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2013-01

110,000HIT達成の御礼

 2013年1月27日の午後10時38分頃、当ブログへのアクセス数が110,000Hitに達しました。
 100,000Hitの大台を超えたのが昨年12月上旬。それから2ヶ月も経たないうちに10,000件のアクセスを数えるとは驚きました(単純計算をすれば1日約200件のアクセスがあった事になります)。
 これも定期的にアクセスして下さる皆様、キーワード検索で当ブログへリンクされた方々のおかげです。どうもありがとうございました。
 いつも替わらぬ御礼の言葉となりますが、訪問者各位には心より御礼申し上げます。

 前回の100,000Hit達成時は記念イラストが用意できず、文章だけの味気ないキリ番達成報告となりましたが、今回はpixivで交流のあるY.F.氏から素晴らしいイラストを御提供いただきました。
 今は亡きADKが1994年に発売したマルチライン2D対戦格闘ゲーム「痛快GANGAN行進曲」より、シン・ジーナスの必殺技をキサラ・ウェストフィールドが受けるシーンです。
 ゲーム本編ではキサラのみ開脚グラフィックが存在せず、ダウン時のグラフィックで代用された(他の野郎キャラには専用の開脚グラフィックが用意されています……)せいで花も恥じらう女子高生の御開帳は拝めませんでした。
 学内新聞記事のイメージで描かれたキサラの恥ずかしい姿。どうぞ存分にお楽しみ下さい。

110,000Hit記念画像
(C)Y.F.

 余談になりますが。
 キサラは紅一点の戦う女子高生として同作に初登場し、ネオジオCD専用ソフト「ADKワールド」にも出演しました。ADK倒産後も「ネオジオバトルコロシアム」や「Days Of Memories ~恋はグッジョブ!~」に登場しており、人気の高さを伺わせます。
 当ブログでも過去にキサラのイラストを紹介した事があり、その記事へは。こちらからリンクできます。よろしければ御覧下さい。
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見滝原帝都探偵局  「悪魔の種」事件 第三部・暴かれた犯罪

【十】

 甘味処『美国庵』の座敷を借りた意見交換では「弟による毒殺説」が全員一致の見解となりました。
 しかし、どのような毒物を使って衰弱死を狙っているのか、どのようにして殺人計画を未然に防ぐか、そういった点については意見がまとまらず、午後九時の閉店と同時に見滝原帝都探偵局の一行(いっこう)は店を出ました。
 杏 子「それで、これからどうすればいいのかしら」
 マ ミ「どうするって?」
 杏 子「このまま指をくわえて事件の拡大を見てるのもシャクだけど、今の段階では狩野氏の弟を罪に問う事はできないわ。今後の活動について指示を出してほしいのよ」
 ほむら「杏子さんの仰る通りですね。『美国庵』では毒殺説の検証に始終してしまいましたが、そこのところを詳しく話し合うべきでした」
 マ ミ「そうねぇ……。さしあたって、弟さんと同じ席上で食事をしない事、飲食物の味に違和感を覚えたら口にしない事、自宅で口にした飲食物の中に何か混入していると感じた時は吐き出す事。これらを狩野さんに伝える以外、現時点では手の打ちようがないわね」
 さすがのマミ局長もよい案が出ないらしく、その口から出た言葉は至極真っ当な防御策だけです。
 さやか「やっぱり、それくらいしか防御策はありませんよね。これからの食事を三度三度、全て外で済ませるというのなら話は別ですが」
 杏 子「おッ、その考えはいいんじゃないか。あれだけの資産家なんだし、さすがに『千和』のような高級店は無理としても、三度の食事をカフェーや定食屋で済ませる事はできるんじゃないかしら」
 マ ミ「あら、ウッカリして肝心な事を言い忘れていたわ。ごめんなんさいね。実は体に異変を感じてから狩野さんは三度の食事を行きつけの定食屋で済ませているそうなの。だからこそ、異常な体調不良に不安を覚えて相談しに来たというわけ」
 まどか「やはり、それなりに用心はしているんですね」
 マ ミ「ええ」
 さやか「でも、狩野氏の通っている定食屋がわかれば、厨房へ忍び込んで材料に細工するという事も可能ではありませんか」
 マ ミ「その可能性はないわ。注文する料理は日によって違うし、仮に材料へ細工をしていた場合、他のお客さんにも影響が出てしまうでしょう。狩野さんのお話では、店側に食べ物で体調を悪くしたという苦情は一件もないそうよ」
 杏 子「なるほどねぇ」
 まどか「やはり現時点では狩野氏に注意を呼びかける意外、我々にできる事はありませんね」
 さやか「犯人のメドはついているのに手も足も出せないなんて悔しいなぁ」
 マ ミ「カッカしないで、美樹さん。ここは持久戦で頑張りましょう」
 杏 子「そうそう。相手は濡れ手で粟を掴もうという狡猾な悪党よ。勇み足は禁物。焦ると逆に揚げ足を取られるかも知れないわ」
 このような会話を続けながら、わたし達は各々(おのおの)の帰路を目指して歩を進めるのでした。

【十一】

 この奇妙な事件がマミ局長の活躍によって迅速な解決をみたのは日曜日の事でした。
 わたし達が事務局内でマミ局長の口から事件の全貌を聞いたのは週明け月曜日ですが、「開いた口が塞がらない」という例えがピッタリする程、呆気ない事件の幕切れだったのでございます。
 マ ミ「最後になりましたが、狩野さんの事件は無事に解決しました。みんなにも心配をかけてごめんなさいね。この事件については狩野氏から近いうちに謝礼金が支払われます。美樹さん、帳簿をお願いね」
 午前八時からの朝礼で諸々の事務報告を済ませた後、最後にマミ局長が爆弾発言をサラリと口にされました。まるで往来で顔を合わせたご近所さんが「今日はよい天気ですね」と挨拶するような言い方です。
 この言葉に驚いたわたし達は異口同音に驚きの声を口にいたしました。
 まどか「えッ? あの事件、解決したのですか?」
 さやか「マミ局長。今、なんて仰いました?」
 杏 子「じ、事件が解決したって本当なの?」
 ほむら「マミ局長、どういう事ですか?」
 マ ミ「まあまあ、そう興奮しないで。今から詳しく説明をするから」
 そう言うとマミ局長は事件の真相を我々に解説して下さいました。
 マ ミ「わたしが『謎の毒薬』の正体に気づいたのは杏子の一言がキッカケだったの」
 杏 子「あたしの一言? さて、なんて言ったんだったかなぁ」
 マ ミ「金曜日の夜、『美国庵』で言ったじゃない。毒キノコを食べてしまった患者の体内から毒物を排出させるのに下剤効果がある粉薬を飲ませて毒を出させる民間療法がある、って」
 杏 子「まさか、下剤効果がある毒キノコを乾燥させて粉々に砕き、その粉を狩野氏に飲ませたって言うの?」
 マ ミ「いいえ。でも、それに近いわね。狩野さんの弟さんが使ったのは朝顔の種だったのよ」
 杏 子「あ、朝顔の……種?」
 さやか「そんな物が毒薬になるんですか?」
 マ ミ「まあ、わたしの話を最後まで聞いて頂戴。それから質問を聞くから」
 さやか「は、はい」
 杏 子「話の腰を折って悪かったわ」
 マ ミ「大連を引き払う時に尖さんが日本へ持ち帰ったと思っていた薬にばかり気をとられていたけれど、計画の途中で薬が足りなくなった場合、そのテの薬だと簡単に補充ができないでしょう。だから、尖さんは身近にある植物を利用しているんじゃないかと考えたのよ。そこで土曜日に神田の本屋を歩き回って植物学に関する本を何冊か買って調べてみたの。求めていた答えは『薬学と植物学の研究』という本に載っていたわ。その本によると朝顔の種子に含まれるファルビチンという成分は腹痛の原因になるんですって。朝顔は薬草として大陸から輸入されたそうだから、尖さんはファルビチンに目をつけたというわけね」

【十二】

 マ ミ「ここまで分かれば後は簡単だったわ。日曜日の午前中に狩野家を尋ねて庭師と料理人から話を聞いてきたの」
 まどか「まさか庭師と料理人も共犯だったんですか?」
 興奮のあまり、わたしは思わず余計な口出しをしてしまいました。
 マ ミ「いいえ、この二人は事件と無関係よ。ただ、確認したい事があったから話を聞いただけ。庭師の熊田八百八さんにお庭で朝顔を育てていないかを聞いてみたところ、狩野氏が朝顔好きなので専用の花壇を一つ作って栽培している事がわかったの。朝顔の種は多めに用意しているそうだから、何粒か失敬しても気づかれなかったでしょうね。実際、朝顔の種は透明な瓶に入れて納屋の棚に置かれていたわ。料理人の茂手木英一さんには、狩野さんが必ず家で口にする食べ物か飲み物はないか、あるとしたら誰が用意するかを聞いてみたの。茂手木さんのお話では、狩野さんは寝る前に必ず自分で淹れた日東紅茶を飲むそうなの」
 さやか「すると……」
 マ ミ「そうよ、美樹さん。尖さんは納屋から朝顔の種を盗み出し、粉状にして日東紅茶の缶へ混入していたのよ。粉状にした朝顔の種と紅茶の茶葉は色が似ているから混入しても気づかれる心配はないわ。それから、狩野氏は料理の味付けに胡椒を多用していたそうだから、胡椒挽きの中へも何粒か朝顔の種を入れておいたのでしょう」
 さやか「やはり犯行動機は狩野氏の財産狙いだったんですか?」
 マ ミ「おそらくね。破産前の贅沢が忘れられず、一日も早く贅沢三昧の暮らしをしたいと思っているんじゃないかしら」
 杏 子「たった一人の肉親を金目当てで殺すなんてゾッとするわね」
 マ ミ「破産して兄の家に居候している事が尖さんの自尊心を傷つけているのではないかしら。だからこそ、精神的に開放される意味も含め、お兄さんに死んでもらいたかったのかも知れないわ」
 まどか「なんだか……嫌な事件ですね」
 さやか「そうね。欲は人を鬼にすると言うけれど、まさに尖夫妻は人鬼だわ」
 杏 子「廻りくどい手段で兄を亡き者にしようとする根気や忍耐があるなら真面目に働けばいいのにね」
 ほむら「一応の謎は解けましたが、今後はどうなさるのですか。尖氏を告発するには物証がありませんし、自白を求めるのも困難と思います」
 マ ミ「その点は大丈夫よ。とりあえずの解決策を狩野さんと相談してきたから」
 杏 子「とりあえずの解決策?」
 マ ミ「ええ。謎が謎でなくなれば大した事ないわ。狩野さんに『今日から毎晩、寝る前のお紅茶を弟さんにも飲むよう薦めてみて下さい。あれこれ理由をつけて弟さんが遠慮すれば、そこから殺人未遂の告白を引き出す手掛かりになりますわ』と助言をしたのよ」
 さやか「自分が投じた毒……と言うのでしょうか、異物の混じった紅茶を飲むハメになるなんて皮肉ですね」
 ほむら「でも、尖氏が紅茶嫌いだったどうするのですか。それを理由に断れたら……」
 マ ミ「大丈夫。その点も抜かりなく調べたわ」
 まどか「と、申されますと?」
 マ ミ「西洋趣向の尖さんは商売の絶頂期、御夫妻揃って午後三時のTeaTime(ティータイム)に紅茶を飲む事を欠かさなかったんですって。紅茶の口当たりが気に入ったのか、日本を出て大陸に渡るまで輸入業者を通じて英国から茶葉を取り寄せていたそうなの」
 杏 子「それだけの紅茶狂いなら、狩野氏の誘いを断る理由がないわね」
 マ ミ「あとは狩野さんが上手く尖さんを説得できるかどうか。そればかりは運を天に祈るしかないわね」

【十三】

 蒸し暑い夏が終わり、いよいよ季節が秋に移り変わった頃、狩野勉造氏からマミ局長に宛てた手紙が届きました。
 厚く膨らんだ封筒から、同封されている便箋の量が伺えます。
 狩野氏からの長い長い手紙には次のような大意の文面がしたためられておりました。
 狩野『このたびは大変お世話になりました。巴さんの御推察通り、わたしの体調不良は弟夫妻が企んだ犯罪によるものでございました。寝しなの紅茶を一緒に飲もうと誘ったところ、明かに動揺した態度で辞退するので問い詰めてみたところ、アッサリと『計画』を自白したのでございます。(鹿目まどか註:犯行方法の解説については中略いたします)憎い奴とは言えども、わたしにとっては唯一の肉親でございます。この機会に弟と財産問題について腹蔵なく話し合いました。その結果、再起の為の資金として金1万円を与える代わり、大森の屋敷から出ていき、薬問屋として再出発するなり、薬学関係の仕事に就くなりして、真面目に働くよう申し渡しました。(鹿目まどか註:以下、マミ局長への御礼と調査の謝礼について書かれておりましたので中略いたします)今回の事で『お金の持つ魔力』というものを嫌というくらい思い知りました。幸い、老後も食うに困らないだけの資産はできましたので、店を閉め、約三十年ぶりに郷里へ戻る事にいたしました。もう二度と、都会の空気を吸う事はないでしょう。このたびは、本当に、本当にありがとうございました。探偵局の皆様にもよろしくお伝え下さい。冷気の加わる折から、くれぐれもご自愛下さいますよう。それでは、書面での御挨拶にて失礼いたします』


≪「「悪魔の種」事件」完結≫


【あとがき】
 今回も細部まで煮詰めないまま見切り発車でのスタートとなりましたが、シリーズ2作目を書きたいという意気込みだけが空回りしてしまい、前作以上に不満の残る結果となってしまいました。過去の反省が活かせず、なんともお恥ずかしい限りです。
 本当は全四部構成となる予定でしたが、思った以上に筆が(?)進まず、三週間以上かけて書いた結果として「マミさんの推理という形で強引に謎解きを済ませる」形になりました。
 こっそりと修正していますが、第二部の末尾には「第三部・狩野邸にて」と予告を出しており、当初の予定では見滝原帝都探偵局のメンバーが狩野邸に招かれ、そこで実地調査をしながら推理のディスカッションをする筈だったのです(思うように各キャラクターを動かせず、この部分をカットしてマミさん一人に謎を解いてもらう事にしました)。
 狩野邸の雇い人と『美国庵』三人娘の出番を削りに削ったうえ、犯行動機も微妙に変更(現行版では削除しましたが、尖夫人には宝石狂という設定がありました。これを盛り込んだ犯行動機になる筈だったのです)しており、書き始めた頃の構想とは違う内容になってしまいました。
 不燃焼気味の作品ではありますが、それなりの形にまとまったとは思いますので、よろしければ御笑覧下さい。

見滝原帝都探偵局  「悪魔の種」事件 第二部・宝石商の不安

【六】

 マ ミ「御馳走様でした」
 杏 子「御馳走様。脂がのっていて美味しい鰻だったわ。さすがマミの選んだ店ね」
 さやか「あ~、美味しかった。マミ局長、御馳走様でした」
 まどか「老舗の味を堪能させて頂きました。御馳走様です」
 ほむら「御馳走様です。美味しゅうございました」
 マ ミ「みんなに喜んでもらえて良かったわ」
 杏 子「さて、それじゃ本題だ。話の続きを聞かせて頂戴」
 全員が食事を済ませた後、杏子事務局長に促されたマミ局長は再び話を始められました。
 マ ミ「狩野さんのお話しでは、弟さんが食事に異物を混入して命を縮めようと企んでいるそうなのよ」
 杏 子「財産狙いの兄殺しってわけね」
 マ ミ「狩野さんが仰るには、お腹がくだって食べた物を一時間もしないうちに出してしまわれるそうなの」
 杏 子「なによ、それ。食べた物を排出するのは当然の生理現象じゃない」
 マ ミ「わたしもそう思ったわ。でもね、事態は随分と深刻らしいのよ」
 杏 子「どういう事」
 マ ミ「昔の狩野さんは恰幅のよい男性だったわ。でも、事務局に見えた時の狩野さんは鶴みたいに痩せていたでしょう」
 さやか「はい。吹けば倒れる枯れ木のようでした」
 まどか「うぇひひ。うまい例えだね、さやかちゃん」
 杏 子「さやかの例えには同感だ。ガリガリに痩せた男で驚いたよ。こんな言い方は失礼だけど」
 マ ミ「みんなが驚くのも無理ないわよ。喫茶室で聞いた話だと、半年前までは三十貫(約112kg)近くあった体重が現在は半分程度の十五貫(約56kg)まで減ってしまったんですって。六尺三寸(約190cm)の身長に釣り合わない体重だわ」
 ほむら「本人の意思で減量したというのであれば話は別ですが、約半年で体重が半分もおちるのは尋常ではありませんね」
 マ ミ「狩野さんは腹下(はらくだ)しのような薬を食事に混入され、その影響で食べた物が全て排出されるんじゃないかと仰るのよ」
 さやか「つまり、強力な下(くだ)し薬を知らないうちに飲まされて……そのぉ……」
 ほむら「ひどい下痢が止まらないというわけですか」
 赤面して言い淀むさやかちゃんに代わり、ほむらちゃんがズバリと言ってのけました。

【七】

 マ ミ「かかりつけの病院で検診を受けても病気の兆候は見られなかったそうだし、食あたりにしても体重の減り方が異常だわ」
 杏 子「弟を疑うようになったキッカケはなんなのさ。いくら破産したといっても肉親でしょう。それを疑うには理由がある筈よ」
 マ ミ「弟さんは水橋薬局の本店で薬剤師として働いていたそうなの。三年前に独立して大陸へ渡り、大連で薬局を開いたけど事業の拡大に失敗して破産したんですって。店をたたんで帰朝する際、強力な整腸作用のある薬を日本へ持ち帰り、それで腹痛を起こさせているのだと狩野さんは疑っているわ。また、民子夫人の実家は薬局で、御自身も結婚するまでは喜多村製薬のタイピストとして働いていたんですって。自社製品の効能や処方箋をタイプしていたそうよ。御夫妻揃って薬学に精通している事が狩野さんを疑心暗鬼にしているのかも知れないわね」
 まどか「水橋薬局といえば東京市内でも指折りの老舗薬局ですね。地方にも幾つか支店がありますし」
 さやか「喜多村製薬も業界では大手の企業だわ。薬剤師に薬局の娘。どちらも薬の縁があるんですね」
 杏 子「腹下しによる衰弱と弟夫妻の薬学知識ねぇ。ただの被害妄想なんじゃないかしら」
 さやか「そうとも言えないわ、杏子さん。お嫁さんの食事に水銀を混ぜて赤ん坊を流産させようとした鬼畜な姑がいたじゃない。栃木県まで出張した例の事件、覚えてるでしょう」
 杏 子「あの事件ね。もちろん、覚えているわよ。亭主からの調査依頼がもう少し遅れていたら取り返しのつかない事になるところだったわね」
 ほむら「あの時も犯行動機は財産絡みでした。妊娠した後妻を流産させて家から追い出し、実の息子を殺したうえで幼い跡取りの長男を名目上の当主にし、自分が財産の管理人になろうと企んでいたんですよね」
 さやか「とんでもない鬼畜婆さんだったわ。思い出してもゾッとする」
 杏 子「古い事件の話は別にして、あんた達は今回の変事が破産した弟による財産目当ての犯罪だと思っているのかしら」
 さやか「その可能性は高いんじゃないかしら」
 まどか「わたしも同感です」
 ほむら「美樹さやかさんと同意見です」
 マ ミ「食べた物を数時間で排出してしまっては栄養にならない。激しい下痢が続いた場合、体力の消耗や脱水症状から死に至る事もあるというし、衰弱死を狙った犯罪の可能性も否定できないわよ」
 杏 子「時間と根気がいる方法だね。それに相手が死ぬという保証もない。兄の莫大な財産を確実に相続したがっている弟が、そんな七面倒くさい手段に訴えるっていうのは納得しかねるわ」
 まどか「いわゆる『可能性の犯罪』になりますね」
 杏 子「それ以下じゃないかしら」
 さやか「そう言われると自信がなくなってくるなぁ」
 マ ミ「こう考えてみてはどうかしら。手間と時間はかかるけれど、弟さんは狩野さんが衰弱死しても不審死扱いされない確信をもっている。意図的に衰弱死させた痕跡が見つからなければ犯罪は露見せず、堂々と財産を相続できるわ」
 まどか「一服盛っておきながら、表面上は体力の低下による衰弱死を装わせようというわけですね」
 ほむら「巴マミ局長のお話しでは狩野家の財産総額は軽く見積もっても数万円との事です。贈与税を差し引いても庶民には夢のような大金が相続できるわけですから、兄殺しの動機となっても不思議はありません」
 杏 子「なるほど。そういう考え方もあるわけね」
 このような話をしているうちに店は混雑の時間を迎えたのか、先程から廊下や階段を行き来する女中さんの足音が後をたちません。
 マ ミ「どうやら混み合ってきたようね。食事の後で長居するのも悪いから、とりあえず店を出ましょうか」
 マミ局長は部屋番号の書かれた木札を手に取り、スックと立ち上がりました。
 マ ミ「先に降りてお会計を済ませてくるわ。みんな、忘れ物をしないようにね」

【八】

 さやか「ふは~、満腹満腹。元気百倍になったし、来週からも元気でお仕事を頑張っちゃいますよ~」
 マ ミ「お気に召してよかったわ」
 大満足のさやかちゃんにマミ局長は笑顔で応じられました。
 杏 子「さて、これからどうする。ここで解散かしら。それとも『美国庵』で続きを話し合う」
 さやか「やっぱり杏子さんは鰻だけじゃ足りなかったようね。シメは甘味かしら、それともお蕎麦かしら」
 杏子事務局長の仰る『美国庵』とは神田区淡路町にある甘味処の事です。夜遅くまで営業しており、甘味の他に蕎麦やお握りも提供してくれるお店なのでございます。
 杏 子「シメはやっぱり甘味に決まって……って、そうじゃないわ。もっと詳しくマミの話を聞きたいと思っただけよ」
 さやか「本当ですかぁ」
 杏 子「ほ、本当よ」
 図星をさされたらしく劣勢に追い込まれた杏子事務局長。そこへマミ局長が助け舟を出されました。
 マ ミ「狩野さんの件についてはみんなからも意見を聞きたいと思っていたし、とりあえず『美国庵』へ行きましょうか。美国さんとは知らない仲でもないし、多少の長居は許してくれるでしょう。もちろん、甘味くらいは注文しなければならないけれど。杏子、お腹に余裕があれば甘味の担当をお願いするわ」
 そう言いながら、マミ局長は杏子事務局長に向かって軽く目配せをされました。さやかちゃんの死角をついて合図するあたり、さすがの配慮です。
 まどか「(小声で)マミ局長、粋な計らいだね」
 ほむら「(小声で)ええ。まさに以心伝心ね」
 それから間もなく、わたし達五人は甘味処『美国庵』へやってまいりました。
 マ ミ「こんばんは」
 織莉子「あら、巴さん。いらっしゃい。お久しぶりね」
 引き戸を開けて店内へ入ると女将(おかみ)の美国織莉子さんが帳場にいらっしゃいました。マミ局長のお顔を見ると算盤を脇に置いて立ち上がり、自ら対応に出られます。
 マ ミ「お久しぶり、美国さん」
 織莉子「金曜日の夜に来店なんて珍しいわね」
 マ ミ「最近は甘味とも御無沙汰していたから、たまには五人で甘いものでもと思ってお邪魔したわ」
 織莉子「どうもありがとう。まあ、ともかく中へお入りなさいな。キリカさん、お冷やを五つお願いするわ」
 キリカ「はい。すぐにお持ちします」
 美国さんは店の奥に向かって声をかけ、女給さんに冷水を持ってくるよう言いつけました。
 マ ミ「こんな時間に大勢で押しかけて申し訳ないわね」
 織莉子「かまわないわ。宵の口でお客さんもいないし、皆さんの来店は大歓迎よ」
 マ ミ「歓迎されて嬉しいわ」
 織莉子「さあ、お好きな席へどうぞ。テーブル席でもお座敷でも好きな場所へ御案内するわ」
 マ ミ「実は込み入った話があるの。夕食後の一杯に立ち寄る方々でお店が混雑してきたら話しづらくなる内容だから、厚かましいようだけれど、お座敷を貸して頂けるかしら」
 織莉子「お座敷を御希望ね。了解したわ。すぐに用意をさせるから待っていてちょうだい」
 マ ミ「ごめんなさいね、わがままを言って」
 織莉子「気にしないで。この時間帯にお座敷を利用するお客さんはいないもの。ゆまちゃ~ん」
 ゆ ま「お呼びですか、女将さん」
 織莉子「五名様、お座敷を御利用よ。御案内できるように準備をお願いするわ。キリカさんにもお冷やをお座敷へ運ぶように伝えてね」
 ゆ ま「はい」

【九】

 お座敷へ案内された後、杏子事務局長は「久しぶりに来たんだからさぁ、ちょっとは奮発しましょう」と仰り、カステラと草餅、さらに甘酒を注文されました。
 わたし達は鰻重だけで満腹になっており、この他に食べ物を口にする余裕はございませんでしたので甘酒を注文するに留めましたが、それを聞いた杏子事務局長は甘味に加えて甘酒も注文されたのです。
 ゆ ま「カステラ、草餅をお一つ。甘酒を五つ。これでお間違いございませんか」
 マ ミ「ええ、大丈夫よ」
 ゆ ま「御注文を承りました。それでは失礼致します」
 女給のゆまさんが廊下へ下がると、マミ局長は『千和』で中断した話を再開されました。
 マ ミ「狩野さんから伺ったお話しについてだけれど、何か意見があれば聞かせてくれないかしら」
 杏 子「狩野氏が本当に命が狙われているのか、そうならば犯人は弟なのか、どのような手段で衰弱死させようとしているのか。この三点について意見を聞きたいって事かしら」
 マ ミ「ええ。わたしとしては弟さんによる犯罪の匂いを感じているのだけれど、その根拠を具体的に説明しろと言われたら言葉に詰まってしまうわ。この仕事をしていて身についた勘……と言ったところかしら。みんなには笑われるかも知れないけれど」
 杏 子「そういった勘だってバカにしたものじゃないよ。笑いはしないわ」
 マ ミ「ありがとう。杏子」
 まどか「杏子さんの御意見ですが、やはり被害妄想説ですか」
 杏 子「あたしは……マミの言う犯罪説に賛成かなぁ」
 さやか「あれッ、さっきとは逆の意見ですね。意見を変えるに至った根拠はなんですか」
 杏 子「やっぱり、狩野氏の異常な痩せ方かしら。ほむらも言っていたけど、半年で体重が半分も減るのは尋常じゃないもの」
 さやか「なんか、自説を撤回するにはあっけない理由だなぁ」
 杏 子「そう言うなって。ここへ来るまでに頭の中で情報を整理してみた結果なんだから」
 ゆ ま「失礼いたします。カステラ、草餅、甘酒、お待たせ致しました」
 注文した甘味が運ばれ、ここで杏子事務局長のお話しが途切れました。
 ゆまさんは手際よく甘酒の注がれた湯飲みを五人全員に配り、カステラと草餅の乗った皿を食卓の中央へ置いてから「ごゆっくり」と言って一礼され、そのまま引き下がって行かれます。
 まどか「減量の件については、わたしも杏子さんと同意見です。第三者による作為を感じてなりません」
 杏 子「毒キノコを食べてしまった患者の体内から毒物を排出させる為、下剤効果のある粉薬を患者に飲ませて毒を出させる医療法があるらしいわ。確か民間療法だったと思うけど、この方法を犯罪に応用したんじゃないかしら」
 さやか「民間療法を応用した間接的な殺人方法という事ですか」
 杏 子「狩野氏の体力消耗と栄養失調による死亡を犯人が望んでいた場合、死亡診断書を書く医師に不審な点を微塵も感じさせてはいけないから、確実に命を奪える毒薬を使う筈はない。駄目で元々、成功すれば御(おん)の字、って感じかしら。最初は迂遠すぎる方法に疑問を感じていたけれど、だんだんと衰弱死を狙った犯罪説じゃないかって思うようになってきたわ」


≪「「悪魔の種」事件 第三部・暴かれた犯罪」へ続く≫

見滝原帝都探偵局  「悪魔の種」事件 第一部・午後の依頼人

【はじめに】
 久しぶりとなる「魔法少女まどか☆マギカ」二次創作SSは原作のif物語ではなく、「まど☆マギ」のキャラクターを借りた探偵物「見滝原帝都探偵局」の続編にしました。
 2011年8月に全四回でアップした「紺碧荘殺人事件」は初めて書いた「まど☆マギ」二次創作SSとして特に思い入れがあり、推理小説としての完成度は低いものの、自分でもお気に入りの一編となっています。
 いつかシリーズ第2弾を書いてみようと思っていながらネタが浮かばず、永らく続編に着手できませんでしたが、某リサイクル本屋で買った雑学本から植物に関する面白いネタを拾えたので「見滝原帝都探偵局」第2の事件を書いてみました。
 今回は「魔法少女おりこ☆マギカ」の主要メンバー三人も登場させ、オールスター総登場の趣向を狙ってみましたが……意気込みだけで成功していないかも知れません(汗)。
 前作同様、キャラクター設定も原作に忠実ではありませんので、原作の世界観を崩した二次創作が苦手な方、シリアスな物語を好まれる方、オリジナル要素の濃い二次創作を敬遠される方は御注意下さい。



 皆様、お久しぶりです。見滝原帝都探偵局調査員の鹿目(かなめ)まどかでございます。
 いつぞや、K県の避暑地でわたしたちが巻き込まれた殺人事件についてお話し致しましたが覚えておいででしょうか。
 紺碧荘の事件は思いつくまま実行された犯罪が成功した一例だけに、探偵小説を愛読される好事家の皆様には物足りない事件報告だったかも知れません。
 当局が過去に扱った事件から、今日は少し変わった事件をお話ししようと思います。根気と綿密な計画によって実行されながら、どことなくユーモラスな一面の見られる犯罪を討議だけで解き明かす、わたしにとっても忘れ難(がた)い一件でした。
 探偵小説を好まれる方々に御満足頂ける内容かどうか分かりかねますが、よろしければ最後までお付き合い下さい。

 犯罪がひそかに進行していた場所は大森にある煉瓦作りの西洋館です。
 広大な敷地を持つ大邸宅が建てられたのは明治時代末期であり、持ち主を転々とした末、最後は宝石商に買い取られたそうでございます。
 この大邸宅を買い取った宝石商の名前は狩野(かの)勉造。二十歳(はたち)の時に生まれ育った山陰地方の漁村を捨てて上京し、宝石店経営者の家に書生として住み込んで宝石の勉強をしながら店の経営を手伝い、四十歳の時に暖簾分けの形で独立されました。
 有価証券や不動産を併せた総資産は五万円とも十万円とも噂されながら、狩野氏には配偶者がいらっしゃらない為、莫大な財産は事業に失敗して狩野邸へ寄宿している弟御が相続する事になるそうでございます。
 探偵小説の題材に相応しい条件が揃いながら、そこに展開される事件はなんとも単純な犯罪でした。不謹慎ながら失笑を禁じ得ません。
 この屋敷で如何なる犯罪が進行していたのか。
 さぞかし皆様も気になるでしょうから、前置きを終わらせて事件の話へ移る事に致しましょう。
 ……。
 と、その前に。
 今回も見滝原帝都探偵局のメンバーと事件関係者を簡単に御紹介させて頂きます。
 大森の西洋館に住まう使用人は総勢六名を数えますが、事件と直接の関係がない方には登場を御遠慮願いました。この省かれた使用人の中に主犯や共犯者が存在しない事は語り手である鹿目まどかが保証致します。


【見滝原帝都探偵局】
 ・巴マミ……見滝原帝都探偵局長。才色兼備の淑女探偵として活躍する職業婦人。
 ・佐倉杏子……見滝原帝都探偵局事務局長。面倒見が良い姐御肌の頼れる調査員長。
 ・美樹さやか……見滝原帝都探偵局経理担当。調査員。杏子事務局長の幼馴染み。
 ・暁美ほむら……見滝原帝都探偵局交渉事務担当。調査員。両親も探偵所に勤務。
 ・鹿目まどか……見滝原帝都探偵局書類検査担当。調査員。本件の語り手。

【狩野邸の住人】
 ・狩野勉造(かの べんぞう)……地方出身の宝石商。
 ・尖正二(とんがり しょうじ)……狩野勉造の弟。事業の失敗で破産。
 ・尖民子(とんがり たみこ)……尖昭二の妻。
 ・熊田八百八(くまだ やおはち)……狩野邸の使用人。庭師。
 ・茂手木英一(もてぎ えいいち)……狩野邸の使用人。料理人。


【一】

 昭和九年九月のある金曜日。
 見滝原帝都探偵局の事務室で静かに時を刻む置時計が午後五時を告げました。
 いつもならば勤務の終了する時間ですが今日は違います。暮れるには、まだ間(ま)がある夏の空を窓の向こうに見ながら、わたし達はマミ局長の帰りを待ちづけておりました。
 杏 子「もう五時を過ぎたっていうのに、いつまで長居しているのかしら」
 さやか「マミ局長が出て行ったのって四時くらいだったわよね。そんなに長居してはいないんじゃないかしら」
 ほむら「込み入ったお話しのようだから時間がかかっているのよ。もう少し待ちましょう」
 まどか「マミ局長が無駄に時間を消費するはずがないもの。きっと相手に解放されないのかも知れないわ」
 ほむら「仕事の話が終わった後も喫茶室でノンビリされる方ではないし、もう少し待ってみましょう」
 こんな事を言い合いながら、四人は局長不在の事務局で無為の時間を過ごしておりました。
 わたし達が御帰還を待っているマミ局長の不在は、次のような理由によるものでございます。
 本日午後四時頃、狩野勉造と名乗る痩せた長身の男性が当事務局を尋ね、マミ局長に面会を求められました。
 マミ局長にとっては顔見知りの御方らしく、手に持っていた書類の束を机の上に置き、名刺を貰う前に席を立って自ら対応されたのです。
 マ ミ「あら、狩野さん」
 勉 造「どんも、お久しぶりダス」
 マ ミ「お久しゅうございます。こちらこそ御無沙汰しておりましたわ」
 勉 造「実は巴さんに御相談したい事がありましてぇ、こうしてお邪魔したんスけど……」
 マ ミ「御相談と申されますと調査依頼でしょうか」
 勉 造「ええ、まあ。そんなことろッス」
 マ ミ「まずは応接室の方へ御案内致しますわ。さあ、こちらへどうぞ。美樹さん、お茶の用意をお願いね」
 さやか「はい、局長」
 さやかちゃんが席を立ち、マミ局長は来客を隣の応接室へ案内しようとなさいましたが、狩野と呼ばれた男性は手を振って断られました。
 勉 造「あいや、お気遣いは無用で結構ッス。勝手を言って申し訳ねえッスけど、できれば別の場所で話を聞いて頂けねッスか」
 マ ミ「別の場所ですか」
 勉 造「すんません。みなさん、気分を悪くされるかも知んねえッスけど、あまり御婦人方が聞いて気分のよい話じゃねえもんで……」
 マ ミ「左様でございますか。それでは階下に喫茶室がございますので、そちらにてお話しを伺いますわ」
 勉 造「無理を言ってすまねえッス」
 このような会話があり、マミ局長は狩野氏と連れ立って事務局が入っているビルの一階にある喫茶室『藍』へ向かったのでした。

【二】

 暇を持て余した杏子事務局長は給湯室から菓子箱を持ち出し、その中に入っていた月餅(げっぺい)を食べ始めました。
 さやかちゃんは婦人雑誌の読書に没頭。ほむらちゃんは……瞑想でしょうか、目を瞑って微動だにしません。わたしは週明けに日延べしようと思っていた調査書類の整理に取り掛かりました。
 どれくらいの時間が経ちましたでしょうか。ガチャリとドアノブの廻る音が聞こえ、太陽を背にしたシルエットが事務所のドアを静かに押し開きました。
 杏 子「おッ、我が探偵局長の御帰還だな。お疲れ様」
 さやか「お疲れ様です」
 ほむら「お帰りなさい、巴マミ局長」
 まどか「お疲れ様でした」
 マ ミ「あらッ、みんな待っていてくれたの」
 さやか「当然ですよ」
 ほむら「局長が仕事をしているのに部下だけ帰るわけにはいきません」
 まどか「そうですよ」
 マ ミ「お気遣い、どうもありがとう。優しいのね、みんな」
 疲れ気味の顔に微笑みをうかべながらマミ局長は一同を見まわして言いました。
 マミ局長が自分の席へ戻られると、杏子事務局長は待っていたかのように質問をします。
 杏 子「それで依頼人の相談はなんだったわけ」
 マ ミ「身辺警護の依頼……といったところかしら」
 杏 子「誰かに高価な宝石を狙われているから身辺を警護してほしいって事ね」
 マ ミ「当たらずとも遠からずよ」
 杏 子「なんだか歯切れの悪い答えだなぁ。あの男は何を依頼してきたのよ。ハッキリ言ってくれないかしら」
 ほむら「佐倉杏子さんの仰る通りです、巴マミ局長。具体的な答えをきかせて下さいませんか」
 マ ミ「そうね。こんな言い方では分からないわよね」
 杏 子「ああ。簡単明瞭な説明を頼むよ」
 マ ミ「その前に夕食を済ませてしまいましょう。こんな時間まで待たせてしまったのだから、今夜はわたしが御馳走するわ。明日は事務局もお休みだし、少しくらい帰宅が遅くなっても大丈夫よね」

【三】

 わたし達は帰り支度を済ませ、午後六時半過ぎに事務局を出ました。
 消灯と窓の戸締りを確認したマミ局長は外側からドアに鍵をかけ、見えにくい場所へ仕掛けた侵入者防止の南京錠を施錠します。
 機密書類も多い探偵事務局だけに局長自ら戸締りを行うのです(マミ局長が不在の時は杏子事務局長が戸締りの責任者となります)。
 マ ミ「夕食だけど鰻でいいかしら」
 ドアの鍵を小箱に収めながら、マミ局長は我々に尋ねました。
 杏 子「鰻かぁ。いいね、久しぶりに鰻重ってのも悪くない。あたしは異議なし」
 さやか「ちょ、ちょっと杏子さん」
 ほむら「巴マミ局長の御厚意に甘え過ぎではありませんか。一時間程度の居残りで鰻を御馳走になるのは申し訳ないと思うのですが」
 まどか「そ、そうですよね。さすがに鰻を御馳走になるのは……」
 マ ミ「遠慮しなくてもいいのよ。たまには贅沢な食事も悪くないでしょう」
 さやか「そうかも知れませんが……」
 杏 子「せっかく御馳走してくれるって言うんだからさぁ、ここはマミの顔を立ててやろうよ」
 煮え切らない態度の後輩三人を納得させるような口調で杏子事務局長が言います。
 マ ミ「美味しい食べ物は大勢で食べるから美味しいのよ。さあ、遠慮しないで行きましょう」
 笑顔で諭すマミ局長の一言に後押しされ(少なくとも、わたしはマミ局長のひと言で決心がつきました)、わたし達は「それでは遠慮なく御馳走になります」と三人揃って返事を致しました。
 杏 子「よし、これで衆議一決だな。それで店はどこにするんだ」
 マ ミ「須田町の『千和』にしましょう。あそこは全席個室になっているから狩野氏からの相談を詳しく話せるわ」
 ほむら「『千和』といえば江戸時代から続く老舗ではありませんか。そんな上等のお店へ連れて行っていただけるのですか」
 マ ミ「名点の味を知っておいても損はしないわよ、暁美さん」
 ほむら「は、はあ……」
 杏 子「さあ、立ち話をしていても時間が過ぎるだけよ。さっさと行きましょう」
 さやか「せっかくなんだから御馳走になろう、ほむら
 ほむら「そうね。それでは御馳走になります、巴マミ局長」
 こうして、わたし達は五人揃って神田須田町の老舗鰻屋を目指して歩き出しました。
 言い忘れておりましたが見滝原帝都探偵局は日本橋猿楽町(さるがくちょう)にあり、ここから須田町までは歩いて十分程度の距離なのでございます。

【四】

 創業百三十年の『千和』は歴史を感じさせる店構えをしておりました。道々にマミ局長から伺ったお話しでは何度か改修はされているものの建物自体は江戸の昔から変わっておらず、かの『江戸名所図会』にも繁盛する店の様子が描かれているとの事です。
 開放されている入り口の左手脇では鰻割(うなぎさき)の職人さんが慣れた手つきで鰻を捌いており、その反対側では焼かれた鰻が香ばしい香りを表通りへ漂わせております。
 わたし達は暖簾をくぐって店内に入り、女中さんの案内で六畳一間の個室へ通されました。
 特上の鰻重とお吸い物を注文し、それを受けた女中さんが部屋を出て行きます。
 足音が廊下の向こうへ消えて行くのを確認した杏子さんは、さっそく、マミ局長に狩野さんの用件がなんだったのかを尋ねられました。
 杏 子「さて、それじゃ例の依頼人が何を相談しに来たのか話してもらおうか」
 さやか「話してもらおうか……って。なんだからマミ局長を脅迫するような尋ね方をするわね」
 杏 子「さやか、あたしは真面目に聞いているのよ。半畳(はんじょう)を入れるんじゃない」
 さやか「は~い」
 珍しく真剣な面持ちで杏子事務局長がさやかちゃんをたしなめました。普段ならば「脅迫とは人聞きが悪いわね」と反撃し、さやかちゃんの軽口に応戦するのですが……。
 ほむら「(小声で)佐倉杏子さん、どうしたのかしら。いつもはあんな厳しい言い方をしないのに」
 まどか「(小声で)そうだよね。わたしもビックリしちゃった」
 杏 子「休憩中はおふざけもいいけど、仕事の話をする時は真面目にしなさい。休憩中と仕事中の区切りをつけないと駄目よ、三人とも」
 ほむらちゃんとの会話が聞こえたのか、さやかちゃんも含めた三人の後輩に言って聞かせるような口調で杏子事務局長が注意をされました。確かに仰る通りです。
 杏 子「今は仕事中じゃないけど、狩野とかいう男の調査依頼をマミが話してくれるんだ。仕事中だと思ってシャキリしなさい」
 まどか「はい」
 ほむら「申し訳ありません」
 さやか「これから気をつけます」
 杏 子「うん。聞き分けのいい子だ」
 頷いた三人の顔を見廻し、杏子事務局長は微笑みながら仰いました。

【五】

 マ ミ「午後に見えた狩野さんの依頼というのは簡単に言えば身辺警護なのよ」
 さやか「その事は事務局を出た時に……」
 杏 子「そうやって先走らない。まずはマミの話を聞きましょう」
 さやか「はい」
 マ ミ「狩野さんは銀座と高輪(たかなわ)、京橋にお店を持つ宝石商なの。わたしが藤倉婦人探偵所で見習いをしていた頃に知り合った方だけれど、かれこれ五年近く会っていなかったわ」
 マミ局長は御自身と狩野氏の出会いからお話しを始められましたが、そのような調査依頼とは直接の関わりがない事まで逐一申し上げるのも御退屈様でしょうから、ここでは必要最低限な情報だけを簡潔に申し上げたく存じます。
 あくまでマミ局長のお話しを要約するに過ぎず、わたしの独断で省いた情報に事件の重要な手掛かりを含んではおりません。その点については見滝原帝都探偵局の名前に誓って明言致します。
 マミ局によるお話しの大意は次の通りでございます。
 奉公していたお店から暖簾分けの形で独立した狩野氏は『悠木堂』という宝石店を京橋に開き、奉公中に学んだ経営戦略と持ち前の商才を発揮させ、無名の店を一流宝石店へと成長させました(僅か三年で銀座と高輪へ支店を出すまでに繁盛した事実からも狩野氏の商才は大したものと言えるでしょう)。
 現在は大森の豪奢な西洋館を買い取って住まいとし、大陸での事業で失敗して帰朝した弟夫妻と同居されているそうです。
 総資産は定かではないものの、軽く見積もって五万円、大雑把な計算では十万円とも言われているとか……。
 狩野氏には配偶者がいらっしゃらず、遺産相続人は唯一の肉親である弟御になるようです。
 マ ミ「狩野さんからの依頼は、事業に失敗した弟さんが財産目当てに自分を殺そうとしているから守ってほしい、という事だったの」
 杏 子「なるほど。ある意味では高価な宝石を狙う者からの身辺警護だわね」
 黙って話を聞いていた杏子事務局長が納得した口調で仰いました。
 マミ局長のお話しが一段落つくのを待っていたかのように、襖の向こうから女中さんの声が聞こえてまいりました。どうやら待望の鰻が焼き上がったようです。
 女 中「ごめん下さいませ。鰻重とお吸い物、五人前をお持ち致しました。お邪魔してもよろしゅうございますか」
 マ ミ「あら、鰻重ができたようね。この続きは食事を済ませてからにしましょう。お食事の前に聞かせるのは躊躇われる内容も含んでいるし……」
 苦笑しながら一同に告げた後、マミ局長は廊下で待機している女中さんに声をかけられました。
 マ ミ「どうぞ、お入りになって下さい」


≪「「悪魔の種」事件 第二部・宝石商の不安」へ続く≫

「魔法少女まどか☆マギカ」の長編二次創作漫画

 神アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の放送終了から、早くも2年が経とうとしています。
 普通ならば2年も経つと作品人気は下火になりがちですが、そうならないのが神アニメたる所以。未だに関連書籍や新作グッズが定期的に発売されたり、新作映画の公開が決定したり、その人気は衰えるところを知りません。
 同人誌の世界でも「まど☆マギ」人気は低迷せず、原作の後日譚やアナザーストーリーを扱った一冊本から、原作とは違う時間軸のif世界が舞台のギャグ短編集、原作には見られないif物語のシリアスなストーリー物まで、様々な設定・解釈の作品が描かれています。

 これら「魔法少女まどか☆マギカ」二次創作同人誌は短編集でもストーリー漫画でも基本的に一冊完結となっていますが、なかには複数冊にまたがって展開される長編ストーリーの作品もあります。
 分冊形式の作品を全て把握しているわけではありませんが、そのうちの何作かは縁あって手に取る機会に恵まれました。
 どの長編も2012年の時点では未完でしたが、早ければ今年中に完結する作品があるかも知れません。
 誌面から描き手の情熱と作品愛が伝わってくる長編作品が無事に完結する事を願う意味も含め、手持ちの分冊長編作品を紹介しようと思います。
 基本的にはストーリーが連続している作品だけを取り上げ、基礎設定が共通していてもストーリーが連続していない作品は(量的な問題もあり)紹介を見送りました。

 紹介タイトルに品切れ本はないと思いますが保障の限りではありません。詳しい入手方法や在庫の有無は各自でお調べ下さい。
 表紙画像については、イラストの転載許可を制作者サイドへ打診していないので掲載は控えました。各サークルのHPやpixivの作者様管理ページから画像を検索してみて下さい。


【1】ロマンと呼ぶには熱すぎて(著:ジャム王子/発行:ジャム王国
 ・2011年11月27日発行。一致団結した五人の魔法少女が最強の敵・ワルプルギスの夜との戦いに挑みます。物語の発端はアニメ第8話「あたしって、ほんとバカ」をベースにしていますが、それ以降のストーリーは原作のif物語として展開していきます。続刊『オペラツィオーネ・スペランツァ』は2012年5月3日発行。全滅の危機に陥った五人に奇跡がおこり、クライマックスに向けて盛り上がりを見せる場面で終了しました。完結編となる三冊目の刊行予定は告知されていませんが、2013年内の刊行は間違いないと思います。

【2】最後に愛と勇気が勝つ物語(著:黒瀬浩介/発行:おもいで広場
 ・2011年12月30日発行。全てに絶望したさやかの救済がテーマになっています。五人全員が魔法少女契約を済ませている基本設定が採用されており、まどかも魔法少女として物語序盤から登場していました。さやかVS杏子の血戦がアニメ版とは異なる展開で描かれています。同書後編は2012年12月29日発行。親友を殺しかけた事で心の闇を拡大させたさやかが底知れぬ暗黒空間に落ちていく場面で終了しました。完結編の刊行時期は告知されていませんが、今冬のコミックマーケットまでには刊行されると思います。

【3】Mado Nano CROSSOVER(著:bun150/発行:モソーム
 ・2011年8月13日初版発行(所持本は2012年1月15日発行の第四刷)。「魔法少女まどか☆マギカ」と「魔法少女リリカルなのは」のクロスオーバー作品です。杏子VSフェイトによる技と技の対決、メガネほむらVSなのはによる頭脳戦は両作品のファンによっては夢の対戦と言えるでしょう。昨年末の【第83回コミケマーケット】ではシリーズ最新巻となる4.0が販売されました。4.0でも物語は完結せず、今後の続刊もあるそうです。

【4】MADOKA X(cross) NANOHA(著:風川なぎ/発行:MASULAO MAXIMUM
 ・2011年8月14日初版発行(所持本は2011年8月24日発行のVer2.0)。「魔法少女まどか☆マギカ」と「魔法少女リリカルなのは」のクロスオーバー作品です。ワルプルギスの夜を討伐する為、見滝原の魔法少女五人と時空管理局の魔導師達が共闘します。「Mado Nano CROSSOVER」のように作品の枠を超えた魔法少女と魔導師による対決は見られませんが、双方を繋ぐ絆の描写に重点が置かれているので共通の敵に立ち向かう必然性が無理なく描かれていました。巻を追うごとにワルプルギスの夜VS共同戦線部隊の戦いは激化の一途を辿り、まだまだ物語は終わらないようです。昨年末の【第83回コミケマーケット】ではシリーズ最新巻となるEPISODE04が『Mado Nano CROSSOVER』と共同スペースで販売され、両方の最新巻が同時購入可能でした。

新年、おめでとうございます!

 2013年、明けましておめでとうございます。
 時間が経つのは早く、元旦の終わりまで残り1時間をきりました。お正月を迎えるたび、楽しい時間はアッと言う間に過ぎ去るものだと実感させられます。
 今年の更新ペースも月5~6回になるかと思いますが、負担にならない範囲でブログ運営を続けてまいりますので、2013年もよろしく御愛顧下さい。

 年明け早々の更新が挨拶だけでは寂しいので、僭越ながらpixivへアップする予定のイラストを転載しました。
 相変わらずのクオリティですが……初笑いとして御笑覧下さい。

気苦労の絶えない織莉子
(C)新京史朗

 最後になりましたが。
 当ブログへお越し下さる皆様、pixivで交流のある皆様にとって、2013年が良い年になりますよう心から願っております。



【追記】2013年1月2日付でpixivへ「気苦労の絶えない織莉子」を投稿しました。その際、セリフも含めた部分修正をほどこしたので、このブログへ先行アップしたイラストもpixiv版に差し替えます。修正前のイラストは削除しようと思っていましたが、せっかくなので残しておく事にしました。修正前のVersionは以下の通りです。(2013年1月2日・記)
気苦労の絶えない織莉子

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好きな技(2):股裂き関節技
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