FC2ブログ

2013-05

6月中旬までの更新停止告知

 今日は5月31日。アッと言う間に5月が終わってしまいました。
 いよいよ全国的な祝日が皆無の6月となり、2013年も折り返し地点を迎えます。

 すっかり忘れていましたが、先月18日で「黄昏タイムス Twilight Times」も開設3年目となりました。
 これも訪問者の皆様に支持されての事。
 常連の方、定期的に訪問して下さる方、同じ趣味趣向の方、皆様に感謝しております。

 さて、恒例の更新停止告知ですが……。
 6月中旬までブログの更新を停止いたします。再開は6月15日頃をメドにしておりますが、多少はズレるかも知れません。
 8月に大規模なブログ内イベントを予定しており、その前の一時的な沈黙という事にさせて下さい(汗)。

 pixivやtwitterへは定期的にアクセスするのでコメントやツイートを残しますが、ブログ更新は行えません。
 過去記事へのコメントも可能な限り短時間で返信するよう努力しますが、もしかしたら時間がかかる場合があるかも知れませんので、その際はご容赦願います。

吉川英治「神州天馬侠」より(山口将吉郎・画)
(C)吉川英治/山口将吉郎/講談社

 約半月のブログ一時更新休止を前に、山口将吉太画伯の描く美しい乙女のイラストを紹介します。
 吉川英治氏の代表作「神州天馬侠」より、ヒロイン役の咲夜子です。前者は可憐な動きで敵を翻弄する様子、後者は宿敵の目潰し攻撃に苦戦する姿が描かれています。
スポンサーサイト
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!
[PR]

「DOA5」のマイ・ベスト・フェイバリット(上位3位)

 久しぶりに「DOA5」を起動させ、思う存分にリョナプレイを楽しみました。
 やられ役として活躍して頂いたのはヒトミ、こころ、エレナの三人です。
 ツープラトン技や関節技に苦しみながら汗を流す美しい美少女ファイターの素敵なショットが数多く撮影でき、時間の経つ事も忘れてプレイしてしまいました……。
 さすがはキャラクターモデルの完成度が高いうえ、エロチックなコスチュームも豊富に用意されており、充実したカメラモードで男性プレイヤー(の一部)を虜にする神ゲームです。

 今回のプレイで撮影した画像と併せ、本作における「お気に入り技ベスト3」を発表しようと思います。
 リョナゲーとして「DOA5」を楽しんでいる一個人の「お気に入り技ベスト3」を発表したところで誰得の内容かも知れませんが、その辺は大目に見て下さい(汗)。
 いつものように携帯カメラで撮影した為、画像サイズは小さく、画質も悪いです……。


【第3位】ロデオホールド(使用者:ティナ)
 コマンドは「→→F+P」(キャラクターが右向き時)。相手の肩関節を痛めつけるコマンド投げ。技のフォームがパ●スペシャルに似ている。
背中に乗られたティナが容赦なくヒトミの肩関節を痛めつける 股下アングル。コスチューム用テクスチャの関係からか股間が膨らんで見え、不思議なエロスを感じさせます。

【第2位】バタフライスープレックス(使用者:ラ・マリポーサ)
 コマンドは「自分が壁際時に←←F+P」(キャラクターが右向き時)。相手を壁に激突させてから臀部を抱えて持ち上げ、開脚状態のスープレックスで地面に叩きつけるコマンド投げ。技のフォームはダブル●ッグスープレックス。
大きく股を開いた恥ずかしいポーズで地面に叩きつけられるヒトミ

【第1位】ファイブポイント・デストロイヤー(使用者:バース)
 崖っぷちデンジャー技(投げ属性)。相手の体を担いで上昇し、股裂き状態で着地する特殊投げ技。技のフォームはキ●肉バスター。

着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるこころ バスター技をくらうこころ
着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるこころ バスター技をくらうこころ
着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるこころ バスター技をくらうこころ
着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるこころ バスター技をくらうこころ
着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるヒトミ バスター技をくらうヒトミ
着地時の衝撃により、顔と股間が密着しそうなくらい上半身を曲げるエレナ バスター技をくらうエレナ

「ラブ☆MAGI」 最終話:雨降って、地固まる

Part1.杏子の頼み、キリカの条件

 友人A「オッハヨー、アンコ。朝から難しい顔しちゃって何読んでんの?」
 杏 子「これか? せ、生徒会の書類だよ」
 マミから押し付けられた「恋愛実習プログラム」だとは言えず、とっさにゴマカす杏子。
 杏 子「こんな分厚い書類読まなきゃいけねーんだから、生徒会役員ってメンドーだよ」
 友人A「そんなこと言って。ホントは楽しんでるくせにー」
 杏 子「た、楽しんでなんか……」
 友人A「今まで『学校なんてツマンネー』が口癖だったのに、役員になってからは一度も言ってないじゃん。あんたがそんなにマジメで仕事熱心だったとはねぇ」
 杏 子(そう言えば……役員になってから学校がツマンナイって思わなくなったなぁ。補佐になったのもマミのゴーインな押し付けだったし、ホントにイヤなら行かなければいいだけだもんな)
 ゆ ま「し、失礼します。あの、佐倉先輩……い、いらっしゃるでしょうか」
 杏 子「なんだ、ゆまじゃないか。ここにいるよ。どうしたんだ」
 ゆ ま「佐倉先輩。た、大変です。巴先輩が体育の授業中に倒れて保健室へ運ばれたそうです」
 杏 子「なんだって」

 ゆまと一緒に保健室へ急ぐ杏子。
 杏 子「マミッ!!」
 保健医「静かに!」
 杏 子「ス、スミマセン」
 奥のベッドには青い顔で横たわるマミの姿があった。
 杏 子「マ、マミ……」
 ゆ ま「巴先輩……」
 保健医「過労と寝不足ね。この学校の生徒会は仕事が多いから」
 杏 子「か、過労……」
 保健医「巴さん、責任感が強くて抱え込みタイプだから気をつけてあげてね」
 杏 子(知らなかった……)
 保健医「その辺をサポートすることも補佐の役目よ」
 杏 子(ウソだ。知ってた……。知ってたけど、あたしはマミの好意に甘えていた)
 真実の寝顔を見た杏子は駆けだして保健室を出た。
 ゆ ま「佐倉先輩!」

 キリカ「第一項、魅力的なうなじの見せ方……。何回読んでも理解できないわ」
 織莉子「男のコの気を引くテクとか素敵な出会い方とか、バッカみたいよねぇ」
 執行部室から持ち出した冊子のコピーを手にする織莉子とキリカ。
 織莉子「明日の委員長会議で使う資料にコレを混ぜて、読んで騒然としているトコに私が登場する。そうすれば、マミも私を無視できな……」
 キリカ「イヤガラセの犯人にさぁ」
 織莉子「え?」
 キリカ「連想されなかったのはいいことじゃないの? 織莉子はそんな卑怯なマネをしないと思われてるってことでしょ? フツーなら気づかれるよ」
 織莉子「……」
 キリカ「まぁ、単に忘れられてるだけって気もするけど、前向きに考えてみたわ」
 織莉子「最後の一言は余計よ」
 キリカ「この作戦、あたしは卑怯な作戦だって思うんだけど、織莉子はホントにそれでいいわけ?」
 織莉子「……。い、いいに決まってるでしょう。そろそろコピー室の予約時間になったから、混ぜる分のコピーをとってくるわ」
 織莉子が廊下の向うへ消えるのと入れ違いに、今度は杏子が姿を現わした。
 杏 子「見つけたッ! 守銭奴!」
 キリカ「初対面の先輩に向かって守銭奴とは失礼な後輩だねぇ」
 杏 子(やべえ。ついホンネを口にしちまった)
 キリカ「どうしたのさ。あたしに用があるんじゃないの?」
 杏 子「く、呉先輩」
 キリカ「へえ、あたしのこと知ってるんだ。どこかで会ったっけ?」
 杏 子「いいえ、マミから聞いたんです。あなたが生徒会の会計だったこと」
 キリカ「そうだったの。それじゃ守銭奴って言われても仕方ないわね」
 杏 子「生徒会の会計に……戻りませんか?」
 キリカ「この守銭奴に会計を任せる? どういう風の吹き廻しよ」
 杏 子「……マミが倒れたんです」
 キリカ「!」
 杏 子「先輩は仕事が早いってマミが言ってました。だから……」
 キリカ「だから?」
 杏 子「マミを……手伝ってやって下さい」
 キリカ「……」
 杏 子「……」
 キリカ「いいよ。でも、一つだけ条件がある」
 杏 子「ま、まさか。金を自由に使われろなんて言うんじゃ……」
 キリカ「あっはははは。まあ、いきなり守銭奴なんて言うくらいだ、そう思われても仕方ないわね」
 杏 子「あ、あれは違くて。その……」
 キリカ「こっちの条件は簡単よ。織莉子を会長に戻してくれないかしら?」
 杏 子「織莉子を……会長に戻せ? 織莉子って誰です?」
 キリカ「うわ。そっから説明しなきゃダメなんだ」
 ゆ ま「み、美国先輩のことですか? 元会長の……」
 杏 子「元会長? すると先輩達はグルだったのかよ。二人はどーいうカンケーなんだよ」
 キリカ「ど、どういうって、幼馴染……」
 杏 子「幼馴染が手を組んで生徒会を乗っ取ろうってハラか? あんたが会計に戻るのが目的じゃないのかよ」
 キリカ「急にタメ口になったわね。あたしが会計に戻りたいってのもあるけど、本当は織莉子を生徒会長に復帰させ……」
 杏 子「次々と新事実を出すんじゃねーよ。こっちはマミが倒れたってだけで混乱してんだぞッ」


Part2.交渉決裂

 杏 子(マミの奴、何が心当たりがないだッ。コイツと仲いい元会長なんて怪しすぎるよ)
 キリカ「条件、のんでくれる?」
 杏 子「……あたしは『会長の』マミを手伝ってほしいんです。マミが会長じゃなくなるなら頼みません。取引になってませんから」
 キリカ「マミが会長? それは違うわね。会長は織莉子よ。そう思っている生徒はいないだろうけど」
 杏 子「それは当然です。職務を放棄したんだから」
 キリカ「確かにね。でもさぁ、居座る前に織莉子を怒って説得すればよかったのに。会長代行になったら全部一人でやろうとしてるじゃない」
 杏 子「それは……そうだけど」
 キリカ「マミが有能のは認めるけど人を信用しなさすぎ。織莉子とは違うわ」
 杏 子「……」
 ゆ ま「……」
 キリカ「まあ、肝心なところが抜けてて、子どもっぽくて、ワガママで、カンシャク起こしてばかりだけどね」
 杏 子「短所の方が上回ってないか?」

 織莉子「『恋愛研究成果』は普通の資料みたいにまとめてある。出てくる名前も『会長』や『補佐』だし。混ぜてしまえばパッと見は気づかない……」
 コピーを取りながら「資料」の一部に目を通す織莉子。
 織莉子(でも、キリカの言う通り卑怯かも。人の日記を勝手に公開するようなものだし……)
 早乙女「美国さん、割り込みで申し訳な……ん? 『議題1。ハンカチ落とし』?」
 ビリッ。
 背後から早乙女先生に声をかけれ、動揺した織莉子は持っていたコピーを引き裂いてしまった。
 織莉子「さ、さ、早乙女先生。あの……これは……その……明日の委員長会議で使う資料なんです。激論をかわすんですッ」
 早乙女(な、何を話し合うのかしら……)
 織莉子「コ、コピーでしたら、私がとりますから置いといて下さい」(焦ったわ。事前に使用時間を申請してたから誰も来ないと思ってたのに)
 早乙女「あら、いいの?」
 織莉子「はい」
 早乙女「それじゃ、お願いしようかしら。五時からの職員会議で使う追加資料なのよ。各十部づつコピーして、そこの棚に置いておいてね。後で取りにくるわ」
 織莉子「わかりました」
 早乙女「ホントに美国さんは頼りになるわね」

 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 狭い室内に響くコピー音が織莉子に虚しさと寂しさを覚えさせる。
 織莉子(キリカ、来ないわね……)
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「……」
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「……」
 ウイーン。ウイーン。ウイーン。
 織莉子「し、仕方がないわね。迎えに行ってあげるわッ」

 織莉子「まったく、キリカったら……」
 コピー室を出て廊下を走る織莉子。曲がり角近くまで来た時、キリカの声が聞こえてきた。
 キリカ「織莉子は私がいい加減なことをしたら、ちゃんと怒ってくれる」
 織莉子(えッ? 何よ、この状況?)
 廊下で見知らぬ生徒と真面目な顔で話すキリカ。曲がり角の影に身を隠しながら、織莉子は彼女達のやりとりに耳を傾ける。
 キリカ「でもね、また信じて任せてくれるよ。私はマミよりも織莉子が会長の方がいい」
 織莉子(キリカ……)
 キリカ「まあ、それを補って余りある程の欠点は問題だけどね」
 杏 子「子どもっぽかったり、ワガママだったり、カンシャク起こしたり?」
 キリカ「まだるわ。八つ当たりも早とちりもするし、泣き虫だし……」
 織莉子「ちょっと、キリカ。いくらなんでも言い過ぎじゃなくて?」
 内心の怒りを隠しながら、織莉子は曲がり角から姿を現わした。
 キリカ「あッ。彼女が織莉子。噂の会長様よ」
 織莉子「え?」
 キリカ「織莉子、彼女が噂の会長補佐だ。挨拶したら?」
 織莉子「は、はじめまして。美国織莉子です」
 杏 子「どうも。会長補佐の佐倉杏子です」
 ゆ ま「しょ、書記の千歳ゆまです」

 織莉子「話の展開が見えないんだけど、私の方が会長にふさわしいってことよね。当然だわ」
 杏 子「でも、自分のプライドのために職務放棄したんだろう?」
 織莉子「そ、それは……」
 杏 子「確かにマミもよくないとこはある。だけど、無責任に仕事を投げ出したりはしない」
 織莉子「……」
 杏 子「あたしが会長にふさわしいと思うのはアンタじゃない。マミだけだ」
 キリカ(言ってくれるねー)
 ゆ ま(さっすがー。チェリーブロッサム)
 織莉子「マミが……会長に……ふさわしい? そんなこと、私が一番よくわかっているわ。だから……。少し困らせて、私を頼ってきたら、『仕方ないわね』って補佐するつもりだったのに……」
 杏 子「いやがらせの犯人はアンタだったのか」
 織莉子「そうよ。私の実績を無視し、生徒会とは無関係な同級生を会長補佐に指名するから、いやがらせをしたのよ」
 杏 子「つまり……マミに頼られたかったのに無視されたうえ、あたしを補佐に指名したのがムカついたってわけ?」
 キリカ「子どもっぽいでしょ?」
 杏 子「ホントだな」
 織莉子「と、とにかく。あなたは補佐を辞めなさい。そしたら意地悪するのを止(や)めるわ」
 杏 子「いやーだね。アッカンベー」
 織莉子「こ、子どもっぽい事を……」
 杏 子「アンタに言われたくねーよ」

 織莉子「いいわ。交渉決裂ね。覚えていなさい。きっと後悔させてあげるから。行くわよ、キリカ」
 捨てゼリフを残し、キリカの手を取って走り去る織莉子。
 杏 子「やれやれ。そういうことだったのか。ゆま。これからはマミに無理させないよう、二人でサポートしようぜ。あたしも仕事するから教えてくれ」
 ゆ ま「は、はい」
 杏 子「生徒会役員の先輩として頼りにしてるぜ」
 ゆ ま「はいッ!」(うわ~い。チェリーブロッサムから頼りにされたぁ)
 杏 子「それからさぁ、あたしのことは佐倉先輩って呼ばなくてもいいぜ。好きなように呼んでくれ」
 ゆ ま「えッ? いいんですか?」
 杏 子「ああ」
 ゆ ま「じゃあ『チェリー先輩』と呼ばせて下さい」
 杏 子「な、なんでだよ……」


Part3.委員長会議にて

 マ ミ「そうだったんですか。美国先輩が……」
 杏 子「そんなわけで人手はふえねーけどさ」
 ゆ ま「これからは二人で巴先輩をサポートさせて下さい」
 マ ミ「で、でも……」
 ベッドから身を起こし、マミは遠慮がちに口を開いた。
 マ ミ「二人に迷惑をかけるわけにはいきません。キョーコは仕事をしないって条件で会長補佐になってもらいましたし」
 杏 子「うるせー。お前はもっと人を頼れってーの」
 マミの額を指で弾きながら杏子が言った。
 マ ミ「い、痛いです。キョーコ」
 杏 子「困った時に助け合うのも『友達』だろう。だから、遠慮しないで仕事を言いつけてくれよ」
 マ ミ「……はい。ありがとうございます。それでは……」
 杏 子「ん?」
 マ ミ「明日までに恋愛練習教材を各自10案ずつ出して下さい」
 杏 子「そこを頼るのは控えよーぜ、マミさんよぉ」
 マ ミ「あら、ごめんなさい」
 杏 子「ふふふふ。あ~っははははは(笑)」
 マ ミ「うふふふふ(笑)」
 ゆ ま「あはははは(笑)」
 マ ミ「でも、ホントによかった。いやがらせが続いたから、もう来てくれないんじゃないかと思っていました。キョーコは元々、ムリして役員になってもらいましたし」
 杏 子「あたしは別にムリなんか……」
 マ ミ「誰かとワイワイやるの……初めてで……すっごく楽しくて……。だから、絶対になくしたくなかったんです」
 杏 子「マ、マミ……」
 マ ミ「キョーコがいなくなったら、千歳さんもいなくなっちゃうんじゃにかって不安だったんです」
 ゆ ま「そ、そんな。私なんか……」
 マ ミ「今まで、ずっと一人でやっていたから。だから、友達と一緒に仕事するの、すっごく楽しいんです」
 杏 子(そうか。マミは人を信用しないんじゃなくて、頼り方を知らないだけなんだ)
 マ ミ「有能すぎるのも困ったものですわね」
 杏 子(まあ、この性格に問題がありそうだけど……)

 キリカ「まったく。織莉子ってば、ホントにワガママだねー。会長に戻りたいって言ったり、補佐を辞めろって言ったり」
 織莉子「お黙りなさい!」
 キリカ「私……笑えるアホをする織莉子は面白くて好きだけど、笑えないアホをする織莉子は好きじゃないな」
 織莉子「……」
 キリカ「……」
 織莉子「決めたわ。もう、つまらない小細工は止(や)める! 明日の会議で生徒会に戻りたいことを正々堂々と言うわ。それで支持がなければ潔く諦めるわ」
 キリカ「マミに認めさせなくていーの?」
 織莉子「いいのよ」
 キリカの方へ向き直り、笑顔で応える織莉子。
 織莉子「会長になれなかったら、副会長の座を狙うから!」
 キリカ「それって潔いの?」
 織莉子(会長に戻れなくてもいいわ。「織莉子が会長の方がいい」。あなたから、もっと嬉しい言葉を聞いたから……)

 織莉子「そうと決まればコピーを処分しないと」
 キリカ「例の『恋愛研究成果』?」
 織莉子「ええ。すぐに回収してくるわ」
 そう言ってUターンし、織莉子はコピー室めざして走りだした。
 織莉子「あら? コピーが二束ある。そうだわ。早乙女先生に職員会議用資料のコピーを頼まれていたんだわ」
 部屋を出る前、作業用ラックに置いたコピーの束は『恋愛研究成果』の一束だけだった。それが二束に増えている。
 普段の彼女ならば変に思っただろうが、コピーを処分するばかり考えていたのでコピーの束が二つになっていることを疑問に感じなかった。
 織莉子「えーと、私のコピーは……」
 早乙女「あら、美国さん。さっきは助かったわ」
 織莉子「さ、早乙女先生」
 早乙女「会議用資料のコピーだけど……」
 織莉子「先生の資料は作業用ラックの上です。それでは失礼しまーす」
 早乙女「み、美国さん。ちょっと待ちなさい」
 早乙女先生の言葉が聞こえないのか、織莉子は猛ダッシュで廊下の向うへと走り去って行った。
 早乙女「美国さんが頑張り屋だけど、落ち着きないのがネックなのよねぇ」
 織莉子の背中を見つめながら早乙女先生が呟いた。
 早乙女「ちょっと前に室内を覗いた時、コピーが終わっていたから複写資料は貰っていったと言うつもりだったのに。きっと、これが明日の委員長会議で使う資料ね。巴さんは保健室で休んでいるようだし、部室の鍵も私が預かっているから、執行部室へ届けておきましょう」
 アバウトな性格の早乙女先生、書類の内容も確認せず執行部室へ『恋愛研究成果』のコピーを運んで行った。

 翌日。
 視聴覚室に各委員会の委員長が集まり、生徒会の司会進行による委員長会議が始まった。
 マ ミ「お手元の資料を御覧下さい。各委員会の活動成果、目標や課題。今春から校内各所へ設置された目安箱への投書など、生徒会の見解をまじえてまとめてあります」
 ゆ ま「これが目安箱です。校内十五箇所に設置してあります」
 マ ミ「ご質問やご意見はのちほど……」
 ガラッ。
 織莉子「異議あり!」
 機材準備室のドアが豪快に開き、織莉子とキリカが現れた。
 杏 子(ゲッ。厄介な連中が出て来たなぁ)
 ゆ ま(先輩達、ずっと準備室に隠れいたのかなぁ。気がつかなかった……)
 マ ミ「美国先輩!? 異議って、まだ議論してませんわよ」
 杏 子「そこはどーでもいいだろう。ツッコムところが違ってんぞ」

 マ ミ「か、関係ない方の入室はお断りして……」
 織莉子「関係なくないわ。正式には私がまだ会長でマミは私を補佐する副会長よ!」
 マ ミ「で、ですが……」
 織莉子「私がここへ来たのは……」
 生徒A「あのぅ、美国会長」
 織莉子「あら、私? 何かしら」
 生徒A「この恋愛研究成果って……なんですか?」
 織莉子「え?」
 マ ミ「え?」
 杏 子「え?」
 ゆ ま「え?」
 キリカ「……」
 マミは慌てて手元の冊子を手に取り、ページをパラパラと捲ってみた。表紙と最初の数ページは会議用資料だったが、残り十ページは『恋愛研究成果』のコピーであった。
 生徒B「巴さん、こんなことをしてたんですか?」
 マ ミ「こ、これは……」
 杏 子(あいつらの仕業か。ヒドイことしやがって)
 ゆ ま「と、巴先輩……」
 杏 子(どうする。どうすれば……そうだッ)「違う。この会長ってのは美国織莉子のことだ」
 織莉子「えッ。な、何を言い出すの。私は関係ないわ」
 杏 子 「たった今、自分で言ったじゃねーか。『会長』はまだ自分で、マミは『補佐』だって!」

 生徒C「恋愛研究って……生徒会で?」
 生徒D「ちょっと見せて」
 生徒E「この学校、男女恋愛禁止なのに大胆ねー」
 キリカ「ちょっと……」
 織莉子「いいのよ、キリカ。黙っていて……」
 何か言おうと身を乗り出したキリカだったが、それを織莉子は制止した。
 衝撃の資料を目にした各委員長と副委員長のザワメキは、ますます大きくなっていく。
 生徒F「こんなこと真剣に取り組んでたのー?」
 生徒G「文面読むとマジメよね」
 生徒H「でも美国さんならやりそうよねぇ」
 織莉子「……」
 杏 子(せ、先輩……)
 生徒I「確かに。ちょっと思い込みが激しいとこあるし」
 生徒J「ついてくの大変そう」
 生徒K「本気でやってたのかなぁ、これ」
 生徒L「ウソでしょー」
 織莉子「うッ……うぐッ……」
 容赦ない言葉に瞳をうるませる織莉子。だが、彼女は黙ってヤジに堪えている。
 杏 子(……)
 生徒M「コレって、なんかハズかしーわね」
 生徒N「ちょっと幻滅だなぁ」
 嘲りの言葉や嘲笑も聞こえ始めた時、杏子はマイクを手にして会場を一括した。
 杏 子「うるせぇぇぇぇぇ!!」
 マ ミ「キョ、キョーコ」
 ゆ ま「うわッ! びっくりした~」
 織莉子「……」
 キリカ「……」
 杏 子「みんなのために頑張ってきた奴を簡単に笑うな! そうやって笑ってるけど、カッコいい彼氏が欲しいとか、可愛く思われたいとか、一度も妄想したことない奴はいるのか?」
 杏子の一言に室内は水を打ったように静まり返る。
 杏 子「恥ずかしいけど、あたしだって妄想したことあるよ。そんなのフツーだろ。生徒会役員だろーが、優等生だろーが、同じ年頃の女だったら一緒じゃねーか。だから……その……」
 キリカ「だから調べてあげたんだよね。『匿名希望の一生徒』のために」
 杏 子「はッ?」(コイツ、何を言い出すんだ……)
 キリカ「そういうこと知り立って投書があったんだよね。ここ(目安箱)に」
 目安箱を軽く叩きながらキリカがフォローをする。 
 キリカ「そのコのために調べてたんだよね。恋愛研究って」
 杏 子「そう! そのコのために調べてたんだよ。『恋愛研究成果」ってのは、その調査に関する資料なんだ。製本過程でまぎれこんだのかも。お騒がせして申し訳ない」
 生徒A「そーだったんだ」
 生徒B「優しいのね。美国さんも、巴さんも」
 生徒C「お二人とも面倒見がいいものねぇ」
 生徒D「早まって悪いこと言っちゃったわ」
 生徒E「ホントねー」
 ゆ ま(よ、よかったぁ)
 杏 子「(小声で)……た、助かったよ。先輩」
 キリカ「(小声で)どういたしまして」
 杏 子「(小声で)でもさぁ、もっと早く言ってくれよ」
 キリカ「(小声で)だって、これ(目安箱)を見てて思いついたんだもん」
 杏 子「(小声で)ウソくせーなぁ」
 キリカ「(小声で)やれやれ。信用ないなぁ」

 会場のざわめきが一段落したタイミングを見計らい、杏子は再びマイクを握った。
 杏 子「いろいろ不備があってスミマセン。後日仕切り直すってことで、今日は解散とさせて下さい」
 生徒F「そうね」
 生徒G「部活の夏季特別予算なんかで生徒会も大変みたいだし、今月の委員長会議は中止でいいんじゃない?」
 生徒H「私も賛成」
 生徒I「それじゃ今日は解散しましょう」
 杏 子「せっかく集まってくれたのに申し訳ありません。今回の件は「一生徒」の気持ちを考えて秘密に願います。それからエラソーに怒鳴ってスミマセン」
 生徒J「気にしないで」
 生徒K「これからも会長補佐、頑張ってね」

 杏 子「ふぅ。危なかったけど、なんとかなってよかったな」
 生徒会メンバーを除く生徒全員が視聴覚室を出て行った後、ガラガラの会場を見まわしながら杏子はマミに向かって声をかけた。
 杏 子「マ、マミ……?」
 返事がないのでマミの方を振り向くと、彼女は目から涙を流して泣いていた。
 杏 子「お、おい……泣くなよ。ショックだったろうけどさ―」
 マ ミ「キョーコ、ありがとう」
 杏 子「え?」
 マ ミ「私は何もできなくて……。でも、あんなふうに怒ってくれて……。私、すごく嬉しい……」
 杏 子「マミ……」
 マ ミ「あの時、キョーコに見られてホントによかった。ホントに……。うわ~ん。ごれがらも仲(なが)よぐじてくだざい~」
 杏 子「あ、当たり前だろう。あたしら友達じゃねーか。だから泣くな、バカッ」
 マ ミ「当たり前だって……。嬉しいですぅ。うわ~ん」
 ゆ ま「チェリー先輩、男前ですぅぅぅぅ」
 さりげなく本音をもらしながら、ゆままで貰い泣きを始めた。
 杏 子「あー、もう。デュエットするなぁ」


 エピローグ

 織莉子「私のせいで大変なことになってしまって……。ホントにごめんなんさい」
 騒ぎを引き起こしてしまった織莉子は神妙な面持ちで三人に謝罪した。
 深々と頭を下げる織莉子を見ながら、マミは優しく言う。
 マ ミ「もう、いいんですわ。今回の件、私にも責任がありますから」
 杏 子「あたしこそ、そっちのせいにして悪かったよ」(否定せずに耐えてくれたし……)
 織莉子「お詫びにバリバリ働くわ。もちろん、副会長としてね」
 キリカ「それじゃ、私も会計やるー」
 マ ミ「美国先輩。呉先輩」
 杏 子「ちょっと待てッ。なんだよ、それ。ドサクサまぎれに復帰宣言するんじゃねー」
 ゆ ま「お、落ち着いて下さい。チェリー先輩」
 キリカ「プッ。チェリー先輩? へえ、そう呼ばれてるんだぁ」
 杏 子「ち、ちげーよ。ゆま、誤解されるよな発言すんな」
 ゆ ま「す、すみません」
 マ ミ「うふふふ(笑)」
 織莉子「くすくすくす(笑)」
 キリカ「ふふッ。あ~っはははは(笑)」
 ゆ ま「あはははは(笑)」
 杏 子「あはッ。あ~っはははは(笑)」

 朗らかな笑い声が視聴覚室に響く頃、校舎内に設置された目安箱の一つへ恋愛相談の手紙が投函されようとしていた。
 周囲を気にしながら素早く投書を投げ込む一人の女子生徒。
 わだかまりをなくして笑い合う五人が、後に『恋愛(ラブ)ラボ』と呼ばれる芳文女子中学校の最初の依頼を目にするのは、もう少し先のことであった……。

 『好きな人に贈り物をしたいのですが、どんなものがいいでしょうか?  匿名希望』


【あとがき】
 終盤は急ぎ足となりましたが、どうにか「ラブ☆MAGI」を完結させられました。【はじめに】にも書きましたが、本作は宮原るり先生の学園ラブコメディ『恋愛ラボ』第1巻を元ネタにしています。全体の2/3程度にダイジェストし、セリフや状況の一部を加筆・修正しながら『恋愛ラボ』第1巻の内容を再構成しました。
 主役メンバーを「魔法少女おりこ☆マギカ」で再現している為、鹿目まどかと美樹さやか、そしてキュゥべえの出番はありません(脇役扱いで出演させてもよかったのですが……)。
 好きな作品をコラボレーションさせるという試みが成功している保証はありませんが、自分としては力の限りを尽くしたつもりです。
 アニメ放送を今夏に控えた「恋愛ラボ」、新作映画公開を今秋に控える「魔法少女まどか☆マギカ」、if物語の漫画連載が好評の「魔法少女おりこ☆マギカ」。これら三作品からは、まだまだ目が離せません。

「ラブ☆MAGI」 幕間:放課後の危機

インターミッション

 マ ミ「ふぁ……」
 杏 子「眠むそうだな。大丈夫か」
 マ ミ「あッ、いえ。昨夜、ちょっと徹夜してしまって……」
 杏 子「そんなに仕事が溜まってるのか?」
 マ ミ「そうじゃないんです。夏季予算の仕事を早く終わらせてしまえば、呉先輩もあきらめるのではないかと思ったものですから」
 杏 子「また一人でムリしやがって……」
 マ ミ「大丈夫です、有能ですから」
 杏 子「最後の一言は余計だ! それよりもさぁ、元会計の呉先輩……仕事は早いんだろう」
 マ ミ「ええ」
 杏 子「ならさぁ、しばらく会計に戻せばいいじゃん。イヤガラセもなくなるだろうし、金の管理さえ気をつけてりゃ問題なくね?」
 マ ミ「なんてことを! 呉先輩が執行部室にいたら、恋の練習できずに鈍っちゃいます~」
 杏 子「そういう問題かよ。だったら、目を盗んでやりゃあいいだろ」
 マ ミ「あの方は神出鬼没なんです。気配を消すのが上手いし、音もなく近寄って金庫の前に立っていたり」
 杏 子「忍者みてーなヤツだな」
 マ ミ「呉先輩が敵方にいるなら、うかつなマネはできませんわ。明日にでも『恋愛研究成果』を狙って、ここ(執行部室)へ忍び込んでくるかも知れません」
 杏 子「なんで明日って思うんだ」
 マ ミ「あら、忘れたんですか。一年生は放課後に学年集会、二年生は野外学習の日ですよ。三年生が自由に動き回れる日じゃありませんか」
 杏 子「そーだった。すっかり忘てた」
 マ ミ「早乙女先生に部外者へ部室の鍵を渡さないよう頼んでおきます。呉先輩は生徒会役員を馘首されたも同然ですから、簡単に鍵は手に入れられないでしょう」
 同じ頃、三年生の教室では……。
 織莉子「キリカ。明日の放課後、執行部室へ行くわよ」
 キリカ「明日?」
 織莉子「そうよ。野外学習で二年生は登校しないでしょう。絶好のチャンスだわ。マミ達が放課後の部室で何をしてるのか手掛かりを探すのよ」
 キリカ「そんなドロボーみたいなマネ、やりたくないわ」
 織莉子「人聞きの悪い言い方はよしてよ。潜入調査と言ってほしいわね」
 キリカ「言い方を変えたって、やってる事は同じだと思うけどなぁ」

 翌日の放課後。
 早乙女「執行部室の鍵? 確かに巴さんから預かっているけれど」
 織莉子「至急、内容を調べたい書類があるので鍵を貸して下さい」
 早乙女「ごめんなさい。現役員以外に鍵は貸し出さないよう巴さんから強く言われていて……」
 織莉子「……せ、先生は……私を会長どころか、生徒会役員としても認めて下さらないのですか」
 早乙女「そ、そんな事はないわ。ただ……」
 織莉子「確かに役職を放棄した事は悪いと思っています。でも、今は自分の軽率な行動を悔いているんです。ですから、途中放棄した仕事を片付けようと思い、鍵をお借りしたいのです」
 早乙女「困ったわねぇ」
 織莉子「早乙女先生は一度でも過ちを犯した生徒を信用せず、更生の機会さえ与えては下さらないのですか」
 目に涙を溜めながら織莉子は訴える。
 早乙女「わ、わかったわ。わかりました。鍵を貸します。だから泣かないで。ねッ、美国さん」
 そう言いながら、早乙女先生は大急ぎで職員室へ向かう。
 織莉子「どう? 迫真の演技だったでしょう」
 キリカ「うん。スゴかった。織莉子なら将来、泣き落としで男もモノにできそーだね」
 織莉子「ちょ、ちょっと。人聞きの悪い言い方はやめてくれないかしら」

 泣き落としで執行部室の鍵を手に入れた織莉子は、キリカを連れて無人の部室へ足を踏み入れた。
 織莉子「ゆっくりしているヒマないわよ。急いで証拠をさが……って、何してるのよ」
 キリカ「野球部の希望予算、これは多すぎる。サッカー部の申請も無駄な項目が多いわね」
 織莉子「夏季特別予算案の書類なんか見てないでよ。急いでるんだから」
 キリカ「一円を笑う者は一円に泣くのよ。追加予算の決定は慎重にやんないと」
 織莉子「はいはい。キリカの意見はもっともだわ。でも、今は証拠探しに専念して!」
 キリカ「わかったよ」
 織莉子「まったく。……あら? このファイルはなにかしら。ラベルが貼っていない」
 織莉子が手にした一冊のファイル。
 織莉子「『恋愛研究成果』? 何かしら、これは」
 ついに大切な秘密が・・・。
 織莉子「うなじを見せる? ハンカチは少しハミ出させる?」
 今まさに暴かれようとしていた。



【付記】
 予想よりも更新停止が長引き、二十日近くも放置した状態となってしまいました。もうしばらくタイトスケジュールが続き、7月下旬まで不意の更新停止期間が増えるかも知れません。5月中に「ラブ☆AMGI」を完結させた後、それからの紹介作品や更新内容は全く決まっておらず、暇を見つけてはネタを考えています。久しぶりにアメコミや小説を扱いとは思っているのですが……。夏になればpixivへの投稿も再開できそうですし、ブログ更新も頻繁に行えるかも知れません。それまでの間、御無沙汰が続くかと思いますが見捨てずに応援いただければ幸いです。

「ラブ☆MAGI」 第4話:二人の三年生

Part1.織莉子とキリカ

 生徒会長補佐・佐倉杏子は、会長代理・巴マミの指名で就任した異色の生徒会役員。
 杏 子「ん?」
 友人A「どうしたの、アンコ(註:親しい友人が杏子を呼ぶ時の渾名)」
 杏 子「いや……。なんか最近、視線を感じんだよなー」
 友人A「……」
 杏 子「気のせいかなぁ?」
 廊下ですれ違う生徒、教室の窓越しに杏子を見つめる同級生。
 生徒A(小声で)「あら、佐倉さんだわ」
 生徒B(小声で)「『チェリーブロッサム』だわ。今日もワイルドねぇ」
 生徒C(小声で)「『チェリーブロッサム』だー」
 友人A(これだけ視線を浴びてれば当然だって)
 それは気のせいでもなく、最近の事でもないと思う友人であった。

 廊下の曲がり角に隠れて杏子の後姿を見つめる人影。
 ???『あの子が佐倉杏子ね』
 人影は手にした紙飛行機を杏子の後頭部に向けて勢いよく放った。
 シュッ。
 友人A「危ない、アンコ!」
 杏 子「え?」
 コスン。
 狙いたがわず、紙飛行機は杏子の後頭部を直撃した。

 場所は変わって生徒会執行部室。
 マ ミ「イヤガラセ?」
 杏 子「……なのかわかんねーけどさぁ。これ」
 最前の紙飛行を折る前の状態に戻し、杏子はマミに紙片を手渡す。
 その紙には豪快な文字で次のように書かれていた。
 『このスリムめ!!!』
 マ ミ「なんなんですの、これ?」
 杏 子「さーな」
 マ ミ「よ、よくわかりませんわね。文体と書体的にはイヤガラセっぽいんですが……」
 杏 子「だろー? いやぁ、まいるよ。ホント」
 スリムと言われてマンザラでもない杏子。口から出た言葉には僅かに喜びも混じっているようだ。

 コンコン。
 ゆ ま「失礼します」
 ガチャ。
 ゆ ま「巴会長。学年主任から冊子を預かってきました」
 マ ミ「どうもありがとう。……あら?」
 ヒラリ。
 受け取った冊子の間から一枚の紙が落ちた。
 杏 子「もしかして、マミにもか?」
 床へ落ちた紙上には次の文字が認められた。
 『巴マミはスリムすぎ!!! 胸以外は』
 マ ミ「まあ、なんてはハレンチなイヤガラセ!」
 杏 子「マミ。顔が笑ってんぞ」

 マ ミ『まいりましたわー』
 杏 子『ホントだよなー』
 紙片を手に笑顔で語り合うマミと杏子。
 そんな二人の姿を屋上から双眼鏡で見ている人影。
 織莉子「ちょっとキリカ! あの二人、全然ショックをうけてないわよ!?」
 彼女の名前は美国織莉子。芳文女子中学校の三年生にして、名目上の生徒会長でもある。
 キリカ「えー。そうかなぁ」
 前髪を掻き上げながら返事をしたのは呉キリカ。織莉子の親友で、マミから生徒会への出入り禁止を告知された元・会計担当である。
 織莉子「『そうかなぁ』じゃないわよ。あんたが『この文言なら傷つけられるんじゃない』って言うから、わざわざ書道部から墨汁を借りて墨書きしたのよ」
 キリカ「こんなストーカーまがいのイヤガラセして、織莉子の経歴は確実に傷ついたと思うけど」
 織莉子「私じゃない。あいつらの事よ!!(怒)」

 人気(ひとけ)がない放課後の屋上で夫婦漫才のような会話を続ける、かつての生徒会役員二人。
 織莉子「だいたい、おかしいと思ったのよ。マミ達がマッチョになりたがってるなんて!」
 キリカ「織莉子ってさぁ、いい加減な情報を鵜呑みにして痛い目を見るタイプだね。頭はいいのに。サギには気をつけなよ」
 織莉子「この情報源はあなたでしょう!」
 キリカ「あたしの情報網はいい加減じゃないんだけどなぁ。ちゃんと聞いたし」
 織莉子「ホントに? マミ達が『なりたい』って言ってたの?」
 キリカ「わけわかんない事を言っての聞いて、あたしがテキトーに推理したんだけどね」
 織莉子「いい加減な情報もいいとこじゃないのよ!!(怒)」
 頭にカーッと血が上ってしまった織莉子だが、さすがは元・生徒会長。すぐに落ち着きを取り戻した。
 織莉子「それで、いったい何を聞いたの?」
 キリカ「えーッと……」
 キリカは頬に指を当てながら昨日の会話を思い出そうとする。
 キリカ「思い出したわ」
 織莉子「言ってみて」
 キリカ「腹ァ!!」
 びくッ。
 織莉子「お、脅かさないでよ。」
 キリカ「上目遣い!!」
 織莉子「腹? 上目遣い?」
 キリカ「目力!!」
 織莉子「め、目力? 何よ、それ??」
 キリカ「以上の単語からマッチョになりたがっているという結論に達しました」
 織莉子「何よ、それ。そもそも、上目遣いは関係ないでしょ」
 キリカ「聞いたカンジでは筋トレ風だったから」
 織莉子「それにしても推理が飛躍し過ぎよ」
 キリカ「そうかなぁ?」
 織莉子「キリカの推理はさておき、執行部室で筋トレなんて怪しいわね。あそこ(執行部室)でマミ達が変な事をしてるのは間違いなさそうだけど、言い訳できない証拠を掴まないとゴマカされそうだわ」
 キリカ「……」
 織莉子「そういうわけで、引き続き、調査を頼むわよ! キリカ」
 キリカ(ここでまた、あたしに頼んじゃう織莉子ってアホだよなぁ。まあ、そういうとこが可愛いくて好きなんだけど)

 その頃、執行部室では……。
 杏 子「マミ、なんか心当たりはあるか?」
 マ ミ「いいえ」
 ゆ ま「あれ? 裏になんか書いてある」
 マ ミ「え?」
 杏 子「読んでみてくれ、千歳」
 ゆ ま「佐倉先輩のには『平役員』、巴先輩の方は『副会長』、と書いてあります」
 杏 子「『平役員』? 役員の時点で平じゃねーじゃん」
 ゆ ま「それじゃ間違いですかね? どちらにしてもイヤガラセではなさそう」
 マ ミ「……ひ、ひどい……イヤガラセですわ……」
 杏 子「えー!?」
 ゆ ま「えー!?」

 杏 子「なんだ『副会長』がイヤガラセになんのさー」
 マ ミ「もともと、私は副会長だったんです。前会長が職務放棄したので、再選挙が決定するまで代理として会長になってるんです」
 杏 子「例のブチ切れた会長か」
 マ ミ「ですから、正式には生徒会長代理の副会長なんです。キョーコに対する『平役員』というのは、私の独断で会長補佐になった事へのイヤミ」
 杏 子「……」
 ゆ ま「……」
 マ ミ「要するに、私達を快く思ってない人がいるんです」

 再び、屋上。
 織莉子「さあ! 証拠集め開始よ」
 キリカ「ねえ、織莉子」
 織莉子「何なしら」
 キリカ「証拠を集めてさぁ、どーするわけ?」
 織莉子「決まってるでしょッ! 全校生徒に公開してわからせるのよ。 会長にふさわしいのは巴マミではなく、この美国織莉子である事を」
 決めゼリフを言った後、再び双眼鏡に目を当てて執行部室の監視を再開する織莉子。
 キリカ「双眼鏡で覗き見している織莉子が言っても説得力ないなぁ」
 織莉子「お黙りなさいッ」


Part2.織莉子の陰謀

 織莉子「とにかく! あの三人が執行部室で何してるのかを暴いて、生徒会の評判を地に落とすのよッ」
 キリカ「うーん。コソコソ動き回るのは気が乗らないなぁ。それにメンドイ」
 織莉子「キリカだって会計に戻りたいでしょう?」
 キリカ「一大イベントの年間部費分配は終わったし、別にいーかな」
 織莉子「えッ!? お金の計算、好きなんでしょ?」
 キリカ「好きなのは計算じゃなくて『お金』よ。現ナマさわれん計算はヘビの生殺しもドーゼン!」
 織莉子「お金が絡むとキリカも危ない人になるわよね」

 生徒会執行部室。
 杏 子「マミ。なあ、マミってば」
 マ ミ「えッ? あッ。スミマセン」
 杏 子「大丈夫かぁ? あんま考え過ぎんなよ。気のせーかも知んねーし」
 ゆ ま「そうですよ! 会長に不満を持っている生徒なんていませんよ。イヤガラセは何かの間違いです。もし、いたとしても見当違いの逆恨みか妬みですよッ」
 三年生用昇降口付近。
 織莉子「さあ、帰って作戦を……。はくちょッ」
 キリカ「相変わらず可愛いくしゃみだねー。風の強い屋上で覗き見なんかしてるから、カゼひいたんじゃない?」
 ずずッ。
 織莉子「もしかして、マミが噂してるのかも」
 キリカ「なんで?」
 織莉子「彼女に不満を持つライバルなんて私くらいでしょ。私の事を思い出してるのよ、きっと」

 杏 子「ホントに心当たりがねーのか」
 マ ミ「全くもって。心の底から思い当たりませんわ」
 杏 子「そーか」
 マ ミ「心当たりもないのに疑心暗鬼になるのはよくありませんわね。ご心配かけて、スミマセン」
 ゆ ま(よかったー。会長が普段通りに戻ってくれて)
 マ ミ「紙一枚に貴重な時間をさかれましたが、これから仕事にかかります。今日は書類審査が多くて忙しくなりますから」
 杏 子「そんじゃ、あたしも手伝うよ」
 ゆ ま「ユマもお手伝いします」
 マ ミ「ありがとうございます。えーッと、まずは……夏季部活動の特別予算について……」
 予算案のプリントを手に取った時、マミの脳裏に『容疑者』の顔が浮かび上がった。 
 マ ミ「……心当たりがありました」
 ゆ ま「ええぇぇ」
 杏 子「マジかよ」

 織莉子(キリカが会計に執着しないとは誤算だわ。もっと本気で協力してほしいのに)
 キリカ(あ~あ。春のせいか眠いなぁ)
 織莉子(何か良い方法は……。あッ)「ね、ねえ。キリカ」
 キリカ「ん?」
 織莉子(気合の入った声で)「お金、好きよね!」
 生徒D「わッ。驚いた」
 キリカ(気合の入った声で)「大好き!!!」
 生徒E「えぇぇぇ?」
 織莉子「年間の部費配分は終わった。でもね、夏季大会に向けての臨時金が出るじゃない」
 キリカ「あッ! そう言われてみれば……」
 織莉子「だから、今すぐ会計に戻れば現金を扱えるのよ!」

 マ ミ「・・・と言うわけで、お金に執着のある出禁にした会計の呉先輩が怪しいですわ」
 杏 子「他に考えられる奴はいるか?」
 マ ミ「いいえ、全然。つゆほどに」
 完全に存在を忘れられている織莉子……。

 キリカ「現金を扱える! そうなれば話は別だよ。なにがなんでも戻らないといけない」
 織莉子「さすがキリカ」
 キリカ「さっきまではテキトーっていうか、織莉子の寄行が面白いから、このままでいいと思ってたけど」
 織莉子「どさくさにまぎれてヒドイ事を言ってのけるわね……」
 キリカ「明日から真剣にやるわ。お金と織莉子への愛は無限に有限だからね」
 織莉子「最後の方の言葉は理解できないけど、まあいいわ。がんばりましょう!」
 野望成就に向けて気合を入れる二人だが……。
 生徒F「ねえ、織莉子とキリカの会話、聞いた?」
 生徒D「現金どうとか……」
 生徒E「お金が好きって叫んでたわ」
 生徒F「キリカが役員じゃなくなったの、それが理由かもよ」
 敵より先に自分達の評判を落とした事は知る由(よし)もない。



【付記】
 いよいよ主要メンバー5人が出揃いました。もう2~3話で「ラブ☆MAGI」は一応の完結(『恋愛ラボ』第1巻のエピソードを『魔法少女おりこ☆マギカ』メインキャラで再現する予定で始めたコラボSSでしたので)をみますが、クライマックスへ突入する前に更新の一時停止を告知させて頂きます。本日より10日から2週間程度、更新ができそうもない状況となる為、次回更新は早くても5月18日となる予定です。コメント返信も時間を要する場合があるかも知れませんが御容赦下さい。

「ラブ☆MAGI」 第3話:ドジっ娘(こ)レッスン

Part1.素直になれて

 一年生の書記に恋の練習を目撃され、ハンパない落ち込みのマミ。
 マ ミ「しくしく。しくしく」
 杏 子「なぁ……。あれから二日も経つんだし、大丈夫なんじゃねーか。同級生にも黙っててくれたみたいだし、変な噂も立ってねーじゃん」
 マ ミ「ダメです。もう、おしまいです。おしまいですわぁぁぁぁ」
 杏 子「………。そうだ!」
 名案を思いついた杏子はロッカーからマミ愛用の抱き枕を持ち出した。
 杏 子「ほらッ。大好きなダッキーとハグの練習でもしよーぜ」
 マ ミ「キョーコ、何を言ってるの?」
 杏 子「え?」
 冷たい視線で杏子を見つめるマミ。いつもと立場が逆転してしまった。
 杏 子(まったく、調子狂うよなぁ。いつもと立場が違うと)
 マ ミ「あんな風に逃げられるくらいなら、笑われた方がマシでしたわ……。ケイベツされてしまったかしら……。いいコでしたのに……」
 杏 子(う、うぜぇぇぇぇ。この上もなく、うぜー)

 次の日。
 杏子は一年二組の教室にゆまを訪ねた。
 杏 子「あのさー」
 生徒A「は、はい。なんでしょうか? チェ……佐倉先輩」
 杏 子「千歳ゆまって子、教室にいるかい?」
 生徒B「チェ……」
 生徒C「チェ……」
 生徒D「チェ……」
 生徒E「ユマならトイレに言ってるみたいです。チェ……佐倉先輩」
 杏 子「そ、そうかい。ありがと」(なんだ、この掛け声は? 一年で流行(はや)ってんのか?)
 一年生の女子たちは「チェリーブロッサム」と言いかけていたのであった。

 生徒F「あッ。チェ……佐倉先輩」
 杏 子「悪いね。ちょっと邪魔するよ」
 ゆ ま「チェリ……佐倉先輩。どうして、ここに?」
 杏 子「あのさぁ、できればマミと一度話をしてやってくんねーか? あいつさぁ、ケーベツされたんじゃないかって、すげー気にしてんだ」
 ゆ ま「えぇぇぇ。そ、そうなんですか。ユマ、ユマ……悪気はなくて……」
 杏 子「わかってるって。今日の放課後にもで部室でマミと話してやってくれ。それでお互いの誤解も解けるだろうから。頼んだよ」

 その日の放課後。
 ゆ ま「会長の気持ち、考えてなかった……。ちゃんと謝ろう」
 コンコン。
 ゆ ま「失礼します」
 ガチャ。
 ゆ ま「あれ? 誰もいない。会長、まだ来てないのだ。待っていよう」
 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ。
 ゆ ま(ど、ど、どうしよう。胸のドキドキが止まらない。落ち着け、落ち着け、落ち着けぇぇぇぇ)
 心を落ち着かせようと室内を歩き廻るゆま
 ゴツン。キイィィィ。
 ゆ ま「キャッ。いたーい」
 スチール製のロッカーにぶつかり、その衝撃で半開きだったロッカーの戸が開いた。
 そして中から……。
 ドサッ。
 ゆ ま「きゃああああ」

 杏 子「な、なんだ。今の悲鳴は」
 マ ミ「執行部室から聞こえましたわ。急ぎましょう、キョーコ」
 杏 子「うん」
 執行部室へ急行する杏子とマミ。ドアを開けた二人が目にしたのはダッキーの下敷きになったゆまであった。
 マ ミ「こ、これは……」
 杏 子(ヤベッ。昨日はテキトーに突っ込んだから……)
 マ ミ「見ましたか、キョーコ。ダッキーが浮気してますわよ!!」
 杏 子「気にするトコはそこなのか?」
 ゆ ま「????」
 マ ミ「ち、千歳さん。その人形はですね……。その……えぇッと……」
 言葉にならない言い訳をしながらダッキに走り寄ろうとするマミ。
 しかし、あまりに慌てていたせいか何もないところで転んでしまった。
 マ ミ「キャッ」
 ばふん。
 ゆまとは抱き枕を挟んだ反対側に倒れるマミ。
 ゆ ま「……」
 マ ミ「……」
 杏 子「……」
 マ ミ「これが間男!?」
 杏 子「ちげーよ。アホかお前は。少し落ち着け!」

 マ ミ「何かしら。この使い古しの間男は? 誰かが抱き飽きて捨てたのね。そうよ。そうに違いないわ!」
 杏 子「生々しいゴマカシ方をすんな!」
 ゆ ま「ぷッ」
 憧れの先輩二人が目の前で繰り広げるコントに笑いの沸点を超えたゆまは思わず噴き出してしまった。
 ゆ ま「ス、スミマセン……。ぷぷッ。お二人が面白くって……。クスクス」
 マ ミ「あなたの笑った顔、初めて見まわしたわー」
 杏 子「あたし、まもとに顔を見たのも初めてだ」(トイレじゃ顔を見る余裕なかったし)
 ゆ ま「この前はスミマセンでした。急に逃げ出したりして」
 マ ミ「いいのよ。それよりも……あの……ガッカリした? こんな生徒会長で」
 ゆ ま「いいえ。あの時はビックリしたけど、普段とのギャップが素敵だと思います」
 マ ミ「まあ……」
 杏 子「良かったじゃねーか。案ずるより産むがやすし、ってヤツだなー」
 マ ミ「キョーコ。次のレツィオーナは『ギャップでアプローチ』を研究しましょう!」
 杏 子「調子にのんな!」
 マミに軽い空手チョップでツッコミを入れる杏子。そして、間髪入れずにトドメの一言。
 杏 子「それと妙なイタリア語を使うのはやめろ。知識をひけらかしてるみてーで引かれんぞ」
 ゆ ま「?」


Part2.新たな特訓

 芳文女子中学校生徒会長、巴マミ。
 教師と生徒どちらにも人望が厚く、仕事は迅速にして的確。心配りも忘れない。
 非の打ちどころがない万能少女だが、半年に一度は徹底的にドジる。
 マ ミ「あれぇぇぇ。間違えてカバンに鳩を入れて来てしまったわ。私ったらドジ~ッ」

 杏 子「……」
 マ ミ「こんな私はどうでしょう?」
 杏 子「お前は手品師か。だいたい、半年ペーズでドジる意味がわかんねー」
 マ ミ「毎日じゃ迷惑かと……」
 杏 子「分別もったドジなんだな。って言うか、まだ諦めてなかったのかよ。お前にドジっ娘(こ)は無理だからやめとけ。第一、才能がねーよ」
 マ ミ「違います! 『ギャップ』です。しっかり者が時々ドジをするんです」
 杏 子「ほー。どんなドジをするのさ」
 マ ミ「例えば、優雅に紅茶を淹れようとして……」
 マミはカバンの中から紅茶の茶葉が入った缶を取り出し、その蓋を開けた。
 ぽんッ。
 マ ミ「キャッ」
 小気味良い音を響かせながら蓋が取れると同時に、缶の中からは勢いよく紙吹雪や糸で繋がった小さい国旗が出てきた。
 マ ミ「いやだ、私ったら紅茶缶と間違えてしまいましたわー」
 杏 子「なんでお前のドジはエンターテインメントなんだ? そもそも、紅茶缶は間違えてねーじゃん」
 マ ミ「うッ。それは言わないのが『お約束』よ」
 杏 子「まったく。そんな仕込みをしなくても、『紅茶を淹れたつもりが緑茶だったわ』とか、『砂糖と間違えて塩を入れちゃった』とか、定番ネタでいーだろーが!」
 マ ミ「まあ。そんな非常識な……」
 杏 子「その言葉、お前に言われたくねーよ」
 マ ミ「でも、どんな事にだって仕込みは必要です」
 杏 子「これだから優等生は困るよ。なんの細工もせず、そこにあるもので自然にドジる。それが正しい姿だ!」
 マ ミ「細工なしでドジるなんて……。自信ありませんわ」
 杏 子「その考え自体、ドジってると言えなくもないな」

 マ ミ「自然なドジって、よくわかりませんわねー」
 コンコン。
 杏 子「ん? 誰だろう。どーぞ」
 ガチャ。
 ボケとツッコミが一段落ついたタイミングを見計らうように書記のゆまがドアを開けた。
 ゆ ま「巴会長。チェ……佐倉先輩。こ、こんにち……」
 ガゴン。
 ゆ ま「わッ」
 頭を下げると同時にゆまの額が半開きのドアに激突した。
 大きな音が響き、彼女の手から書類の束が落ちる。
 マ ミ(こ、この呼吸ですわ!)
 杏 子(この一年、タダモンじゃねー)
 マ ミ(自分が開けたドアにぶつかるなんて……。なんという高等テクニック)
 ゆ ま「いたーい」
 額を押さえながら頭を上げた次の瞬間、ゆまは足元に散乱したプリントに足を滑らせた。
 ズルッ。
 ゆ ま「あッ」
 スッテーン。
 ゆ ま「うぅぅ。痛いですぅ」
 杏 子(バラ捲いたプリントで転ぶオチまでつけやがった)
 マ ミ(このドジっぷり、高度すぎますわ)

 ゆ ま(うわーん。お二人、絶対に呆れてるよ~)
 マ ミ「……ち、千歳さん」
 ゆ ま「はいッ!」
 憧れの生徒会長に名前を呼ばれ、ビクっとするゆま。その手をマミはギュッと握りしめながら言った。
 マ ミ「私のドジ師匠になってくれませんか?」
 ゆ ま「はい?」
 杏 子「諦めろ千歳。そーなったら逃げられん」
 ゆ ま「ユマが会長に教えられる事なんてありませんよ。ここへ編入する前に通ってた小学校の時なんて、男の子が苦手で全然話せませんでしたし……」
 マ ミ「その点は心配いりませんわ。男性への接し方は恋愛の達人がいますから。ねえ、キョーコ」
 杏 子「うぐッ。ゴフ、ゴフ」
 冷蔵庫に入っていたペットボトルの紅茶を飲んでいた杏子は、いきなり自分に話がふられたので焦ってしまい咳込んだ。
 マ ミ「どうかしまして?」
 杏 子(やべー。その設定、すっかり忘れてた)
 ゆ ま「た、達人? 佐倉先輩がですか?」
 マ ミ「そうなんですよ! 恋した人はみんなキョーコを好きになって」
 男子A『なあ、佐倉。お前の友達がスキなんだ。とりもってくれねーか』
 杏 子(うッ)
 マ ミ「たくさんの彼氏を夢中にさせてきたんですって!」
 男子B『お前ってさぁ、ホント、女ってカンジしねーよな』
 杏 子(あうぅぅぅ)
 マ ミ「どうかしまして?」
 杏 子「……いや。別に……」(いつの間にか話が大きくなってやがる)
 ゆ ま「佐倉先輩、スゴーイッ」
 杏 子(っつーか、このままだと千歳にまで嘘をつく事になる。やっぱ嘘はよくねーよな。いつかバレるだろーし、この場で正直に打ち明けよう)
 マ ミ「そうでしょう。なんと言ってもキョーコは私の恋愛インセニャンテ(註:Insegnante。イタリア語で「先生」の意味)ですもの」
 尊敬の眼差しで杏子を見るマミとゆま
 そんな二人の期待に応えるべく、意地っ張り&見栄っ張り&期待を裏切れない性格の杏子は嘘を告白するチャンスを逸してしまった。
 杏 子「ま、まあな。大した事じゃねーよ」(あ~。あたしのバカー。いくじない。見栄っ張りぃぃぃ)

 次の日。
 ゆ ま「こんにちはー。佐倉先輩」
 杏 子「よう」
 ゆ ま「今日はどんなレッスンをするんですか?」
 杏 子「さーな。何を教えるかはマミの思いつきで決めてるから」
 ゆ ま「そうなんですか」
 杏 子「千歳も気張りすぎんなよ。真面目に付き合ってると大変な目にあっちまうから」(あたしみたいにな……)
 そんな事を話し合いながら執行部室まで来た二人。
 コンコン。
 ゆ ま「失礼しま……。きゃぁッ」
 杏 子「マ、マミ!」
 ドアを開けた二人の目に映ったのは、窓際で倒れているマミの姿だった。
 杏 子「どうしたんだ。マミ。しっかりしろッ! おいッ!」
 ゆ ま「ど、どうしましょう。佐倉先輩」
 杏 子「とにかく保健室へ運びこもう」
 マ ミ「保健室へ運ぶなら、お姫様抱っこで運んで下さ……」
 ベシッ。
 マ ミ「い、痛い……」
 杏 子「怒りの鉄拳、思い知ったか。本気で心配させやがって。いったい、なんのマネだよ」
 マ ミ「お姫様抱っこの練習です」
 杏 子「はぁ?」
 マ ミ「乙女の憧れシチュエーション。ピンチに陥った私を颯爽と抱えながら、野を超え、山を越え、谷を超え、東海道五十三次を駆け巡る!」
 杏 子「飛脚じゃねーか。ったく。お前はいつも予想外の事を考えつくなぁ」
 ゆ ま「でも新鮮じゃないですか」
 マ ミ「そう言うお二人は憧れた事はありませんか? お姫様抱っこ」
 杏 子「……あ、あるよ」
 ゆ ま「私もです」
 マ ミ「そうでしょう。乙女を助ける定番と言えば、お姫様抱っこですものねー。さあ、練習の続きを……っと、その前に」
 マミは部室のドアノブの鍵を閉め、薄い金属板の掛け金もおろした。
 マ ミ「今までの出来事から学習して、ドアに掛け金をつけたんです。よほど大きな声を出さなければ外に声は漏れないし、これで不意の訪問者にも対応できます。今後は三人が揃ったら鍵をかけるようにしましょう。これなら、人に見られて恥ずかしい練習も安心してできますわ」
 杏 子「学習するトコ、間違えてないか?」

 マ ミ「お姫様抱っこされる定番設定といえば、やはり『女のコが気絶する』パターンですよね❤」
 杏 子「それで倒れてたってわけか。あたしらが来るまで御苦労なこったなー」
 マ ミ「でも、私は気絶した事がないので……。どんなカンジなんでしょうね、気絶するというのは」
 杏 子「さーなぁ。あたしも経験ねーし」
 ゆ ま「本当に気絶すると……」
 杏 子「ん?」
 ゆ ま「白目で薄笑いしてる事もあるそうですよ」
 マ ミ「ほ、ホントですか?」
 ゆ ま「はい。経験者ですから」
 杏 子「そ、そうなのか……」
 ゆ ま「ちなみに気絶した人はものすごく重いらしいので、五人がかりで両手両足を持って運ぶ事もあるそうです。その時の掛け声が『わっせ! わっせ!』と言うみたいです」

 マ ミ「き、気絶の話はやめましょう。ねッ、キョーコ」
 杏 子「そ、そうだな。大変なのに失礼だよな。マネするなんて」
 マ ミ「気絶ではなく、設定を変えて『足をくじいて動けない』という事にしましょう」
 杏 子「ああ。それがい……」
 マ ミ「いたーい。足を挫いちゃったぁ」
 前フリもなく足首を押さえながら、マミはその場にへたり込んだ。
 杏 子「うおッ。いきなり始めんなよ」
 ゆ ま「あ~、びっくりした」
 マ ミ「ああ、誰か親切な殿方が運んで下さらないかしら」
 杏 子「と、殿方って……。いつの時代設定だよ。それに運んでほしそうなポーズでスタンバるな」
 マ ミ「え? これでは駄目ですか?」
 杏 子「あたりめーだ。抱っこされる気マンマンより、自分で立ち上がろうと努力するんだ」
 マ ミ「立ち上がる努力ですか」
 杏 子「それに相手が手を差し伸べても、恥じらいながら一度は断るんだよ。『いいよ。大丈夫だから』とか言ってさぁ」
 ゆ ま「なるほど」
 杏 子「意地張ってたら強引に抱えられて……『お前、軽いな』なんて言われたりして……」
 マ ミ「ずいぶんと具体的ですわね」
 杏 子「ハッ」(し、しまった。よく妄想してたから……つい熱く語っちまった)
 顔を真っ赤に火照らせ恥じらう杏子。しかし、そんな彼女の胸中を他の二人は知る筈がない。
 マ ミ「すでにキョーコはお姫様抱っこを体験済みでしたのね」
 ゆ ま「さすが達人」
 杏 子(うぐッ。このままだと誤解がドンドン大きくなっていく)
 ゆ ま「ユマも『軽い』なんて言われてみたいですぅ。五人がかりで運ばれた事、今でも忘れられなくて」
 マ ミ「抱っこされた時、可愛く思われるポイントを教えて下さいッ」
 杏 子「しょーがねーな。今日のレッスンはお姫様抱っこの秘訣でいくか」(あたしのアホーッ)

 ゆ ま「どうしたら軽く感じてもらえるんでしょうか?」
 杏 子(あたしが知るか。え~と、脱力すると重いんだから)「腹にグッと力を込めて気合を入れるんだ!」
 ゆ ま「はいッ。気合ですね!」
 マ ミ「可愛く思われるには?」
 杏 子(こっちが聞きてーよ)「そうだなぁ……。まずは俯(うつむ)け」
 マ ミ「俯きました」
 ゆ ま「腹部に力を入れました」
 杏 子「そ、そ、それから……時々だなぁ……え~と……顔を上げて」
 マ ミ「顔を……」
 ゆ ま「上げて?」
 杏 子「目力(めぢから)だ!!」
 マ ミ「目力!?」
 ゆ ま「目力ですか!」

 杏 子「復唱すんぞ! 腹ァ!!」
 マ ミ「腹ッ!」
 ゆ ま「腹ッ!」
 ツッコミ役の杏子が自分を見失った事で……。
 杏 子「俯いてぇ」
 マ ミ「俯いてッ!」
 ゆ ま「俯いてッ!」
 外に漏れる程、大声を出している非常事態に……。
 杏 子「目力ッ!!」
 マ ミ「目力ッ!」
 ゆ ま「目力ッ!」
 全く気付いていないアホな三人であった。
 ???「へぇ。最近の生徒会は面白そうな事をしてるみたいね」



【付記】
 5月6日の日計アクセス数が過去最高の219件を数えました(2013年3月13日の日計総アクセス216件の記録を更新!)。御訪問下さった皆様に厚く御礼申し上げます。

「ラブ☆MAGI」 第2話:生徒会の顔ぶれ

Part1.幻の生徒会役員達

 生徒会長の巴マミは超有能。
 マ ミ「生徒会からのお知らせです」
 各種行事の企画運営。部活動の状況把握や予算算出・分配。委員会の総まとめ……。
 マ ミ「これが予算案ですね。明日までに確認しておきます」
 山ほどの業務を的確かつ迅速に遂行。
 マ ミ「ふぅ、もう少しですわね。早く終わらせて恋のレッスンを始めたいですわ」
 杏 子「……」(会長補佐は形だけとはいえ……やっぱ少しは手伝いしなきゃなー)
 忙しそうなマミを見かねた杏子はソファーから立ち上がった。
 杏 子「なあ、なんか手伝おーか?」
 マ ミ「え?」
 杏 子「あたしだけソファーに座ってるのもわりーから」
 マ ミ「大丈夫ですよ。お気遣いなく」
 杏 子「でもさー」
 マ ミ「今は佐倉さんとの恋愛研究結果をまとめているだけですから❤」
 杏 子「ばかやろー。すぐに破棄しろ! そんなもん、形に残すなー」
 恥ずかしい『負の記録』を前に慌てる杏子であった。

 杏 子「そーいや、他の生徒会役員はなにしてんだ? 出入り始めてから数日だけど、ココ(執行部室)で見たことねーぞ。副会長だけでも呼び出せよ。正式な補佐だろう」
 マ ミ「副会長ですか? それは……無理ですわ」
 杏 子「なんでだ? そんなにイヤな奴なのか?」
 マ ミ「だって副会長も私ですから」
 杏 子「はあ? どーいう事さぁ」
 マ ミ「もともと会長は三年生で、私は副会長として先輩を補佐していたんです」
 杏 子「それで?」
 マ ミ「でも、私の方が仕事を早く完璧にこなせるものですから、ある日……」

 ???『ねえ、マミ。私の仕事は?』
 マ ミ『全てやっておきましたわ』
 ???『予算案も?』
 マ ミ『はい。全ての部に今年度の予算を通知しました』
 ???『それじゃ各委員会の……』
 マ ミ『それも終わりました』
 ブッチン(怒)。
 ???『マミは仕事が早いわね』
 マ ミ『せ、先輩?』
 ???『これからはあなたが会長も兼任なさったら? 私は会長を辞めるわ』

 マ ミ「私が有能だったばかりに会長の機嫌を損ねてしまいましたの」
 杏 子「ブチ切れる会長も会長だけどさー、お前もお前だよ」
 呆れ顔の杏子は率直な感想を述べた。
 杏 子「他の奴は?」
 マ ミ「会計の先輩がいました。お金の計算にかけてはズバ抜けてたのですが、ある日……」

 マ ミ(あらッ。あれは今期の予算……)
 ???『まどマギ映画版のBD。ワン●ースのコミックス全巻揃い。PSヴィータ。スマプリのBD』
 物凄い指の動きで札束を捲りながら、穏やかならぬ言葉を呟く少女。
 その指遣いにマミは絶句しながら危険な『何か』を感じ取った。

 マ ミ「お金を超高速で数えながら買える物をブツブツ呟いてまして」
 杏 子「一番会計にしちゃいけない奴だな」
 マ ミ「つい出入り禁止にしてしまいましたの」
 杏 子「まったく。ココ(生徒会)にまともな奴はいねーのかよ」
 マ ミ「一年生の書記の子は良いコですよ。でも……」
 杏 子「でも?」
 マ ミ「すっごい恥ずかしがり屋でして、まともに見た事がないんです」
 杏 子「見た事がない? 大袈裟だなぁ」
 マ ミ「大袈裟ではありませんわ。気付いたらドアの前に完成した書類が置かれていたり、やりかけの仕事がいつの間にか仕上がっていたり、朝来たら執行部室がキレイになっていたり……」
 杏 子「そいつはホントに実在するのか? それこそ妖精だな」
 
 マ ミ「まあ、少し大変な時もあるけど、一人でなんとかなっちゃうんで、自分だけでもいーかなって思っています」
 杏 子「よくねーよ」
 マ ミ「そうですか?」
 杏 子「お前が有能なのは認めるけどさー、一人で抱え込んでダメだった時はどーすんだよ?」
 マ ミ「いやですわ。有能だなんて。わかりきっている事ですもの」
 杏 子「人の話は最後まで聞け!」
 マ ミ「でも……今までダメだった事は一度もありませんでしたから」
 杏 子「あーそー。有能だねー。拍手してやるよ」
 パチ、パチ、パチ。
 杏 子「でもさー、なんでも完璧にできちゃう女って男から敬遠されるぜ」
 マ ミ「え? ま、まさか……」
 杏 子「ちょっとぐらいドジふまねーと男にもてねーぞ」
 マ ミ「お、お、男に……もて……な……い」
 杏 子(うおッ。スゲー効いてる!)


Part2.書記登場

 生徒A「あッ、佐倉先輩」
 生徒B「やっぱりカッコいいね~。ワイルド❤」
 生徒C「巴会長は、まさに『御前』ってカンジ! キレイ❤」
 生徒A「真剣な顔して、どんな話してるんだろ」
 生徒B「芳女(芳女=芳文女子中学の略)の未来とかじゃない?」
 窓の向こうに見える二人を羨望の眼差しで見つめる女生徒達。しかし、二人が話し合っているのは……。
 マ ミ「こっそりアピールでゲタ箱に手作りケーキってどうでしょう」
 杏 子「マジかよ。靴は汚れるし、得体が知れんし、イヤガセ以外の何物でもねーぞ」
 こんな話題。

 生徒C「ねー、ユマ。あの二人と仲良くなったぁ? ……って、アレ?」
 生徒B[な、なにしてんの。ユマ?」
 ???「だ……だって……」
 うずくまっていた小柄な少女が恐る恐る顔を上げた。
 彼女の名前は千歳ゆま。これでも生徒会の書記である。
 ゆ ま「あそこにいたら……お二人のお目障りかとッ」
 生徒B「あんた同じ役員でしょーが」
 生徒C「ったく、恥ずかしがり屋なんだから」
 生徒A「そうだよ。もっと堂々としなさいよ」
 ゆ ま「だって、会長だけでもキンチョーするのに、会長補佐がユマの憧れてる『チェリーブロッサム』……略して『チェルノブ』が!! あ~、恥ずかしー」
 生徒C「凄いネーミング。ホントに憧れてんの?」
 生徒B「しかも略せてないよ……」

 次の日。
 生徒A『そんなんでちゃんと仕事してるの?』
 ゆ ま「ユマ、ちゃんと仕事してるもん」
 預かった書類を返しに執行部室を訪れるゆま
 ゆ ま「でも、面と向かって話す勇気がないから」
 静かにドアを開けて部室に入る。
 ゆ ま「誰もいない時に……」
 生徒会長が使う机の上に預かった書類を置き、ゆまはホッと溜息をつく。
 その時だった!
 ガチャリ。
 ゆ ま「ひぃぃぃ」
 突然、部室のドアが開いた。ゆまは大急ぎでソファーの後ろに隠れる。
 杏 子「あれ? マミは……まだみてーだな」
 ゆ ま(囁くような小声で)「ど、ど、どうしよう。チェルノブ先輩だぁ」
 杏 子「ココに一人って初めてだなぁ」
 ゆ ま(囁くような小声で)「スミマセーン。一人じゃないですぅ~」
 マ ミ「あら、佐倉さん。早いですわね」
 杏 子「かたっくるしーな。杏子って呼ぶように言っただろう」
 マ ミ「そ、そうでしたわね。失礼しました。キョーコ」
 杏 子「なんか妙に間延びした呼び方だけど……まあ、いいか」
 ゆ ま(囁くような小声で)「か、か、会長まで。どぉしよ~」
 マ ミ「本日の恋愛レツィオーネ。テーマは『ドジっ娘(こ)』でーす❤」
 杏 子「よくもまぁ、毎回毎回、くだんないネタを考えてくるなー。だいたいさぁ、レツィオーネってなんだよ。どこの国の言葉だよ?」
 マ ミ「Letioneはイタリア語です。レッスンって意味なの」
 ゆ ま(れ、恋愛レツィオーネ? イタリア語? ドジっ娘(こ)?)

 マ ミ「前にキョーコも言ってたでしょ。ドジじゃないとモテないって」
 杏 子「うッ。確かに言ったけどさぁ」
 マ ミ「少女小説や漫画でも主役はドジっ娘(こ)が多いですし」
 ゆ ま(????)
 マ ミ「だから私はドジっ娘(こ)になる事を決意しました!」
 杏 子「決意してなる類のもんじゃねーぞ」
 マ ミ「そうでしょうか?」
 杏 子「ドジな奴は上手くやろうとして、いつの間にか窮地に陥ってるもんなんだよ」
 ゆ ま(……まさに今の私だぁぁぁぁ)

 マ ミ「そう言わずに見て下さい。いろいろと仕込んできたんですから」
 杏 子「ほー。どんな仕込みだ?」
 マ ミ「落しモノが多くて困っちゃうわー」
 そう言うマミのスカートの中から黒板消しやペンケースやノートが落ちる。
 ガチャ。ドサ。ドサ。ゴン。ゴン。
 杏 子「多いの意味を間違えてるぞー。って、どこに入れてたんだよ」
 マ ミ「うふふふ。タネも仕掛けも魔法もありますのよ」
 バチコン、とウィンクするマミ。
 呆れ顔の杏子。
 そして、出るに出られないゆま
 マ ミ「キャッ。落とし物につまずいちゃった」
 パタッ。
 杏 子「つまずいたわりには綺麗な倒れ方だな」
 マ ミ「ドジをしていても華麗さは忘れませんわ」
 杏 子「……お前のそんなアホ姿。他の奴らが見たら泣くぞ」
 マ ミ「他の人達に知られたら私が泣きますわ」
 杏 子「そりゃそーだ」
 マ ミ「引きこもりになるかも❤」
 杏 子「人生が狂いそうだな」
 ゆ ま(ど、ど、どうしよう。大変なモノを見ちゃった)

 杏 子「だいたいさー、お前はワザとらしいんだよ」
 ゆ ま(と、とにかく……気付かれないように外へ出ないと)
 二人の死角を利用して部室のドアへ急ぐゆま。しかし……。
 杏 子「転ぶにしたって、もっと自然にやんないと」
 ゆ ま「ぎゃん!?」
 どべちょ。
 何もないところで派手に転ぶゆま
 杏 子「そーそー、こーゆー感じに……って」
 ゆ ま「……」
 マ ミ「……」
 杏 子「……」
 ゆ ま「スイマセ~ンッ」
 そう言い捨て、ゆまは猛ダッシュで執行部室から逃げて行く。
 杏 子「おい、待てッ!」
 足の早さには自信を持つ杏子だったがパニクったゆまには追いつけそうもなく、早々(そうそう)に追跡をあきらめた。
 杏 子「あれが例の妖精書記か? いつから居たんだ。おい、どーするよ」
 マ ミ「アレハ妖精サンデス。妖精サンデスノヨー」
 杏 子「しっかりしろ! 現実逃避すんな。戻ってこーい」

「ラブ☆MAGI」 第1話:放課後レッスン第一課

Part1.恋愛の達人?

 ひょんな事からマミの恋愛レッスンを手伝う事になった杏子。
 マ ミ「恋は出逢いからと言います。廊下の曲がり角で上手なぶつかり方を練習しましょう!」
 杏 子「ベタすぎて新鮮だな」
 マ ミ「それでは」
 そう言ってカットされた食パンを取り出すマミ。
 マ ミ「この食パンを咥(くわ)えながら全速力で走りますので……」
 杏 子「それは出逢いじゃねーよ。襲撃だよ!!」
 マ ミ「衝撃が強い方が印象に残るのではないでしょうか」
 杏 子「限度ってもんがあんだろー。別の意味で印象には残るけどさぁ」
 マ ミ「それでは、こういうのはどうでしょう?」
 杏 子「どういうの?」
 マ ミ「私の計画では、ぶつかった男性のボタンに髪がからまって……」
 杏 子「まあ、そのバネみてーな縦ロールならからまっても不自然じゃねーよな」
 マ ミ「彼が囁くのです。『君の髪はサラサラだね』って」
 杏 子「ボタンにからみついてるんじゃねーのかよ」
 マ ミ「ハッ。そうでしたわ」
 杏 子「過剰演出すんな! あんまり露骨に媚びると引かれるぞ」
 マ ミ「そ、そうですか」
 杏 子「自然にすりゃいいんだよ。だって、お前はキ……」
 マ ミ「キ?」
 杏 子「キ……キワモノだし」(あっぶねー。あやうく『キレイだから』って本音を言っちまうところだった。悔しくて言えねーよな、キレイだなんて)
 マ ミ「キワモノ!」
 杏子の胸中を知らないマミは軽いショックを受けた。

 杏 子「い、いや。これは……その……愛情表現の裏返しってやつだ。ほら、本当は好きなんだけど、わざと邪険にする男子っているだろう。あれとおんなじさ」
 マ ミ「佐倉さんのお言葉、勉強になります。もしや、恋愛の達人なのですか?」
 杏 子「え?」(あたしが恋愛の……達人?)
 杏子の脳裏を苦々しい過去の思い出がけ巡る。
 杏子6歳の時。同じクラスの男子に「右の子がスキー」と言われた。右側にいたのは内気で髪の長い幼馴染だった。
 杏子11歳の時。同じクラスの男子から恋の相談をされた。「オマエの友達がスキなんだけどさぁ……」。
 杏子13歳。芳文女子中学校への編入直後、通学途中で出会った元同級生から衝撃の一言。「佐倉ってさぁ、ホント女ってカンジしねーよな。好きとかそーゆーの一切なくてラクだ。近いうち、またカラオケでも行こーぜ」。
 男子との交際経験ゼロの杏子だったが、意地っ張りで見栄っ張りの性格が災いし、余計な言葉を口にしてしまった。
 杏 子「まーな。カ、カレシの1人や2人くらい余裕だよ」
 マ ミ「さすがですわね。尊敬しますわ!」

 次の日。
 杏 子「変な奴だったなー。マミって」
 生徒A「あッ、佐倉さん。コレ見た?」
 杏 子「ん? 何それ」
 掲示板に貼られた一枚の用紙。そこには『生徒会からのお知らせ』として、次のような告知が記されていた。
 『本日より以下の者を生徒会長補佐とします。 2年3組・佐倉杏子』
 杏 子「あ、あたしが生徒会長補佐ぁ?」
 マ ミ「はい❤」
 ア然とする杏子。その背後に素早く近寄り、彼女を憧れの眼差しで見つめるマミ。
 杏 子「お前の仕業か?」
 マ ミ「そーでーす」
 笑顔で答えるマミ。その両頬をつねりながら、呆れ半分怒り半分の杏子は問いただす。
 杏 子「なんで、あたしがこんなメンドーなコトしなきゃなんねーんだよ」
 マ ミ「いひゃいれす、佐倉ひゃん(訳:痛いです、佐倉さん)。ひごとはひなくていいでひゅから(訳:仕事はしなくていいですから)」
 杏 子「仕事はしなくていい? どー言う事さ」
 マ ミ「佐倉さんともっとお話ししたいんです。恋愛について。ダメですか」
 杏 子「……ダ、ダメじゃ……ねーけど。」(実はけっこう面白かったし)
 マ ミ「よかったー❤ それでは今日の放課後から練習開始です。今日は『グッとくる手のつなぎ方』の練習をしましょうね!」
 杏 子「わりぃ。やっぱ、やめてもいいかい?」
 マ ミ「却下しまーす」


Part2.恋愛レッスン第一課

 生徒会長。巴マミ。
 マ ミ「頼まれていた資料、できました」
 教 師「もう!? さすがねー」
 容姿端麗。成績優秀。
 生徒A「会長、こんにちはー」
 生徒B「こんにちはー」
 マ ミ「はい。こんにちは」
 公明正大な人格者。
 称する言葉は数あれど、生徒会執行部室へ入ってからの彼女に相応しい言葉はただ一つ。
 マ ミ「さあ、佐倉さん!! 恋人達の第一ステップ、手つなぎの練習です。いかにグッとこさせるかが課題ですよー」
 杏 子「お前、アホ過ぎ」

 部室のソファーに腰を下ろす杏子は、大張り切りのマミに向かって言った。
 杏 子「やっぱりさぁ、あたし、会長補佐なんてやりたくねーんだけど」
 マ ミ「え……。ダ、ダメですよ」
 杏 子「心配すんな。『恋の練習』とやらには付き合ってやるからさぁ」
 マ ミ「練習は基本的に執行部室でやるんです。役員じゃなきゃココは使えませんし、私は迂闊に外へ出ていけないのです」
 杏 子「どーしてさ」
 マ ミ「なぜなら……」
 杏 子「なぜなら?」
 マ ミ「誰かに見られたら、私のイメージが地に落ちます」 
 杏 子「ふーん。アホな事をしてる自覚はあるんだな。いい事だ」(そもそも練習なんて必要あんのかよ。マミは顔も頭もいい。他に何が足りないっつーんだか)
 マ ミ「も、もとはいえば、佐倉さんのせいでしょ」
 杏子の心の声を知らないマミは頬を膨らませながら言った。
 杏 子「あ、あたしのせい?」
 マ ミ「そうです。私が『ダッキー』とキスの練習をしているトコを見たりしたから……」
 杏 子「足りないのはネーミングセンスか」
 マ ミ「ちなみに私がペイントをしました。理想のインナモラート(註:innamorato。イタリア語で「彼氏のニュアンスを込めた恋人」の意味)を思い浮かべながら」
 杏 子「言葉遣いのセンスも足りねーな」

 一人で盛り上がるマミに冷静なツッコミを入れる杏子。しかし、その声はマミの耳に届いてはいない。
 杏 子「ノックしないで入ったのは悪かったけどさ、悪気はなかったんだ。あたしだって見たくなかったよ、あんなモン」
 マ ミ「あんなモン? ひ、ひどいですわ。それは佐倉さんならキスの経験くらい数えきれないほど……」
 杏 子「そんなん昔の話だよ」
 マ ミ「そうですよね! 恋愛の達人ですもの、ファーストキスぐらい小学生の頃に済ませていらっしゃいますわよね」
 杏 子「……」(やっべー、話がデカくなってきちまった)
 マ ミ「……」(佐倉さんのファーストキス、興味ありますわ。ドキドキ)
 杏 子「……あ、あたしのファーストキスは……小一の夏……だったな」
 マ ミ「スゴーイ。さすが佐倉さん。小学校へ入学した夏にファーストキスだなんて。尊敬しちゃいますわー」
 杏 子「ま、まーな」

 マ ミ「お願いします、達人! 私の手のつなぎ方を見て採点して下さい! 何度も何度も自主練したんです」
 杏 子「わ、わかったよ。見てやるから少し落ち着け」(あたしのアホー)
 マ ミ「それでは『付き合って二週間。友達から始まった恋。照れくさくて恋人っぽくなれない』感じで」
 杏 子「具体的だな」
 呆れ顔の杏子。そんな彼女の胸中を知らないマミはモジモジしながら近づき、照れた表情で相手の耳元に囁いた。
 マ ミ「まさか、私達が付き合うなんてねー」
 杏 子(おいおい、そんなとこから始まるのかよ)
 マ ミ「ねえ、覚えてる? あの日の海」
 杏 子「知るかよ」
 マ ミ「ひどい! あれから恋が芽生えたのに」
 杏 子「だから知るかよッ」
 マ ミ「ひどいわ! 手も握らず、私に気を使わせて。女の気持ち、全然わかってないじゃない! このヘタレ!!」
 杏 子「やかましー」
 ゴツン。
 杏子の鉄拳がマミの脳天を直撃した。怒りの一撃に撃沈するマミ。
 杏 子(女の感情に振り回される男の気持ち。よーくわかった気がする)
 マ ミ「い、痛いですわ」
 杏 子「余計な芝居はいらねーんだよ」
 マ ミ「私はただ、気分が盛り上がるかと……。ほら、ムードって大切でしょう?」
 杏 子「ムードだぁ? どーせ、やる事は同じだろう。グダグダ言ってねーでさっさとやれ!」
 マ ミ「……」
 杏 子「ハッ」(ま、また男の気持ちになっちまった)
 マ ミ「みょ、妙にショックですわ」
 杏 子「別の意味であたしもな」
 マ ミ「い、今のは忘れましょう……」
 杏 子「そうだな」(あたし、これでも乙女だよなぁ?)
 そういうわけで再挑戦スタート。

 なんだかんだで一時間が過ぎた。時計の針は午後五時直前を示している。
 杏 子「もう五時か。この辺で今日は終わりにしよーぜ」
 マ ミ「そうですね。今日はありがとうございました」
 杏 子「いいって事よ」
 マ ミ「ところで……佐倉さんが初めて彼氏と手をつないだ時はどうでした?」
 杏 子「えッ。あたし? あ、明日また来た時に教えるよ。今日はもう帰りたいし」
 マ ミ「そうですか。それでは明日、またココで会いましょう」
 杏 子「あッ……」
 自分の失言に気付いた杏子だが、すでに手遅れだった。
 杏 子「い、今のナシ。今のはナシだ」
 マ ミ「ダメです。明日です❤」
 佐倉杏子。生徒会長補佐就任。

「ラブ☆MAGI」 第0話:巴マミと佐倉杏子

【はじめに】
 宮原るり先生の「恋愛(ラブ)ラボ」のアニメ版が今夏より放送されます。
 多感な年頃の乙女五人が繰り広げる恋愛研究をコミカルに描いた四コマ漫画(番外編は例外)が原作なので、構成としては「あずまんが大王」(あずま きよひこ・原作)のような感じになるのでしょうか。詳細の続報が待たれます。
 ファン待望のアニメ化を記念し、漫画版エピソードを「魔法少女おりこ☆マギカ」キャラで再現したパロディSSをアップする事にしました。
 不思議とキャラクターのイメージが違和感なく重なったので……パクリの三文字を恐れず、このような愚挙(暴挙?)に出た次第です。
 まずは導入部のプロローグを試験的に公開しました。異色の「恋愛ラボ」&「~おりこ☆マギカ」の二次創作として御笑覧頂ければ幸いです。


≪芳文女子中学校生徒特別資料≫

☆佐倉杏子(2年)
 ・学業成績:体育の成績がズバぬけて良いです。国語と社会も優良。理数系の成績は絶望的なまでに悪く、数学では指を使って計算しようとしています(指を使った計算が許されるのは小学校の算数が限界だと思います)。
 ・総合意見:言葉遣いの乱れや豪快すぎる動作に問題はありますが、行動力は抜群。周囲への気配りもできる子です。遅刻しそうになると柵を乗り越えて校内へ入る、はしたない行動はやめましょう。

☆巴マミ(2年)
 ・学業成績:エクセレントすぎてうっとりします。成績優秀で学業の面については言う事がありません。英語のテストなのに答えの一部をイタリア語で書いたり、国語のテストで妙な表現を使った回答をしたり、やや理解しがたい点はありますが、癖のあるところが魅力的でもあります。
 ・総合意見:エクセレントでエレガント、本当にうっとりします。非の打ちどころがありません。息子の嫁になってもらいたいくらいです。

☆千歳ゆま(1年)
 ・学業成績:とても優秀だけれど、授業であてるとオドオドしながら答えるので心が痛みます。
 ・総合意見:そろそろ慣れてきた頃だろうから、まともに顔が見たい。

☆美国織莉子(3年)
 ・学業成績:優秀で努力家。
 ・総合意見:面倒見が良く、正義感もある。思い込みが激しい欠点を直せば完璧ガールになれる。

☆呉キリカ(3年)
 ・学業成績:数学すごい。答えに「円」をつけるのはやめろ。
 ・総合意見:考えが読めん!


プロローグ

 芳文女子中学校は、お嬢様が多く通うことで有名な私立校です。
 この学校を舞台に綴られる「恋愛研究」の物語は、ある日の放課後、二人の少女が運命的な出会いをする事から幕を明けるのでした。

 生徒A「あッ! 巴さんだわ」
 生徒B「キレイよねぇ。あれで頭もいいなんて憧れるなぁ」
 生徒A「さすが『巴御前』」
 窓から顔を覗かせる美しい少女。縦ロールにした金髪を風になびかせながら、気持ち良く晴れている午後の空を見上げていた。
 ワイワイ騒ぐ女生徒達の腋を通り過ぎる一人の女生徒。
 制服を自己流に着崩し、赤い髪をポニーテールに結っている彼女の名前は佐倉杏子。2年生である。
 杏子は苦笑しながら呟いた。
 杏 子「はっずかしー渾名。イジメかよ。ついていけねー、このノリ」
 そんな杏子だったが……。
 生徒C「あら、佐倉さんよ」
 生徒D「今日もちょいワルで素敵」
 生徒C「さすが『チェリーブロッサム』ね」
 彼女は自分がもっと恥ずかしい名で呼ばれている事を知らなかった。

 教 師「あッ、佐倉さん。ちょうどよかった。この資料を生徒会執行部室に届けてくれないかしら」
 杏 子「えー。あたしがですか? (小声で)メンドくさ」
 教 師「巴さんに渡してね。お願いするわ」
 そう言うと女性教師は杏子に書類を預け、職員室へ戻って行った。
 2年生にして生徒会長を務める巴マミ。別名『巴御前』。
 杏 子「巴御前か……。プッ。恥ずかしい渾名」
 そういう杏子自身の渾名は『チェリーブロッサム』なのだが……。
 杏 子「そう言えば、この学園はマミを筆頭にマジメでおとなしい奴ばっかだ。おだやかだけど退屈だなぁ」
 預かった書類を手に生徒会室に向かう杏子だが、その足取りは軽やかではなかった。
 杏 子(退屈でつまんねーんだよ。ラブもないしッ。恋するチャンスすら皆無じゃねーか)
 ドス、ドス、ドス。
 内心の不満を体現するかのように豪快な足音を響かせながら生徒会室を目指す。
 そんな彼女の後姿を見た女子生徒がポツリと一言。 
 生徒E「まあ、なんて男らしい歩き方。ちょっとステキ」
 ……また一人、ファンが増えた瞬間である。

 杏 子「マミみたいな優等生は恋愛や男子との付き合いなんて考えもしねーんだろーな」
 溜息まじりに呟き、杏子は生徒会執行部室のドアを開けた。
 ガチャ。
 杏 子「しつれーし……」
 杏子は信じられない目前の出来事に自分の目を疑った。
 あの『巴御前』が抱き枕をハグしながら、命を持たない相手にキスをしていたのだ。
 抱き枕には稚拙な男性の絵が描かれている。どうやら抱き枕を男性に見立てているらしい。
(ど、どういう事だ……。オイ)
 杏子が書類を床に落としたのと、マミが抱き枕を手放したのは同時であった。
 ドサッ。ドサッ。
 気まずい空気と沈黙が数秒続いた後、マミは何事もなかったかのように微笑みながら口を開いた。
 マ ミ「ようこそ。生徒会室へ」
 杏 子「あ、あのさー。今のは……」
 マ ミ「今のは幻です」
 杏 子「じゃあ、あの抱き枕は?」
 マ ミ「あれはニンファです」
 杏 子「ニンジャ?」
 マ ミ「ニンファ。妖精の事です【注1】
 杏 子「いやな妖精だな」
 マ ミ「……」
 杏 子「……」(なんか……気まずい雰囲気になってきた。あまりの恥ずかしさに泣き出されたら面倒だなぁ)

 杏子の予感は的中した。マミは涙になって告白を始めたのだ。
 マ ミ「うう……。もうオシマイですわ。抱き枕とのキスの練習を目撃されるなんて……」
 杏 子「あ、安心しろ。あまりの痛さにからかう気も起きないから」(あれが抱き枕って認めてんじゃん)
 心の中でツッコミを入れながら、杏子はマミの肩をペチンと叩いて励ました。
 杏 子「あたしもガキの頃、やった事あるし。誰にも言わねーよ。気にすんな」
 マ ミ「ほ、本当ですか?」
 杏 子「本当だって」
 マ ミ「私……ずっと恋がしたくて、こっそり特訓してて……。この気持ち、わかります?」
 杏 子「おうッ」
 マ ミ「では、私の練習を手伝って下さいます?」
 杏 子「お……おうッ」
 瞳の中に星を輝かせながら迫るマミ。なりゆきで返事をしてしまった杏子。
 こうして二人は運命の出会いを果たしたのであった。


【注1】イタリア語で妖精を意味する単語は幾つかありますが、そのうち「ninfa」は小さくて可愛い女の子の妖精を意味します(語尾がaで終わる単語は基本的に女性名詞であり、語尾をoかaに変える事で性別も変化させられます)。

«  | ホーム |  »

FC2カウンター

プロフィール

新 京史朗

Author:新 京史朗
好きな技(1):バスター技
好きな技(2):股裂き関節技
好きなシチュエーション:リョナ

最新記事

カテゴリ

小説 (86)
アニメ (33)
ゲーム (31)
アメコミ (23)
フィギュア (5)
映像・写真 (16)
DOA・無双 (114)
イラスト企画 (43)
鉄拳・スト鉄 (92)
漫画・絵物語 (107)
イラスト・挿絵 (51)
映画・イベント (34)
ウルトラヒロイン (12)
MUGEN・ドット絵 (2)
オリジナルヒロイン (8)
御挨拶・お知らせ・交流 (132)
魔法少女まどか☆マギカ (59)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

月別アーカイブ

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR