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2011-10

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  ハロウィンの夜

【はじめに】
 今日は年に一度のハロウィンという事で、魔法少女とハロウィンの組み合わせによるSSを書いてみました。
 一編の物語ではなく、今回は独立した全三話から構成される短編集となっています(「「魔法少女まどか☆マギカ Another」  日常小景(コント集)」と同形式)。
 当初は「魔法少女五人がハロウィン・パーティーを楽しむ話」にする予定でしたが行き詰まり、「魔法少女八人(「魔法少女まどか☆マギカ」の五人+「魔法少女おりこ☆マギカ」の三人)がハロウィンの夜に魔女と戦う話」への路線変更を試みたもののアイディアが煮詰まらず断念、紆余曲折を経て現在の形式に落ち着きました。
 もう一話「ハロウィン・パーティーで大はしゃぎする上條恭介&志筑仁美のカップルをマミさんが美国織莉子と一緒に成敗する」ギャグタッチの番外編も書いていましたが、アクシデントでブログへのアップロード前にデーターが消えてしまい、バックアップを取っていなかったので日の目は見せられませんでした……。
 例によってキャラクターの個性を誇張・曲解した表現が多出する為、各キャラクターの原作イメージを崩すような描写が嫌いな方は閲覧を御遠慮下さい。


Eepisode1.鹿目まどか×暁美ほむら

 まどか「今夜はマミさんのお家(うち)にお泊まり……。うぇひひ~。楽しみだなぁ」
 外泊用荷物が詰まったバックを右手に持ち、浮かれ気分の鹿目まどかは軽やかな歩調で夕暮れの道を急ぐ。
 今日はハロウィン。翌日から土日と祝日の三連休になる為、巴マミのマンションへ泊まる事になったのだ。
 お泊まり会のメンバーは生死を共にした大切な友達。つまり、巴マミ、美樹さやか、暁美ほむら、佐倉杏子、そして鹿目まどかの五人である。
 友達同士での外泊経験が少ないまどかは喜色満面。まさに心ウキウキと言った状態だ。
 さやかと杏子&ほむらコンビが対立し、Qべえからソウルジェムの呪いを聞かされた因縁の歩道橋を渡り終えた時、まどかは腕時計に目をやった。
 まどか(五時三分か。ちょっと家を出るのが早すぎちゃったなぁ。どうしよう……。このままほむらちゃんのお家(うち)に行っても大丈夫かなぁ)
 マミのマンションを訪ねる前、まどかほむらと合流する約束をしていた。
 ここから暁美家までは五分もかからない。
 下校前にほむらへ「五時半過ぎに行くからね」と言った手前、この時間の訪問は早すぎる。
 まどか(考えてもしょうがないや。一応、行くだけは行ってみよう。支度がでてきなかったら近所で時間をつぶしてもいいし)
 決断を下したまどかは再び歩き始め、数分後には暁美家の玄関前に立っていた。
 表札代わりのネームプレートには『暁美ほむら』の五文字だけ。家庭の事情で両親とは別々に暮らしているらしいが、その理由を詳しくは聞いた者は誰もいない。
 日没の残光を背に浴びながら、まどかはインターホンのボタンを押した。
 ピンポ~ん♪
 ほむら『もしもし』
 まどか「あッ、ほむらちゃん? まどかだけど……」
 ほむら『あら、あなただったの。随分と早いわね』
 まどか「ごめんね。家を出るのが早すぎちゃったの。支度が終わってなければ近くで時間をつぶしてから出直すけど……」
 ほむら『その必要はないわ。もうすぐ支度ができるから、あがって待っていて頂戴。鍵は開いているわ』
 ガチャリと受話器を置く音が聞こえ、まどかの返事を待たずにインターホンの通話が途切れた。
 まどか(そう言えば)
 鉄製の門扉を開けようとしていたまどかは動作を止めた。
 まどか(ほむらちゃんの家にお邪魔するの始めてだなぁ。あッ、そうだ! 今日はハロウィンだから……)
 なにかを思いついたまどかは微笑を浮かべ、門扉を開けて暁美家の敷地へ足を踏み入れた。
 ガチャン。
 まどか「お邪魔します」
 玄関のドアを開け、まどかは奥に向かって声をかけた。
 ほむら「遠慮せずにあがって頂戴」
 まどか「それじゃ、あがらせてもらうね」
 靴を脱ぎ、玄関に一番近い部屋へ入った。どうやらリビングルームらしい。
 ソファーの脇に佇みながら、まどかほむらが来るのを待った。
 数分後。
 階段を下る足音が聞こえ、若き家主のほむらがリビングに現れた。
 ほむら「待たせたわね。少し早いようだけれど、巴マミのマンションへ行きましょうか」
 まどか(うぇひひ~。今だ!)
 まどかは手にしていたバッグを床へ置き、両手を前に差し出しながら言った。
 まどか「ほむらちゃ~ん」
 ほむら「なにかしら?」
 まどか「Trick or Treat! お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ~」
 ほむら「……」
 まどか「……」
 ほむら「…………」
 まどか「…………」
 ほむら「…………………」
 まどか(ほ、ほむらちゃんの冷たい視線……。こういうノリ、やっぱり嫌いなんだ)
 ハロウィンらしい軽口でおどけたまどかだが、ほむらは無表情のまま、なんのリアクションも見せない。
 まどか「あはははは。ご、ごめんね。変な事を言っちゃって。マミさんのマンションへ行こっか」
 バツの悪さを誤魔化すように、まどかは照れ笑いをしながら床の荷物へ手を伸ばした。
 ほむら「待って、まどか
 まどか「え?」
 今まで沈黙していたほむらが口を開いた。そして、顔を赤らめがら言葉を続ける。
 ほむら「お菓子の用意はないけれど、わたし自身でよかったら……まどかに喜んで差し出すわ(*'-'*)」
 まどか「ええぇぇぇ」
 ほむらの口から出た突拍子もない言葉に焦るまどか
 ほむら「さあ、思う存分……イタズラして頂戴。ま・ど・か」
 まどか「お、落ち着いて。ねッ。ほむらちゃん」
 ほむら「まどか……。大好きよ」
 焦点の合わない瞳でまどかの顔を見つめながら、ほむらはソファーの上に小さな女神の体を押し倒す。
 ポフッ。
 重なり合った二人の体を受け止めたクッションが優しい音を立てる。
 突然のアクシデントに混乱するまどか。彼女を下敷きにして馬乗り状態となったほむら
 まどか「ダメだよ。こんなの絶対おかしいよ」
 ほむら「巴マミのマンションを訪問するまで三十分近い時間の余裕があるわ。それまで……」
 まどか「そ、それまで?」
 ほむら「二人だけの濃密な時間を過ごしましょう。愛しい女神様」
 まどか「ほむ……。んむぅ」
 なにかを言おうとした瞬間、まどかの唇はほむらの唇によって塞がされた。
 ・・・。
 ・・・・・。
 ・・・・・・・。
 数十分後。
 理性を失ったほむらは愛するまどかと濃密な時間を過ごし、一方のまどかほむらの熱烈な愛情に負けたのか全く抵抗をせず、その身を相手のするがままに任せていた。
 まどかの体を弄ぶ事に満足したほむらは彼女の体を離し、乱れた服装を直しながら立ち上がった。
 そして、何事もなかったようにクールな表情で言い放つ。
 ほむら「そろそろ時間ね。さあ、出掛けましょう。まどか
 まどか「う、うん」
 火照り顔のまどかは素直に頷き、服装を整えながら立ち上がった。
 玄関のドアから外へ出た時、まどかは恥ずかしそうな表情でほむらに言った。
 まどか「ねえ、ほむらちゃん」
 ほむら「なにかしら?」
 まどか「さっきの事……。マミさんたち(=魔法少女のみんな)には内緒だよッ」
 ほむらの激しい求愛が満更でもないまどかであった。


Eepisode2.美樹さやか×佐倉杏子

 コン、コン。
 さやか「お~い、杏子。さやかだけど開けてくれない?」
 美樹さやかがカードキー式の鉄製ドアをノックした。
 見滝原ロイヤルホテルの1190号室には数日前から佐倉杏子が宿泊している。
 彼女は隣町から来た魔法少女だが、魔女との戦いで重傷を負った巴マミの縄張りを巡り、美樹さやかと幾度か殺し合いに近い激闘を繰り広げた。
 二人の衝突が続いている間に巴マミが戦線復帰し、彼女の仲介によって一時的な和解が成立。その後、杏子の過去を知ったさやかは相手への憎しみが消え、いつの間にか二人は親しく接するようになっていた。
 杏 子「おう、さやかか。ちょっと待っててくれ」
 室内から応答があり、ややあって内部からドアが開けられた。
 ガチャリ。
 杏 子「どうしたんだよ、こんな時間に」
 さやか「うん。両親が急に出掛ける事になっちゃってさぁ、今夜はわたし一人なんだ」
 杏 子「それで?」
 さやか「明日から土日祝日の三連休でしょう。だから……」
 杏 子「あたしの部屋に泊まろうってのか?」
 さやか「そう言う事」
 杏 子「なにが『そう言う事』だよ。勝手に話を決めてんじゃねえよ」
 さやか「まあまあ、いいじゃない。あんたもボッチで寂しいと思って来てやったんだからさぁ」
 杏 子「上から目線のドヤ顔で偉そうな事を言うなよ」
 さやか「あんただってさぁ」
 杏 子「な、なんだよ」
 さやか「一人ぼっちは寂しいでしょう?」
 杏 子「くッ。あたしの十八番(おはこ)を……」
 コントのような会話を繰り広げる二人。
 ホテルの廊下なので人通りは少ないが、それでも外出から戻って部屋に帰ろうとする数人の宿泊客から好奇の視線を送られた。
 杏 子「と、とにかく中へ入れ。人に見られる」
 さやか「さっすが~。杏子は物分かりがいいわね。そんな一面が可愛いんだなぁ」
 杏 子「バ、バカ言ってんじゃねえ。ほら、さっさと入んな」
 さやか「それじゃ、遠慮なく」
 室内に招き入れられたさやかは、オートロックのドアが背後で閉まると同時に杏子へ話しかけた。
 さやか「今日は10月31日。つまりハロウィンよね」
 杏 子「ああ、そうだな。それがどうした」
 さやか「Trick or Treat! お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ~」
 杏 子「ハァ? いきなり泊まりに来たうえ、お菓子をよこせだと? 寝ぼけた事を言ってんなよ。まるで押込み強盗じゃねえか」
 呆れ顔で杏子はツッコミを入れた。
 さやか「……」
 杏 子「?」
 さやか「……」
 杏 子「な、なんだよ。落ち込んだ顔して黙るなよ」
 さやか「……」
 杏 子「おいッ、さやか。どうしたんだよ」
 さやか「お菓子……くれないと……」
 俯(うつむ)きながら肩を落としていたさやかが低い声で呟いた。
 杏 子「空気が淀み始めた。ま、まさか魔女になるのか?」
 さやか「イタズラ……シチャウゾォォォォ」
 杏 子「バ、バカ。こんなところで魔女化するな」
 さやか「オカシ クレナイト イタズラ シチャウゾォォォ」
 杏 子「おいおい、勘弁してくれよ。これはイタズラのレベルを超えてるぞッ!」
 杏子のツッコミも空しく、さやかは人魚の魔女となってしまった。
 幸い、魔女の結界は室内に発生し、オートロックのドアも閉っているのでホテルの泊り客が結界内へ入りこむ心配はない。一般人に迷惑をかけないよう配慮して魔女になったかは不明だが、ともかくツンデレ同士の百合カップだけが魔女の結界に取り込まれた事に間違いはない。
 杏 子(さやかの奴、変なイタズラを覚えやがって……。自分の意思を残したまま自由に魔女化する方法があったなんて知らなかったぜ。し、しかたねえ。ソウルジェムの濁りが消えるまで付き合ってやるか。この二人きりの世界で……」
 隔離された別次元で二人だけの世界を楽しむ美樹さやか&佐倉杏子のカップル。
 熱く燃え上がるようなハロウィンの夜は静かに過ぎて行く。


Eepisode3.佐倉杏子×美樹さやか

 杏 子「ここがさやかの家か。大きな家だなぁ」
 美樹さやかから貰ったメモを片手に彼女の自宅へ辿り着いた佐倉杏子は大きな邸宅を見ながら言った。
 さやか『今夜は家族が誰もいないので泊まり来ない?』
 下校前にさやかから言われた一言が脳裏にコダマする。
 こんなに大きな家ならば一人で夜を過ごすのも寂しかろう。杏子は苦笑しながらインターホンのボタンを押した。
 ピンポーン♪
 杏 子「正義の味方のお嬢様。まさにヒロインの王道だな」
 そう呟いた時、インターホンからさやかの元気な声が聞こえてきた。
 さやか「はいッ、美樹です。どなたですか?」
 杏 子「さやかか?あたしだ、佐倉杏子だ」
 さやか「待ってたわよ、杏子。すぐに行くから待っててね」
 杏 子「おう」
 短い会話が終わった数秒後、観音開きになっている玄関の豪奢なドアが開いた。
 さやか「いらっしゃい、杏子。よく来てくれたわ」
 杏 子「へっへへへ。さやかの誘いじゃ断れないだろう」
 さやか「嬉しい事を言ってくれるじゃない。本当に愛(う)い奴。うふッ」
 杏 子「バ、バカ。誤解されるような発言するんじゃねえよ」
 さやか「いいじゃない。わたしとあんたの仲でしょう」
 杏 子「あたしとさやかの仲……」
 この一言にハートを刺激されたのか、杏子は顔を赤らめた。
 さやか「あっはははは。照れちゃって可愛いわねぇ。杏子はわたしの嫁になるのだぁぁぁ」
 屈託のない笑顔で言いながら、さやかは杏子に抱きつく。
 杏 子「うわッ。ちょ、ちょ、ちょっと待て。なんでそう言う結論になるんだ? 脈絡がないだろう」
 さやか「まあまあ、細かい事は気にしないの」
 杏 子「……」
 言い返す言葉が見つからない杏子は黙るしかなかった。
 さやか「あッ。そう言えば……」
 なにかを思い出したさやかは乱暴に杏子の体を突き放す。
 杏 子「おっと。危ねえなぁ」
 さやか「ごめん、ごめん」
 杏 子(小声で)「……ったく、調子狂うよな。せっかく良い雰囲気だったのに」
 さやか「ん? なんか言った?」
 杏 子「べ、別に。なんでもないよ」
 さやか「まあ、とにかく家の中へ入んないさいよ。歓迎するわ」
 杏 子「それじゃ遠慮なく」
 さやか「あッ、ちょっと待った」
 杏 子「なんだよ」
 さやか「今日はハロウィンでしょう」
 杏 子「ああ」
 さやか「ハロウィンと言えばさぁ、定番の挨拶があるじゃない」
 杏 子「定番の挨拶? ああ、あれか。Trick or Treat」
 さやか「そうそう。せっくなんだし、家へ入る前に定番の挨拶をしてよ」
 杏 子「面倒くせえなぁ。そんな事しなくてもいいだろう」
 さやか「だ~め、年に一回の行事でしょう。ほらほら」
 杏 子「わかったよ。Trick or Treat。お菓子くれないとイタズラするぞ。これでいいだろう」
 さやか「セリフ棒読みね。まあ、いいわ」
 そう言うとさやかは持っていたポーチの中から板ガムを取り出した。
 相手が引き抜き易いよう、一枚だけ包みから飛び出している。
 さやか「はい、お菓子」
 杏 子「ハァ? これがか? こんな事をするのにTrick or Treatなんて言わせたのかよ」
 さやか「まあね。さあ、一枚どうぞ」
 杏 子「せっかくの好意を無下に断るのも大人げないからな。一枚貰うとするか」
 さやか(うひひひひ。大成功だわ。杏子ってマジで単純ねぇ)
 杏 子(さ、さやかがあたしにガムをくれる……。ハロウィンなんてガキが喜ぶイベントだと思ってたけど、そんなに悪いもんでもないな)
 白魚のように白く細長い杏子の指が飛び出した板ガムを掴んで引き抜いた瞬間……。
 バチン!
 バネ仕掛けの小さな鉄板が杏子の指を挟み込んだ。
 杏 子「キャッ」
 思わず悲鳴をあげる杏子。
 さやか「あ~っははははは。大成功。こんな古い手にひっかかるなんてバカねぇ。あ~っはははは」
 杏 子「うぐぐぐ。て、てめ~」
 さやか「指を挟まれた時の悲鳴、なかなか可愛かったわよ。佐倉杏子ともあろう魔法少女が『キャッ』だって。ずいぶんと可愛らしい声を出すのね。あ~っはははは」
 杏 子「いい加減にしろよ。いつまで笑ってやがるんだ」
 さやか「そう言えばさぁ、あんたってロリ声だよね。ワイルドな外見とロリ声でギャップ萌えを狙ってるわけぇ? あ~っははははは」
 尽きる事を知らないさやかの悪態は徐々にエスカレートしていく。
 最初は我慢していた杏子だったが……遂に堪忍袋の緒が切れた。
 魔法少女に変身し、数多くの魔女を葬り去ってきた槍の穂先をさやかの鼻先に突きつける。
 さやか「え? あの……。ちょっと……」
 杏 子「リラックスできる金曜日の夜に人を呼びつけておきながら、くっだらねえイタズラしやがって。そのうえ笑いものにするとはいい度胸してるじゃねえか」
 さやか「ご、ご、ご、ごめん。ちょっと悪ノリしすぎちゃった。あ、謝るわ」
 杏 子「もう遅いよ。礼儀も知らねえ、限度も知らねえバカとなりゃ……」
 さやか「バカとなりゃ?」
 杏 子「お仕置きするしかないよねッ」
 ドスッ。
 杏子は巨大な槍を器用に半回転させ、電光石火の早技でさやかの腹部を石突で強打した。
 さやか「ぐふっ」
 杏 子「ソウルジェムをぶっ壊されなかっただけ感謝しな」
 そう言い捨てると杏子は元の姿に戻り、夜の街へと姿を消す。
 杏子の後ろ姿を見ながら気を失う直前、思考回路が今にも停止しそうなさやかは強く心に戒めた。
 さやか(もう二度と……お菓子を使って……杏子は……からかわない……)


【あとがき】
 オチから遡って話を作り上げていく方法は過去のSSと変わりありませんが、今回はハロウィン絡みのネタという制限を設けていたのでオチを思いつくのに苦労しました。
 パリパリみょうが氏の諸作、氏の「ハッピーハロウィン」、神爆龍王氏の二次創作漫画「あんこのワキの下をPRPRしたいねん!」(発行=PLASTIC IMAGE & SAGA Angel『あなただけDreaming』所収)のおかげでアイディアに煮詰まる事がなかったものの、これらの作品を読んでいなければ上記の三話は書きあがらなかったと言っても過言ではありません。御三方には記して感謝致します。
 最後になりましたが、全国の「まど☆マギ」ファンに嬉しい知らせがあります。
 第32回日本SF大賞の候補作として「魔法少女まどか☆マギカ」がノミネートされました。SF関係者の話では賛否両論ある選択で論争も起こっているようですが、SFにも詳しいミステリー評論家の日下三蔵氏は「あれをSFでないと考える人が何をSFだと思っているのかが知りたい」と賛成傾向の個人的意見を述べており、日下氏を始めとする目の肥えたSFファンからの支持が期待できます。
 最終選考は12月に行われるとの事。神クオリティの名作「まど☆マギ」が大賞に選ばれるよう心から願ってやみません。
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「魔法少女まどか☆マギカ」二次創作同人誌『マミ☆マギ!』

 先週の日曜日、池袋サンシャインシティ文化会館にて「サンシャインクリエイション53」が開催されました。
 1998年から続く【サンシャインクリエイション】はオールジャンルを扱った同人誌即売会であり、池袋サンシャインシティにて年4回開催されています。
 今回が初めての参加となりましたが、サークル参加者による同人誌販売だけでなく企業の出展もあり、大盛況のイベントでした(当ブログ開設初期よりお世話になっているモンコレ氏から、「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作漫画を収録した新刊を発行すると伺い、地理的に不案内な場所でのイベントでしたが足を運んだ次第です)。

「サンシャインクリエイション」参加告知 『マミ☆マギ!』表紙
(C)モンコレ

 モンコレ氏の新刊は『マミ☆マギ!』。全編ギャグ満載の内容となっており、短編+ショートストーリーで構成されたコミックです。
 迫力あるリョナ絵に定評があるモンコレ氏ですが、本書では柔らかいタッチ(ほのぼのした絵柄と言えば良いのでしょうか)でキャラクターが描かれており、昨年の「COMITIA 94」で発行されたオリジナル漫画『MARTIAL STAR!!』に近い絵柄でした。
 前記のようにコメディ要素が強い漫画なのでリアルな暴力描写は見られず、リョナ分野が苦手な「まど☆マギ」ファンの方も抵抗なく読めると思います。

 ……と、本の事を細々と書いておきながら大変申し訳ありませんが、『マミ☆マギ!』は通信販売や委託販売が行われておらず、事実上の会場限定本となっています。
 イベントが終了した後では容易に入手できない同人誌の紹介でしたが、新刊情報という事で御容赦下さい。
 モンコレ氏のお話によれば「ネット販売のルートが確保できれば通販形式でDL販売しようと思いますが、いろいろあって実現させるのが厳しい状況にあります」(文責・新京史朗)との事でした。ネットショップでの個人販売は意外と手間がかかるらしいので通販制度の確立は難しいようです。
 来夏の【コミックマーケット】には出展側として参加したいと仰っていたので、前掲『MARTIAL STAR!!』と併せて本書も会場で販売されるかも知れません。
 モンコレ氏が運営するブログ「Ryona's Station」での続報を小マメにチェックされる事をお薦めします。


≪サンシャインクリエイション56 参加企業一覧≫
 ※各企業の自社紹介文章は「サンシャインクリエイション53」公式サイトの「参加企業一覧 (サンシャインクリエイション53)」より転載。イベント終了により、2011年10月23日以降のリンクは無効と思われます。

【企1】同人グッズ製作 クリア工房(http://www.kuriakobo.com)
同人グッズ製作のクリア工房です。クリアファイル・クリアしおり・クリアバッグ等オリジナルグッズの印刷ならおまかせ下さい!既存のサンプル展示だけでなく、各種新商品のサンプルも展示しております。さらに、グッズ製作に関する相談窓口も開設しておりますので、ぜひお立ち寄り下さい!

【企2】アニメワールドスター(http://www.anime-world-star.com)
アニメーション関連商品・セル画・原画・動画の販売。「クイーンズブレイド」「一騎当千DD・GG・XX」など。自社オリジナル商品の下敷き・テレカ(成年向け)なども販売予定です。

【企3】ディーエルサイト(http://www.dlsite.com)
 同人ダウンロードショップのディーエルサイトです。ブースでは手ぬぐいなどのオリジナルグッズの他、文化放送超!A&G+内で放送中の「井上麻里奈・下田麻美のIT革命!」のグッズを販売いたします。みなさまのお越しをお待ちしております。

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 総合学園ヒューマンアカデミー マンガカレッジでは、マンガ初心者~プロ志向の強い上級者まで、一人ひとりの目的や目標に合わせて、『夢』の実現をサポート。当日は、現役プロ講師の生原稿紹介や、簡単なアンケートに答えると抽選で豪華プレゼントがその場で当たる抽選会を実施しています!自分自身のスキルを磨くチャンスがここにあります!

【企5】K-BOOKS(http://www.k-books.co.jp)
 karory先生&梱枝りこ先生、てぃんくる先生&涼香先生イラストのリバーシブルクッション、梱枝りこ先生イラストの缶バッチ、ポストカード、てぃんくる先生のイラストを使用した「らぶかの」CD各種を販売します。イベント帰りは是非K-BOOKSをご利用ください。

【企6】メロンブックス(http://www.melonbooks.co.jp)
 恒例となったガラガラ抽選会を実施致します。また関東店舗連動企画として「めろん新聞」も配布。サンクリメロンブースで新聞を手に入れて「大宮、秋葉原、蒲田、八王子、横浜」のいずれかの店舗に持っていってお買い物の際にレジに提示すると、特製クリアファイルがもらえる店舗連動企画も実施致します。

【企7】水沢深森&Pikatto Anime(http://pikatto.jp)
 こんにちは!ピカットアニメです。 "cocotto"の"水沢深森先生に描き下ろしていただきました!新作グッズ他、パネルセットも販売します。是非お立ち寄り下さい。お待ちしております。

【企8】株式会社まんだらけ(http://www.mandarake.co.jp)
 前回のサンクリで参考展を行った「うみねこラバーキーホルダー」第2弾の販売を行います。今回登場するのは、蔵臼一家をはじめとして、ワルギリアとロノウェ、そして人気の高いシエスタ姉妹近衛兵。ガチャは1回400円ですが、小銭が無い方には両替も行いますので、お気軽にお申し出ください。

【企9】同人誌印刷所 しまや出版(http://www.shimaya.net)
 こんにちは、初めての方”にも”優しい同人誌印刷所「しまや出版」です。今回はオフセット印刷のフルカラー本とオンデマンド印刷のフルカラー本の展示を行います。オフセットとオンデマンドの違いをお手にとって実感してみて下さい。また無料の資料配布も行っていますので気軽にお立ち寄りください。

【企10】印刷会社ねこのしっぽ(http://shippo.co.jp/neko/)
 みなさん、こんにちは!ねこのしっぽです。今回の出展はねこのしっぽ通販サイト「My@On.」を中心に企画しております。多くのお客様に「My@On.」を知っていただけるよう店長、倉澤も精一杯がんばらせて頂きます!また、当日はPO.SU.TAの販売や入稿相談なども行っております。是非、お立ち寄り下さい。

【企11】とらのあな(http://www.toranoana.co.jp)
 毎度おなじみ、とらのあな!!今回も、サンシャインクリエイションに企業ブース参加します!!オリジナルグッズを用意して、皆さんをお待ちしておりますので、宜しくお願いします!!

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  まどかの素敵な誕生日(後編)

【10月3日(土) 午後6時】

 ダミーのケーキが片付けられ、改めて本物のケーキが運ばれてきた。
 マ ミ「これが本物のケーキよ。さっきの偽物と比べたら大きさは劣るけど味には自信があるわ」
 まどか「うわ~。美味しそう」
 さやか「今度のケーキには仕掛けがないから安心して頂戴」
 まどか「うん」
 杏 子「ほら。ナイフとサーバーだ。切り分けを頼むよ」
 まどか「え~、本当にわたしが切り分けるの? 杏子ちゃん、代わりに切ってくれないかなぁ」
 杏 子「あたし? 悪いけど勘弁してくれ。こういう分割作業ってのは苦手なんだ」
 さやか「ほらほら、人に押し付けない。失敗するなんて考えは捨てて気楽にナイフを入れなよ」
 マ ミ「そうよ。今日は鹿目さんが主役なんだから、あなたの思う通りに切ってみて」
 ほむら「大丈夫。まどかならできるわ」
 まどか「わかった。やってみる」
 全神経を集中させ、まどかはホールケーキを六等分した。大きさに多少の差はあるが微々たる誤差である。
 さやか「あれ? 一つ多くない?」
 まどか「どうして? わたし。マミさん。さやかちゃん。ほむらちゃん。杏子ちゃん。Qべえ。ピッタリだよ」
 さやか「そうだ。Qべえを忘れてた」
 Qべえ「ひどいなぁ、僕の事を忘れるなんて」
 ほむら「どこへ行っていたの? さっきまで姿が見えなかったようだけれど」 
 Qべえ「ちょっとね」
 ほむら「それではわからないわ、ハッキリ言いなさい。わたしはあなたの事を全面的に信用している訳ではないのよ。まどかの誕生日を台無しにするような事を企んでいるのなら容赦しないわ」
 マ ミ「まあまあ、暁美さん。落ち着いて」
 ほむら「……」
 マ ミ「Qべえ、暁美さんの言う通りよ。どこへ行っていたのかハッキリ言いなさい。言えないような場所で言えないような事をしていたのであれば……わたしにも考えがあるわ」
 ほむら「どうなの、インキュベーター」
 さやか「ハッキリ言いなさいよ」
 杏 子「どこへ行ってたんだ」
 Qべえ「まどかの家だよ」
 まどか「わ、わたしの家?」
 Qべえ「君は雨戸を閉めずに家を出てきただろう。もうすぐ日が暮れる。だから雨戸を閉めてきたんだ。こんな手だから戸閉まりに時間がかかってしまってね。予定よりも戻るのが遅くなってしまったんだ」
 マ ミ「なかなか気がきくわね」
 まどか「ありがとう、Qべえ」
 ほむら「そう言う事だったのね。疑って悪かったわ」
 さやか「ごめん」
 杏 子「すまねえ」
 Qべえ「別に気にしていないよ、今までが今までだったんだから。君たちが疑うのも当然さ」


【10月3日(土) 午後6時20分】

 アイスティーを満たしたグラスとカットされたショートケーキが全員に配られ、いよいよ誕生日パーティの幕開けである。
 マ ミ「みんな、グラスは行き亙ったかしら?」
 杏 子「おう」
 さやか「持ってま~す」
 ほむら「廻ってきたわ」
 まどか「大丈夫です」
 Qべえ「僕も持っている」
 マ ミ「それでは鹿目さんのお誕生日を祝って乾杯しましょう。かんぱ~い」
 さやか「かんぱ~い。お誕生日おめでとう」
 ほむら「乾杯。まどか、おめでとう」
 杏 子「かんぱ~い。14歳の誕生日、おめでとう」
 Qべえ「乾杯。誕生日おめでとう、まどか
 まどか「ありがとう……。みんな……どうもありがとう」


【10月3日(土) 午後7時】

 マ ミ「さあ、ケーキの次はディナーよ。杏子、お料理を運ぶの手伝って」
 杏 子「了解ッ」
 マ ミ「暁美さんはケーキ用小皿を片付けて頂戴ね。美樹さんはテーブルの掃除をお願いするわ」
 ほむら「わかったわ」
 さやか「はい」
 マミの手際良い指示でテーブルの上が片付けれ、数分後には豪華な料理が卓上へ並べられた。
 マ ミ「どう? 四人で作った『鹿目まどか BIRTHDAY DINNER COURSE』よ。気に入ってもらえたかしら」
 さやか「ほとんどマミさんが作ったようなもんだけどね」
 杏 子「まあ、味の方は保証するよ」
 ほむら「あなたの笑顔を思い浮かべながら、心を込めて作ったわ」
 まどか「とっても……とっても美味しそう」
 下を向きながら肩を振るわせ、呟く様な声で答えるまどか
 さやか「どうしたの、まどか
 マ ミ「お気に召さなかったかしら」
 まどか「ち、違うん……です……」
 マ ミ「違うって?」
 まどか「わたし……。わたし……。うわぁぁぁぁん」
 杏 子「ど、どうしたんだよ。急に泣き出して」
 ほむら「まどか?」
 マ ミ「か、鹿目さん。どうしたの?」
 さやか「もうサプライズは終わったんだよ、まどか
 まどか「ううん。違う……の。嬉しい事が……重なって……が、我慢……できなく……なっちゃったの……」
 したたる涙に頬を濡らしながら、まどかは顔を上げた。その表情に悲しみの色は見られず、逆に歓喜の色が見て取れる。
 まどか「今年は……一人ぼっちの……誕生日だって……思ってた。で、でも……こうやって……みんなが……お、お祝い……してくれて……嬉し……かったの」
 さやか「まどか……」
 まどか「本当は寂しかった。一人ぼっちの誕生日になるの……本当は寂しかった……。うわぁぁぁん」
 心に秘めていた本音を吐露し、まどかは再び泣き出した。
 誰も口に出す言葉が見つからず、さやかたちは泣きじゃくるまどかを見守るしかなかった。
 マ ミ「鹿目さん……」
 年長者のマミはまどかに近寄ると、その小さな体を背後から優しく抱きかかえた。
 マ ミ「あなたは一人じゃないわ」
 まどか「マ、マミ……さん」
 さやか「そうだよ、まどか。あんたを一人ぼっちになんかさせない」
 杏 子「あたしたちは友達だろう。一人で寂しかったらさぁ、いつでも訪ねて来てくれよ」
 まどか「さや……か……ちゃん。杏子……ちゃん」
 ほむら「あなたを驚かせようとして、逆に寂しい思いをさせてしまったわね。ごめんなんさい、まどか
 まどか「ほむ……ら……ちゃん」
 Qべえ「良い友達に恵まれたね、まどか
 まどか「Q……べえ。みんな……本当に……ほ、本当に……あり……が……とう……。うわぁぁぁん」
 マ ミ「鹿目さん……」
 まどかの体を後ろから抱き締め、マミは優しく頭を撫でてやった。
 さやか「大丈夫。誰もまどかを一人ぼっちにさせたりしないよ」
 杏 子「ああ。一人ぼっちは寂しいもんな」
 ほむら「いつでも見守っているわ。まどか


【10月3日(土) 午後8時30分】

 嬉しさに号泣していたまどかが落ち着きを取り戻した後、誕生日の夕食会が再開された。
 五人+一匹による楽しい夕餉(ゆうげ)の一時(ひととき)はアッと言う間に過ぎ去り、秋の夜空には満月が煌々と輝いている。
 食後のレモンティーを飲みながら、マミはまどかに向かって言った。
 マ ミ「鹿目さん。よかったら今夜は泊まっていかない? 歓迎するわよ」
 まどか「え? 今夜ですか?」
 さやか「いいじゃん、家には誰もいないんでしょう。泊っていきなよ」
 杏 子「せっかくの誕生日だろう。明日は日曜だしさぁ、今夜は遅くまで盛り上がろうよ」
 ほむら「そうなさい、まどか
 まどか「でもぉ……」
 さやか「あ~、もういいや。バラしちゃうけどね、今日の誕生日パーティは宿泊プランになってるの。もちろん、まどかママの許可を得てるわ」
 杏 子「夕食の材料費もまどかのママが出してくれたんだってさ」
 ほむら「家族に代わって娘の誕生日を盛大に祝ってくれ。そう仰っていたそうよ」
 マ ミ「どうかしら、鹿目さん。今夜は泊っていってくれないかしら?」
 まどか「マミさんの御迷惑でなければ……。今夜はお世話になります」
 マ ミ「うふ、よかった。今夜は楽しい夜になりそうだわ」
 まどか「それじゃ着替えを取ってきますね。すぐに戻ります」
 立ちあがろうとするまどかに向かい、ドヤ顔のさやかが待ったをかけた。
 さやか「その必要はないわ」
 ほむら「ほむッ! それはわたしの決めゼリフ……」
 さやか「まどかママから着替え一式を預かってるの。だから帰る必要はないよ」
 まどか「用意周到だね。さすが、さやかちゃん」
 さやか「当たり前じゃない。誕生日パーティの責任者は美樹さやかちゃんですからねぇ。万事抜かりはありません」
 杏 子「自分で言ってりゃ世話ないよ」


【10月3日(土) 午後9時】

 食休みの時間をおいた後、五人揃って入浴する事になった。
 五人での入浴はスペース的に厳しいが、まどかの強い希望をマミが聞きいれたのだ。
 浴槽には最高でも三人しか入れず、残る二人は洗い場で待機する事になる。
 いろいろ不自由はあるものの、反対意見を述べる者もおらず、殺風景な浴室は麗しき乙女の園へと早変わりした。
 まず最初にまどかさやかほむらが浴室へ入り、掛け湯をしてから浴槽に身を沈める。
 まどか「はふぅ。温か~い」
 ほむら「最近は夜も冷えてきたものね。体が芯から温まるわ」
 さやか「あれッ。まどかの胸」
 まどか「ん? なぁに」
 さやか「一年前と比べてさぁ、ずいぶんと成長したんじゃない?」
 まどか「そ、そんな事ないよ」
 さやか「いや、わたしの目はごまかせないぞ。嫁の成長は一目でわかるのだぁぁぁ」
 そう言いながら、さやかまどかの胸を揉み出した。
 まどか「いやぁぁ。さやかちゃんのエッチ~。助けてぇ、ほむらちゃ~ん」
 まどかは苦笑いしながらほむらに助けを求める。
 ほむら「ま、まどか……」
 さやか「今がチャンスよ。あんたもまどかの成長ぶりを自分の手で確かめてみたら?」
 さやかにとっては何気ない一言のつもりだったが、ほむらにとっては天の声とも言うべき一言だった。
 互いの体が密着する狭い浴槽の中、まどかの裸体を間近に見て興奮しているほむらは分別を忘れた暴走モードに突入した。
 ほむら「ま、まどかぁぁぁぁ」
 まどか「ええぇぇ。ほむらちゃんまで……」
 ほむら(この世界を……全ての魔法少女を救ってくれたまどか。円環の女神として魔女の呪縛を断ち切ってくれた心優しいまどか……。あなたはわたしの女神様よ。この小さな胸から伝わる生命の鼓動。あなたが生きていてくれて……本当に嬉しい。何度も時間遡行した努力が遂に報われたわ)
 まどか「あはははは。く、くすぐったいよ。あはははは。もう駄目ぇぇぇ」
 前後から小さな乳房を揉まれたまどかは洗い場へ脱出。湯の中には二人の腐女子が取り残された。
 服を脱ぎ終えた杏子とマミが脱衣所から入って来たのは、まさにこの瞬間だった。
 杏 子「ど、どうしたんだ、まどか。顔が真っ赤じゃないか」
 マ ミ「お風呂のお湯が熱かったのかしら? いつもと同じ温度の筈なんだけれど」
 まどか「い、いえ。違うんです。のぼせたんじゃありません」
 杏 子「ははあん。さては……」
 さやか「ギクッ」
 ほむら「……」
 杏 子「まあ、同業者のよしみだ。深い追求はやめといてやるよ」
 ほむら「賢明な判断ね。その賢さに免じて美樹さやかと二人きりで入浴する権利を与えるわ」
 そう言いながらほむらは浴槽を出た。
 杏 子「なんか偉そうな言い方だが……。ありがたく権利を頂くよ」
 さやか「ちょっと。二人で勝手に話を進めてるんじゃないわよ」
 杏 子「いいじゃねえか。一人ぼっちは……」
 さやか「寂しくなぁぁい。そのセリフは聞きあきたわ」
 さやかが立ちあがろうとした時、杏子は目にも止まらぬ早さで掛け湯を済ませ、浴槽へ身を躍らせた。
 ザパーン。
 さやか「キャッ。乱暴な入り方ねぇ」
 杏 子「まあまあ、あんまりツンツンするなよ」
 頭の上にタオルを乗せた杏子は湯の中に身を沈めながら笑顔で言った。
 浴槽から出るタイミングを逸したさやかも再び湯の中に身を沈める。
 洗い場では残る三人がシャワーのお湯を使って体を濡らし、縦一列になってお互いの体を流し合っている。
 杏 子「はぁぁぁぁ。いい湯だ。温もりが五臓六腑にしみわたる」
 さやか「親父っぽい事を言うわね」
 杏 子「そうか?」
 さやか「五臓六腑にしみわたるって言葉も使い方が間違ってるわよ」
 杏 子「いいじゃねえか、細かい事は気にするなよ。なあ、マミ」
 マ ミ「うふふふ。そうね。楽しければいいじゃない」
 まどか「うぇひひ。そうだよ、楽しいのが一番だよ」
 ほむら「……。なんだか話が噛み合っていないわね、あなたたち」
 冷静にツッコミを入れるほむら。暴走モードが解除され、いつもの調子に戻ったようだ。


【10月3日(土) 午後11時】

 マ ミ「それじゃ電気を消すわよ」
 まどか「は~い」
 さやか「OKで~す」
 ほむら「大丈夫よ」
 杏 子「おう」
 Qべえ「うん」
 マミの問いかけに四人+一匹が同時に返事をした。
 マ ミ「うふふふふ。見事なハーモニーね。エレンたちも驚くわ」
 杏 子「なんの事だ?」
 マ ミ「なんでもないわ。さあ、電気を消すわね」
 カチッ。
 電気が消され、マミの部屋は烏羽玉(うばたま)の闇に包まれた。
 主賓のまどかほむらさやかの三人がマミのベッドを使っている為、消灯を済ませたマミは杏子の布団に潜り込む。
 Qべえはベッドの足元でうずくまり、すでに休息の体勢をとっている。
 マ ミ「おやすみなさい、鹿目さん。ゆっくり休んでね」
 まどか「はい。ありがとうございます」
 さやか「おやすみ、まどか
 ほむら「おやすみなさい、まどか
 杏 子「おやすみ~、まどか
 Qべえ「おやすみ、まどか
 まどか「うん。おやすみなさい」


【鹿目まどかの日記 10月4日分より抜粋】

 今年のお誕生日は最高の一日でした。
 さやかちゃんが中心になり、みんなでお祝いをしてくれたからです。
 マミさんの家にお泊まりもしました。
 一人きりの誕生日だと思っていたのに……。こんな嬉しいお誕生日を過ごせた事、みんなに感謝しています。


The End


【あとがき】
 遅まきながら、鹿目まどかバースティ記念のSSを完成させる事ができしました。
 お泊まり会というキモになる趣向が活かしきれず、その点は反省しています。
 サプライズ・パーティーに感動するまどかの姿を描きたかったので、その様子が多少なりとも表現できていればよいのですが……。
 寝る前の雑談シーンも挿入する予定でしたが、どう言う会話をさせようか迷いに迷った挙句、ここをカットして消灯~就寝の流れへ強引に持ちこみました。唐突に秋の夜長が終わるのは、こうした理由によるものです。
 物語の細部まで構想が固まる前に書き始めた為、後半部分は内容が薄く話の展開も急ぎ足となってしまい自分自身で消化不良に思う箇所があるものの、一応は纏まりのあるストーリーに仕上がったと思います。



【追記】マミさんの「うふふふふ。見事なハーモニーね。エレンたちも驚くわ」と言うセリフについての補足です。彼女と黒川エレン(「スイートプリキュア」より)は同級生という裏設定があり、音楽をテーマにした「スイートプリキュア」における変身後の決めゼリフ「届け! *人の組曲」を意識した楽屋オチ的な意味になります。説明不足なネタだった為、この場を借りて解説させて頂きました。(2011年10月31日・記)

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  まどかの素敵な誕生日(前編)

【はじめに】
 鹿目まどかの誕生日設定だった10月3日、pixivへは「魔法少女まどか☆マギカ」ファンによる祝賀のイラストや短編漫画が多数アップされました。
 半月以上のタイムラグとなりましたが、まどかの誕生日をテーマにしたSSで彼女のバースデイを祝いたいと思います。
 原作アニメでは、世界中の魔法少女を救う代償として存在を抹消された「概念」になってしまったまどかですが、二次創作世界では頼れる仲間と一緒に平穏な日常を送ってもらいたく、今回も「全員生存+魔法少女」のif設定を採用しています。
 本作のアイディアは、しんごー氏の「まどかと誕生日」、シノ氏の連載漫画「マミさん漫画 その1~最終回」の両作品から多大な影響を受けました。しんごー氏とシン氏には記して感謝致します。
 なお、シン氏の連載漫画はpixivの管理ページ内(第1回第2回第3回第4回最終回)にて閲覧可能となっている他、御自身が運営される「ぽんじゆうす?」のトップページより「過去のマミさん漫画はこちらですねん」でも読む事ができます(2011年10月25日現在、トップページには「ほむら編」が掲載)。


【鹿目まどかの日記 10月2日分より抜粋】

 明日はわたしの誕生日。今年で14歳になります。
 早いもので中学生になってから二年が経ち、年が明ければ受験生です。
 できれば、マミさんと同じ高校へみんな揃って進みたいなぁ。
 誕生日といえば、今年はパパもママもタッくんもいない寂しい誕生日になります。
 ママは2泊3日の関西出張、パパは仲の良かった大学時代のクラスメイトと同窓会、タッくんは幼稚園のお泊まり会。
 寂しくないと言ったら嘘になるけど、こんな誕生日も貴重な経験だと割り切って我慢しようと思います。


【10月3日(土) 午前9時】

 詢 子「悪いね、まどか。今年は誕生日を祝ってやれなくて」
 まどか「気にしないで、ママ。お仕事じゃ仕方ないよ」
 詢 子「まったく、可愛い娘の誕生日に関西へ出張させるなんて。あのハゲ部長、覚えてろよ」
 詢子は愛娘の頭を撫でてやり、額に軽くキスをした。
 詢 子「それじゃ行ってくる。来週末には食事に連れ行ってやるから、それで埋め合わせさせてくれ」
 まどか「ありがとう。ママ。気を付けてね」
 詢 子「ああ。じゃあな」
 知 久「月曜日の午後六時に駅まで迎えに行くよ。あまり無理をしないようにね」
 詢 子「大丈夫だって。これくらいの強行軍でブッ倒れるようなタマじゃないから。それじゃ行ってくる」
 知 久「気を付けて」
 タツヤ「行っていらっしゃ~い」
 詢 子「あッ、そうだ……。まどかぁ」
 まどか「なぁに、ママ?」
 詢 子「あたしからサプライズ・プレゼントがあるんだ。きっと、喜んでもらえると思う。楽しみにしてな」


【10月3日(土) 午前11時】

 知 久「誕生日おめでとう、まどか。これはパパからのプレゼントだ」
 まどか「うわ~、どうもありがとう」
 知 久「今年は寂しい誕生日になってしまったね。許してくれ」
 まどか「心配しないで、パパ」
 知 久「10年ぶりにカナダから帰国した友達の誘いは断り難くて、まどかの誕生日だって分かっていながら……。本当にすまない」
 まどか「気にしないで。わたしの誕生日は来年だってあるんだから。お友達とのミニ同窓会、楽しんできてね」
 知 久「ありがとう、まどか。それじゃ行ってくるよ」
 まどか「うん。気を付けてね」
 知 久「ああ。明日のお昼すぎには帰るからね。タッくん、行こうか」
 タツヤ「姉ちゃ、行ってきま~す」
 まどか「寂しくなっても泣いちゃダメだよ、タッくん」
 知 久「タッくんは男の子だもの、大丈夫だよねぇ」
 タツヤ「だいじょぶ~」
 知 久「これは頼もしい。ハッハハハハハ」
 まどか「あはははは」
 知 久「タッくんの迎えはパパが行くから、まどかは心配しなくていいからね」
 まどか「うん」
 知 久「それじゃ、行ってくるよ」
 タツヤ「行ってきま~す」
 まどか「行ってらっしゃ~い」


【10月3日(土) 午後3時50分】

 まどか「う~ん。これで宿題は完了っと。せっかくの土曜日なのに課題が多すぎだよぉ」
 三科目の宿題を全て終わらせたまどかは椅子から立ち上がり、大きく背伸びをした。
 首を左右に揺り動かしながら無人のリビングへ移動し、ソファーに腰掛けてテレビの電源を入れる。
 クイズ番組、グルメ番組、ドラマの再放送、釣り番組、バラエティ……。
 まどか「土曜日の午後なのに面白い番組が放送されてないや」
 見たい番組が放送されておらず、まどかはガッカリしながらテレビを消した。
 まどか「あ~あ、退屈だなぁ。……。そうだッ」
 ソファーに埋もれていた体を起こし、まどかはテーブルの上に置いた携帯電話へ手を伸ばした。
 電話帳機能を利用して、美樹さやかの番号を呼び出す。
 チャラッチャチャチャチャ~、チャラッチャッチャチャ~。
 まどか(これって「スペランカー」のBGMだ。さやかちゃん、渋い趣味してるなぁ)
 プツッ。
 まどか「もしもし、さや……」
 音 声「ただいま電話に出る事ができません。御用件の方はお名前とメッセージを吹き込んで下さい」
 まどか「さやかちゃん、電話に出られないんだ」
 ガッカリするまどか。それでも「また電話するね」と明るい声でメッセージだけは録音しておいた。
 まどか「次は……。ほむらちゃん」
 再び電話に手を伸ばし、電話帳機能で暁美ほむらの携帯電話をコールした。
 ラ~、ラ~、ラ~、ラ~、ラァァァ。タッ、タッ、タタタッタ。タタ~タ、タタタッタ。
 まどか(これは「スイート☆マギキュア」の主題歌だ。ほむらちゃんがアニソンを呼び出し音にしてたなんて……意外だなぁ)
 プツッ。
 まどか「もしもし、ほむ……」
 音 声「暁美ほむらです。現在、電話対応ができない状況にあります。お手数ですが時間を空けてから再通知願います」
 まどか「ほむらちゃんも電話に出られないのかぁ」
 気落ちしながら、ほむらの留守番電話にもメッセージを残した。
 まどか「マミさん!」
 最後の希望を込め、まどかは巴マミの携帯電話を呼び出した。
 ラ~ラ~ラァ、ラララァ、ラララァ、ラ~ラ~ラ~ラ~ラ。
 まどか(マミさんの呼び出し音はクラシック音楽かぁ。この曲は……確か「展覧会の絵」だったかな。高尚な音楽はマミさんのイメージにピッタリ)
 プツッ。
 まどか「もしもし、マミさんですか? 鹿目まどかですけど……」
 音 声「ただいま電話に出る事ができません。御用件の方はお名前とメッセージを吹き込んで下さい」
 まどか「……。マミさんも電話に出られないのかぁ」
 二度ある事は三度ある。肩の力を落としながらも、まどかはメッセージを吹き込んだ。
 まどか「みんな、土曜日だから忙しいのかなぁ?」
 クッションを抱きかかえ、まどかは寂しそうに呟いた。
 まどか「仁美ちゃんは声楽部の大会で留守だし、響ちゃんと和音ちゃんと奏ちゃんも部活の都合で土日は留守にするって言ってたなぁ……。そうだッ。杏子ちゃんを忘れてた!」
 佐倉杏子の事を思い出したまどかは、マミのマンションへ電話をかけた。
 家族のいない杏子はマミの家に同居しており、彼女自身は携帯電話を持っていない。マミの自宅=杏子の連絡先なので失念していたのだ。
 トゥルルルル。トゥルルルル。トゥルルルル。トゥルルルル。
 固定電話なので呼び出し音は味気ないコール音である。
 ガチャッ。
 杏 子「もしもし、巴です」
 まどか「もしもし、杏子ちゃん? まどかだけど」
 杏 子「ま、まどか? あんた、まどかなのか?」
 まどか「うん。そうだけど……。どうかしたの、杏子ちゃん?」
 杏 子「い、い、いや。なんでもないよ。わ、悪いけどさぁ、ちょっと取り込み中だから電話を切らせてもらうよ。じゃあね」
 ガチャン。
 まどか「……」
 事情がわからないまま、一方的に電話を切られてしまった。


【10月3日(土) 午後5時】

 まどか「もう土曜日が終わるんだ。あッと言う間だったなぁ」
 西の空に傾き出した太陽をビル群の向こうに見ながら、まどかはポツリと呟いた。
 両親や弟の前では心配させまいと明るくふるまっていたが、本当は孤独な誕生日が寂しいのだ。
 まどか「うぇひひ。今日は好きな物を食べて、遅くまでテレビを見て、ソファーで寝ちゃおう。それくらいの特権があっても……いいよね。せっかくの誕生日だもん」
 無理に自分を元気づけた時、リビングのガラス戸をノックする音が聞こえた。
 まどか「だ、誰?」
 Qべえ「僕だよ、まどか
 まどか「あッ、Qべえ。こんな時間に訪ねてくるなんて珍しいね。なにか用事?」
 Qべえ「実はね、マミが熱を出して倒れちゃったんだ。杏子は外出したまま戻ってこないし、僕は人間の病気に関する知識が皆無に等しい。それで君に相談しようと思ってね」
 まどか「マ、マミさんが熱を……」(そうか。それで電話に出られなかったんだ)
 Qべえ「悪いけどマンションまで来てくれないか」


【10月3日(土) 午後5時10分】

 まどか「お待たせ、Qべえ。行こう」
 身支度を整えたまどかは玄関のカギをかけ、Qべえを促してマミのマンションへ急いだ。
 Qべえ「悪いね、せっかくの土曜日なのに」
 まどか「ううん。それよりマミさんが心配だよ。さっき電話した時、杏子ちゃんが凄く慌てて……。ん? そう言えば杏子ちゃんはどこへ行ったんだろう」
 Qべえ「薬を買いに行くって出掛けたまま帰ってこないんだ」
 まどか「まさか、杏子ちゃんにもなにかあったんじゃ……」
 Qべえ「心配いらないよ。杏子のソウルジェムからは微量の魔力が感じられる。きっと変身して市内の薬屋を駆け回っていると思う」
 まどか「もしかしたら魔獣が現れたんじゃ……」
 Qべえ「大丈夫。杏子の事は心配無用だよ」
 まどか「でも……」
 Qべえ「僕の言葉を信じて、まどか
 まどか「……うん。わかった。Qべえを信じる」
 Qべえ「ありがとう」
 まどか「あッ。マミさんのマンションが見えてきた。もうすぐだね」
 Qべえ「どうやら間に合いそうだ」
 まどか「え? なにが間に合うの?」
 Qべえ「マミの看病さ。今はまどかだけが頼りなんだ」
 まどか「そんなに頼られても困るよぉ」


【10月3日 午後5時20分】

 巴マミと佐倉杏子が共同生活を送る部屋はシャフト・スカイハイツの15階にある。
 エレベーターを降りたまどかはQべえを肩に乗せたまま、1506号室を目指して走った。
 Qべえ「カギは開いているよ」
 まどか「うん」
 不用心だと思う心の余裕もなく、まどかは1506号室のドアを開けた。
 電気は点いておらず、背後から差し込む夕日が玄関を赤く染める。
 まどか「マミさん、まどかです。お邪魔します」
 靴を脱ぐ手間ももどかしく、まどかはマミの寝室へ通じるリビングに向かって駆け出した。
 まどか「マミさ……」
 ???「お誕生日おめでとう。鹿目まどか
 パカン。パカン。パカン。
 まどかがリビングへ足を踏み入れると同時にクラッカーが鳴らされ、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
 まどか「え? なに? どうなってるの?」
 さやか「ハッピーバスディ」
 マ ミ「お誕生日おめでとう、鹿目さん」
 ほむら「おめでとう、まどか
 杏 子「HAPPY BIRTHDAY DEAR MADOKA」
 まどか「み、みんな……。なにが……どうなってるの? マミさんは病気なんじゃ……」
 マ ミ「あれは鹿目さんに来てもらう為の口実だったの」
 まどか「どう言う事ですか?」
 マ ミ「今日は鹿目さんのお誕生日でしょう。だから、わたしたち全員でお祝いしようと思って」
 さやか「内緒で準備を進めてたってわけ」
 杏 子「サプライズ・パーティだからさぁ、直前まで知らせたくなかったんだ」
 ほむら「あなたの喜ぶ顔が見たかったから、半日がかりで準備をしていたのよ」
 マ ミ「騙すようなマネをして、ごめんなさいね」
 まどか「……」
 あまりの驚きにまどかは絶句したまま茫然と立ち尽くしている。
 そんなまどかの姿を横目で見ながら、Qべえはソッとリビングから出て行った。


【10月3日(土) 午後5時30分】

 さやか「今年の誕生日はまどかが一人ぼっちって聞いたからさぁ、わたしたちで誕生パーティーをしようって決めたんだ」
 ほむら「御家族と一緒に誕生日が祝えないのなら、こういう集まりでお祝いするのも悪くないと思ったのよ」
 まどか「そう言う事だったんだ。あ~、ビックリしたぁ。でも、マミさんが病気じゃなくて安心しました」
 マ ミ「せっかくのお誕生日に心配かけてしまったわね。ごめんなさい」
 杏 子「悪いのはあたしだよ。まどかからの電話で混乱しちゃってさぁ、そのせいでQべえに苦しまぎれの嘘をつかせちまったんだ。ごめんね、まどか。許してくれ」
 まどか「きょ、杏子ちゃん。そんなに深々と頭を下げなくても……」
 さやか「せっかくだからさぁ、杏子の悪いオツムに刺激を与えてやれば? 後頭部を何発か殴ってスカっとしちゃいなよ」
 杏 子「殴って気が済むなら……。いいよ、まどか
 さやか「え? ちょ、ちょっと……。あんた、本気なの」
 杏 子「ああ。まどかに心配かけさせちまったんだ。殴られても当然だよ」
 まどか「よ~し。それじゃ覚悟してね、杏子ちゃん」
 杏 子「うん」
 さやか「ま、まどか。まさか本気で……」
 マ ミ「……」
 ほむら「……」
 まどかの真剣な表情を見た三人は、本当に杏子の頭を殴るのかと息を呑んだ。
 まどか「えいッ」
 ペチッ。
 杏 子「?」
 殴ると見せかけながら、まどかは手刀(しゅとう)で杏子の後頭部を軽く叩いた。
 まどか「これでおあいこだよ、杏子ちゃん (≧▽゚)」
 杏 子「ま、まどか……」
 マ ミ「うふふふふ。鹿目さんらしいわ」
 杏 子「あっはははは。あんたには負けるよ」
 さやか「オツな事をやるわねぇ」
 ほむら「相手を気遣う優しさと思いやり。あなたは……やはり女神だわ。鹿目まどか


【10月3日(土) 午後5時50分)

 マ ミ「さあ、ケーキを持ってきたわよ」
 まどか「うわ~、大きい」
 さやか「マミさんの手作りケーキよ」
 まどか「美味しそう」
 テーブルの上に巨大なショートケーキが置かれた。大きさは8号(直径約24cm)サイズだろうか。自作のホールケーキならば相当の力作である。
 周囲のクリームはキラキラと光り輝いており、まるで食品サンプルのようだ。
 まどか「生クリームの形が綺麗ですね。ショーウィンドウに飾られているダミーのケーキみたい」
 マ ミ「ど、どうもありがとう。お褒めに預かり光栄だわ」
 さやか「今日はまどかが主役でしょ。みんなにケーキを切り分けてくれる?」
 まどか「わたしが切り分けるの? う~ん、こういうのって苦手なんだよ。さやかちゃん、代わりに切ってくれない?」
 さやか「ダ~メ。切り分けは主役の仕事だよ。ほらほら、失敗してもいいからさぁ」
 まどか「そ、それじゃあ……」
 プラスチック製のナイフを渡され、まどかがケーキに切れ込みを入れようとした瞬間……。
 ポン。ポン。ポン。ポン。
 まどか「ひゃッ」
 さやか「二度目のサプラ~イズ」
 まどか「ケ、ケ、ケーキが爆発……してないや」
 さやか「何度も脅かしてゴメンね。このケーキはダミーなんだ。食品サンプルを改造してあるの。渦巻状に盛られたホイップクリームがバネ仕掛けで飛び出すになってるのよ」
 杏 子「ほむらがリモコンの遠隔操作でホイップクリームを発射させたんだ。爆弾だの拳銃だのを扱ってるせいか、こういう改造は得意らしい」
 まどか「あはははは。今日は驚かさせてばかりいるなぁ。こういう刺激的な御誕生日って初めて」
 マ ミ「このケーキだけれど」
 まどか「はい」
 マ ミ「鹿目さんのお母様から預かった品物も入っているわ」
 まどか「マ、ママからの預かり物……ですか?」
 ほむら「ホールケーキの側面を押さえながら持ち上げてみて。土台部分とケーキのパーツに別れるわ」
 まどか「こ、こうかなぁ?」
 言われたとおりにすると、ダミーのケーキは円形の土台とホール部分に分離した。
 まどか「あれッ。小さい箱と封筒が入ってる」
 マ ミ「それがお母様からの預かり物よ。ケーキを用意したのはわたしたちだけどね」
 まどか「開けてみていいですか?」
 マ ミ「もちろんよ。はい、レターナイフ」
 まどか「ありがとうございます」
 レターナイフで封筒の口を切り、まどかは同封の手紙に目を通す。
 手紙には見覚えある母の字が並んでおり、そこには次のような文章が書かれていた。

 『お誕生日おめでとう。今年はママもパパも達也も家にいないけど、さやかちゃんによろしく頼んでおいた。あの娘(こ)の事だから、あんたを退屈させない誕生日にしてくれるって信じてる。今年の誕生日プレゼントは琥珀のブローチを用意した。前から欲しがってたみたいだから気に入ってくれればいいけど……。まあ、あとで感想をきかせてくれ。それじゃ、月曜日に会おう! HAPPY BIRTHDAY TO MY DAUGHTER』

 用件だけを書き記した短い手紙だが、一文字一文字に母の愛情が感じられる。
 まどかは眼尻が熱くなるのを必死に堪えながら、母の手紙と優しい友達の顔を交互に見比べた。


⇒ To be continued

「STREET FIGHTER×鉄拳」の最新情報

 今秋発売の『WEEKLYファミ通』2011年11月3日号にて、据え置きハード版「STREET FIGHTER×鉄拳」の発売日が発表されました。
 PlayStation3版とX-BOX360版は2012年3月8日発売になるようです。
 残念ながらPlayStationVista専用ソフトについては発売日が決まっていないらしく、同誌ではアナウンスがありませんでした。
 機種自体が未発売なのですから仕方ありませんが……。三機種同時発売の快挙とはならないようです。

 すでに情報解禁されたリリの同作参戦決定ですが、今月末に発売されるゲーム雑誌でキャプション画像を含めた新情報の公開があるかも知れません。
 この嬉しい事実は9月に開催されたゲームショーで初公開された為、先月発売のゲーム雑誌で大々的に紹介される事はありませんでした(基本的にゲーム雑誌は月刊誌ですから当然と言えば当然です)。
 情報公開から1ヶ月経ち、月末発売の月刊誌や隔週誌で取り上げる事も可能となった為、リリ参戦を知らせる情報公開ラッシュになると予測した次第です。

 プロモーション映像からキャプチャーした画像の紹介を含め、リリに関する詳しい情報は次回の「STREET FIGHTER×鉄拳」関連記事で触れようと思います。
 今回は、これまでに同作へのリリ参戦を報じたゲーム雑誌一覧を公開するに留めさせて下さい。


 1.『WEEKLYファミ通』2011年9月29日号
 ※公式イラストとゲーム画面写真(スーパーアーツの紹介)公開。

 2.『ゲーマガ』2011年11月号
 ※公式イラストとゲーム画面写真2点(登場シーン,戦闘シーン)公開。

 3.『ファミ通Xbox360』2011年12月号
 ※公式イラストを小さく紹介。次号にてTAGパートナー公開予定との事。

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  絶対に胸キュンしてはいけない会議室【後日談】

【はじめに】
 これまでに書いた「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作SSで最大の異色作となった「24 in The locked room  ~絶対に胸キュンしてはいけない会議室~」ですが、pixivで交流のあるロギー氏より頂戴した丁寧な感想メッセージの中に興味深い意見が記されており、そこから本作のアイディアが生まれました。
 会議室へ軟禁されて理不尽なゲームに挑む(彼女達は自分の意思で参加しており、一応の見返りも用意されているので理不尽とは言い切れませんが)五人の魔法少女。このゲームについて、Qべえの意図やゲームに秘められた真実が明らかになります。
 正当な続編となる為、前作「24 in The locked room  ~絶対に胸キュンしてはいけない会議室~」にシリーズタイトルを冠して「「魔法少女まどか☆マギカ Another」  絶対に胸キュンしてはいけない会議室」へと改題しました。
 消化不良気味だと感じていた点がフォローできる後付け設定を御提案頂いたロギー氏には記して感謝致します。
 なお、キュウべえの性格設定が原作アニメと全く違いますので、キュウべえを憎んでいる方の溜飲を下げるような描写はありません。物分かりのいいキュウべえが嫌いな方は閲覧を控えるのが無難である事、あらかじめ書き添えておきます。


 マ ミ「ねえ、Qべえ」
 Qべえ「なんだい、マミ」
 ベッドに腰かけたマミは、枕の脇で毛づくろいしているQべえに声をかけた。
 マ ミ「間違っていたら謝るわね。今日のお昼まで続いた会議室でのゲーム、あれは……わたしたちとスキンシップが取りたくて思いついたゲームなんじゃないの?」
 Qべえ「言っている事の意味が理解できないな」
 マ ミ「魔女化寸前の鹿目さんが「女神の理力」に目覚め、それこそエントロピーを凌駕する魔力で世界を改変させた。おかげで魔法少女はソウルジェムの呪縛から解放され、あなた方が必要とするエネルギーの源も「魔法少女が生み出すエネルギー」から「魔獣を消滅させる事で得られるキューブ」に換わったわ」
 Qべえ「うん、その通りだ」
 マ ミ「キューブを手に入れる為、あなたは今まで以上に魔法少女から離れられなくなったでしょう。一緒に行動しながら魔獣退治を続けるうち、あなたにも仲間意識が芽生え始めたのではないかしら」
 Qべえ「……」
 マ ミ「改変前の世界で険悪だった関係を少しでも修復しようと、あなたは今まで撮り溜めた映像を使い、わたしたちとゲームを楽しみながら距離を縮めようと考えた」
 Qべえ「なかなか興味深い考察だね」
 マ ミ「精神状態とソウルジェムの関係、つまり、興奮や感情の高ぶりによってソウルジェムが光り輝く特質に着目したのでしょうね。架空のポイントによるランキングと願いが叶う優勝特典を用意し、本心を隠しながらゲームに巻き込んだ。これがわたしの考えだけど……どうかしら? 間違ってる?」
 Qべえ「……」
 マ ミ「……」
 Qべえ「……」
 マ ミ「……」
 Qべえ「やっぱりマミに嘘はつけないようだね。きみの言う通りだよ」
 マ ミ「え?」
 Qべえ「過去数百年にわたって僕らは世界中の魔法少女にひどい事をしてきた。もちろん、そうするだけの理由があったわけだけれどね」
 Qべえはマミの膝の上へ飛び乗り、優しく澄んだ目元を見ながら話を続ける。
 Qべえ「世界が改変された事によって僕らの必要とするエネルギーも生体エネルギーの一種からキューブという物質に換わった。キューブは魔獣の消滅と同時に生み落とされるから、それを回収するにはきみたち魔法少女と常に行動を取る必要がある。皮肉なものだよね。以前は使い捨て扱いしていた少女たちの協力がなくては必要なエネルギーが手に入らなくなったんだから」

 部屋の壁掛け時計が午後11時を示し、蒸し暑い夏の夜は静かに深けていく。
 強制的に徹夜をさせられたにも関わらず、マミは眠そうな表情をしないでQべえの話に耳を傾ける。
 Qべえ「最初はキューブを回収する為、きみたちについて廻っていた。それなのに……」
 マ ミ「それなのに?」
 Qべえ「僕はきみたちに仲間意識を持つようになった。いや、この表現は正確じゃないな。キューブの回収とは関係なく、仲良く付き合っていきたいと思うようになったと言うべきかな」
 マ ミ「そうだったの……」
 Qべえ「僕には喜怒哀楽の感情がないし、きみたちを騙していた負い目がある。因縁の深い美樹さやかや暁美ほむらに向かって「仲良くしたい」と言おうものなら一刀両断されるかハチの巣にされるだろう」
 マ ミ「その可能性は大いにあり得るわね。うふふふふ」
 苦笑しながらマミはQべえの頭をなでてやる。
 Qべえ「そこで考えたのが今回の一件なんだ。最初から仲良くなれるとは思っていなかったから、まずは人間観察のつもりで「自分の嫌われ度」と「どういう言動が嫌われるか」をテストする事が目的だった」
 マ ミ「そうだったのね。それじゃ、罰ゲームや優勝特典も嘘だったの?」
 Qべえ「もちろんだよ」
 マ ミ「ずいぶんと大胆な設定を思いついたわね。嘘がバレた時の事は考えなかったの?」
 Qべえ「その時の事も考えていたさ。でも、無欲なまどかが優勝してくれたんで奥の手は不要になったよ」
 マ ミ「なんだったの、奥の手って?」
 Qべえ「別にいいじゃないか。今となっては言う必要もないし、きみも知る必要はない」
 マ ミ「そう言われると気になるわ……」

 二人の話が一段落ついた時、杏子がマミの部屋に入ってきた。
 杏 子「なるほど。それが徹夜ゲームの裏ってわけか」
 マ ミ「きょ、杏子」
 杏 子「わりぃ。部屋の前を通ったら話し声が聞こえてきてさぁ、なんとなく立ち聞きしちゃったんだ」
 マ ミ「うふふふ。杏子にもバレちゃったわね」
 Qべえ「そのようだ」
 杏 子「なんか変だとは思ってたんだ。魔力が抑制される会議室だの、胸キュンポイントだの、どうも信用できないゲームだったからな」
 Qべえ「やはり杏子は鋭いね。物事の本質を見抜く観察眼には敬服するよ」
 杏 子「煽てたってなにも出ねえぞ」
 Qべえ「素直に褒めているんだよ。どうして素直に受け止めてくれないかなぁ……」
 杏 子「今までが今までだからだろ」
 マ ミ「あらあら、一本取られてしまったわね」
 Qべえ「そのようだ」
 杏 子「あたしらと仲良くしたいんならさぁ、いくらでも相談にのってやるよ。なあ、マミ」
 マ ミ「そうよ、Qべえ。遠慮しなくてもいいのよ」
 Qべえ「僕の事を憎んでいないのかい? きみたちをゾンビにしたうえ、使い捨ての道具として利用していたのに」
 マ ミ「過去の事は過去の事よ」
 杏 子「ああ。本気で改心するんだったら前世界での恨み辛みは忘れてやる」
 Qべえ「ありがとう。マミ、杏子」
 杏 子「しっかしさぁ、Qべえも変わったよな。喜怒哀楽の感情がないとか言いながら、感謝する事を覚えたじゃないの」
 Qべえ「どうやら世界の改変が僕らの生体構造にも影響を与えたようだ」
 マ ミ「そうやって少しずつ変わっていけばいいのよ。ゆっくりとね」 
 杏 子「そういう事だ。それじゃ、あたしは部屋に帰るよ」
 マ ミ「あら、もう戻るの?」
 杏 子「うん。明日は学校だからさ、いつまでも起きてられないよ」
 マ ミ「ねえ、杏子。よかったら……」
 杏 子「ん?」
 マ ミ「わたしたち三人で寝ない?」
 Qべえ「マミ……」
 杏 子「はぁ? 三人って誰だよ」
 マ ミ「決まってるでしょう。わたし、杏子、Qべえよ」
 杏 子「なるほど、それで三人か」
 マ ミ「そうよ。『川』の字になって寝ましょう。杏子だって一人ぼっちで寝るのは寂しいでしょう」
 そう言いながら、マミは杏子に向かってウィンクした。この言葉の含みを察してくれという意味だろう。
 それに気付いた杏子はマミが望む返事を返した。
 杏 子「そうだな。一人ぼっちは寂しいし、三人で寝ようぜ」
 Qべえ「二人とも、どうもありがとう。漠然とだけど喜怒哀楽の一つである喜びの感情が分かり始めてきたよ」
 マ ミ「それはよかったわ」
 杏 子「ふぁ~あ。明日から学業と魔獣狩りの日々が待ってるし、早く寝ようぜ」
 マ ミ「そうね。さあ、電気を消すわよ」
 杏 子「おう」
 カチッ。
 電気が消え、ビロードの闇が部屋を覆う。
 Qべえ「おやすみ。杏子、マミ」
 杏 子「いい夢を見ろよ」
 マ ミ「おやすみなさい」

 SPECIAL THANKS:ロギー氏


【あとがき】
 高木彬光氏は未知の読者から届いた手紙によって「成吉思汗の秘密」を完成(昭和35年刊行の新書で最終章部分を加筆)させたそうですが、これと似たような経緯によって本作も完成しました。
 本筋とは別の時間・場所で展開する続編的物語という事で「~【後日談】」のタイトルをつけましたが、もう少し内容に見合ったタイトルをつけたかったというのが本音です……。
 原作アニメのファンからは評判の悪いキュウべえですが、世界の改変によって悪役を卒業させ、魔法少女のマスコット的存在にしてみました。あまり支持されない設定かも知れませんが、こうした扱いを受ける作品があってもユニークだと考えて思い切りました(意外と善玉キュウべえは描き易く、定期的にレギュラー化させるつもりです)。
 いろいろなアイディアがあるものの、それを文章にする時間が取れず供給過剰(?)状態にあります。アイディア倒れにならないよう、創作メモとして概要くらい纏めておかなくてはなりません。

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  絶対に胸キュンしてはいけない会議室(後編)

<中間結果(省略シーンまでの累計ポイント)>

 残り3時間となり、ゲームも終盤へ突入。
 永らく最下位を独走していた暁美ほむらだったが、驚異の追い上げ(?)で巴マミが迫り、その差を10点に縮めた。
 さすがに安易な胸キュンを連発する者はいなくなり、誰一人としてポイントに変動は見られない。
 ゲーム終盤らしい白熱の展開が繰り広げられているが、まだまだ勝負の行方は分からず、残り時間でのポイント加算が勝敗の分け目となる。

 ・佐倉杏子(+90)
 ・美樹さやか(+90)
 ・鹿目まどか(+100)
 ・巴マミ(+110)
 ・暁美ほむら(+120)


☆残り時間…3時間☆

 さやか「あ~あ、座りっぱなしだったせいか腰が痛くなってきたよぉ」
 杏 子「あと何時間あるんだ?」
 Qべえ「残り約4時間だよ」
 マ ミ「20時間経過したのね」
 まどか「長かったですね」
 杏 子「なんか腹がへってきたな~。このゲームが終わったらさぁ、ファミレスへ飯でも食いに行こうぜ」
 さやか「あんた……部屋に閉じこもったままなのに食欲があるわけ? どういう胃袋してんのよ」
 杏 子「どういう胃袋って……。普通じゃねえか?」
 さやか「普通じゃないわよ。この中でお腹をすかせてるのは杏子ぐらいよ」
 杏 子「そんな事あるかよ」
 まどか「わ、わたしも少しお腹すいてるなぁ」
 ほむら「わたしも」
 マ ミ「う~ん、ちょっと食べたりないかしら」
 杏 子「ほらみろ。さやかが小食なだけじゃねえか?」
 さやか「脳天気ねぇ。みんなは杏子を気遣ってるだけよ。そうでしょ、まどか?」
 まどか「そんな事ないよ。ねぇ、ほむらちゃん」
 ほむら「その通りよ。そうでしょう、巴マミ」
 マ ミ「ええ」
 さやか「んもう、みんなで杏子の味方して……」
 Qべえ「きみたちくらいの年頃は育ちざかりだからね。杏子だけが大食漢ってわけじゃないと思うよ」
 マ ミ「Qべえの言う通りよ」
 Qべえ「だからマミは胸が大き……きゅぷいッ」
 マ ミ「わたしの胸がどうしたの?」
 Qべえ「いや、なんでもない。なんでもないから、笑顔で顔を握り締めるのはやめてくれないかなぁ」
 マ ミ「口は災いのもとよ。気をつけましょうね❤」

 Qべえ「……気を取り直してッと。次の映像を流すよ。みんな、画面に注目してッ!」

 杏 子『美樹さやか、助けたいと思わない?』
 まどか『た、助けられる…の?』
 杏 子『助けられないとしたら、放っとくか?』
 まどか『どういう事?』
 杏 子『妙な訊き方しちゃったね。バカと思うかもしれないけど、あたしは本当に助けられないのかどうか、それを確かめるまで諦めたくないんだ』
 まどか『……』
 杏 子『さやかは魔女になっちまったけど、友達の声ぐらいは覚えてるかもしれない。呼びかけたら、人間だった頃の記憶を取り戻すかもしれない。それができるとしたら……たぶん、あんただけだ』
 まどか『う、うまくいくかな?』
 杏 子『わかんねぇよ。でも、わかんないからやってみるんだ。もしかしたらさぁ、あの魔女を真ッ二つにしてやれば、その中からさやかのソウルジェムがポロッと落ちてくるかもしれない。そういうもんじゃない? 最後に愛と勇気が勝つストーリーってのは。あたしだってさぁ、考えてみたらそういうのに憧れて魔法少女になったんだよね。すっかり忘れてたけど……さやかはそれを思い出させてくれた。あいつは見てる方が恥ずかしいくらい正義のヒロインしてただろう。でも、その優しさが仇になっちまった。魔女になっちまった魔法少女を助けられる可能性はゼロかもしれないけどさぁ、やれるだけの事をやってから諦めたいんだ』
 まどか『やれるだけの事……』
 杏 子『さやかはあたしが見失ってたものを思い出させてくれた。あの娘(こ)の為なら……あたしは命だって惜しくない』
 まどか『……』
 杏 子『付き合いきれねぇッてんなら無理強いはしない。結構、危ない橋を渡るわけだしね。あたしも絶対に守ってやるなんて約束はできねぇし』
 まどか『わたしで力になれるなら手伝う。ううん、わたしにも手伝わせてほしい』
 手を差し伸べて自己紹介する。
 まどか『わたし、鹿目まどか』
 杏 子『……。まったくもう、調子狂うよな。ホント』
 まどか『え?』
 杏 子『佐倉杏子だ。よろしくね』


 さやか「杏子、まどか。わたしを助ける為に……」キュン
 杏 子「な、なんか恥ずかしいところを見られちまった。なあ、まどか
 まどか「そうかなぁ。さやかちゃんを助けたいって願う杏子ちゃん、頼もしくって素敵だったよ(⌒-⌒)」
 ほむら(うッ。まどかの女神スマイル……)キュン
 杏 子「バ、バカな事を言うんじゃねえよ」
 まどか「でも、杏子ちゃんの予想通りだったね。本当に魔女の体内からソウルジェムが出てきたもん」
 杏 子「一か八かの賭けだったけどね。成功してよかったよ。笑われるかもしれないけどさぁ、親不孝な娘へ親父が一度だけ奇跡を起こしてくれたんじゃねえかって思うんだ」
 さやか「杏子……」キュン
 マ ミ「魔法が存在するのだから、奇跡だって存在するのよ。杏子」
 ほむら「そうよ、佐倉杏子。美樹さやかも言っていたでしょう。奇跡も魔法もあるんだって」
 Qべえ「綺麗に話を纏めたね。巴マミ、暁美ほむら
 さやか「杏子、まどか……。ほんとに、ほんとにありがとう」
 杏 子「どうしたんだよ、改まって」
 まどか「そうだよ。さやかちゃんが元気でいてくれれば、それだけで幸せなんだから。ねッ、頭をあげて」
 さやか「う~、その笑顔と思いやり。やっぱり……まどかはわたしの嫁になるのだ~」
 杏 子「あ、あたしじゃないのかよ」
 ほむら「くッ。美樹さや……」
 マ ミ(ほむらに向かって小声で)「暁美さん、今だけは二人の世界を邪魔しちゃ駄目よ。ここは美樹さんに譲ってあげてね」
 ほむら(マミに対して小声で)「わ、わかったわ」

【総合『萌えポイント』発表】
 ・佐倉杏子(+90)
 ・鹿目まどか(+100)
 ・巴マミ(+110)
 ・美樹さやか(+110)
 ・暁美ほむら(+130)


☆残り時間…2時間☆

 さやか「……」
 杏 子「な、なんだよ。そんなに見つめるんじゃねえよ。あたしのポイントを加算させるつもりか」
 さやか「ご、ごめん。そんなつもりはないの。ただ……」
 杏 子「ん?」
 さやか「あの映像を見てたらさぁ、あんたの勇気と優しさに改めて感謝したくなったのよ。でも……どうやって感謝の気持ちを表したらいいかわかんなくて」
 杏 子「気にすんなよ、さやか。もう過ぎた事じゃねえか。あんたが無事でいてくれただけで満足さ、あたしは」
 さやか「杏子……」キュン
 杏 子「よ、よせ。そんな……表情されたら……て、照れるじゃねえか……」キュンキュンキュン
 ほむら(このカップルも堕ちる速度にターボがかかってきたわね)
 マ ミ(杏子も美樹さんも危ないわね。このままだと最下位まで転落してしまうわ。でも、今の状態では暁美さんが最下位になってしまう。誰かが犠牲になる事はあまり気分の良いものではないわね)
 まどか(一人ぼっちになるのは嫌だなぁ。でも、ほむらちゃんたちの誰かが一人ぼっちにされちゃうのも嫌だし……。どうしたらいいんだろう)
 Qべえ「残り3時間をきったよ。みんな、もう少しだ。頑張って!」
 マ ミ「そうだ。ねえ、美樹さん」
 さやか「なんですか?」
 マ ミ「あなたが持ってきたDVDでも見ない? アニメ作品でも映画版なら2時間くらいつぶせるでしょう。せっかくだから最後くらい映画鑑賞でポイントの事は忘れましょう」
 さやか「そ、そうですね」(ほむらとの点差が10点になって最下位の危険性が出てきたし、これ以上のポイント加算は絶対に防がなきゃいけないもんね。DVDを見て時間をつぶすのも悪くないわ)

 Qべえ「ちょっと待って。DVDを見るものいいけど、まずは次の映像を流すよ。みんな、画面に注目してッ!」

 さやか『文武両道で才色兼備。それに加えてサイコな電波さん。どこまでキャラを立てれば気が済むんだ、あの転校生は。萌えか? そこが萌えなのかぁ?』
 仁 美『まどかさん。本当に暁美さんとは初対面ですの?』
 まどか『うん。常識的にはそうなんだけど……』
 さやか『なにそれ? 非常識なところだと心当たりがあるの?』
 まどか『あのね、昨夜あの子と夢の中で会った……ような気がするの』
 さやか『あっはははは。すげぇ、まどかまでキャラが立ち始めたよ』
 まどか『ひどいよぅ。真面目に悩んでるのに』
 さやか『もう決まりだ。それって前世の因果だよ。あんたたち、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんじゃないの?』
 仁 美『まどかさん。夢って、どんな夢でしたの?』
 まどか『それがさぁ、ハッキリと思い出せないんだ。変な夢だったって事は覚えてるんだけど……』
 仁 美『もしかしたら、本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわね』
 まどか『え?』
 仁 美『まどかさん自身は覚えていないつもりでも、深層心理には彼女の印象が残っていて、それが夢に出てきたのかもしれません』
 さやか『それ出来過ぎてない? どんな偶然よ?』
 仁 美『うまく言葉にはできないけれど……』
 思い出したように腕時計を見ながら仁美が慌てた口調で言う。
 仁 美『あらッ、もうこんな時間。ごめんなさい、お先に失礼しますわ』
 さやか『今日はピアノ? 日本舞踊? 茶道? 華道? 習字?』
 仁 美『琴のお稽古ですの。もうすぐ受験だっていうのにお稽古ばかりで滅入ってしまうわ』
 さやか『仁美も大変だねぇ。わたしは小市民に生まれて良かったよ』
 仁 美『それでは、また明日』
 さやか『じゃあね』
 まどか『バイバ~イ』
 さやか『さて、わたしたちも行こうか』
 まどか『うん』
 さやか『そうだ。ねえ、まどか。帰りにCD屋へ寄ってもいいかなぁ?』
 まどか『いいよ。上条君のお見舞いに持っていくCDを選ぶんでしょう』
 さやか『えへへ。まあね』


 さやか「仁美と恭介……幸せにカップルしてるかなぁ」
 まどか「さやかちゃん」
 杏 子(Qべえに向かって小声で)「おいッ。失恋したばかりのさやかにこんな映像を見せるなよ。落ち込んじまったじゃねえか」
 Qべえ「やれやれ。この程度で落ち込むなんて、美樹さやかは思ったよりも打たれ弱いんだなぁ」
 杏 子「そういう問題じゃねえだろう」
 さやか「大丈夫だよ、杏子。あたしは気にしていないから。ただ……あの二人の事が気になっちゃっただけ」
 杏 子「さやか……」
 ほむら「わたしみたいに元気だけが取り柄な子、恭介には不釣り合いだったんだよ。それが分かってたからさぁ、仁美が恭介に告白するって言った時、わたしは恭介に自分の気持ちを伝える勇気が出せなかったの」
 まどか「もっと自分に自信を持ちなよ、さやかちゃん」
 ほむら「あなたは自分自身の魅力を過小評価しすぎているわ、美樹さやか
 マ ミ「そうよ、美樹さん。あまり自分を卑下しないで」
 杏 子「ナルシストになれとは言わないけどさぁ、まどかの言う通り、もっと自分に自信を持てよ」
 さやか「マミさん、まどかほむら、杏子……」
 杏 子「恋人が欲しかったらさぁ、いつでもなってなるぜ」
 さやか「バ、バ、バカ言うじゃないわよ。あんた正気? 徹夜で頭のネジが緩んできたんじゃないの?」
 杏 子「アッハハハ。それだけ言えれば心配いらねえや」
 さやか「まったく、杏子ったら。……でも、ありがとう。心配してくれて」
 マ ミ「ねえ、Qべえ。美樹さんが持ってきてくれたDVDを再生してくれるかしら。せっかくですもの、みんなで見ましょうよ」
 まどか「そうですね」
 杏 子「まあ、たまにはアニメ映画の鑑賞も悪くないかもな」
 Qべえ「再生してもいいけれど……」
 杏 子「どうしたんだよ」
 Qべえ「誰かDVDをケースから取り出してくれないかなぁ? 僕の手だと肉球が邪魔して取り出せないんだ」
 杏 子「へぇ、お前にも肉球があるのか。気付かなかったよ。なんで今まで黙ってたんだ。ちょっと触らせろ」
 Qべえ「なにをするんだ、佐倉杏子。やめてくれないか」
 マ ミ「うふふふ、杏子は無類の肉球フェチなのよ。満足するまで触らせてあげてね。ディスクの再生は私がやるから心配しないで」
 Qべえ「DVDよりも僕の心配をしてほしいなぁ」

【総合『萌えポイント』発表】
 ・鹿目まどか(+100)
 ・巴マミ(+110)
 ・佐倉杏子(+120)
 ・美樹さやか(+120)
 ・暁美ほむら(+130)


☆残り時間…35分☆

 杏 子「さ、さやか~」
 さやか「ん? なぁに」
 杏 子「あんた、このアニメを見てさぁ、なんとも感じなかったのかよ」
 さやか「別になんとも感じないけど」
 マ ミ「わたしには……ちょっと刺激が強かったわ」
 まどか「うん。わたしたちが見るようなものではなかった……って思うなぁ」
 ほむら「あなたの神経を疑うわ。よほどゲテモノが好きなようね」
 さやか「なによ~、なんか不満でもあるの?」
 ほむら「ハッキリ言って」
 杏 子「あれは多感な乙女が見るようなもんじゃねえよ」
 Qべえ「三人入り乱れてのガチホモ描写、あれはキツかったよ。かなり強烈な場面だったね。直接の性交シーンがなかったのは不幸中の幸いだった」
 杏 子「そんなシーンがあったら18禁だろう」
 ほむら「思い出しただけでも気分が悪くなるわ」
 杏 子「なんか……憂鬱になってきた」
 ほむら「同感よ、佐倉杏子」
 まどか「で、でもさぁ、ああいうアニメって普段は見ないでしょう。だから新鮮な内容ではあったよね」
 ほむら「まどか、無理をしなくてもいいのよ」
 杏 子「そうそう。あんな趣味が悪いアニメを見せられたんだぜ、遠慮する事ないって」
 さやか「すみませんでしたね~、趣味が悪くって」
 マ ミ「まあまあ、美樹さん。感性の違いだから仕方がないわ。禁断の愛の形に目覚められるかどうか、それは人それぞれよ」
 さやか「……」

 Qべえ「それじゃ気分直しにLet's play video(レッツ・プレイ・ビデオ)。いよいよ最後の映像だよ。みんな、画面に注目してッ!」

 まどか『あの……マミさん』
 マ ミ『なぁに?』
 まどか『昨日の夜、願い事について考えてみたんですけど』
 マ ミ『決まりそうなの?』
 まどか『はい』
 マ ミ『どんな夢を叶えるつもり?』
 まどか『もしかしたら、マミさんには考え方が甘いって怒られるかも知れませんけど……。わたし、マミさんみたいにカッコよくて素敵な魔法少女になれたら、それだけで充分かもって思うんです』
 マ ミ『……』
 まどか『わたしは小さい頃から鈍くさくて、要領が悪くて、人に自慢できる才能もありませんでした。これから先、誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのが嫌でしょうがなかったんです。だから……マミさんと出会えて、誰かを助けるために戦ってるの見せてもらって、同じ事が自分にもできるかも知れないって言われた時は嬉しかったです』
 マ ミ『鹿目さん……』
 まどか『わたしの願い事は魔法少女になれれば叶っちゃうんです。こんな自分でも誰かの役に立ちながら胸を張って生きていける。それが一番の夢だったから』
 マ ミ『大変だよ。魔女と戦いは死の危険と隣り合わせだし、怪我もする、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうわよ』
 まどか『それでもマミさんは頑張っています。そんなマミさんに……わたしは憧れているんです』
 マ ミ『憧れるほどのものじゃないわよ、わたしなんて。怖いのを無理してカッコつけてるだけだし、落ち込んでも辛くても相談する相手がいないから一人ぼっちで泣いてばかり。いいものじゃないわ、魔法少女なんて』
 まどか『マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃありません。わたしも、さやかちゃんもいます。相談相手にはなれないかもしれませんが、それでもマミさんの事を応援しています』
 マ ミ『そうね。そうだったわね。わたしには鹿目さん、美樹さんという頼もしいお友達がいたのよね』
 まどか『はいッ』
 マ ミ『これからもわたしと一緒に戦ってくれる? 傍にいてくれる?』
 まどか『わたしなんかでよかったら、いつまでも』
 マ ミ『うふふふ。参ったなぁ。まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのに……。やっぱりダメな子だわ』
 まどか『そ、そんな事ありません。マミさんは素敵な先輩です』
 マ ミ『ありがとう、鹿目さん。でもね、せっかくなんだから願いごとは考えておいた方がいいわ。契約は契約なんだから、ものはついでと思っておきましょうよ。億万長者とか、素敵な彼氏とか、どんな事だっていいじゃないの』
 まどか『う~ん。そうですねぇ……。なにがいいかなぁ』
 マ ミ『すぐに考えろって言っても無理よね。それじゃあ、こうしましょう。この魔女をやっつけるまでに願いごとが決まらなかったら、その時はQべえに美味しいケーキを頼みましょう』
 まどか『ケーキ……ですか?』
 マ ミ『そう。最高に大きくて美味しい贅沢なお祝いのケーキ。魔女を倒したら、美樹さんも誘ってパーティをしましょう。私と鹿目さんの魔法少女コンビ結成記念のね』
 まどか『ハイッ(⌒-⌒)』


 ほむら(うッ。ま、まどかの女神スマイル……)キュン
 さやか「まどかも欲がないよねぇ。見知らぬ他人の役に立ちたくて魔法少女の契約を結ぼうとしたんでしょう?」
 まどか「う、うん」
 ほむら「寛容な心と自己犠牲の精神も結構だけれど、ソウルジェムの呪縛があった頃の魔法少女にとっては致命的な欠点だわ」
 まどか「ご、ごめん……」
 ほむら「でも、そんな優しいまどかが大好きよ」
 まどか「え?」
 ほむら「無垢で純真な心。あなたが「円環の女神」に選ばれたのも納得できるわ」
 まどか「うぇひひ。ほむらちゃんにそう言われると嬉しいなぁ」
 ほむら(まどか……)キュンキュンキュン
 Qべえ「おやおや、凄い勢いで胸キュンしているね。暁美ほむら、最下位はきみで決まりのようだ」
 ほむら「これだけまどかの笑顔が見られたのだから、最下位でも悔いはないわ」
 まどか「ほ、ほむらちゃん……」
 杏 子「それにしてもさぁ、契約の見返りがケーキとはマミらしい発想だな」
 マ ミ「そうかしら?」
 さやか「Qべえの用意するケーキって怪しくないですか?」
 Qべえ「ひどい事を言うね、美樹さやか
 杏 子「なんか変な材料を使ってそうだし、あたしならマミの手作りケーキを選ぶけどなぁ」
 さやか「そうよね」
 マ ミ「ありがとう、二人とも。嬉しい事を言ってくれるわね」
 まどか「あの時、わたしはマミさんの嬉しそうな顔を見られただけで幸せでした」
 マ ミ「か、鹿目さん」
 まどか「わたしには弟しかいないから、なんでも安心して相談できるマミさんが優しいお姉さんみたいに感じられたんです。マミさんと知り合えて、本当に嬉しかったです」
 マ ミ「……」
 まどか「怖くても辛くても笑顔で頑張るマミさん、わたしは心から尊敬していました。だから、嬉しそうな笑顔を見られただけで魔法少女になる見返りはあったんです」
 マ ミ「こんな……わたしを……尊敬してくれるなんて……。そんな事が……契約の……見返りでよかったなんて……。あ、あり……がとう……。か……鹿目……さ……ん。うわぁぁぁん」キュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュン
 さやか「うわッ。マミさん、凄い勢いで胸キュンしてる」
 ほむら「彼女は自分への「褒め言葉」に過剰な反応を示すのよ。それが可愛い後輩からの言葉であれば尚更だわ。緊張の糸が切れて耐えられなくなったんでしょう。最後の最後で奇跡の逆転劇がおこったようね」
 杏 子「泣きながら胸キュンするなんて……。なかなか器用な奴だな」
 さやか「変なところに感心するのね、あんたって」
 マ ミ「うわあぁぁぁぁん(≧Д≦)」キュンキュンキュン
 杏 子(ま、まだ胸キュンしてやがる……)

【総合『萌えポイント』最終結果発表】
 ・鹿目まどか(+100)
 ・佐倉杏子(+120)
 ・美樹さやか(+120)
 ・暁美ほむら(+170)
 ・巴マミ(+230)


☆ゲーム終了☆

 Qべえ「みんな、お疲れ様。24時間のゲームは終了だ」
 さやか「あ~あ、長い一日だったわ」
 まどか「そうだね」
 ほむら「まどかの笑顔を近くで何度も見られたのだから、有意義な一日だったわ」
 杏 子「アッハハハ。ほむららしい感想だな」
 まどか「ほむらちゃんに喜んでもらえるなら、いくらでも笑顔を見せちゃうよ」
 さやか「そう言う杏子はどうだったの?」
 杏 子「あたし? そうだなぁ。退屈しなかったって言えば嘘になるけど、五人揃って土日を過ごすのも悪くない経験だったよ。それなりに楽しかったってとこだ」
 Qべえ「さて、総合ポイントの発表だけど……改めて発表する必要はないよね。そこの得点表の通りだ。優勝は鹿目まどか」
 まどか「ほ、ほんとに優勝しちゃったんだ。なんか……自分でも信じられないや」
 Qべえ「きみの優勝は間違いない事実だ。おめでとう、まどか
 ほむら「おめでとう、まどか
 さやか「おめでと~、まどか
 杏 子「おめでとう、まどか
 マ ミ「おめでとう、鹿目さん」
 Qべえ「そして、罰ゲームを受けるのは……。言うまでもなく、巴マミだ」
 マ ミ「……」
 Qべえ「こんな結果になってしまい残念だがルールはルールだ、あきらめてくれ。きみは一ヶ月間、鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむら、佐倉杏子の四人と交流する事が禁じられる。この会議室を出てからね」
 マ ミ「わかっているわ。ルールは守る。みんな、また会う日まで元気でね」
 さやか「マ、マミさん……」
 杏 子「マミ……」
 ほむら「……」
 まどか「……」
 Qべえ「次は優勝特典の授与だ。鹿目まどか、君の願いはなんだい」
 まどか「わたしの願いは……」
 さやか「……」
 ほむら「……」
 杏 子「……」
 マ ミ「……」
 Qべえ「きみの願いは?」
 まどか「わたしの願い。それはマミさんの罰ゲームを取り消す事」
 Qべえ「え?」
 杏 子「マジかよ」
 マ ミ「か、鹿目さん……」
 まどか「簡単な事でしょう。さあ、わたしの願いを叶えて。Qべえ」
 Qべえ「まどかの願いを叶えてあげる事は簡単だ。でも、この願いが叶えられた場合、苦労して終わらせたゲーム自体が無意味なものになってしまうんだよ。誰も損をしないが誰も得をしない。まったくもってナンセンスじゃないか。きみたちは願いを叶える為、または想い人と相思相愛になりたくてゲームへ参加したんだろう。罰ゲームの無効化を願いにしてしまっては今までの24時間が無駄になるじゃないか」
 マ ミ「その通りよ、鹿目さん。わたしの事は気にせず本当に叶えて欲しい願い事を言いなさい」
 まどか「いいえ、これがわたしの願い事です。心の底からの願い事なんです」
 マ ミ「か、鹿目さん」
 Qべえ「まあ、きみが望むのであれば「罰ゲームの取り消し」くらいは簡単な事だけど……。本当にそれでいいのかい? 鹿目まどか
 まどか「うん」
 さやか「……」
 ほむら「……」
 杏 子「……」
 まどか「来月のお誕生日、マミさんにも祝ってほしいんです。美味しいケーキも食べたいし、この中の誰が欠けても嫌なんです」
 マ ミ「か、鹿目……さん……。ヒック。あり……がとう……。ヒック。わたし……なんか……の為に……。ヒック」
 まどか「泣かないで下さい、マミさん。本当は……わたしがビリになると思ってたんです。だから、願い事なんて考えていませんでした」
 Qべえ「それじゃ、どうしてゲームへの参加を希望したんだい? 一ヶ月とはいえ、最下位になれば孤独な日々を強いられる事になるんだよ。これは事前に説明した筈だ」
 まどか「お泊まり会に参加する……みたいな感じかなぁ。いろいろ制限されるのはわかっていたけど、みんなと一緒に特殊な環境で過ごす一日を経験してみたかったんだ」
 さやか「あははは。そういう考え、まどからしいや」
 杏 子「いいじゃねえか、そういう考え方。あたしは嫌いじゃないよ」
 さやか「まあね。実を言えば、あたしも同じようなノリだったんだ。ビリになるとは最初から思っていなかったから、優勝できればラッキーって感じで参加を決めたわけ」
 杏 子「意見が合うな。あたしもだよ」
 Qべえ「大事な事だから確認をとるよ。鹿目まどかの願いは「巴マミへの罰ゲームを取り消す事」で間違いないね?」
 まどか「うん。間違いないよ」
 Qべえ「ゲーム参加者の四人にも確認をとるよ。まどかの願いを叶える事に反対する人はいるかな?」
 さやか「まどかが考えた末に出した答えなら、わたしは反対しない」
 杏 子「あたしもだ」
 ほむら「わたしもよ」
 マ ミ「鹿目さんの好意、ヒック、ありがたく受けさせて、ヒック、もうらうわ」
 Qべえ「わかった。それじゃ願いを叶えよう」


☆ゲーム終了後☆

 マ ミ「ゴミ捨て、使ったティーカップの洗浄と片付け、テレビの消灯、テーブルと床の掃除。全部OKね」
 さやか「はい」
 まどか「忘れ物もないみたいだし……。帰りましょうか」
 杏 子「帰る前にさぁ、ファミレスへ寄って昼飯を食おうぜ。腹がへって我慢できねえんだよ」
 マ ミ「たまには五人で外食するのも悪くないわね。美樹さん、鹿目さん、暁美さん、予定がなければ近くの『ロイヤル・コスト』で食事をしていかない? わたしが御馳走するわよ」
 さやか「別に予定はありませんが……」
 まどか「御馳走になるのは申し訳ないですよ」
 ほむら「一番安いランチセットでも五人分なら五千円以上するわ。あなただって中学生でしょう、そんな金銭的負担をかけるわけにはいかないわ」
 マ ミ「優待食事券があるから心配無用よ」
 杏 子「なんで優待食事券なんか持ってんだ?」
 マ ミ「わたしの叔母は「ロイヤル・コスト」の大株主なのよ。それで年に一回、株主優待で先方から十万円分の優待食事券が届くの」
 杏 子「あんたの親戚が大株主とは知らなかったなぁ。でも、その優待券がなんでマミの手許にあるんだよ」
 マ ミ「叔母には子供がいないし、わたしの両親とも仲がよかったから、少しでも食費の足しになればって毎年送ってくれるの」
 さやか「そう言う事なら……マミさんの好意に甘えちゃう?」
 まどか「う、うん。そうだね」
 マ ミ「暁美さんはどうかしら?」
 ほむら「金銭的負担がかからないのであれば、御厚意に甘えさせて頂くわ」
 マ ミ「話は決まったわね。さあ、それじゃ行きましょう」
 さやか「は~い」
 まどか「御馳走になります」
 Qべえ「……」
 ほむら「どうしたの、佐倉杏子。行くわよ」
 杏 子「Qべえ」
 Qべえ「なんだい?」
 杏 子「お前も一緒に来いよ」
 ほむら「な、なにを言うの。あなた……正気?」
 杏 子「あたしたちだけワイワイ騒ぎながら飯を食ってるのにさぁ、こいつだけ置き去りってのは可哀相じゃねえか。どうせ一般人には姿が見えねえんだろう、スープくらい飲ませてやろうぜ」
 ほむら「こんなケダモノに同情する事ないわ」
 杏 子「確かに同情の余地はない。まどかが『円環の女神』の能力(ちから)でソウルジェムの永久浄化を実現してくれなかったら、あたしたちはゾンビのままだったし、いずれ魔女になっちまう運命だった。それを考えれば殺しても殺し足りないヤツだ」
 ほむら「それなら……」
 杏 子「だけどさぁ、こいつにも「宇宙の寿命を延ばす」っていう役目があったわけだろう。極端な考え方かもしれないけど、こいつだって宇宙の寿命っていう概念の為に働いてる。そう考えると一方的に憎めなくなってきたんだ」
 ほむら「巴マミのマンションで同居しているうちに情(じょう)がうつったの?」
 杏 子「そうかもな」
 ほむら「……」
 さやか「杏子ぉ、ほむらぁ、どうしたの~」
 Qべえ「みんなが待ってるよ。早く行ったらどうだい?」
 ほむら「……」
 杏 子「……」
 ほむら「あなたも変わったわね。美樹さやかの影響かしら」
 杏 子「さぁてね、どうだろう」
 ほむら「好きなようになさい。わたしは先に行ってるわ」
 杏 子「わかった。すぐに追いかけるよ」
 ほむら「インキュベーター。佐倉杏子の優しさをアダで返すような事があれば……容赦しないわよ」
 Qべえ「……」
 杏 子「どうだい? あたしたちと一緒に来ないか?」
 Qべえ「杏子……」
 杏 子「遠慮するなよ、Qべえ。一人ぼっちになるのは……寂しいだろ?」


The End


【あとがき】
 原作アニメの抜粋シーンを文中に組み込んでストーリーと絡ませる方法は思った以上に苦労しましたが、人間関係を扱った会話と原作アニメをネタにした会話の二段構えで物語を作るという初めての経験は楽しくもありました。
 前掲「魔女の使いやあらへんで - 絶対に笑ってはいけない魔法少女 -」の完成度には及びませんが、閉ざされた空間で展開される喜劇を描く事によって発想の柔軟性が多少なりとも得られたと思っています。
 それにしても、奇抜なシチュエーションを設定しながら原作ネタを巧みに盛り込んだコメディで読み応えある作品に仕上げる九十九氏の筆力&画力には感服されられました。こういう創作センスに自分も目覚めたいです……。
 自画自賛するようで恥ずかしいのですが、基本的に会話だけで進行(=成立)する構造は気に入っており、その点も含めて過去最高の異色作と言えるかもしれません。
 纏まりのない「自作解説」もどきとなりましたが、貴重な時間を費やして最後まで目を通して下さった皆様には感謝の意を込めて厚く御礼申し上げます。
 本作を書くにあたり、「魔法少女まどか☆マギカ WIKI」より劇中会話のテキスト情報を頂き、「(。゚ω゚) 。.顔文字倉庫.。(゚∀゚*) 」より一部の顔文字を拝借しました。管理様or運営者様に記して感謝致します。

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  絶対に胸キュンしてはいけない会議室(中編)

<中間結果(省略シーンまでの累計ポイント)>

 妄想モードで暴走した暁美ほむらが最下位トップになり、鹿目まどか&美樹さやかコンビとの差を広げた。さらに10ポイントの加算もあり、10時間経過目前の段階で独走状態をキープ。
 まどかさやかの二人も僅かだがポイントを重ね、萌えポイントの累計が「+100」になろうとしている。
 佐倉杏子は失態による加算ラッシュに懲りたのか、感情を抑える努力でポイント加算を防いだ。
 巴マミは相変わらずポイントが「0」のまま。

 ・巴マミ(0)
 ・佐倉杏子(+50)
 ・鹿目まどか(+80)
 ・美樹さやか(+80)
 ・暁美ほむら(+120)


☆残り時間…15時間☆

 ほむら(う、嘘でしょう……。このわたしが最下位独走だなんて……)
 杏 子「どうした、ほむら。深刻な顔して」
 さやか「ぶっちぎりトップで最下位をキープしてるんだから、深刻になるのも当然よね」
 ほむら「黙りなさい。美樹さやか
 さやか「お~、怖い」
 Qべえ「暁美ほむらが萌え上戸(じょうご)とは知らなかったよ。まどかのちょっとした言動にも敏感な反応を見せるなんて……。ここでも君は極めつけのイレギュラーだね、どういう行動に出るか僕にも予想できない」
 ほむら「ここが閉ざされた場所である事に感謝しなさい。もしも屋外だったら、その小さな口に爆弾を詰め込んで殺してやるところよ。命拾いしたわね」
 Qべえ「おやおや、今にも僕を殺しかねない表情だね。冷静な君らしからぬ言葉だ。もう少し肩の力を抜いたらどうだい?」
 まどか「そ、そうだよ。もっと肩の力を抜いて。ねッ」
 杏 子「ぼっちになっても心配するなよ。あたしたちは友達だろう。こっちから会いに行ってやるよ。一人ぼっちは……寂しいもんな」
 さやか「おッ、杏子の決めゼリフだ」
 まどか「さやかちゃんを助け出した時の名ゼリフだね」
 ほむら「別に一人でも寂しくないわ。同情は無用よ」
 杏 子「チェッ。人が心配してるのに」
 ほむら「余計なお世話よ」
 杏 子「なんだと。ほむら、もう一回言ってみろ」
 ほむら「おせっかいは無用だと言ったの」
 杏 子「てめぇ~(`Δ´)」
 マ ミ「はいはい、そこまで。友達同士で争っている場合ではないでしょう」
 ほむら「……」
 杏 子「マミ……」
 マ ミ「暁美さん、少し言葉が過ぎるわよ。あなたを心配している友達がいるという事を忘れないで。杏子、あなたは気が短すぎよ。もう少し冷静になる事を覚えなさい」
 ほむら「……。悪かったわ、佐倉杏子。あなたの親切心を無にしてしまって」
 杏 子「……。あたしこそ大声出して悪かった。ごめん」
 さやか「さすがマミさん。あの二人を簡単になだめちゃった」
 まどか「すご~い」キュン
 Qべえ(マミのおかげで一触即発の危機は回避できたようだ。しかし、まどかは胸キュンしすぎだよ。このままだと暁美ほむらを追い抜くのは時間の問題かも知れないなぁ)
 マ ミ「ねえ、Qべえ。のどが渇いたわ。紅茶のサービスはないの?」
 Qべえ「銘柄にこだわらなければ、そこの引き出しにTパックが入っているよ。お湯はポットを使って」
 マ ミ「引き出しの中ね。ええと……」

 Qべえ「マミ、ちょっと待って。その前に次の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」

 杏 子『ちょっとちょっと、何やってんのさ。ありゃ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん』
 さやか『使い魔でもほっといたら誰かが殺されるのよ。わかってるの?』
 杏 子『わかってねぇのはそっちだ、バカ。4、5人ばかり食って魔女になるまで待てっての。そうすりゃグリーフシードを孕むんだから。あんた、卵を産む前の鶏シメてどうすんのさ』
 さやか『使い魔に襲われる人たちを見殺しにするって言うの?』
 杏 子『あんたさぁ、何か根本(こんぽん)から勘違いしてんじゃない? 食物連鎖って知ってる? 学校で習ったよねぇ』
 さやか『食物連鎖? なによ、それ。腸詰めウィンナーや蓮根(れんこん)の事?』
 まどか『ち、違うよ、さやかちゃん。食物連鎖っていうのは、強い物が弱い物を食べて生存する生物種間の関係を表す概念の事を言うんだよ』
 さやか『生物種間? 概念? なにそれ』
 杏 子『あんたバカぁ? そっちのチビッ子が丁寧に説明してくれたのに理解できねえのかよ』
 さやか『うぐッ』
 杏 子『つまりだ。弱い人間を使い魔や魔女が食う。その使い魔や魔女をあたしたちが食う。そういう事だよ。これが当たり前のルールでしょ、そういう強さの順番なんだから』
 さやか『あんたは……』
 杏 子『なんだよ』
 さやか『あんたはグリーフシードが欲しいから、わざと使い魔を見逃してるっていうの?』
 杏 子『まさかとは思うけどさぁ。人助けだの正義だの、その手のおチャラケた冗談かますために魔法少女になる契約したわけじゃないよね?』
 さやか『だったら、なんだって言うのよ!』
 杏 子『勘弁してよ、そんな正義のヒロイン気取った態度』
 さやか『黙れ』
 杏 子『ちょっとさ、人に剣を向けるのやめてくれない? まったく、遊び半分で首を突っ込まれるのってホントにムカつくわ。魔法少女のイロハも知らないくせに口だけは一丁前(いっちょまえ)だね、あんた』
 さやか『あんたみたいな奴がいるから……マミさんは……。マミさんは……』
 杏 子『こいつ(Qべえ)から聞いたんだけどさぁ、マミの奴、魔女に食わて重傷を負ったそうじゃねえか。ハッ。魔女の口に首を突っ込んで大怪我する間抜けが師匠なら、その弟子が遊び半分で魔女狩りに首を突っ込む間抜けなのも仕方ないよねぇ。アッハハハハハ』
 さやか『黙れぇぇぇぇ! あんたを倒して、わたしは今の使い魔を追いかける』
 杏 子『ウゼェ。超ウゼ~んだよ。言って聞かせてわからねえバカとなりゃあ、少し痛いめを見せてやんなきゃねッ!』


 杏 子「懐かしいなぁ。これ、あたしたちの馴初めじゃねえか」
 さやか「な、馴初めって……。変な言い方しないでよ。(つぶやくように)恥ずかしいじゃないキュン
 杏 子「ヘッ。照れるな、照れるな」
 まどか「この時は本当に心配したよ。さやかちゃんも杏子ちゃんも相手を殺しかねない勢いだったから」
 さやか「勢いだけじゃない。本当に杏子を殺すつもりだったよ、わたしは」
 杏 子「……」
 さやか「でもね、夕暮れの教会で杏子への誤解が解けた時、あたし、正直ホッとした。あんたにも人を思いやる心があったんだってわかったから」
 杏 子「さやか
 さやか「家族を思いやる優しさが家族を奪ったんだったら、自暴自棄になるのも当然だよね。あの時からあんたを見る目が変わったよ。本当は誰よりも優しい心を持ってる、それを隠して高慢な利己主義者を演じてるんだって」
 杏 子「よ、よせよ。あたしは昔っから高慢な利己主義者だったんだ。今も変わんねえよ」
 さやか「そんな事ない。杏子は不器用だけど素直な娘(こ)だよ」
 杏 子「さ、さやか……」キュン
 さやか「困惑した顔も可愛いじゃない。杏子ちゃん❤」
 杏 子「やめろ~。そんな目であたしを見るなぁ(>o<)」キュンキュンキュン
 ほむら(お手柄よ、美樹さやか。その調子で佐倉杏子の萌えポイントをアップさせなさい)
 マ ミ(つぶやくような声で)「……ひどいわ
 まどか「え? なにか言いましたか? マミさん」
 マ ミ「ひどいわ、杏子」
 杏 子「なんだよ、なにがひどいんだよ。マミ」
 マ ミ「わたしのいない所で……あんな悪口を言うなんて……。どうせ、首をもがれて魔女に食べられてしまえばよかったと本心では思っていたんでしょう」
 杏 子「そ、そんな事ねえよ。考えすぎだって」
 マ ミ「Qべえから聞いたわよ、もしもわたしが死んでいたら、この見滝原市を自分の縄張りにするつもりだったんですってね」
 杏 子「この耳長野郎、あの言葉をマミに密告(チク)りやがったな」
 マ ミ「ワルプルギスの夜との戦いに力を貸してくれるっていうから、わたしは食事と住まいを提供したのよ。それなのに……ひどいわ。わたしの事、あんな風に思っていたのね。境遇が似た者同士、お互いの気持ちは分かりあえると思っていたのに……」
 杏 子「ご、ご、誤解だよ。あれはさやかを挑発しようとして口から出た言葉なんだ。本当はマミの事を尊敬してたんだよ」
 マ ミ「嘘ッ。いくらわたしでも、そんな言葉に騙されないわ」
 杏 子「本当だよ。受験準備で忙しい毎日を過ごしながら、他人の為に魔女狩りパトロールをしてるだろ。マミこそ魔法少女のカガミだって思ってたんだ」
 マ ミ「……」
 杏 子「その目は疑ってる目だな。いいよ、それならまどかに聞いてみろよ」
 マ ミ「鹿目さんに?」
 杏 子「ああ。今の話はまどかにしたんだ。覚えてるだろ、まどか」(そっと、ウィンクで合図を送る)
 まどか「うん、覚えてるよ。自分の事だけでも大変なのに日課のパトロールを欠かさないマミさん、わたしも尊敬してたんです」
 さやか「そうですよ。自分の受験勉強よりも市民の安全を優先させるマミさんこそ魔法少女のカガミです」
 マ ミ「鹿目さん、美樹さん……」キュンキュンキュンキュンキュンキュン
 杏 子「うわッ。なんだ、6回も胸キュンしやがった」
 さやか「ちょっ……マミさん。どうしたんですか」
 ほむら(やはり「褒め言葉」に反応したわね。一度に6回も胸キュンするなんて予想以上だわ。メンタル面が不安定な彼女は「胸キュンする」か「胸キュンしない」の二択が極端ね。心を刺激するような言葉には過剰な反応を見せる。まだまだ最下位逆転の可能性はあり得るわ)

【総合『萌えポイント』発表】
 ・巴マミ(+60)
 ・鹿目まどか(+90)
 ・佐倉杏子(+90)
 ・美樹さやか(+90)
 ・暁美ほむら(+120)


☆残り時間…14時間☆

 さやか「マミさん。紅茶、紅茶。溢れてますよ」
 マ ミ「え? あら、いやだ」
 杏 子「ボケっとしてんなよ。まどか、そこの布巾を取ってくれ」
 まどか「うん」
 マ ミ「大丈夫よ、鹿目さん。わたしが掃除するわ」
 まどか「遠慮しないで下さい。わたしがやりますから(⌒-⌒)」
 マ ミ「か、鹿目さん……」キュン
 杏 子「うわッ。また胸キュンしやがった」
 ほむら「一度堕ちると早いわね。まるで坂を転がる石のようだわ」
 さやか「ほむらの言う通りね。この1時間でマミさんのポイントが信じられないくらい加算されてる」
 Qべえ「マミはまどかの笑顔に弱いからね。女神の微笑みは威力絶大だよ」
 まどか「きゅ、Qべえったら、変な事を言わないでよ」
 マ ミ「うふふふ。でも、その通りよ。鹿目さんの笑顔は何物にも代えがたい魅力があるわ」
 まどか「そ、そんな……。わたしはマミさんの笑顔が見られれば、それだけ充分に幸せなんです」キュン
 マ ミ「あらあら、照れた顔も可愛いわね」キュン
 杏 子「おい、あんたたち。お互いにポイントを増やしてどうすんだよ」
 ほむら(まどかのポイントが増えていくのは不本意だけれど、巴マミのポイントが確実に増えていく事はありがたいわ)

 Qべえ「盛り上がっているところ悪いね。次の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」

 さやか『この曲、ベートーベンの「皇帝」だっけ? 荘厳な感じがする曲だよね』
 上 條『これは「幻想交響曲」の第4楽章だよ。作曲者はエクトル・ベルリオーズ』
 さやか『そ、そうなんだ。あたし、あんまりクラシックに詳しくないからさぁ、たまに曲名とか言い当てると驚かれるんだよね。意外すぎて尊敬されたりもするんだ』
 上 條『ベートーベンの「皇帝」は「ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 作品73」が正しい曲名だよ。詳しい経緯はわかっていないけど、「皇帝」は彼がつけた曲名じゃないんだ」
 さやか『そうなんだ。恭介は物知りだね』
 上 條『そんな事はないよ』
 さやか『わたし、恭介に感謝している。恭介がクラシック音楽の面白さを教えてくれなかったら、音楽を芸術として鑑賞しようなんて気には一生なれなかったかも知れない』
 上 條『さやかはさぁ……』
 さやか『なーに?』
 上 條『さやかは、僕を苛めてるのかい?』
 さやか『え?』
 上 條『なんで僕にクラシック音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?』
 さやか『違うわ。嫌がらせなんかじゃない。恭介はクラシックが好きだから喜ぶと思って……』
 上 條『もう聴きたくなんかないんだよ! クラシックは!』
 さやか『きょ、恭介』
 上 條『演奏ができない体になってしまい、弾きたい気持ちを我慢しながら毎日を過ごしている。そんな僕にとってクラシックを聴かされる事は拷問なんだ』
 さやか『ご、ごめんなさい』
 上 條『この右腕はもう動かないんだ。痛みさえ感じない。主治医からは諦めろって言われたよ。今の医療技術では治せないってね』
 さやか『大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか…』
 上 條『僕の右腕は二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない』
 さやか『あるよ』
 上 條『え?』
 さやか『奇跡も…魔法も…あるんだよッ』
 上 條『そんな子供だましな慰めは聞きたくないよ。さやか、君はこの曲のタイトルを知っているかい?』
 さやか『「幻想交響曲」でしょう」
 上 條『その第4楽章は「断頭台への行進」って言うんだよ』
 さやか『断頭台……』
 上 條『このCDは輸入盤みたいだけど、タイトルや曲名がさやかに読めるのかい?』
 さやか『ううん、読めない。でも、発売直後に店頭から回収されたプレミア盤のクラシック音楽集って言われたから……』
 上 條『誰に言われたか知らないけど、これは悪魔崇拝や死を連想させる作品を集めた「Festival de la musique du diable」っていうCDなんだよ。選曲や発売意図に宗教的な問題があるからって回収されたんだ。プレミア物でも縁起の悪いプレミア物さ。選曲を担当した音楽家は事故で亡くなり、このCDを発売したメーカーの社長は発狂したって言われてる』
 さやか『悪魔崇拝……。死……。発狂……』
 上 條『さやかは僕に絶望を届けにきたのかい? こんな不吉なCDを持ってきて』
 さやか『そ、そんな言い方ってないでしょう。内容も確かめずにCDを持ってきた事は謝るわ。でも、今の言い方……あんまりよ……』
 上 條『なにが「あんまりよ」だ。だいたい……』
 さやか『それなら、どうして「クラシックCDなんか聴きたくないってハッキリ言ってくれなかったの? 嫌なら嫌って言ってよ。わたしだって魔法使いじゃないんだから、恭介の思ってる事なんてわからないよ』
 上 條『……』
 さやか『この前だって「この人の演奏は本当に凄いんだ」なんて言ってたじゃない。あんな事を言われたら、誰だってクラシックへの興味が薄れているなんて思わないわ』
 上 條『あれは、さやかの好意を無駄にしたくなかったから……』
 さやか『いいよ。言い訳は聞きたくない』
 上 條『さ、さやか』
 さやか『さよなら、恭介。もうCDは買ってこないよ。今までに持ってきたCDは明日にでも持って帰るね』
 上 條『待って、さやか。僕が悪かったよ。ついカッとなって言い過ぎたんだ』
 さやか『それじゃ、また明日』
 上 條『さやかぁぁぁぁ』


 杏 子「か、上條の野郎ぉ。さやかの行為に対してなんて事を言いやがったんだ(`‐´)」
 まどか「まあまあ、杏子ちゃん。落ち着いて」
 杏 子「このゲームが終わったら、あの坊やの手足を二度と使えないように魔法で痛めつけやる」
 Qべえ「なんとも過激な発言だね。君なら本当にやりかねないなぁ」
 ほむら「どうせなら自慢の槍で手足を切断してしまったら? その方が効果的じゃないかしら」
 マ ミ「杏子も暁美さんも物騒な話はやめなさい。美樹さんの前よ」
 まどか「そ、そうだよ。ちょっと過激すぎるよ」
 さやか「杏子もほむらも手出し無用よ」
 ほむら「え?」
 杏 子「どういう事だ、おいッ」
 さやか「もう復讐は済ませたわ」
 杏 子「はあ? 復讐は済ませただと」
 ほむら「詳しく聞かせてくれる? 美樹さやか
 さやか「わたしが魔法少女の契約をする直前、『治らない腕だったら斬り落としちゃっても平気だよね。痛み? 心配いらないわ。その気になれば痛みなんて感じないわよ。痛みを感じる前にショック死するでしょうから』って脅かしてやったの。その時の恭介の顔……。思い出してもゾクゾクするわぁ」
 マ ミ「美樹さん、あなた……」
 杏 子「マジかよ」
 まどか「嘘……。嘘でしょう。さやかちゃん」
 Qべえ「君たちは何を驚いているんだい。嘘に決まっているだろう」
 杏 子「な、なんだと……」
 まどか「嘘だったの?」
 さやか「いや~、杏子の殺気が激しかったから先手を打って……」
 杏 子「バカ野郎」
 さやか「きょ、杏子」
 杏 子「今のは冗談の限度を超えてるぞ。あたしやほむらはともかく、マミやまどかまで心配させるんじゃねえ」
 さやか「なによッ。こうなった原因はあんたでしょう」
 杏 子「んだとぉ?」
 さやか「あんたが恭介の手足を使えなくするような事を言うから、わたしは……」
 杏 子「あ、あれは勢いと言うか、なんと言うか、つい口が滑ったんだよ」
 さやか「勢いだからって許される発言じゃないわ。あんたの言葉は!」
 Qべえ「二人の言い分はわかった。それなら喧嘩両成敗って事にしたらどうだい。杏子はさやかに謝り、さやかはみんなに謝る。これでいいじゃないか」
 まどか(マミに向かって小声で)「Qべえが仲裁なんて珍しいですね。いつもは「けしかける」役目なのに」
 マ ミ(まどかに対して小声で)「そうね。どういう風の吹き回しかしら」
 Qべえ「聞こえてるよ、二人とも。今の会話からすると、まるで僕が非道な極悪人みたいに聞こえるじゃないか」
 マ ミ「あら、その通りでしょう」
 ほむら「まさか「違う」なんて言うんじゃないでしょうね。そんな戯言を口にしてごらんなさい。口八丁の舌をサバイバルナイフで切り落とすわよ」
 Qべえ「佐倉杏子と似たような事を言うね。君と杏子は似た者同士だと思っていたが、この考えは間違ってなかったよ」

【総合『萌えポイント』発表】
 ・巴マミ(+80)
 ・佐倉杏子(+90)
 ・美樹さやか(+90)
 ・鹿目まどか(+100)
 ・暁美ほむら(+120)


<中間結果(省略シーンまでの累計ポイント)>

 半日が経過した時点でも、最下位は暁美ほむらのまま替わりない。
 僅差で鹿目まどかが続き、美樹さやかと佐倉杏子もほむらとの差を確実に縮めている。
 永らくポイント「0」をキープしていた巴マミは加算ラッシュによって萌えポイントが「+80」まで上昇。さや杏コンビとの点数差が10点となった。
 10時間経過以後は誰にも点数の加算がなく、順位も変わりない。

 ・巴マミ(+80)
 ・佐倉杏子(+90)
 ・美樹さやか(+90)
 ・鹿目まどか(+100)
 ・暁美ほむら(+120)


☆残り時間…10時間☆

 マ ミ「やっと半日が過ぎたわね」
 ほむら「ええ。正確には14時間だけれど」
 さやか「やる事がないと1日って長いですね」
 杏 子「メシの量も少ねえし、なおさら時間が経つのを遅く感じるなぁ」
 まどか「お菓子ならあるよ。『ポッキン』でよかったら食べる?」
 杏 子「おッ、気がきくじゃねえか。一箱頂くよ。ありがと、まどか
 さやか「食べ物って言えばさぁ、あんた、マミさんの家に居候してるんでしょう。いつもマミさんの手料理を食べてるわけ?」
 杏 子「ああ」
 さやか「手伝ったりしないの?」
 杏 子「うん。あたしも「土日くらいは食事当番をさせてくれ」って言うんだけどさぁ、いつもマミに断られるんだ」
 まどか「マミさん、杏子ちゃんの申し出を受けないんですか?」
 マ ミ「だって杏子ったら……」
 さやか「わかった。レトルトやインスタント食品ばかりで料理をつくらないんですね」
 まどか「あッ、それはあり得そう」
 ほむら「市販のお菓子をアレンジした創作料理も三度三度の食事に出していそうね」
 杏 子「ギクッ」
 マ ミ「杏子の好意は嬉しかったんだけど、栄養面に問題があったのよ。朝食だけならビスケットやクッキーが主食でも構わないけれど、それが三食続くとねぇ……。インスタント食品にしても、三食カレー、三食牛丼、三食ラーメンは健康によくないわ」
 さやか「なんか……すごい食生活」
 まどか「そ、そのメニューは体に悪いですね」
 ほむら「巴マミが食事当番をさせない理由も納得できるわ」
 Qべえ「僕は杏子の料理が好きだったなぁ。ホットチョコレートで味付けしたマシュマロや『うんまい棒』のお茶漬けは美味しかった。あれならB級グルメとして通用すると思うよ」
 杏 子「う~ん。Qべえに褒められても嬉しくないが……悪い気はしない」
 ほむら「意外ね。口に入りさえすれば味なんて二の次だと思っていたわ」
 Qべえ「それは言いすぎだよ、ほむら。僕にだって味覚はあるんだから」
 ほむら「それなら爆弾でも食べてみる? 火薬の味がして美味しいわよ」
 Qべえ「笑えない冗談だね」
 ほむら「冗談? わたしは本気よ」
 杏 子「こいつ、目がマジだぜ」
 さやか「ほむらの場合、本当にやりかねないわね」

 Qべえ「おっと、物騒な話はここまで。次の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」

 ほむら『分かってるの? 貴女は無関係な一般人を危険に巻き込んでいる』
 マ ミ『彼女たちはQべえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ』
 ほむら『貴女は二人を魔法少女にさせようと誘導している』
 マ ミ『誘導しているわけではないわ。魔法少女が危険と隣り合わせである事を実地見学で示しているだけよ。それすら面白くないわけ?』
 ほむら『ええ。貴女に憧れた鹿目まどかが魔法少女の契約を決意したら取り返しがつかなくなる。だから、彼女に関わるのはやめなさい』
 マ ミ『あなたも気づいていたのね。彼女の素質に』
 ほむら『当然よ。わたしはあなた以上に鹿目まどかの事を知っている。あの子の力は計り知れないわ。宇宙の因果律さえ改変できる可能性を秘めているのよ』
 マ ミ『ふぅん……。自分より強い力がある魔法少女は不要ってわけね? いじめられっ子の発想だわ』
 ほむら『貴女はなにもわかっていないようね。鹿目まどかが持っている魔力は大きすぎるのよ。万が一にも魔女化したら、地球どころか銀河系さえ消滅してしまうわ』
 マ ミ『その根拠は? 鹿目さんが銀河系さえ消滅させる魔力を持っている根拠はあるの?』
 ほむら『貴女に言っても理解できないでしょうね。真実を知らない貴女には』
 マ ミ『自分の言い分を聞かせようとしながら、相手の質問は受け付けない。ずいぶんと身勝手な話ね。これ以上、貴女に付き合っていられないわ。失礼するわよ』
 ほむら『どうしても鹿目まどかを魔法少女にしたいのね。仕方がないわ。貴女とは戦いたくないけれど、力づくでも言う事を聞いてもらうわよ』
 マ ミ『いつかは魔法少女同士の衝突があると覚悟していたけれど、その理由が唯一の友達を失いたくない孤独者の嫉妬とは思わなかったわ』
 ほむら『心理的な揺さぶりのつもりかしら? 友達のいない貴女が言っても効果はないわよ』
 マ ミ『な、なんですってぇ』
 ほむら『どうやら図星のようね。後輩を優しく指導する先輩を夢見る空想癖のある女には負ける気がしないわ。さあ、どこからでもきなさい』
 マ ミ『今の暴言は聞き逃せないわね。先輩に対する口のきき方、わたしが教えてあげるわ』
 マミはマスケット銃の銃口をほむらに向ける。
 マ ミ『怪我させるつもりはないけど、あなたの態度次第では五体無事に帰してあげる事も保障しかねるわよ』
 ほむら『愚か者が相手なら、わたしは手段を選ばない』


 杏 子「なんか……。あたしらの時よりも殺伐とした空気だな」
 さやか「マミさんもほむらも殺気バリバリね」
 Qべえ「この時は僕が仲裁に入って事なきを得たんだ。仮に二人が戦っていたら、どちらも無事では済まなかっただろうね」
 まどか「ご、ごめんなさい……。わたしのせいでマミさんにもほむらちゃんにも迷惑かけちゃって……」
 ほむら「まどかが謝る事はないわ。悪いのはわたしよ。自分の言い分だけを聞かせようとしたのだから」
 マ ミ「鹿目さんに非はないわ。深い事情も知らず、暁美さんの言葉を疑ったわたしがいけないの。あの時はごめんなさいね、暁美さん」
 ほむら「わたしこそ感情的になってしまい、ひどい事を言ってしまったわ。ごめんなさい」
 さやか「優しいマミさんも素敵だけど、怒った時の凛とした表情も素敵だなぁ」
 まどか「いつも優しい笑顔を見せてくれるから、怒ったマミさんの凛々しい表情は新鮮だね」
 杏 子「いや、マミは意外と短気なんだぜ。あんたたちの前では優しい先輩かも知れねえけどな」
 さやか「どう言う事?」
 杏 子「先週だってよぉ、腹が減ったから冷蔵庫の中にあるチーズケーキを食っちまったらさぁ、あたしの鼻先にマスケット銃をつきつけて「杏子、また無断でチーズケーキを食べたわね。食後の楽しみに残しておいたのよ。ひどいわ、いつもいつも黙って食べてしまうんだから」なんて言うんだぜ。あん時はマジで撃たれるかと思ったよ」
 さやか「そりゃあ……あんたがいけないんでしょう」
 まどか「う、うん。黙って人の物を食べるのはよくないよ、杏子ちゃん」
 杏 子「でもよぉ、ケーキを食っちまったくらいで銃をつきつけるか? どんだけ食い意地が張ってんだよ」
 マ ミ「……」
 杏 子「あんたたちの前じゃ優しい先輩だろうけど、これで口やかましいところもあるんだぜ」
 マ ミ「……」
 ほむら「佐倉杏子、そろそろ口を閉じなさい。巴マミを怒らせるつもり?」
 杏 子「え?」
 ほむら「私生活を暴露されて今にも怒り爆発寸前よ」
 マ ミ「……」
 杏 子「うッ。た、確かに黙った方がよさそうだな」
 マ ミ「……」
 さやか「と、ところでさぁ、来月3日ってまどかの誕生日でしょう。今年はわたしたちで手作りケーキをプレゼントしない? 今から練習すれば、売り物には及ばないまでも美味しく食べてもらえるケーキが作れるようになると思うんだ」
 ほむら「あなたにしては良いアイディアね。わたしは賛成よ」
 杏 子「あたしも賛成だ」
 さやか「よかったら、マミさん。わたしたちにケーキの作り方を教えてくれませんか? 見滝原のパティシエが先生なら素敵な誕生日ケーキを作れると思うんです」
 杏 子「あたしからも頼むよ。マミ先生」
 ほむら「頼りにしてるわ、巴マミ」
 マ ミ「み、みんな……。わたしの事を頼りにしてくれるの? こんな情けない先輩なのに……。ケーキ一つで怒り出すような女なのに……」
 まどか「わたし、マミさんのお手製ケーキを誕生日に食べたいです。みんなが心を込めて作ってくれるケーキと一緒に」
 マ ミ「鹿目さん……。みんな……」キュンキュンキュン
 杏 子「うわッ、また胸キュンを連発しやがった」
 ほむら「まどかの殺し文句が効いたようね」
 まどか「えッ、わたしのせい? ご、ごめんなさい、マミさん」
 マ ミ「謝らないで、鹿目さん。あなたのせいじゃないわ。みんなの心遣いが嬉しかったのよ」
 杏 子「う、嬉しいのはわかるけどよぉ、少しは感情を抑えた方がよくねえか?」
 マ ミ「みんなから頼りにされるなら、もうなにも怖くない。一人ぼっちにされても後悔なんてしない」
 杏 子「こりゃ駄目だ。完全に夢見モードだな」

【総合『萌えポイント』発表】
 ・佐倉杏子(+90)
 ・美樹さやか(+90)
 ・鹿目まどか(+100)
 ・巴マミ(+110)
 ・暁美ほむら(+120)


⇒ To be continued

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  絶対に胸キュンしてはいけない会議室(前編)

【はじめに】
 個性豊かなキャラクターの存在も含め、「魔法少女まどか☆マギカ」は無限とも言える二次創作の可能性を持っており、ギャグからシリアス、恋愛物から学園物まで幅広いジャンルが描けます。
 百合ネタ、中二病ネタ、ツンデレネタ、ぼっちネタ、パックンネタ……。
 作品の世界観とキャラクターの個性を残すだけでもハイクオリティな二次創作漫画(または小説)が描け、原作に忠実な設定を守らなくても読者の鑑賞に堪えうる作品が生み出せるという、まさに魔法のような奇跡の作品と思っています。
 今回のSSも「原作に忠実な設定を守らない」二次創作となりますが、キャラクターの個性と定番ネタ、スピーディーな展開で鑑賞に堪えうるような作品になるよう努力したつもりです。
 本作のアイディアを思いついたのは、九十九氏の作品「魔女の使いやあらへんで - 絶対に笑ってはいけない魔法少女 -」(同作のpixiv版はこちらからアクセス可)のおかげです。九十九氏には記して感謝致します。
 なお、文中にはキャラクターの個性を誇張・曲解した表現が多出する為、各キャラクターの原作イメージを崩すような描写が嫌いな方は閲覧を御遠慮下さい。
 若干のキャラクター崩壊を含んでいても構わないという方、よろしければ最後までお付き合い下さい……。



★絶対に胸キュンしてはいけない会議室★

【参加者(五十音順)】
 ・暁美ほむら
 ・鹿目まどか
 ・佐倉杏子
 ・巴マミ
 ・美樹さやか

【ゲーム内容】
 会議室のテレビには、五人の魔法少女の活躍を公私にわたって盗撮した「魔法少女まどか☆マギカ」の映像が放送される。Qべえの撮影・編集による映像を見ながら胸キュンを覚える感情に耐える事。胸キュンする(or萌えを感じる)たび、その人物には萌えポイントが加算される。

【ルール】
 1.ゲーム進行中、絶対に胸キュンしては(萌えを感じては)いけない。
 2.映像は1時間に1回放送される。
 3.胸キュンしたか、しないかの判断には各人のソウルジェムを利用する(心理状態はソウルジェムの輝きによってわかる)。判定は監視者のQべえが行い、判断を下された者は判定に従う。
 4.制限時間は24時間。睡眠は禁止。食事は定時に3回のみ(持ち込み物に限り、自由に飲食できる)。
 5.ゲーム進行中、参加者は会議室から出てはいけない。例外としてトイレによる離席は認めるが、その場合はゲームの進行がストップされる(進行停止中に胸キュンした際も、例外として萌えポイントが加算される)。
 6.胸キュンした者には萌えポイントが10点加算される。
 7.空き時間の利用法は自由だが、その間(かん)の相手の言動に胸キュンした場合もポイントが加算される。
 8.萌えポイントが「+300」になった時点で失格となる。
 9.萌えポイントの累計が最も少ない者を優勝者とする。

【優勝特典(どちらかを選択)】
 1.好きな願いを一つだけ叶えられる(ただし、エントロピーを凌駕できない願い、因果律に反する願いは不可)。
 2.理力「円環の理」によって、好きな娘(こ)と相思相愛になれる。

【罰ゲーム】
 ・萌えポイントが最も多かった者には、罰ゲームとして「一ヶ月ぼっちの刑」が言い渡される(一ヶ月の間、一緒にゲームへ参加した魔法少女と付き合ってはならず、必要最低限な接触以外は禁止される)。


☆残り時間…24時間☆

 まどか(わたし自信ないなぁ。こういうゲームは苦手だよ~)
 さやか(痛みを消すのは得意だけど、感情を抑えるのは苦手だなぁ)
 マ ミ(わたしの願い事は一つ。鹿目さん、暁美さん、美樹さん、杏子。みんなと……もっともっと仲良くなりたい。このゲームに優勝すれば、もう一人ぼっちじゃなくなるわ)
 杏 子(まどかさやかは感情を抑えるのが苦手だろうし、ぼっちに慣れてるマミは「褒め言葉」ネタに弱そうだ。この三人には負ける気がしねぇな。問題はクールなほむらだ。まどかの笑顔しか興味なさそうだからなぁ……)
 ほむら(わたしがまどか以外に萌えるなんてあり得ないわ。彼女は可愛いけど、地味な印象の方が強い。こうしたゲームでは「絵になる場面」が放送されやすいから、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやかの映像に重点が置かれるに違いないわ。この三人の映像がメインなら……わたしは負けない。待っていてね、まどか。このゲームで優勝したら二人だけの愛の世界へ旅立ちましょう)

 Qべえ「待たせたね、みんな。これから最初の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」
 
 Qべえ(助けて……。僕を……助けて)
 ほむら『まどか、そいつから離れて』
 まどか『ほ、ほむらちゃん』
 Qべえ(助けて……。まどか。助けて)
 ほむら『まどかから離れなさい。この化物』
 傷だらけのQべえに銃口を向けるほむら
 まどか『やめて、ほむらちゃん』
 ほむら『そこをどきなさい、まどか
 まどか『この子、怪我をしてるよ。いじめちゃ駄目だよ』
 ほむら『貴女には関係ないわ。さあ、どきなさい!』
 まどか『いやだ。この子、私に助けを求めてるんだもん。だから……どかない』
 ほむら『……そう。それなら好きになさい』
 踵を返して立ち去るほむら。
 その直後、まどかの後ろから一人の少女が姿を現した。
 マ ミ『大丈夫? Qべえ』
 Qべえ『ああ、マミ。うん、なんとかね。彼女が助けてくれたんだ』
 マ ミ『そうなの』
 マミは、Qべえをかばうように抱きしめるまどかへ優しく微笑みかけた。
 マ ミ『どうもありがとう。Qべえを助けてくれたのね』
 まどか『そんな……。助けたなんて大袈裟なものじゃありません』
 マ ミ『その子は私の大切な友達なの。本当に助かったわ。そうそう、自己紹介しないとね。わたしは巴マミ。あなたと同じ見滝原中学の三年生よ』
 まどか『わ、わたしは鹿目まどかです』
 マ ミ『鹿目まどかさん。いいお名前ね』
 まどか『あ、ありがとう……ございます』


 まどか(やっぱりマミさんは綺麗だなぁ。笑顔が素敵……)キュン
 さやか(あんな淫獣にさえ優しく接してる。やっぱマミさんは女神だなぁ)キュン
 マ ミ「懐かしいわ。Qべえの本性を知る前の出来事ね」
 ほむら「とんだ茶番劇だわ。このまま殺してやればよかった」
 Qべえ「暁美ほむら。きみの発言は相変わらず過激だね……」
 ほむら「ソウルジェムの秘密を知らせずに甘い言葉だけで魔法少女の契約を結ばせる。そんな卑怯者に情けは無用だわ。過激ついでに銃口でも咥えてみる?」
 マ ミ「まあまあ、落ち着ついて。ここはQべえの罪を糾弾する場所じゃないんだから」
 ほむら「あなたは甘すぎるわ」
 マ ミ「Qべえだって根っからの悪い子じゃなのよ。自分の仕事を忠実にこなそうとして、ちょっと暴走しちゃっただけよ」
 ほむら「物は言いようね。あなたの言い分が正しければ、この場でわたしがインキュベーターを殺しても「自分の気持ちに正直な行動だから仕方ない」で済んでしまうわ」
 マ ミ「そうしたいの?」
 ほむら「例え話よ。あなたがインキュベーターを庇うような事を言うから……」
 マ ミ「例え話でよかったわ。暁美さんとは仲良くしたいもの。以前のように互いを憎み合う間柄には戻りたくないわ」
 ほむら「ええ、そうね。わたしもよ」
 マ ミ「それじゃ、この話は終わりにしましょう」
 ほむら「命拾いしたわね、インキュベーター。巴マミに感謝なさい」
 Qべえ「ありがとう、マミ。助かったよ」
 さやか「さっすがマミさん、冷静で的確な対応だわ。素敵ッ。やっぱ憧れるなぁ」キュン
 まどか「うん、そうだね」キュン
 杏 子「おい、初っ端から二回も胸キュンしてんじゃねえよ。まったく、これじゃ先が思いやられるぜ」(ライバルが減るのは嬉しいが、こう弱くちゃ張り合いがねえよなぁ)
 ほむら(ルールも気にせず憧れの先輩に胸キュンするなんて。本当に素直な娘(こ)ね)キュン
 杏 子「ん? ほむら、どうした。胸キュンしたのか?」
 ほむら「え? わたし……胸キュンなんてしていないわ」
 Qべえ「でも、こうしてソウルジェムは輝いているよ」
 ほむら「な、なにかの間違いよ」
 Qべえ「残念だけど、萌えポイント加算だね。暁美ほむら( ゚∀゚)」

【総合「萌えポイント」発表】
 ・巴マミ(0)
 ・佐倉杏子(0)
 ・暁美ほむら(+10)
 ・鹿目まどか(+20)
 ・美樹さやか(+20)


<中間結果(省略シーンまでの累計ポイント)>

 開始2時間目と3時間目は誰も萌えポイントを加算させず、順位に変動は見られない。
 最下位トップを独走する鹿目まどかと美樹さやかの二人は、感情を抑えよう努力していたが、魔女と戦う巴マミの映像で胸キュンしてしまい、とうとう4時間目に萌えポイントを加算してしまった。
 ポーカーフェイスの暁美ほむらまどかの純真無垢な笑顔に弱く、先輩の勇士に胸キュンした時の笑顔で自分まで胸キュンを誘発され、「ゲームの趣旨」からズレた所で10ポイントの加算をしている。
 佐倉杏子と巴マミの萌えポイントは変化なし。さやか一筋の純情さと先輩属性の余裕(孤独?)でポイント「0」を維持している。

 ・巴マミ(0)
 ・佐倉杏子(0)
 ・暁美ほむら(+20)
 ・美樹さやか(+40)
 ・鹿目まどか(+50)


☆残り時間…20時間☆

 杏 子「それしても退屈だなぁ。こんな狭い部屋に監禁されちゃ気分が滅入るぜ」
 ほむら「まだ4時間しか経っていないわ。ずいぶんと根気が続かないのね」
 まどか「やる事が限られると時間って持て余すものなんだね」
 さやか「ならさぁ、BDでも見ない? こんな事もあろうかと「魔界三重奏トリオ☆ザ・マイナー」を持ってきたんだ」
 まどか「用意周到だね、さやかちゃん」
 さやか「狡猾で強欲な中年、ナルシストな勘違い君、ショタ属性の天然君が繰り広げる禁断の薔薇世界。無駄に豪華な声優を使いながら、内容は支離滅裂なヤオイ。こういうギャップのある作品、わたし大好きなんだ。残り20時間もあるんだからさぁ、みんなで一緒に見よう」
 マ ミ「な、なかなか個性的な趣味をしているわね」
 まどか「禁断の薔薇世界って……」
 杏 子「おいおい、3Pのガチホモは勘弁してくれよ」
 ほむら「リアルな百合を見飽きたからって、薔薇アニメに走る事はないでしょう」
 Qべえ「盛り上がっているところに水を差して悪いけど……」
 さやか「なによ」
 Qべえ「BDの視聴は認められないな。このプレイヤーはDVD専用なんだ。2002年に製造されたSHIZUKI社の型落ち品だから、君が持ってきたディスクメディアには対応していないんだよ」
 杏 子「マジかよ。ショボイなぁ。今はBDの時代だぜ」
 Qべえ「まあまあ、大人の事情に免じて許してよ」
 さやか「それなら心配御無用。これはDVD同梱版なんだ。DVDなら再生できるでしょう。さあ、このディスクを挿入してよ。インキュベーター」
 まどか「それ……わたしの決めセリフだよ。さやかちゃん」

 Qべえ「おっと。そろそろ時間だ。次の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」

 杏 子『奇跡ってのはタダじゃないんだ。希望を祈れば、それと同じぶんだけの絶望が撒き散らされる。そうやって差し引きをゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだよ』
 さやか『何でそんな話をわたしにするの? あんたは自分のことだけを考えて生きてるんでしょう。それなのにわたしの心配してくれるなんて変じゃない?」
 杏 子『あんたもあたしと同じ間違いから始まった。これ以上後悔するような生き方を続けるべきじゃない。そう思ったんだよ』
 さやか『後悔するような生き方……』
 杏 子『あんたは奇蹟の対価としては高過ぎるもんを支払ったんだ。だから、これからは釣り銭を取り戻すことを考えなよ』
 さやか『あんたみたいに?』
 杏 子『そうさ。あたしはそれをわきまえてるが、あんたは今も間違い続けてる。見てられないんだよ……そいつが』
 さやか『……。あんたのこと、いろいろと誤解してたみたいね。ごめん。誤解していた事は謝るわ』
 杏 子『別に謝らなくてもいいぜ。誤解なんて往々にしてあるもんだから』
 さやか『知らなかった。あんたが父親の為に魔法少女の契約を結び、家族の為に戦い続けてたんだって事』
 杏 子『でもさ、その独りよがりな考えが家族を壊しちまったんだ。馬鹿だよなぁ』
 さやか『ううん、そんな事ない。あんたは家族思いの子だと思う。聖女って……あんたのような娘(こ)を言うんだろうね』
 杏 子『あたしが聖女か。それなら惚れた男の為に魔法少女なった誰かさんは女神様かぁ?』
 さやか『そ、そんなじゃ……』
 杏 子『聖女と女神。いいカップリングじゃねえか。ちょいと唇を貸しな、用事がある』
 さやか『ちょっと。なにするのよ。やめ……んぐッ』
 杏 子『……』
 さやか『……』
 杏 子『ハァ。どうだ、聖女の口づけは』
 さやか『うん。よかった』
 杏 子『それだけか?』
 さやか『あんた、本当は素直で可愛い娘(こ)だったんだね。気に入ったわ。杏子はわたしの嫁になるのだぁ』


 さやか「ちょ、ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇ。なによ、この映像」
 杏 子「あたしがさやかの嫁になる。わ、悪くないかも……」キュンキュンキュン
 さやか「バカッ。こんなMAD動画に3回も胸キュンするな」
 マ ミ「あらあら。ずいぶんと情熱的なのね、美樹さん」
 さやか「ち、違います。これは違います。マミさん」
 まどか「うわぁ。女の子同士のキス、はじめてみた。なんか……いいなぁ」キュン
 さやか「よくな~い」
 ほむら(なるほど。この手は使えそうね。まどかは本物の女神になった事があるのだから設定としては無理がないわ。まどかの唇、まどかの唇、まどかの唇……)キュン
 さやか「ちょっと、ほむら。あんたまで胸キュンしてるんじゃないわよ」
 Qべえ「おっと、再生する映像を間違えちゃった。これは門外不出のMAD動画だったよ。すまなかったね」
 さやか「そこの淫獣! こんな動画、いつ作ったの?」
 Qべえ「さあ、「魔界三重奏トリオ☆ザ・マイナー」でも見ようか。美樹さやか、ディスクを貸して」
 さやか「ごまかすなッ! わたしの質問に答えなさいよ」
 Qべえ「あんまり興奮しないで。少しは冷静になったどうだい」
 さやか「うるさい!」
 杏 子「な、なあ。さやか
 さやか「なによッρ(`O´*)」
 杏 子「よかったら……。あの続きをリアルプレイしてみないか? あたしの方は準備OKだ」キュン
 さやか「こ、こ、このバカッ! 真顔で恥ずかしい事を言ってるんじゃないわよ」
 杏 子(さやかは怒った顔も可愛いなぁ。ツンデレな恋人ってのも悪くなさそうだ)キュン
 マ ミ「どうしたの、杏子。さっきから胸キュンしてばかりね」
 ほむら「美樹さやかとキスする妄想にでもひたっているのでしょう。もう少しだけ夢を見させてあげましょう」
 まどか「うぇひひ。杏子ちゃんって純情なんだね」
 Qべえ(ここまで佐倉杏子の反応があるとは意外だった。露骨なMAD動画に狂喜するなんて……わけがわからないよ)

【総合「萌えポイント」発表】
 ・巴マミ(0)
 ・暁美ほむら(+30)
 ・美樹さやか(+40)
 ・佐倉杏子(+50)
 ・鹿目まどか(+60)


☆残り時間…19時間☆

 杏 子(ちくしょう。さっきのMAD動画で一気にポイントが加算されちまった。もう少し感情を抑えねぇとマズイな)
 ほむら(落ち着きなさい、ほむら。このままではポイントが加算される一方よ。もっと冷静になりなさい……。強力なライバルになると思っていた佐倉杏子は美樹さやかの映像で胸キュンを連発してくれた。彼女の映像で胸キュンする可能性が高いとなれば、これから大きくポイントに差をつける事もできるだろうし、勝算も高確率で見込めるわ)
 まどか「さやかちゃん、機嫌なおしなよ~」
 さやか「いやだッ。あの変態淫獣、正義の刃で一刀両断してやらないと気が済まない~」
 Qべえ「物騒だなぁ。この会議室では魔力が抑えられるから魔法少女に変身できないとわかってはいるけど、君の殺意に満ちた言葉は背筋をヒヤヒヤさせる。本当に斬りかかってきそうだからね。穏やかじゃない言動は慎んでほしいよ」
 杏 子「そんな言動をするのは誰のせいだと思ってんのさぁ」
 マ ミ「Qべえ。あまり余計な事は言わないの。口数が多い男子は嫌われるぞ」
 Qべえ「わかったよ、マミ」
 さやか「なによ。マミさんの言う事だけは素直に聞くのね」
 杏 子「マミは怒らすと怖いからだよ。だからQべえも絶対服従してるのさ」
 マ ミ「杏子。あまり人聞きの悪い事は言わないで頂戴」

 Qべえ「おっと、無駄話はここまで。次の映像を流すよ。さあ、画面に注目してッ!」

 ほむら『鹿目まどかさん。貴女がこのクラスの保健係よね』
 まどか『そ、そうだけど』
 ほむら『転校初日で緊張しすぎたせいかしら、少し気分が悪くなってしまったの。保健室に連れてってもらえるかしら』
 まどか『あのぅ……。その……。どうして私が保健係だって知っているの?』
 ほむら『早乙女先生から聞いたの。連れてって貰える? 保健室へ』
 まどか『う、うん。それじゃ案内するね』
 連れだって教室を出る二人。
 校内の地理に疎そうな発言とは裏腹に、ほむらまどかの案内も乞わず歩き出した。
 ほむら『こっちよね、保健室は』
 まどか『そ、そうだけど……』
 しばらく無言で歩く二人。
 まどか『あ、暁美さん?』
 ほむら『ほむらでいいわ』
 まどか『ほむら……ちゃん』
 ほむら『なにかしら?』
 まどか『わたしの案内、必要だったのかなぁ? この先が保健室なんだけど……』
 ほむら『知ってるわ』
 まどか『え? それじゃ、どうして案内してくれって言ったの?』
 ほむら『あなただけに話があるからよ』
 まどか『わたしだけに……話が?』
 保健室の前に着いた二人。
 ドアを開けて中へ入るが誰もいない。
 まどか『あれ? 変だなぁ。誰もいないや。いつもは保健の瀬川先生がいるはずなのに』
 アコーディオン・カーテンを広げ、その奥に設置されたベッドまで進むほむら
 その後に続くまどか
 ほむら『瀬川おんぷ。彼女には席を外してもらったわ』
 まどか『席を外してもらったって……。どういう事なの、ほむらちゃん』
 ほむら『こう言う事よ、まどか
 まどかをベッドの上へ押し倒すほむら
 まどか『え? ひゃん』
 ほむら『まどか、あなたを愛しているわ。貴女はわたしの獲物よ。貴女だけの物になればいい』
 まどか『や、やめてよ。ほむらちゃん。わたしたち女の子同士だよ』
 ほむら『だからどうしたの? 愛に性別は関係ないわ』
 まどか『やめて。やめてよ、ほむらちゃん』
 ほむら『心配しないで。ここは学校だから派手な事はしない。貞操の無事だけは保証するわ』
 まどか『どうして……。ほむらちゃんは……どうして、こんなひどい事をするの?』
 ほむら『あなたを愛しているからよ。鹿目まどか
 まどか『こ、こんなのってないよ……。こんなの絶対おかしいよ』
 ほむら『さあ、二人だけの午後を楽しみましょう』


 さやか「うわ~。積極的だねぇ、ほむら
 まどか「ひどいよ~、Qべえ。こんな動画を作るなんてぇ」
 ほむら(こ、この展開……虚像とわかっていても……胸のトキメキが抑えられない……」キュンキュンキュンキュンキュン
 マ ミ「これも作られた映像なの?」
 まどか「は、はい」
 杏 子「おい、ほむら。おいッ。しっかりしろ。……。駄目だ。妄想モードに突入しやがった」
 さやか「凄い勢いで萌えポイントが溜まっていくわね」
 まどか「ほ、ほむらちゃん……」
 Qべえ「おやおや、また間違えちゃった。これも僕が作った秘蔵のMAD動画なんだよ」
 マ ミ「Qべえ。このやり方は卑怯じゃない? CG処理やハメコミ編集、音声ミキシングで改変した映像を意図的に流すなんて感心できた話じゃないわ」
 Qべえ「……」
 マ ミ「さっきは杏子、今度は暁美さん。二人とも胸キュンさせ難い相手よね。彼女たちにポイントを加算させる為の手段としては有効でも、これでは公平性に欠けるわ」
 さやか「そうだ、そうだ。マミさんの言う通りだ~」
 まどか「あんまりだよ。こんなのひど過ぎるよ」
 杏 子「ふざけんじゃねぞ、てめぇ! さっきからインチキ映像ばかり使いやがって」
 ほむら「まどか……。まどか……。まどか……」キュンキュンキュン
 杏 子「おい、ほむら。正気に戻れ。おいッ」
 Qべえ「確かに僕が悪かった。ごめん。やりすぎたみたいだ。心から謝るよ。これからは変な小細工はしない」
 マ ミ「本当ね。約束よ」
 Qべえ「うん。約束するよ」
 杏 子「まったく。マミはQべえに甘いんだからなぁ……」
 Qべえ(この反応は予想外だったなぁ。暁美ほむらの煩悩は計り知れないよ……)

【総合「萌えポイント」発表】
 ・巴マミ(0)
 ・美樹さやか(+40)
 ・佐倉杏子(+50)
 ・鹿目まどか(+60)
 ・暁美ほむら(+110)


⇒ To be continued

40,000HIT達成の御礼

 2011年10月12日の午後9時頃、当ブログへのアクセス数が40,000Hitに達しました。
 コメントや拍手での応援に感謝しつつ、訪問者して下さる皆様には厚く御礼申し上げます。

 最近は更新も滞りがちとなり、先月は書き溜めていた「魔法少女まどか☆マギカ」のSS掲載で急場を凌ぎました(「魔法少女まどか☆マギカAnother」は今後も不定期で掲載を続けます)。
 紹介したい漫画や小説もありますが、画像加工や記事執筆に時間がさけない状態にある為、ストックしているネタの放出には時間がかかるかも知れません。
 現時点では、「シュヴァリエ」(作=冲方丁/画=夢路キリコ),「BOMBER GIRL CRUSH!」(にわのまこと),「任侠姫レイラ」(原作=梶研吾/作画=米井さとし)が紹介待ちとなっており、なんとか年内には紹介記事をアップしたいと思います……。

 アクセス40,000Hitの記念イラストですが、きてぃ氏より御提供頂いたイラストを掲載致します。
 このイラストは「鉄拳 TAG TOURNAMENT 2」の稼働開始を祝し、pixivにて閲覧者限定作品として公開されたものです。
 パンモロを強制されたうえ、触手と不気味なゲルで恥辱的な責めを受けるリリ。なんとも悩ましい姿です。
 元となるイラストは今月中に別の形で紹介しますが、それに先駆けての先行公開と思って下さい。

40,000Hit記念画像(「鉄拳TT2稼動祝い! これが奴らの祝い方だ!」より)
(C)きてぃ

 次の御挨拶は50,000Hitを突破した時になります。
 諸事情あって「四季の企画」を廃止し、新しく「特集」という形でイラスト紹介のコンテンツを再スタートする事に致しました。
 有志の協力も得られ、水面下で着々と準備を進行中しております。
 詳しい内容は明かせません(正確には公表できる段階ではないだけなのですが……)が、訪問者皆様に御満足頂けるような特集を取り揃えておりますので楽しみにお待ち下さい。

 今後は一ヶ月の更新回数が10回以下になるかと思いますが、お気に向いた時にでも当ブログの事を思い出して頂ければ幸いです。

地底楼閣の戦い

【はじめに】
 7月前からゲームセンターへ行く余裕がなくなり、ゲーム雑誌も読めず、おかげで「鉄拳 TAG TOURNAMENT 2」や「STREET FIGHTER×鉄拳」に関する新情報が全く得られませんでした。
 加えて、テレビの買い替えによってPS3版「鉄拳6」が出来なくなり(本体を起動しても画像出力が認識されずテレビの画面が切り替わりません……)、インターネット接続の時間が激減した事も手伝い、永らく「鉄拳」とは御無沙汰状態にあります。
 そんな【間隙の数ヶ月】を埋め合わせる為、久しぶりにリリが主役のSSを書いてみました。
 pixivで活躍されているアキラ氏が素敵なバスター技イラストを描いて下さったので、そのイラストからイメージを膨らませ、一編のSSを作り出してみたのですが……。添え物の文章でイラストの色気を殺してしまわないか不安でもあります。
 あれこれ自己卑下しても見苦しいだけなので、後は閲覧者各位の評価にゆだね、精一杯の力を尽くした結果として口数少なくSSをアップします。
 強烈なダメージに堪えるリリの姿から膨らませたイメージテキスト、最後までお目通し頂ければ幸いです。


 ドイツ北部にある地下楼閣。
 広大な地底空間を支配する無数の木人に囲まれ、リリは絶体絶命の危機に追い込まれていた。
 「くッ……。次から次へと休みなく出てくるわね。このままではキリがないわ」
 吐く息は荒くなり、攻撃を繰り出すスピードも衰えてくる。
 「……」
 「……」
 新しく2体の木人が無言で迫ってきた。
 至る所に設置された篝火(かがりび)が木人の全身を照らし、無表情な顔を浮かび上がらせる。
 「ハッ」
 疲労した体を元気づけるかのように気合の一声を発し、リリはハイッキクの回し蹴りで右側から襲いくる木人を倒し、振り向きざまに中断蹴りを放って左から迫る木人を倒した。
 周囲を見回すと目算でも20体以上の木人が倒れているのを確認できる。
 硬い木製ボディの持ち主だが、攻撃の当て方によっては手足を傷めずにダメージを与えられ、耐久力が低いのか一撃で倒せる事だけが救いであった。
 「まだ出てくるの? しつこいわねぇ」
 先発の2体が倒されるたび、後に控える2体の木人が出てくる。まるで押し出し式のトコロテンだ。
 激流の地底川に架かる橋の上、前後を挟みこまれているので逃げ道がない。
 (ざっと見ても30体はいるわね。川へ落した数も含めて50体近く倒した筈だわ。敵戦力が100体なら負けない自信はある。この計算が狂ない事を祈るしかないわ……)
 新たに2体の木人を倒したリリは心の中で素早く計算するが、あまりに楽観的な考えかも知れないとも思っていた。

 「ハァ……ハァ……ハァ……」
 限界ギリギリの戦いではあったが、どうにか木人軍団を全滅させたリリ。
 息をきらせながら、全身汗だくの体を欄干に預けた。
 ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。
 「この足音。ま、まさか……増援?」
 土を蹴る足音が不気味に反響し、一歩一歩、リリの方に近づいてくる。
 ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。
 「かなり厳しい状況だけれど、敵に背を向けて逃走するなんて、わたしのプライドが許さない。仕方がないわね。親玉だろうと残党だろうと、相手になってあげるわ」
 満を持して登場する敵を迎え撃つ為、リリは疲弊した体に鞭打って立ち上がる。
 その数秒後。橋の向こうに一体の木人が姿を現した。
 「あなたが最後の一体かしら? 他の連中と違って全体的に光沢があるようだけど」
 「……」
 「喋れない相手に聞くだけ無駄だったわね。さあ、相手になってあげるわ。かかって来なさい」
 「……」
 喋る事はできなくても人の言葉は理解できるのか、挑発するようなリリの言葉が終わると同時に木人は目を赤く光らせながら突進してきた。
 「いくわよッ」
 疲労困憊の体を奮い立たせたリリは、迫りくる木人を見据えて構えた。

 最後に現れた木人は予想以上に強く、リリの戦闘技術では全く歯が立たなかった。
 ウィリアム姉妹のように巧みな関節技で骨を痛めつけ、ブライアン・フューリーのように力強い打撃技ラッシュでガードの上から容赦なく攻撃を仕掛け、白頭山(ペク・トゥサン)のように華麗な足技を叩き込む。
 ダメージの蓄積とピークに達した疲労で防戦一方を余儀なくされたリリは岩壁まで追い詰められ退路を失った。
 「しまった。追い詰められた……」
 背中が壁に触れた一瞬、リリの意識は目の前の木人から意識が離れた。その隙を木人は見逃さず、膝蹴りを相手の腹部にくらわせた。
 「ウグッ……」
 内臓まで響く様な一撃を受けたリリは、あまりの痛みに思わず唇を噛みしめた。
 切れた唇からは真っ赤な血がトロロのように流れ出る。
 「つ、強い……。今までの連中とはケタ違いの強さだわ」
 滴る血を手の甲で拭い、リリは苦し気につぶやいた。
 「……」
 彼女に反撃の隙を与えようとしない木人は、壁を背にヨロヨロと立ち上がるリリの腹部に強烈な崩拳(ポウケン)を放った。
 ボゴォ。
 「ゴハッ。あぐぅぅぅ」
 強烈な崩拳により、華奢なリリの体は背後の壁へ叩きつけられた。立て続けに強烈な攻撃をくらい、桃色の唇から苦痛の声が漏れる。

 その後は木人の独壇場(どくせんじょう)であった。
 「……」
 「アグッ」「ウッ」「くぅぅ」「あぁぁん」
 無表情の木人は無言でリリの体を痛めつけ、その攻撃を甘んじて受けるしかないリリは弱々しく悲鳴をあげる。
 「……」
 サンドバッグ状態となっているリリの全身を余す所なく攻撃した木人は、彼女の首を肩口で支えると同時に太股を掴んで頭上へ持ち上げ、トドメとばかりに一撃必殺の大技を繰り出した。
 「うくッ。こ、この技は……」
 圧倒的強さで世界各国のプロレスラーたちを震え上がらせた覆面レスラーのキングがフィニッシュ技に使うマッスルバスターと同じフォームである事に気付いたリリは、渾身の力を振り絞って技から逃れようとしたが、すでに手遅れであった。
 両足を左右に大きく開かされ、アンダースコートとして着用していた黒いブルマが丸見えになる。
 「は、離しさない。なんて破廉恥な恰好をさせるの。この勝負、わたしの負けよ。さあ、ギブアップ宣言したのだから技をときなさい」
 この悲痛な訴えが聞こえないのか、木人は股裂き状態のリリを担いだまま勢いをつけて高く飛び上がった。
 「くうぅぅ。駄目だわ。う、動けない……」
 体を『く』の字に曲げられたうえ、両足を『ハ』の字形に開かされ、体が動かない。
 「このままだと……まずいわ」
 事態の深刻さを頭では理解していながら、どうする事もできないリリ。このまま地面に落下し、致命的な大ダメージを受ける事は明確だった。
 ドシーン。
 3メートル近く飛び上がった木人の体が地上へ舞い戻り、その両足が地響きと共に硬い地面を踏む。
 「あうッ。くぅぅぅぅぅ」
 着地の衝撃で体中の関節を痛めつけられ、股裂き効果で股関節に激痛を感じたリリだが、そのダメージに歯を食いしばって耐えた。
 (こ、ここで……悲鳴をあげるわけには……いかない。耐えて……このデク人形に……技の効き目がないって事を……アピールしてやるわ。あぐぅ。で、でも……凄い衝撃……。ぜ、全身の骨が……バラバラに砕けるようだわ……)
 だらしなく両手を伸ばし、はしたなく両足を開きながらも、リリは最後の最後でささやかな抵抗を試みた。
 落下の衝撃で二つの乳房は服の下でブルブルと揺れ、熟れた柿が枝から落ちる瞬間のように小刻みな振動を今も続けている。
 恥ずかしいポーズで晒しものにされるリリ。自分の惨めな姿が人目にふれない事を唯一の救いとしながら、彼女は屈辱的な格好に耐え忍ぶ。

木人のマッスルバスターがリリに炸裂する
(C)アキラ

 どれくらいの時が経っただろうか。
 マッスルバスターの体勢でリリを担ぎ上げたまま微動さえしなかった木人は、強制開脚させていた彼女の足から手を離して技をといた。
 「あうん」
 ロックされていた全身が解放され、リリの体は大地の上に勢いよく落ちる。
 仰向けに倒れたまま顔だけを動かして周囲を見回すと、踵を返して暗闇の彼方へ帰っていく木人の後姿が見えた。
 「これがあなたの勝利宣言なの? わたしに反撃する余力が残っていない事を知り、これ以上の戦闘は無用というわけなのね」
 もちろん返事はない。
 やがて木人の姿は完全に見えなくなり、広い地下空間には横たわるリリ一人が取り残された。
 (この戦い、悔しいけれど完敗だわ。さすが修練の地下楼閣と言われるだけの事はあるわね。それにしてもシャクだわ。あんな木の人形に弄ばれるなんて……)
 指一本動かす気力もないまま、乾いた大地へ横たわる姿に恥辱を感じながら、一方では「木の人形にすら勝てなかった」という冷たい現実を直視する自分がいる。
 十メール上の天井を眺めながら、リリは敗北という現実を受け入れた。
 地底楼閣での「木人組手」は、彼女にとって風間飛鳥との戦いに次ぐ人生二度目の敗北という結果を残し、その幕を下したのであった。


【あとがき】
 久しぶり(と言っても、約2ヶ月半ぶりですが……)のリョナ系SSです。今回の受難役もリリ。「鉄拳」ネタのSSならば彼女に頑張ってもらう(?)しかありません。
 アキラ氏がリクエストに応じて描いて下さったイラストの引き立て役としてSSを添えたのですが、多少なりともイラストから発せられるエロス&リョナの魅力を強調できていれば幸いです。
 木人対リリの戦いというシチュエーションの設定に苦労しましたが、家庭用「鉄拳6」で追加された『シナリオキャンペーンモード』をイメージした構成で難題を切り抜けられました……。
 戦闘シーン以外の描写は極力省いた為、そのせいで説明不足(例えば、リリが地下楼閣へ足を踏み入れた理由についての説明)と感じられる点もあるかと思いますが、前記のような事情ですので御容赦下さい。
 長さの都合もあり、やや物足りない内容かも知れませんが、息抜き時間に目を通せる肩のこらない読物を目指しました。

祝! 「STREET FIGHTER×鉄拳」へリリの参戦が決定

 発売が待たれる「STREET FIGHTER×鉄拳」より衝撃の新情報を得ました。
 豪快なパンモロアクションで多くのファンを魅了し、一部では「鉄拳」シリーズ最大の異色キャラクターと呼ばれたリリ。彼女が「鉄拳」サイド代表として同作へ参戦する事が決まったそうです。
 詳しい情報を収集中なので、今回は公式サイトへのリンクや把握している情報の掲示は控えますが、「STREET FIGHTER4」のグラフィックで再現されたリリがマッスルバスターや各種関節技に苦悶する姿を拝めるようになるのは間違いありません。

 最近はゲームセンターとも御無沙汰していますが、今夏稼動予定から遅延をしていた「鉄拳 TAG TOURNAMENT 2」は正式稼動が始まったようです。
 こちらも稼動日情報や家庭用ゲーム機への移植情報を調査中なので詳しくは触れず、全国のゲームセンターで好評稼動中という報告のみに留めますが、ちょっと油断しているうちに新情報が続々とネット上へアップされるので、次回更新時には古びた情報ばかり紹介する事になるかも知れません……。

 久しぶりの「鉄拳」ネタによる更新でしたが、リサーチ不足で不燃焼気味な内容となってしまいましたm(_ _)m
 その埋め合わせというわけではありませんが、描き下して頂いた新作のリョナイラスト(もちろん、やられ役はリリです)を今月中にSSと併せて御紹介します。
 想像力を掻き立てられるか分かりませんが、リリの新作リョナイラストをモザイク処理した状態で先行公開してみました。
 イラストの魅力を引き立たせられるよう、持てる力を総動員してSSを完成させたいです。


リリVS木人(モザイク処理Ver)
(C)アキラ
リリ対スパイラス(モザイク処理Ver)
(C)きてぃ

「魔法少女まどか☆マギカ Another」  寒月(後編)

シーン11:さやかの本音(12月4日 午後9時)

 さやか(わたし、杏子になんて事を言っちゃったんだろう。土曜日の夕方、杏子はわたしを優しく慰めてくれた。怒りにまかせて頬を叩いても笑って許してくれた。そんな杏子に向かって『この街に来なきゃよかったのよ』だなんて……。ブレスレッドを投げつけられた時の悲しそうな顔、瞼に焼付いて離れないわ。元を正せば杏子の言う通りよ。わたしが匿名の善意で自己満足に浸り、自分の気持ちを伝えられなかったのが悪かったんだわ。頭に血が上って怒鳴り散らし、心配してくれた杏子の心をズタズタに傷つけたうえ、ブレスレッドまで投げつけて……。いつもそうだわ。失くしてから大切な物に気が付くのよ。わたしって、ほんとバカ)


シーン12:一夜明けて(12月5日 午後7時45分)

 まどか「おはよ~。ほむらちゃん、杏子ちゃん」
 ほむら「おはよう、まどか
 杏 子「おはよう」
 いつもと変らない朝の学校風景。しかし、昨日のショックが抜けきらない杏子の心は重く沈んでいた。
 まどか「どうかしたの、杏子ちゃん。元気ないみたいだけど……」
 杏 子「ん? ああ、いや。別に……なんでもない」
 ほむら「顔色が悪いようだけれど、大丈夫?」
 杏 子「大丈夫だよ。ちょっと気分が乗らないだけさ」
 元気のない杏子を心配する二人。そんな時、さやかが教室へ姿を現した。
 さやか「おはよう」
 まどか「あッ、さやかちゃん。おっはよ~」
 ほむら「おはよう」
 杏 子「……」
 さやか「お・は・よ・う」
 杏 子「え?」
 さやか「聞えなかったの、杏子。おはようって言ってるの」
 杏 子「お、おはよう……」
 いつものように朝の挨拶を求めるさやか。その顔に軽蔑や憤怒の感情は微塵もなかった。
 さやか「ねえ、杏子。よかったら……」
 杏 子「ん?」
 さやか「今日のお昼は一緒に食べよう。あんたの好きな玉子焼き、少し甘めにして持ってきたんだ」
 杏 子「さ、さや……か?」
 さやか「なによ、その顔。わたしの手料理じゃ不満なの?」
 杏 子「そ、そんな事ねえよ」
 さやか「それなら昼は一緒に食べましょう」
 杏 子「ああ」
 さやか「それじゃ、お昼にね!」
 そう言い残して自席へ戻るさやかの背中を杏子は複雑な気持ちで見送る。
 杏 子(どういう事だ。さやかのやつ、昨日はあんなに怒ってたのに……)


シーン13:中庭の二人(12月5日 午後12時10分)

 午前中の授業が全て終わり、昼食の時間となった。
 さやかは杏子を中庭へ誘い、東屋の中で持参した弁当を広げた。誰もいない真昼の中庭は解放感満点である。
 今日は風もなく、太陽の弱々しくも明るい日差しが降りそそぐ。
 さやかは玉子焼きの一切れを箸で掴み、弁当箱の中から取り出すと杏子に向かって言った。
 さやか「ほら、杏子。これが特製玉子焼きよ。食べさせてあげるから、あ~んして」
 杏 子「よ、よせよ。そんな恥しいマネ。自分で食えるよ」
 さやか「いいから、いいから。ほら、あ~ん」
 杏 子「しかたねえな。あ、あ、あ~ん」
 さやか「はい、どうぞ」
 パクッ。モグ、モグ、モグ。
 さやか「どう? 美樹さやかのお手製玉子焼きの味は?」
 杏 子「うん、悪くない」
 さやか「そ、それだけなの、感想は」
 杏 子「冷めた時の事も計算した味付け、なかなかの腕前だな。マミの作る玉子焼きといい勝負だよ」
 さやか「他には?」
 杏 子「この柔らかさ、ふんわり仕上げるのにマヨネーズを使ってるだろう。口全体に広がる甘い味付けは溶かしたバターと加糖生クリームかな」
 さやか「へえ、食べるのが専門な杏子にしては冴えてるじゃない。正解よ。意外と料理に詳しいのね」
 杏 子「まあな。あたしだって食うだけが専門じゃないし」
 さやか「それでは御褒美に追加の一切れ。はい、あ~ん」
 杏 子「あ、あ~ん」
 まどか「さやかちゃんと杏子ちゃん、楽しそうだね」
 ほむら「ええ」
 まどか「邪魔しちゃ悪いから、わたしたちは教室で食べようか」
 ほむら「そうしましょう」
 一緒にランチを食べようと二人の後を追ってきたまどかほむらだが、目の前に展開される光景を見て割り込む事を遠慮した。
 まどか「ねえねえ、ほむらちゃん」
 ほむら「なにかしら」
 まどか「わたしたちもやろうか」
 ほむら「なにを?」
 まどか「さやかちゃんたちと同じ事だよ」
 ほむら「え?」
 まどか「わたしはほむらちゃんに、ほむらちゃんはわたしに。自分のお弁当から一品『あ~ん』ってやるの」
 ほむら「……」
 思いもよらぬ一言に茫然とするほむら。あまりの嬉しさにフリーズしてしまったが、まどかは逆に受け取ったらしい。
 まどか「や、やっぱり……駄目だよね。ごめんね。変な事を言っちゃって」
 ほむら「いいえ、やりましょう」
 まどか「え?」
 ほむら「やりましょう、食べさせっこ。まどかとなら喜んで」
 まどか「ほ、ほむらちゃん……」
 ほむら「さあ、時間が惜しいわ。わたしたちは屋上で誰にも邪魔されず昼食を楽しみましょう」
 まどか「あッ……。うん。そうだね」
 アツアツの二人を中庭に残し、ほむらまどかの腕を引いて屋上へ急いだ。


シーン14:夕暮れの二人(12月5日 午後4時40分)

 さやか「ごめんね、こんな所まで付き合わせて。寒くない?」
 杏 子「いや、別に。マミの家へ転がり込む前は真冬でも土管の中で寝てた事があるから、これくらいの寒さは何ともないよ」
 学校の中庭でアツアツな雰囲気の昼食を済ませた後、さやかは杏子に「今日の帰り、見滝原中央公園まで付き合ってくれない? 大切な話があるの」と伝えた。
 ほむらを拝み倒して掃除当番を代わってもらったさやかは杏子と一緒に定時で下校し、失恋の苦い思い出がある見滝原中央公園までやって来たのだった。
 陽は西に傾き始め、夕暮れの足音が刻一刻と迫って来る。
 杏 子「それで、大事な話ってのはなんだい?」
 さやか「あのね。ええと……」
 どうやって話を切り出したらいいのか、その言葉が見つからないさやかは俯きながら口ごもる。
 しばらく無言の時が流れ、寒々しく吹きすさぶ風の音だけが公園内に虚しく響く。
 この沈黙を先に破ったのは杏子だった。
 杏 子「もしかして、昨日の事か?」
 さやか「う、うん」
 杏 子「ごめん。本当に悪かったよ、さやか。あんたの気持ちも考えないで勝手な事を……」
 さやか「違う」
 杏 子「え?」
 さやか「違うの。謝るのは……わたしの方」
 杏 子「さやか……」
 意を決したさやかは顔を上げ、心の中でくすぶらせていた罪悪感を言葉にして杏子へ伝えた。
 さやか「昨日は本当にごめん。杏子の気持ちも考えず、深く心を傷つけるような言葉で怒鳴りつけちゃって」
 杏 子「……」
 さやか「その事を謝りたかったの。杏子が優しく慰めてくれた、この公園で」
 杏 子「いいや、謝るのはあたしの方だよ。余計な口出しを……」
 さやか「杏子は悪くない。あんたの言う通り、自分の気持ちをハッキリと伝えられなったわたしが悪いの。本当に……本当にごめんなさい」
 さやかは大きな声で謝罪し、深々と頭を下げた。彼女の青く短い髪を一陣の風が掻き乱す。
 さやか「頬を叩いても許してくれた、落ち込んでいるわたしに胸を貸してくれた。それなのに……。それなのに……」
 杏 子「も、もういいよ。あたしは気にしてないから」
 昨日とは正反対の態度に杏子は戸惑いを隠せず、ただ慌てるだけだった。
 さやか「勢いとはいえ大切なブレスレッドを投げつけ、そのうえ『この街に来なければよかった』なんて酷い言葉まで口にしちゃって」
 杏 子「だから、もう……」
 さやか「あの時の杏子の悲しそうな顔が瞼から離れなくってさ、昨夜(ゆうべ)は夜中まで眠れなかったんだ。だから……どうしても謝りたかったの。本当にごめんなさい」
 杏 子「顔を上げなよ、さやか。元はと言えばあたしが悪かったんだ。謝るのは……あたしの方だよ」
 さやか「違う。悪いのは……。んぐッ」
 このままではキリがないと思った杏子は、顔を上げたさやかの唇に自分の唇を重ね合わせた。
 強引な態度に抵抗を見せるかと思いきや、さやかは杏子を拒絶しようとせず、目を閉じたまま甘美なキスを受け入れる。
 ミントガムを噛んでいるので軽く唇を押し付けただけだが、さやかの温もりが唇を伝って感じられた。
 黄昏前の残光を全身に浴びながら、二人は微動だにしない。
 さやか「……」
 杏 子「……」
 さやか「……」
 杏 子「ハァ~(´0`)」
 先に唇を離したのは杏子だった。僅か1分にも満たない口づけだったが、その短い時間が二人には数時間にも感じられた。
 杏 子「これが……あたしからのお詫びだ」
 さやか「……」
 杏 子「さやか?」
 さやか「……」
 杏 子「怒ってるのか? ファースト・キスの相手があたしだったから」
 さやか「くすッ……。あっははははは」
 杏 子「ど、どうしたんだよ。さやか
 さやか「あんたのキスはミントの味がしてさ、これがファースト・キスの味なんだって思ったら……。あっははははは。なんだか知らないけど笑いが込み上げてきちゃった」
 杏 子「なんだ、おどかすなよ」
 さやか「ねえ、杏子」
 杏 子「ん?」
 さやか「わたしの事……許してくれる? また、友達になってくれる?」
 杏 子「許すに決まってるだろ。それに……」
 さやか「それに?」
 杏 子「友達をやめた覚えはねえぜ」
 八重歯を見せながら杏子は優しく微笑み、鞄の中からブレスレッドを取り出した。
 杏 子「ほら。落し物を返すよ」
 さやか「杏子……」
 杏 子「大事な物なんだろ。もう落とすんじゃねえぞ」
 さやか「あ、ありがとう。どうもありがとう」
 目に涙を浮かべながら、さやかは受け取ったブレスレッドを左腕に装着した。


シーン15:一枚の写真(12月6日 午後12時30分)

 翌日の昼休み。ランチを食べ終えた杏子にほむらが話しかけてきた。
 ほむら「佐倉杏子」
 杏 子「なんだ、ほむら?」
 ほむら「話があるの。屋上まで付き合ってくれないかしら?」
 杏 子(小声で)「またか。昨日から中庭だの公園だの付き合ってばかりだな」
 ほむら「なにか言った?」
 杏 子「いいや、なんでもねえよ。付き合ってやる」
 ほむら「ありがとう。手間は取らせないわ」
 連れだって教室を出て行く二人だが、その後姿を見つめる女生徒の存在には気付かなかった……。
 肌を刺すように冷たい木枯らしのせいか屋上まで足を運ぶ生徒はおらず、青空が見渡せる広い空間には誰もいない。
 ガチャリ。
 ドアが開き、無人の屋上へ二人の人影が姿を現した。ほむらと杏子である。
 杏 子「それで? 用件はなんだ」
 ほむら「これを見て」
 眩しそうに太陽から顔を背けたほむらが差し出した手には二枚の写真があった。
 杏 子「写真じゃねえか。これがどうした?」
 ほむら「ここに映っている光景、見覚えあるでしょう」
 杏 子「映っている光景? ん? う、嘘だろう……。なんで……この写真をほむらが……」
 ほむらから受け取った写真を見て杏子は愕然とした。そこに写っていたのは制服姿の杏子とさやかがキスをしている瞬間だったからだ。
 しかも、そのうちの一枚は御丁寧にも重ねあう唇を横向きアングルから可能な限りアップにして撮影したショットであった……。
 ほむら「昨日の学校帰り、公園の前を通りかかった時に撮影したのよ」
 杏 子「なるほど。あの噴水は入口から丸見えだからな。迂闊だった……」
 ほむら「どのような経緯(いきさつ)があったのかは知らないけれど、あなたが羨ましいわ。好きな娘(こ)の唇を堂々と奪えたのだから」
 杏 子「そ、そんなんじゃねえよ。って言うか、この写真をあたしに見せてどうしようってんだ。脅迫でもするつもりかよ」
 ほむら「馬鹿な事を言わないで。思い違いも甚だしいわ」
 キリリと柳眉を逆立てて……とまでは言えないものの、ほむらは少し怒った表情で杏子を睨みつけた。
 杏 子「わ、悪かった。今のは言いすぎだったよ。許してくれ」(なんか、昨日から謝ってばかりだなぁ)
 ほむら「わかればいいのよ」
 杏 子「それで、この写真をどうしたいんだ」
 ほむら「よかったらプレゼントするわ。そのつもりで撮影したのだから」
 杏 子「ほ、本当か?」
 ほむら「ええ。ただ、シチュエーションが際どいだけに人目の多い場所では渡せなかったのよ」
 杏 子「それで屋上へ呼び出したのか。まあ、その判断は正しかったよ。こんな場面、あたしだって他人(ひと)に見られたくねえからな」
 ほむら「喜んでもらえたかしら?」
 杏 子「ああ。ありがとう、ほむら
 ほむら「どういたしまして」
 杏 子「この画質から判断するとデジカメで撮影したように思えるんだが……。なんで学校帰りなのにカメラなんか持ってたんだ?」
 ほむら「もちろん、まどかを撮影する為よ」
 杏 子「はぁ? まどかを撮影するだって?」
 ほむら「ええ。あの娘(こ)が熱心に授業を受ける姿、体操服で運動する姿、休み時間に友達と喋りながら笑う顔、美味しそうにランチを食べる顔。時間を止めて素敵な写真を撮り放題。わたしの『まどかコレクション』を一枚でも増やす為、いつもデジタルカメラを持ち歩いているのよ」
 杏 子「さすがだねえ、その情熱。不意の持ち検(=持ち物検査)も時間を止められりゃ怖くねえしな。くぅぅ、羨ましすぎる」
 ほむら「数枚だけなら美樹さやかの写真も撮ってあげるわ」
 杏 子「えッ? いいのか?」
 ほむら「特別サービスよ」
 杏 子「ほ、ほむら……」
 ほむら「どんな写真が欲しいのか言いなさい。できるだけ要望に応えるわ」
 杏 子「そ、そ、それじゃ……。さやかが制服を脱いで体操服に着替える瞬間を撮ってくれないか。そのショットが一枚あれば……あたしは……じゅ、じゅ、充分だ」
 ほむら「着替えのショットね。わかったわ。金曜日の体育が終わるのを楽しみに待っていなさい」
 杏 子「ありがとう、ほむら。ワルプルギスの夜を倒してから、随分と優しくなったな」
 ほむら「心境の変化とだけ言っておくわ。そろそろ教室に戻りましょう。体が冷えてきたわ」
 杏 子「そうだな。でも、その前に一つだけ聞いていいか?」
 ほむら「なにかしら」
 杏 子「ほむらの『まどかコレクション』で最高の一枚ってのがあれば教えてくれないか」
 ほむら「コレクション最高の一枚は……これよ」
 間髪入れない即答と同時に、ほむらは制服の内ポケットからラミネートカードケースを取り出した。
 そこには定期券サイズにカットされた写真が入っており、銀色に輝くパイプで組み立てられたハシゴを昇ってプールから出ようとするまどかの後姿が映っている。
 激しい運動を終えた後らしく、スクール水着の股下部分が小さなヒップに食い込んでいた。
 杏 子「水着姿って事は水泳の授業で撮影したのか。執念の一枚だな……」
 ほむら「自画自賛するわけではないけれど、この一枚は奇蹟のショットだと自分でも思っているわ」
 杏 子「この被写体がさやかだったらなぁ。あ~あ、ほむらの秘密を夏に知ってれば、あたしもさやかの……」
 さやか「水着写真を撮って貰うんだった、なんて言うんじゃないでしょうね」
 杏 子「ゲッ。さ、さやか。いつの間に」
 まどか「ひどいよ、ほむらちゃん。こんなのってないよ」
 ほむら「まどか……。ち、ち、違うの。これは違うのよ。誤解しないで」
 いつの間にか、教室を出て行く二人の後姿を見送っていたさやかまどかも屋上へ来ていた。
 話に夢中だったほむらと杏子の耳には階段を上がる足音が聞えなかったらしい。
 さやか「二人して寒い屋上で卑猥な写真の交換会? まったく、呆れて言葉も出ないわ」
 杏 子「違うんだ、さやか。あたしの話を聞いてくれ」
 杏子が弁解しようとした瞬間、手に持っていた二枚の写真が強い風で飛ばされてしまい、あろう事かさやかの顔に直撃した。
 杏 子「や、やべえ……」
 さやか「うっぷ。な、なにすんのよ」
 杏 子「うあぁぁぁ。見るな、さやか。見るな」
 さやか「なによ。なにが写って……るの……よ……」
 杏 子「ああ~、もう終わりだ」
 ほむら「あきらめなさい、佐倉杏子」
 愛するまどかに秘密を知られ、絶望の極地に立つほむらは他人事のように言った。
 さやか「こ、こ、これ……これって……昨日の写真じゃないの」
 杏 子「あたしは知らない。ほむらが勝手に撮影したんだ。それを譲ってくれるって言うんで……」
 さやか「あんた、まさか貰うつもりだったんじゃないでしょうね」
 杏 子「え? ええと……。そ、そんな事……」
 さやか「聞くまでもなかったわね。態度でバレバレよ」
 杏 子「違うんだ、さやか。誤解だって」
 さやか「言い訳は聞きたくないわ。まどか、教室へ戻ろう」
 まどか「う、うん。そうだね」
 杏 子「さ、さやかぁぁぁ~」
 ほむら「待って、まどか。行かないでぇ~」


エピローグ:(12月6日 午後4時10分)

 帰りのホームルームが終わり放課後となった。
 教室を出て行こうとするさやかの前に立ちはだかった杏子は昼間の事を詫びた。
 杏 子「さやか、ごめん。昼間の事は心から謝る」
 さやか「……」
 杏 子(さやかにだけ聞えるような小声で)「あれは……さ、さやかの事が……す、す、好きだから口に出た言葉だった。ぜ、ぜ、絶対に変な下心がったわけじゃない。これだけは嘘偽りのない本音だ」
 さやか「……」
 杏 子「信じてくれ……なんて調子のいい事は言わない。信じてもらえなくて当然だからな。でも、これだけは言わせてくれ。(さやかにだけ聞えるような小声で)大好きだ、さやか
 さやか「くすッ。あっはははは」
 杏 子「な、なんだよ。笑う事はねえだろ」
 さやか「あんたには負けたわ。そんなセリフを恥しげもなく言えるなんて」
 杏 子「べ、別に恥しくなんかねえよ。あたしの本心なんだから」
 さやか「あはははは。いいわ、許してあげる。あんたの純情さには勝てないわね」
 苦笑しながら、さやかは杏子から取り上げた写真を鞄の中から取り出した。
 さやか「返すわ、この写真。でも変な事に使うんじゃないわよ」
 杏 子「変な事って?」
 さやか「バカ。そこまで言わせる気」
 同じ頃、自席で週直日誌を書いているまどかの前にほむらが現われ、深々と頭を下げた。
 ほむら「まどか、ごめんなさい。あなたを思うあまり、わたしは許されない事をしてしまった」
 まどか「ほ、ほむらちゃん……」
 ほむら「あなたを守りたくて手に入れた魔法(ちから)を邪(よこしま)な下心の為に使った。この事について言い訳はしないわ。百万言を費やしても償いきれない罪を犯してしまったのだから」
 まどか「……」
 ほむら「これは写真のデーターが入っていたメモリーカードよ。内容は全て消去してあるわ。それから、これが例の写真よ。あなたに返すわ。思うように処分して頂戴」
 まどかの机の上にメモリーカードと裏返した写真を置いたほむら。そのまま踵を返し、ポツリと呟いた。
 ほむら「貴重な時間を無駄にさせてしまったわね。さようなら、まどか
 立ち去ろうとするほむらの哀愁漂う背中に向かい、まどかは優しく声をかける。
 まどか「待って、ほむらちゃん。これは受け取れないよ」
 ほむら「え?」
 まどか「ほむらちゃんの気持ち、よく分かってたよ。わたしの事を誰よりも大切に思ってくれる気持ち、ずっと前から気付いていた」
 ほむら「まどか……」
 まどか「ちょっと恥しいけど、この写真はほむらちゃんの大切な写真なんでしょう。だから……受け取れないよ……。このカードも」
 ほむら「……」
 まどか「わたしなんかでよかったら、いつでも写真を撮って」
 ほむら「許してくれるの? この……わたしを……」
 まどか「うん。これからは無断撮影をしないって約束してくれれば、それだけで充分だよ」
 ほむら「約束するわ、まどか。この能力(ちから)は二度と悪用しない」
 まどか「それじゃ、これで仲直りだね」
 ほむら「ありがとう、まどか。あなたは本当に優しい娘(こ)だわ。だからこそ、わたしも命をかけて守りたくなるのよ」
 まどか「大袈裟だよ、ほむらちゃん」
 こちらでも和解が成立した時、教室の向こうからさやかの声が聞えてきた。
 さやか「まどかぁ~、悪いけど今日は先に帰るね。ほむらぁ、まどかをいじめるんじゃないわよ~」
 まどか「また来週ねぇ。さやかちゃ~ん、杏子ちゃ~ん」
 杏 子「おう」
 ほむら「心配無用よ、美樹さやか。あなたこそ佐倉杏子と仲良くしなさい」
 さやか「な、なにを言うの。あんたは余計な事を心配しなくてもいいのよ」
 杏 子「ほむらこそ、まどかと仲良くやれよ~。じゃあな」
 ほむら「ええ。よい週末を」
 二人の姿が教室から見えなくなった。それと同時にまどかは嬉しそうに言う。
 まどか「さやかちゃんと杏子ちゃんも仲直りできたみたいだね」
 ほむら「雨降って地固まる。二人の絆は以前よりも深まったようだわ」
 まどか「わたしたちも?」
 ほむら「もちろんよ」
 まどか「うぇひひ。嬉しいなぁ。ほむらちゃんと前よりも仲良くなれて」
 どうにか四人の仲は丸く収まり、これで万事解決となった。
 夕方前だと言うのに夕暮れが迫る寒々とした空には月が浮かんでいた。
 煌々と冴える冬の月は寒そうに見えるが故に「寒月」と呼ばれる。
 窓越しに見える寒月へまどかの笑顔を重ね合わせ、ほむらは口元をほころばせた。
 ほむら(わたしも嬉しいわよ、まどか。あなたと前よりも仲良くなれて。今は無理でも、いつか優しい笑顔をわたし一人のものにしてみせる。夜空に冴える寒月よりも明るい笑顔を独占させてもらうわ。いつか……必ず……)
 週直日誌を書き続けるまどかに視線を戻し、ほむらは心の中で宣言した。


The End


【あとがき】
 ネット接続できない日々が続いた為、完結まで3週間近くを要しました。空き時間を利用して少しずつ書き進めた本作ですが、構想段階とは全く違う物語に仕上がっています……。
 最初の予定では「杏×さや」カップルが破局・仲直りしてラブラブ度が以前よりも高まる過程をジックリと描く筈でしたが、自分には向かないテーマであった事を徐々に痛感し始め、最後は「ほむ×まど」絡みのギャグ路線で強引に話をまとめてしまいました。タイトルと内容の関連性が薄いのも、このような理由によるものです。
 島田荘司氏は自作「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」執筆当時の事を振り返った小文にて、「作中でシャーロック・ホームズが笑うシーンを描こうと決めていながら失念し、最後に強引な方法を用いてホームズを笑わせた」と述懐していますが、その故智に習い、最後の最後でタイトルと内容を絡ませるような文章を挿入しました(蛇足と呼ばれる事は百も承知です……)。
 反省点の多い本作ですが、いろいろな同人誌で描かれる「杏×さや」の百合っぽいシーンを自分なりに描くという目標を無事に達成できて一安心しています。
 具体的な内容までは煮詰まっておらず、漠然としたアイディアしかありませんが、魔法少女五人がシミュレーション世界で様々なゲームのキャラクターになる中編、夏休みを利用した加音町への旅行で「スイートプリキュア」のメンバーと出会う長編も書いてみる予定です。

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