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2017-06

命短カシ 気高キ人妻(高木彬光「血どくろ組」より)

 高木彬光氏の「魔風恋風」は、同氏の長編時代小説第4作目として書かれました。
 昭和31年に東京文藝社から初刊本が出版された際に「血髑髏組」と改題され、さらに「血どくろ組」とタイトルを改めて現在に至ります。
 幕府転覆の大陰謀を目論む蛇神一派を倒し、艱難辛苦の末に結ばれた桐島伊織と長島真琴。しかし、開国派の人々が署名した連判状【血髑髏文】を巡る新たな戦いの果てに二人を待ち受けていたのは悲劇的な運命でした。

 長島真琴は桐島伊織と結婚した後、本来ならば幸せな新婚生活を送る筈でしたが、イタズラな運命によって夫と離れた生活を余儀なくされます。
 その事情については省きますが、真琴は子供を育てながら悲しみの3年間を乳母と一緒に過ごしました。

 今度の騒動でも真琴は事件の渦中に巻き込まれます。
 義弟に騙されて連れ込まれた屋敷へ監禁され、その体を汚されそうになりましたが、覚えのある剣技で難を逃れました。
 襲いかかる三下を相手にチャンバラを演じる真琴の姿には、誇り高く凛々しい淑女の美しさと戦うヒロインの魅力が見られます。


「武士の妻たるこの身として、万一はずかしめをうけた時の覚悟は出来ておりまする。一歩でも近づいたなら、この胸を……」
 人々は思わず、その場に立ちすくんだ。懐剣の切先を左の乳房の下にあてて、真琴はつめたい笑いを浮べた。
 だがその時、頭の上の松の木の枝から、ばさりと音をたてて、落ちて来た大きな投網があった。あッと叫びをあげる間もなく、真琴の体は、そのまま地上を転がって、魚のように身動きも出来ず、襲いかかって来た、男たちの組しかれてしまった。

≪ポピュラーブックス『血どくろ組』P225~226≫

「なあ、真琴、こう見えても、この孫兵衛は女にはいたってやさしい男なのだ。どんな美人の女でもわしにかかると他愛もなく……ははははは、たとえ二世を契った夫でも……ずっと家を開けつづけだった伊織のこと、まだお前には、女としての生き甲斐を十分には味わせてくれなんだろう。それをこれからこのわしが、たっぷりふるまってもやろうが」
≪ポピュラーブックス『血どくろ組』P245≫

 どのような方法で、媚薬ともいうべき阿片を体内に注ぎこまれたのか、真琴は知らない。ただ、夢かこの世の出来ごとかわからない状態から眼ざめてわれに帰ったとき、真琴は自分のまわりを見まわして、ぞっと震え上らずにはおられなかった。
 枕もとの金屏風、絹の夜具、そして肌もあらわな自分の姿――人妻として、武士の妻として他人に見せてはならない姿。
 知らず知らずに襟口をあわせて、真琴はきりりと唇をかみしめた。夢ではない。幻ではない。もう二度と、生きて伊織の前には出られぬ――という悲痛な悔恨の情が、血の出るように、その真白な胸の中を噛んでいた。――あなた許して下さいまし、わたくしがあさはかでございました。もう二度と、お目にはかかりませぬ。どうぞお体をお大事に。

【中略】
「あッ、あれは!」
「あの女を逃がしては、後のたたりも恐ろしいぞ」

【中略】
「しまった。刀をとられたぞ」
「なに、たかが女の剣法だ。何ほどのこともあるまい」
「いや、万一のことがあっては、あとで、おとがめも、うけよう。遠まきにして、刀を落させ、傷をおわせずにからめとるのだ」

【中略】
「ええッ」
 自分でも知らないうちに刀が動いて、左の男の肩先へ――生あたたかい血しぶきが、さっと顔へかえって来たときに、真琴は自分でも眼を見はった。
【中略】
 叫びとともに輪は乱れ、真琴は逆に攻勢に出た。刀の重さも気にならず、またたくうちにいま一人を切りすてたとき、ピピーッと闇をやぶって、響きわたったのは呼子の笛・そして、塀の上に無数のほうづきをならべたように浮び上って来たものは、御用提灯の波だった。

【中略】
「あッ! そなたは真琴殿ではないか!」
 左衛門の声も、驚きのあまりにふるえている。
「どうしてここに……この屋敷に……」
「面目次第もございませぬ。敵に、あざむかれまして……夫の危難を救おうものと……」
「うむ」
 左衛門は一瞬に、何かの秘密を見やぶったようだった。火事場羽織をぬいで、真琴の背中に着せかけ、
「真琴殿。死ぬな。死のうなどと、つまらぬ考えを起こすではない。後のことは、わしが何とでもはからってとらせる」

【中略】
「真琴殿……」
 左衛門丞は後をふりかえって、いたわるように、
「さ、そなたもいろいろと疲れたであろう。誰かにともをさせるゆえ、帰って休息されてはどうじゃ」
「いえ、わたくしも……おともを」
「何をいわれる・女の身で……」
「いえ、或はこれが、夫と今生の別れとなるかも知れませぬ。せめて一目を、一目なりとも……」
 左衛門丞はしばらく腕を組んで考えこんでいたがやがて一人の同心に、
「其方、この屋敷の中を探して、女物の衣類を一枚見つけて参れ。真琴殿としても、この姿で道行きはなるまい……」

≪ポピュラーブックス『血どくろ組』P255~263≫


 蛇神騒動が勃発した時から苦しみの多い日々を暮らしてきた美貌の人妻。
 多くの人が血を流した【血髑髏文】争奪戦が終わった後、不幸続きの真琴にはハッピーエンドが訪れると思いきや、作者は信じられない結末を用意していました。
 その結末とは……ネタバレを含むので書く事は控えますが、大衆娯楽小説とは思えない残酷な末路です。
 気になる方は図書館で春陽文庫『血どくろ組』を借り、最後まで読んでみて下さい。驚かれる事は請け合いです。
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