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2017-06

女性高利貸しはマゾヒスト(高木彬光「女怪」より)

 昭和23年に「刺青殺人事件」で鮮烈な文壇デビューを果たした高木彬光氏は、松本清張氏の「点と線」を始めとする諸作によって到来した昭和30年代の【社会派推理小説ブーム】以後、その分野へも活躍の場を広げます。
 社会派推理小説を書くようになった高木氏は本格的に法律の勉強を始めましたが、その努力は並大抵のものではなく、特別弁護人として法廷に立つ程の知識を身につけました。
 法律に関する猛勉強の成果は、天才詐欺師の巧妙な犯罪を描いた「白昼の死角」や法廷を舞台にした「破戒裁判」といった長編作品として結実し、これらの長編は今も高木氏の代表作として読み継がれています。

 高木氏は作家になった時から人を裁く為の「法律」に興味を持っていたらしく、犯罪と法律を扱った作品をデビュー間もない頃より書いていました。
 その代表例として、昭和25年発表の「戦後派殺人事件」や昭和29年発表の「これが法律だ」が挙げられ、さらに遡れば、代表作「呪縛の家」にも法律の盲点を突いた影の真犯人が登場します。

 昭和32年に週刊誌へ発表されたノンシリーズ短編「女怪」では、狡猾な悪女の存在を通じて法律を利用したトリックが描かれています。
 自首減軽や一事不再理、正当防衛を絡ませた完全犯罪の構図はユニークであり、同時に高木氏らしい豪快なストーリー構築でもありました。

 本作では、女性高利貸しを殺害した前座ボクシング選手が現場付近の交番へ自主する場面から始まります。
 犯人の熊谷則男は犯行に至る経緯をS警察署の部長刑事に語る際、犯行前の行動について次のように語りました。


 熊谷則男は、はじかれたように顔をあげた。青白く変わった顔に、泣き笑いのように複雑な表情を浮かべ、
「しかたがありませんからお話ししましょう。あの人は――奥さんは、男にいじめぬかれるのがうれしくてしかたがない型
(ママ)だったのです。昼には人をいじめていじめていじめぬいているくせに、夜になるとその反動が出るのでしょうか。逆に男にいじめぬかれなければ満足ができないほうだったのです」
「何か使ったのか。道具は?」
「最初はたいてい鞭でした。時には針も使いました――しかしそれよりも喜んだのは、首をしめることでした」
「うむ、それで?」
「私はむかし柔道を習ったことがあります。首をしめられて落ちるときには、苦しく苦しくてたまらないくせに、その反面、なんともいえないいい気持ちになったものですが、ちょうどああいう気持ちじゃないでしょうか?
【中略】とにかく、じわじわと首をしめて、ほとんど呼吸がつまるぐらいに圧迫していくと、奥さんは、何ともたとえようのないほど興奮してくるのです。もっと、もっととくりかえすのですが、こっちも、そこはなれたものですから、きのうまで危ないまねはもちろん避けました……きのうまで、きのうの晩までは!」
 熊谷則男の両眼からは、はらはらと大粒の涙がしたたり落ちて頬を濡らした。男女の交渉の機微については、ことにこういう変質的な性生活については、大沼部長もそれほど深い知識を持ちあわせているわけでもなかったが、いくつかあつかった強姦事件の類推からも、この話はなんとなく理解のできるような気がした。

≪角川文庫『殺意』P100~101≫


 熊谷の供述によるベッドシーンなので絶対的な事実とは断言できませんが、容赦なく金を取り立てる高利貸しの女性が実はマゾヒストだったとは何とも意外です。
 取り立てで相手を責めたてるイメージから、殺された木下鋭子はサディスト的傾向にあると思ったのですが……。
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