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2017-08

少女達の性へのモラル(山村正夫「古代諏訪生贄伝説殺人」より)

 光華学園大学史学科の助手として歴史学者を目指す滝連太郎は、山村正夫氏が昭和55年以降に発表した長短編で積極的に採用したシリーズ探偵です。
 滝連太郎の初登場作品は1980年に発表された長編「湯殿山麓呪い村」で、この作品は映画化もされました。
 作者の山村氏が1999年に亡くなった為、その2年前に発表された長編「魔女の呪い島殺人」が最終作となっています。
 シリーズ作品総数は全18作(12長編6短編)。長編の大半は書下ろし作品として発表されました。

 滝連太郎シリーズの特徴として「物語全編を覆う怪奇的な雰囲気」が挙げられます。
 初期作品に限っても、第1長編「湯殿山麓呪い村」では即身仏にまつわる秘密、第3長編「死人島の呪い雛」では不老不死伝説と呪われた雛人形の謎、第5長編「妖狐伝説殺人事件」では金毛九尾の伝説が陰惨な殺人事件に不気味な彩りを添えていました。
 作者の山村氏は怪奇的な演出について、横溝正史氏の作品を意識しての事だと自著の中で述べています。
 伝奇本格探偵小説という点で、山村氏の滝連太郎シリーズと横溝氏の金田一耕助探偵譚(主に地方を舞台にした長編)は同じ道を歩んでいるように見えますが、作家の大谷羊太郎氏が「事件の動機に、古めかしい因縁を扱ったのが、横溝作品。そして、現代風な人間関係から、動機を探るのが、山村作品」と両者の相違点を分析している通り、古めかしい怪奇探偵小説を装った推理小説が滝連太郎シリーズの本質と言えるでしょう。

 1992年に発表された「古代諏訪生贄伝説殺人」(現題「生贄伝説殺人事件」)は、この大谷説を証明する格好のサンプル作品です。
 フランス料理店オーナーの娘が誘拐された事件を発端にした連続殺人の謎を扱い、性に対するモラルの変化や親子関係の断絶が謎解きのポイントとしてクローズアップされました。
 さらに古代諏訪のミシャグジ信仰を絡ませる事で怪奇性も盛り込み、おどろおどろしいアダルティックな要素を含める事も忘れていません。

 本作では売春行為やロリコン趣味が真相解明のキーワードになっており、未成年女子の貞操観念や性交渉に関するモラルの変化についても言及されています。
 時代と共に移り変わる少女達の性交の考え方。この問題を真正面から描いた「古代諏訪生贄伝説殺人」は、シリーズ中でも屈指の異色作と言えるでしょう。
 アブノーマルなロリコン趣味や売春事情の変化、神事としての性交渉について触れた場面を、一部ではありますが本文から引用してみようと思います。


 もっともロリコン・マニアといっても、彼をはじめ編集部のメンバーは、幼女にはまったく関心を抱かなかった。初潮を迎えて以後の、十二、三歳から十六、七歳までの、子供から大人になりかけの、少女たちにしか魅力を感じなかった。
 ローティーンではあっても、胸のふくらみがあり、あくまでセックスが可能な、肉体の持ち主でなければいけないのだ。果実に例えれば、未成熟な青く固い実がようやく熟し始め、色づきかけた頃に相当するだろうか。

≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P9≫

「検視の際、あまりのおぞましさに吐き気をもよおしたよ。だって一方の手に、十二、三の女の子のはく花柄のパンティーを握りしめ、もう一方の手に女子中学生のセーラー服を、抱きしめていたんだものな。あの爺さんに、あんな異常なロリコン趣味があるとは知らなかった」
≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P108≫

「あら、そんなの認識不足もいいところ。昔と違って最近の女の子は、体の発達が格段に早いのよ。生理なんか小学校の四年生ぐらいから、始まる子だっているくらいだわ。初体験も中学生時代に、ほとんどがすませてしまうんですからね。そればかりじゃないの。小学生や中学生の売春が、大きな社会問題になっているじゃありませんか」
「ふうむ、いまのローティーンの女の子は、そこまで進んでいるのか」
 滝はカストロ髭をしごいて、慨嘆に堪えないといわんばかりの顔つきになった。

≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P114≫

 また反対側の壁には、レオタードやネグリジェが吊され、その前のワゴンには、パンティーをつなぎ合わせてカバーにした枕が、いくつも置かれていた。
【中略】
 どう見ても学生でしかない、二十代そこそこの若い男客が、パンティーを物色したり、ロリコン・アイドルのカラー写真を選んだりしている。いずれも陰気な風貌で、気弱そうなタイプである点が共通していた。こういうのが、おたく族と呼ばれる若者たたいなのだろうか。
 滝は別世界に足を踏み入れたような、異様なうす気味悪さを覚えずにはいられなかった。

≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P125~126≫

 三人とも、年頃は十三、四歳の中学生だろう。いずれ劣らぬ美少女ばかりといってよかった。
 それが一様に化粧をしているのだ。眉と目尻に墨を入れ、うっすらと白粉を刷いた顔には、瞼と頬にほんのりと紅をさし、唇だけにひときわ赤が目立つ。口紅を塗っているのである。ポニーテールにした髪からは、緋色に染めた絞りの房のような飾りをたらしている。その美しさは、成熟した女の色香以上の、ゾッとするような凄艶さを漂わせていた。

【中略】
〈祭の当日には、あの美少女たちが毛皮をまとった荒くれ男たちに、馬上であられもなく犯され、はかなく蕾を散らされてしまうのか〉
【中略】
 古代諏訪の神歌の戦慄と歌声は、もの悲しい響きを伴って、嫋々として流れつづけていた。驚くべきことに、少女たちの表情には、人身御供に選ばれた理不尽な行為に対しての、恐怖心や悲嘆の色はまるで窺えなかった。それどころか、うっとりとした目の輝きといい、頬のほてりといい、恍惚とした陶酔状態にあることが、見てとれるのだった。
≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P152~153≫

【前略】私は客を装って、これと目をつけたツッパリ気味の女子中学生に声をかけました。ホテルに誘ったら、いつも簡単についてきましたっけ。むろん、その子をただちに補導、うちの署へ連行して取り調べたんです。彼女は厳格な教職員の娘でしたよ。滝先生はおそらく、この種のことには疎いかもしれませんが、最近の少女売春の実態を見ますと、貧困家庭の娘という例はほとんどありません。大多数が中流以上の、経済的には何ら不自由していない家庭の娘たちなんです。カギっ子だったり、家の内情が複雑だったりして、淋しい思いをしているのを粉らすためだけに、やっているんですな。ですから彼女たちはあくまでプレイ感覚で体を売っているだけで、金銭は二の次なんです。かつての娼婦たちのように、ジメジメしたところなどまるでなくて、ケロっとしたもんですよ。【後略】
≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P171≫

 陽が翳った校庭ははや閑散として、グラウンドの片隅でトレーナー姿の教師と白の体操着にブルマー姿の六年生らしい女生徒が十数人、バレーボールの練習に励んでいるだけだった。部活なのだろう。
 戦後の子供たちは年々発育がよくなり、統計上では小学四年生で既に、四分の一に近い女の子が初潮を経験するということだが、確かに練習中の女の子たちを見ても、それがうなずけた。顔は子供っぽいのに、体の方は背丈も高く、胸のふくらみといい、十分に丸みを帯びたヒップといい、剥き出しの引き緊った太腿といい、すっかり大人びた子供が多いのだ。

≪講談社ノベルス『古代諏訪生贄伝説殺人』P176≫


 時代の流れによる発育や売春事情の変化を描いた、ある意味では風俗小説とも言える「古代諏訪生贄伝説殺人」。
 1995年に講談社文庫として刊行された『生贄伝説殺人事件』が絶版になって久しく、今では簡単には読めない作品となってしまいました。
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