら、そのさくら色をした歯痒いほど美しい頬の蒼ざめるのを傲然と眺めたり、または静かに今彼女のしている事はこの世間では決して許されない事であり、してはならないことであることを忠告して、彼女がこころから贖罪の涙を流して泣き悲しむのを見詰めたりしたら、どんなに快い、歯痒い気持になることであろう。そしてまた彼女が悔い改めて自分を慕って、しまいには自分を愛してくれるようになったら、自分はきっと寂しくないにちがいない。そうでなくとも、彼女の弱点につけ込んで、自分はどんな冒涜的なことでもできるのだなどと、彼は果しもない悩ましい妄念にあやつられるのであった。
(岩波文庫『或る少女の死まで 他二篇』P110)


 このような室生の妄想はエスカレートし、とうとう大胆な行動をとらせるまでに至ります。
 その行動とは、糸屑や雪駄を無断で持ち出し、そこに彼女の幻影を思い描き残留思念を肌で感じる事でした。
 捨て置かれた糸屑を拾う事は許されるとしても、玄関先に脱いであった雪駄を盗み出す行為は犯罪であり、この件については室生も他人の窃盗罪を叱れません。
 もっとも、罪悪感に責め苛まれる室生は一時間ほどしてから雪駄を返却しているので、この行動が窃盗罪に値するかは微妙ですが……。
 雪駄を盗み、そこに女性の温もりを感じる多感な少年を作者は次のように描写しています。


 糸屑はいろいろな用にたたないのを丸めてあったので、彼女を忍ぶよすがもなかったが、そのふわふわした筋ばった小さい玉を、握りしめて見ると、何かしら一種の女性に通じている心持が、たとえば無理に彼女の手なり足なりの感覚の一部をそこに感じられるように思われるのであった。その糸屑を拾うときに殆んど突然に玄関先に脱ぎすててある紅い緒の立った雪駄をひしいような気がしたのは、自分ながら意外であった。何ということなしに、その雪駄の上にそっと自分の足をのせて見たら面白いだろうという心持と、そこに足をのせれば、まるで彼女の全身の温味を感じられるように思われたからである。私は子供のときから姉の雪駄をはいてはよく叱られたものであるが、それよりも、もっと強い烈しい秘密な擽ぐったいような快さが、きっと私が雪駄に足をふれさせた瞬間から、私の全身を伝ってくるにちがいない。ちょうど、踵からだんだん膝や胸をのぼってきて、これまで覚えたこともない美しいうっとりした心になるにちがいないと、私は雪駄をじっと怨めしく眺めたのであった。【後略】
【前略】そこには紅い緒の雪駄が、もはや雪駄以上な別な値のあるもののように、べつな美しい彼女の肢体の一部分を切断して、そこに据えつけてあるような、深い悩ましい魅力をもって私を釘づけにしたように立たせるのであった。
(岩波文庫『或る少女の死まで 他二篇』P122~124)


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(2003/11/14)
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