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2017-03

浣腸される意識を失った美女(斎藤栄「謎の女真教団」より)

★★「2016年 歳末バスター技イラスト特集」開催中 【】【】【】★★



 高齢により事実上の作家引退となった斎藤栄氏は、現役時代、膨大な数の作品を発表しながら数多くのシリーズキャラクターを生み出しました。
 タロット名人の二階堂日美子(ひみこ)。作家の柏木太陽。退職刑事の星月源吾。鉄道警察隊員の江戸川匡太郎。警視庁警視正の小早川雅彦。産婦人科医の甲賀太一郎。鍼師の鍼医(はりい)狼斎(ろうさい)。大学助教授の菅原道真。等々……。
 いずれも個性豊かなキャラクター揃いですが、その中でも特にユニークなのは鍼医狼斎でしょう。
 本名を山田太郎といい、十年の修業を経て北京へ留学した鍼医師です。
 三十代の若さで活殺自在の鍼技術から体内での猛毒管理といった人体整理を極め、青山に住まいと診療所を持っています。香港で知り合った甘利圭子が受付嬢と看護婦の兼任として雇われ、何か事件に巻き込まれた際は彼女が狼斎のパートナーを務めます。
 狼斎の事件簿は全四作書かれ、昭和53年に桃園書房から刊行された短編集『地獄の園遊会』へまとめられました。

 詳しい書誌データを調べきれていませんが、鍼医狼斎シリーズの一編「女真宗国の秘密」は平成7年に「謎の女真教団」へ改題されて同題の短編集へ収録された際、内容が加筆されたそうです。
 本作では、新宿の路上で行き倒れていた美女を救った狼斎が南アルプスの二児山付近を占拠する怪教団に狙われ、命の危機にさらされながらも【女真教】の秘密を暴きます。
 全編にエロチックな雰囲気が漂い、女体美の描写(集英社文庫『謎の女真教団』P168,P171~172,P209,P224)や美女への拷問シーン(同書P236~238)、さらにはセクシャルな古代宗教釈義(同書P210)の記述もあり、物語を彩る男性読者へのサービスも満点でした!

 数多いエロチシズムな描写の中でも、物語冒頭、狼斎が意識不明の美女への気付けとして浣腸をするシーンには度肝を抜かれました。
 不潔な環境下に置かれた事による抵抗力の低下が失神の原因と推理した狼斎は、輸液や酸素吸入でも目覚めない女性へ最後の手段として雑菌を除去する薬剤の浣腸を試みるのです。
 事細かくとは言えませんが、そのシーンを斎藤氏は色気ある描写で読者に見せてくれました。


 狼斎は、〈2号さん〉のベッドサイドへ行き、しばらく病人の様子を見ていたが、
「そうだ。ひとつ、この女に浣腸をしてみよう」
「浣腸ですか?」
「そう。どうも、この女の躰は、純粋培養的にできているらしい。そのために、何か東京で食べたものの雑菌が、急に腸内で増殖してしまい、躰にショックを呼んだとしか思えないんです」
「浣腸で、その悪いものを出してしまえば、いいわけですの?」
「きっと、それで効果があると思いますよ。やって下さい」
 狼斎に命じられた圭子は、浣腸器に二百ccの薬剤を吸いあげた。そして、〈2号さん〉の腰の下に枕を入れ、器具が容易に肉体に沈みこむように位置をかえた。
 女は、かすかに「あ」というような叫びをあげた。
 リスリンを、小さな美しい茶色の菊にすりこみ、そこへ、ゆっくりと挿入する。それからピストンを送りこむ……。
「せんせい……。処置はすみましたわ」
 しばらくして、圭子は狼斎に報告した。

≪集英社文庫『謎の女真教団』P176≫
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新井リュウジ『怪奇探偵カナちゃん』(小学館ジュニア文庫)

 日本SF作家クラブ会員の新井リュウジ先生による少女探偵物の短編集『怪奇探偵カナちゃん』(小学館ジュニア文庫)は久しぶりの良作ミステリーでした!
 秀才中学生の新田佳奈、運動能力抜群の永井博子、文武両道に秀でた美人教師の風祭魅緒先生。この三人が「怪奇探偵部」(この奇妙なサークルの設立秘話もユニークです!)の部員&顧問という形で不可思議な事件に挑み、その謎を解き明かしていきます。
 超常現象としか思えない怪事件を論理的に解決するという趣向は、円谷プロ全盛期の名作ドラマ「怪奇大作戦」を思い出させますが、非科学的な解決で終わる事件や解かれない謎を残したまま終わる事件も珍しくない同作と違い、佳奈と博子が遭遇した事件は全ての謎が科学的な説明によって決着がつき(厳密に言えば、幽霊が存在する事を前提にしたシーンもありますが……)、その部分に本格ミステリーの精神(スピリッツ)が感じられました。

 本書には、人を溶かすという霧の謎を扱った「人喰い霧」、廃病院で目撃される生首の謎に迫る「笑う生首」、自動車事故を引き起こす無人運転の自転車が登場する「幽霊自転車」、神事を妨害する卑劣漢に罰を与える異色の事件簿「少年チャージ!」の四作品が収録されています。
 練りに練られたトリックや犯行動機は推理小説が好きな大人の鑑賞に堪えうるレベルであり、どの作品も、長寿連載の某ミステリー漫画と比肩しうるクオリティに仕上がっていました。
 探偵役の年齢や事件の内容を配慮したうえで読者対象をジュニア世代に定めたのでしょうが、読者層をローティーンの少年少女だけに限定するには惜しい傑作揃いです……。

 第一話「人喰い霧」は独創な理科系トリックと意表を突いた犯行動機が見事に結びつき、見事な犯罪の構図も形勢しています。このトリックを中学生が見破れるかという疑問点はあるものの、ミステリー専門誌に掲載されても違和感のない完成度でした。
 第二話「笑う生首」は彷徨う生首の謎が現場検証によって暴かれる経緯が本格ミステリーらしく、理路整然とした推理の構築が見所です。本当に呪われていそうな舞台を効果的に用いた犯人への警告によって騒動を終わらせ、あえて事を荒立てない佳奈の思慮深さが印象に残りました。
 第三話「幽霊自転車」は無人の自転車が走るトリック(文章だけの説明では、やや理解し難いです……)も優れていますが、事件の演出者が法律上の犯罪に手を染めなければならなかった背景が丁寧に書かれており、単なる推理クイズではない内容の濃さでした。爽やかな結末ながら、恐怖系TVアニメ「ハイスクールミステリー 学園七不思議」や「怪談レストラン」の原作として通用しそうな内容でした。
 最終話「少年チャージ!」は佳奈と博子がスーパーヒーローに変装して神事を妨害しようとする悪漢に罰を与える異色作です。なぜ「スーパーヒロイン」ではないのか、なぜ変装する必要があったのか、その理由付けが現実的であり、探偵行為の危険性についても言及されてるあたり、中学生探偵の存在にリアリティを持たせようとする努力が感じられました。

 読者年齢層や「小学館ジュニア文庫」というレーベルに先入観を持たず、本格ミステリーが好きな方は手にとってみる事をお薦めします!
 新井先生には失礼な言い方になりますが、本書は久々の『アタリ』作品でした。

 余談ながら、新井先生の原作漫画作品「魔法の用心棒ミオ!2 大ピンチ!地獄病院突破せよ!」(あらいりゅうじ名義/画=針玉ヒロキ)では若き日の風祭魅緒が活躍するそうです。
 Twitterを通じ、原作者の新井リュウジ先生からご教示いただきました! 一読者の拙い読書感想ツイートへ丁寧なレスポンスをいただく事ができ、恐悦至極・平身低頭・欣喜雀躍ですw

苦難や危機に見舞われる女性たち(野村胡堂「地底の都」より)

 数多い捕物帳の中でもダントツの知名度を誇る「銭形平次捕物帳」の作者として有名な野村胡堂氏は、昭和初期から終戦直後にかけて少年少女向け小説(以下、ジュブナイル物と表記)の分野でも大活躍していました。
 熱烈な愛読者ではないので誤認してるかも知れませんが、存在が確認されている野村氏の少年少女向け作品は全て単行本化されていると思われます(未完作品とされている長編「九つの鍵」でさえ、2007年に作品社から刊行された末國善己氏の編書『野村胡堂探偵小説全集』で読む事ができます!)。

 未来をになう少年少女には清く正しく育って欲しいという願いがあったのか、野村氏の書くジュブナイル物は勧善懲悪な物語構成と品行方正なキャラクターの登場が目立ち、お上品な読物という印象が強いです。
 偉そうに語れるほど野村氏のジュブナイル物を読んでいない読者が言うのもおこがましいのですが、起伏に富んだストーリー展開で作品世界に引き込ませはするものの、どの作品も似通った内容になっているように感じられてなりません。
 刺激的な描写が抑えられているせいかヒロイン役の少女が危機に陥る場面も物足りなさを覚え、少なくとも、私にとって野村氏のジュブナイル物は相性が悪いようです……。

 そんな中、昭和7年に『少年倶楽部』へ一年連載された「地底の都」という長編には、野村氏のジュブナイル物にしては珍しい受難シーンが描かれており、リョナラー読者の妄想を掻き立てるシーンが用意されていました。
 従兄弟にあたる春日一家を危難から救おうと勇気を振り絞って悪人に立ち向かう少女、鼓(つづみ)恵美子。
 火山の噴火で埋まった都に眠る財宝を発見した考古学者の妻、春日桃子。
 心ならずも悪者(わるもの)の手先となっていた、日本人の血を引く金髪の美少女、エムマ。
 彼女たちは様々な苦難や危機に見舞われ、ある者は縛られて誘拐されそうになったり、悪漢に羽がい締めにされたり、ある者は縛られたまま焼き殺されそうになったり、ある者は猛犬に襲われてスカートを切り裂かれたり、椅子に縛りつけられたまま放置されたり、なかなか刺激的な受難場面が描かれています。
 以下、順番に彼女たちの受難場面を抜き書きしてみましょう。

 
 飛ぶように行って見ると、猿ぐつわや縄目を解かれて、ようやく意識を取り返したばかりの恵美子が、狐につままれたように、自分を取り囲む警官の人垣を見回しているのでした。
【中略】
「あっ、陽一さん、大変よ、大変よ」
 美しい美恵子の、真珠色の頬は、ようやく紅(くれない)さして、もう涙が、長いまつ毛を伝わります。

【中略】
「ゆうべ――と言っても、もうあけ方だったでしょうね。いきなり、わたしは縛り上げられて、猿ぐつわをかまされて、自動車につまれたことだけ知っているの、自動車の中には、わたしばかりでなく、三、四人の人が、なんでも俵のように積まれてあったようよ、わたしは一番上積みになったので、次の人を積み込むためかなんかで、そばに誰もいない時、そっとからだを動かして見ると、いいあんばいに自動車の外へころげ落ちたのよ」
【中略】
 恵美子はそういって、自分の泥まみれになった寝巻きをきまり悪そうに見回しました。
≪少年小説文庫『地底の都』P30~31≫

「さあ、小僧ども、どうだ、降参だろう」
 穴倉の中では蟹沢が、美恵子のからだを羽がい締めにして、こんなことを言っておりました。
「そのピストルを撃つなら撃って見ろ、この娘ののど笛を締め上げてしまうぞ」

≪少年小説文庫『地底の都』P125≫

「よく言った、博士、わたしもこれ以上は言わないが、あれを見るがいい」
 ハリスの指さした先には、博士夫人の桃子、これも麻縄でひしひし
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)としばり上げられて、もう一つのテーブルの脚につながれたまま、あお白い顔をふせて、観念のまなこを閉じております。
「蟹沢、用意しろ」
「おっ」

【中略】
「博士、これは最新式の小爆弾だ。この口火が燃えつきると、夫人一人は完全に殺せるが、ほかには――窓ガラスくらいはこわれるだろうが、まず大した影響はないつもりだ、口火はようど十分で燃えつきる、それまでに言うことがあったら言ってもらいたい。言うことがなければ、だまって夫人の死ぬのを見ておられるがよろしい」
【中略】
「あなた、どうぞ、なんにもおっしゃらないでください、お国のため、学問のためなら、わたしは死んでも本望でございます」
≪少年小説文庫『地底の都』P210~211≫

「あっ」
 蘭堂は思わずピストルを投げ出しました。猛犬の牙に、拳をかまれたのです。
「エムマ来い」
 もうこうなっては、意地も我慢もありません。蘭堂は、側にあった椅子を、五郎目がけてたたきつけると、身を反してエムマを横抱きに、窓わくを超えて、玄関の庇(ひさし)の上に飛び出しました。
 それを追いすがって猛犬五郎、数日間の虐待と飢(うえ)がどんなに骨身にこたえたでしょう。容赦もなくエムマの腰へ腰へ
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)
 さいわい牙はわずかにそれましたが、スカートは無残にさかれ、五郎の顎(あぎと)にひらひら(引用者註:原文ではおどり記号を使用)と残ります。
「あっ、助けて――」
 その間に蘭堂は、必死にスレートを渡って、玄関の上を越すと、庇伝いに裏へ、非常梯子を伝わって屋上へ――、金髪娘のエムマを、傷ついた手で抱えては、ほかに逃げ道はなかったのです。
 しかし、五郎はそんなことで、あきらめはしませんでした。スカートの断片を捨てると、追いすがって屋根の上へ。

【中略】
「あ、蘭堂、助けて――」
 娘の声は、恐れに引き千切られた、朧の夜の空気を、紙のごとくふるわせます。が、蘭堂もたった一つの武器を失って、いまは全く手の下しようもありません。

≪少年小説文庫『地底の都』P166~167≫

 春日陽一少年や滝川博士の一行が、愛宕山の麓の『死石』を探りあてて、これから『地底の都』へ入ろうとしている少し前、御殿場の秘密の家では、ハリスと蘭堂が、金髪の美少女エムマをつかまえて、ひどい目にあわせておりました。
【中略】
「あっ」
 エムマが飛びのくひまもありませんでした。蘭堂の右手はさっとのびて、その襟髪
(えりがみ)をつかむと、左手は手提げを引ったくって、その中から、暗号電報の控えを抜き取ってしまいました。
【中略】
「暗号電報だよ、蘭堂、エムマをしばっておいて、こっちへ来るがいい。君のように日本で育ったものでないと、この暗号をとくのはむずかしい」
「承知しました」
 蘭堂はそう言うと、やにわに飛びついて、エムマをひきすえ、有り合わせのひもやらバンドやらを集めて、椅子の上へぐるぐる
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)としばってしまいました。
【中略】
 それから何時間の後――。
 いや、何時間どころではありません。日が暮れて、夜があけて、あくる日の太陽が、窓からあかあか
(引用者註:原文ではおどり記号を使用)と射し込んで来るまで、エムマは椅子にしばられたまま、ほおっておかれたのですから、手も足も、からだも、すっかりしびれてしまって、身動きする気力もなくなってしまった頃でした。
【中略】
 エムマは、椅子を背おわされたまま立ち上りました。
「大変っ」
 いうまでもなく蘭堂は、一晩かかってあの暗号電報をといた上、どっかへ出かけて行ったに相違ないのです。
 もし、春日博士の子の陽一少年たちが、一時間でも暗号をとくのがおくれたらどんなことになるでしょう。エムマは椅子を背おったまま、傷ついた虫のように、部屋の外へはい出し、そこから長い廊下を、春日博士の幽閉されている密室の方へ、恐ろしい骨折りでたどりました。幸い、一台の自動車に、ハリスと蘭堂と蟹沢と乗って行った様子で、家の中には誰もいません。

【中略】
 美少女エムマは、小さい窓の下から、密室の中へ声をかけました。
「お、エムマさんか」
 春日万里博士は、古椅子の上に登って、小さい窓から見ると、廊下には椅子にしばられたエムマが、蜘蛛の巣にかかった、美しい揚羽の蝶のように、もがいているのでした。

≪少年小説文庫『地底の都』P256~258≫

アクション+謎解き+エロスの醍醐味(山村正夫『華麗なる戯れ』より)

 先輩作家との交流を綴った文壇記録で探偵小説史研究の貴重な資料を残したり、カルチャースクールの作家講座などで後進育成に力を入れたり、探偵小説界における山村正夫氏の功績は計り知れません。
 その一方、昭和24年に雑誌の別冊付録へ一挙掲載されたデビュー作「二重密室の謎」以降、膨大な数の小説を様々な媒体へ発表する他作家として精力的な執筆活動も行っていました。
 本格探偵小説、SF、アクション物、怪奇小説、架空戦記、ユーモアミステリー……。山村氏が手を染めたジャンルは多岐に亙ります。

 山村作品の中には当ブログで紹介したい作品も多数あり、過去にも「古代諏訪生贄殺人」を取り上げた事がありました(関連記事はこちらから)。
 この作品は売春行為やロリコン趣味が絡む伝奇ミステリーでしたが、今回紹介するのはアクションと謎解きとエロチシズムを融合させた痛快娯楽小説集『華麗なる戯れ』という本です。
 読切系雑誌や倶楽部雑誌へ発表されたと思われる短編全7作を収めた本書は、昭和53年に春陽堂書店から文庫で刊行されました。
 主役の西郷四郎は東京大学医学部を首席で卒業したエリート医師ながら、妻の不倫が原因で世捨て人のようになり、新宿職安近くの小汚い外科診療所で町医者となりました。
 そんな無頼派医師の助手を務めるのが、看護婦のアルバイト契約をしている女子医大生の支倉陽子です。彼女は「一回一万円」で肉体を提供するアルバイトもしており、公私ともに西郷医師と深い関係があります。

 先述のように、本書はアクションと謎解きとエロチシズムが融合した痛快娯楽小説をまとめた短編集です。
 今回は短編集を取り上げるイレギュラーな構成のため、各作品に見られるお色気要素の簡単な紹介となり、いつものように該当シーンの抜き書きはありませんが御了承下さいませ。
 本書は版元品切れ本なので新刊としての入手はできないものの、古書としての流通量が多く、古書価の相場も500円前後となっているので、比較的容易に入手できると思います。

 第1話「血の代償」では、西郷と陽子の情交シーンを暗示させる場面(春陽文庫『華麗なる戯れ』P11)があり、悪漢に襲われた陽子が診療室の腰かけへ後ろ手に縛られ、猿轡をかまされる姿(同書P19)も描かれています。
 第2話「死体の履歴」には、事件のキーパーソンとなる女性の魅力的な肉体の描写(同書P54~55)が見られます。
 第3話「腐った傷痕」にも、西郷と陽子の情交間際の前戯場面(同書P74)が描かれています。
 第4話「視界ゼロ」には……残念ながら、これと言ったお色気場面は見られませんでした。
 第5話「華麗なる戯れ」では、西郷が連れ込み宿へ同伴したフウテン嬢のセクシーな瑞々しい裸体描写(同書P137)が見られ、後半には淫靡なヌードパーティーの様子(同書P161~167)が事細かに描写されています。
 第6話「健保殺人事件」の冒頭では、西郷と陽子がカーセックスに耽る場面(同書P188~192)が描かれています。
 第7話「情事の賭」には、売春斡旋宿での性交中、女性の膣痙攣により全裸で合体したまま離れられない男女の破廉恥な姿(同書P249~251)が描かれています。

 新刊書店で山村氏の著書を見かけなくなって久しいですが、ここ四半世紀の間に増えてきたマニアあがりの推理作家には見られない、発表媒体に合わせて作風を書き分ける器用さから生み出された珠玉の数々が埋もれて行くのは残念でなりません。
 時代が時代だけに山村作品の新刊復刻を望むのは厳しい状況ですが、今後も当ブログでは温故知新の精神を以って山村作品を紹介していこうと思います。

残虐なる異国の美女(甲賀三郎「イリナの幻影」より)

 戦前は江戸川乱歩氏と並ぶ探偵小説界のビッグネームだった甲賀三郎氏が日華事変勃発の直前に発表した短編「イリナの幻影」は、親日派の伯爵が密室で怪死した事件と妖艶な美女の秘密を絡ませたスパイ小説です。
 専業作家となる前は理工系の職に就いていたためか、甲賀氏は科学知識を駆使したトリックによる本格探偵小説を数多く書いており、その影響は本作での密室殺人トリックにも活かされました。

 本作のヒロインとなるイリナ嬢は肉感的な魅力を全身から発散させる美女として描かれており、その意外な正体が密室殺人の真相と共に物語終盤で明らかにされます。


 東洋風な黒い髪と黒い瞳を持ち、朱のような唇にいつも謎の微笑を湛えて、会見した人達を尽(ことごと)く脳殺した、豊艶な肢態の美女イリナは、父の意外な死を見ると、流石に西洋人らしく、忽ち気を失って終(しま)った。
≪春秋社『甲賀・大下・木々傑作選集7巻 甲賀三郎 霧夫人』P223≫

 イリナは黒の喪服を着て、流石に殊勝にはしていたが、黒の喪服も彼女の濃艶な身体を包むに由なく、肉の香は喪服を通して咽(むせ)ぶように発散し、黒い瞳に湛えた媚と、朱い唇にむき出しの微笑は、群がる見送人を恍惚たらしめ、永遠に忘れる事の出来ない印象を刻み込んだのであった。
【中略】
 (こと)に油断のならないのはイリナで、彼女はその肉感の溢れ出る姿体と、派手な、何物をも惹きつけないでは置かない美貌で若い外交官などは恰(まる)で忠実な奴隷のように綾なした。いや若い外交官だけではない、年配の実業家も、中年の政治家も、一眼彼女を見ると、忽ちその捕虜(とりこ)になって終(しま)い、裏店(うらだな)に住む娘さえが、イリナの姿を見て恍惚とするというほどであった。【後略】
≪春秋社『甲賀・大下・木々傑作選集7巻 甲賀三郎 霧夫人』P225≫


 世間では父娘(おやこ)関係とされる伯爵の死後、神戸から出国したイリナは上海で日本人に刺し殺されてしまいます。
 特務機関に属する秘密探偵はイリナを殺した男から告白文が綴られた手記を譲り受け、そこに記された驚くべき真実から、親日派のヴィンセント・カスタニエ伯爵殺害事件と上海でのイリナ刺殺事件の真相が明らかにされました。
 手記にはイリナの本性が書き知るされている他、彼女を殺した男の性的趣向も書かれているので、以下に該当部分を引用します。


 イリナは淫牙狂(サディスト)なのだ。残虐極まる事をして、昂奮(こうふん)を覚え、色情を満足させる精神異常者なのだ。ここで私は恥しい告白をしなければならないのだ。何を隠そう、私は哀れな被虐狂(マゾフィスト)なのだ。サディストとは正反対の、異性から甚(はげ)しい虐待を受けて始めて喜ぶ、色情狂なのだ。委(くわ)しい事は筆にするさえ不愉快だが、マゾフィストがサディストに出会った時には、それこそ天にも昇る喜びなのだ。
 ああ、イリナ! イリナこそは私に取っては、再び巡り会うことの出来ない、恐ろしい而(しか)し、愛撫を受けたい天使なのだ。私は眼を爛々と輝やかせ、胸に高く動悸をうたせながら、唸るようにいった。

≪春秋社『甲賀・大下・木々傑作選集7巻 甲賀三郎 霧夫人』P236≫

 以下十数行は読むだに悩ましい、都築博士の閨中秘事であった。
【中略】
 ああ無我の法悦境! 世に之ほどの悦楽があるであろうか。
 イリナの芳烈な体臭は、恰(まる)で魔薬(まやく)のように私の全身を痺れさせるのだ! 太く逞しいイリナの腕は底知れぬ力を籠めていた。その一打ちは、脳天から足の底まで、いい知れぬ快よさを、走らせるのだ。
 私はいつか失神状態だった。空には五彩の雲が燦然と輝やき、身の周囲(まわり)は香高き香華(こうげ)に埋(うず)められ、耳にはいみじき楽(がく)の音(ね)が聞え、恍惚裡に裸形の天使を仰ぎ、肉(ししむら)は破れ、血は滴り、五体は苦痛にのたうちながら、底知れぬ陶酔に身を横たえていた。

≪春秋社『甲賀・大下・木々傑作選集7巻 甲賀三郎 霧夫人』P237≫

サディスト未亡人とマゾヒスト美青年(浜尾四郎「マダムの殺人」より)

 検事、弁護士、貴族院議員という錚々たる職に就きながら、多忙の傍らに文筆活動を行っていた浜尾四郎氏は四十歳という若さで夭折しました。
 遺された作品数は決して多くありませんが、戦前期には珍しい論理的な謎解きを追求した「鉄鎖殺人事件」や法の権力をテーマにした「殺された天一坊」など、現在でも読むに堪えうる長短編を書いています。

 お固い職業がズラリと並ぶ職歴を見た限り、浜尾作品にお色気趣味やアブノーマル要素が盛り込まれる余地はないと思われる方も多いと思いますが、そんな事はありません。
 その格好な一例として、昭和6年に『朝日』へ発表された短編「マダムの殺人」が挙げられます。
 貧しい美貌のボーイが有閑未亡人に見染められ、プライベートな付き合いで可愛がられるようになりましたが、やがて本性を現した未亡人の罠によって破滅の道を突き進んで行く、という内容です。
 過激な表現があるせいか、私が読んだ平凡社の「現代大衆文学全集」収録版では文章削除箇所(本文中に「○字抹殺」との記述があります)がありました。

 この未亡人には加虐趣味があり、言葉巧みに別荘へ呼び出したボーイの木村正彦を肉体的&精神的に拷問します。
 最初は困惑した木村ですが、やがて、惚れた未亡人のためなら殺されてもいいと思うようになりました。それが悲劇的結末への序曲になるとも知らずに……。


 『正彦、あんた私すき? そう、それじゃ私のためにどんなにでもなる?』
【中略】
『正彦、何されてもいい? ほんとに?』
【中略】
 はっと思って起き上ろうとした時、彼の額の所にいきなりマダムの右手がおりて、動かさぬように押(おさ)えつけた。
『今こそ私が待って居た時が来たわ、私はこの日を何年待っていた事だろう。正彦、今こそ私の望みがかぬんだわ、ねえ、正彦私がほんとうに望んで来た時は今なの――正彦、お前今自分のからだがどんなになっているか見える? え?』
 狂気のように興奮したマダムの声をきくと彼はいきなりはね起きようとした。全身に力を入れた刹那、首、手足に烈(はげ)しい苦痛を感じた。

【中略】
『お前のようなきれいな青年をこうやって苦しめたかったの、それが私の一生の願いだったの。苦しいの? 痛いの? もっともっと苦しめてやるわ、だってお前、何をされてもいいって言ったんじゃないの』
【中略】
 彼は列車の中でまだづきづき痛む手首や両乳のまわりや足をなでながら何とも言えぬ幸福な感じを味(あじわ)った。
【中略】
 その夜、家にもどって彼は眠なかった。鎖、縄、鞭、針こんなものが闇の中で彼の目にうつって仕方がなかった。
『ほんとにどんな目にあってもいい、殺されたっていい、あのマダムにならば』

≪平凡社『現代大衆文学全集続第18巻 新選傑作探偵小説集』P824~828≫

『殺されるのも平気? 私はほんとに殺すかも知れないわよ。いいえ、いやもっとそれ以上の苦しみを味(あじわ)わすかも知れないわ』
『何でもいいんです、さ、早く苦しめて下さい』
 はじめて鞭の雨が身体に加わった。
 数時間緊縛されていたせいか、この夜の彼の苦痛と喜びはあのはじめての夜の何十倍だったか判(わか)らない。

【中略】
 約束の日は来た。
『俺は殺されるかも知れない。しかしマダムに殺されるとは何という幸せだろう。どんな幸福な死だろう』

【中略】
『正彦、あんたほんとに決心が出来てるの』
『ほんとですとも、奥さん、殺して下さい。ね、どんな苦しめてもいいんです。嬲(なぶ)り殺しにでもして下さい。ほんとにお願いです』

≪平凡社『現代大衆文学全集続第18巻 新選傑作探偵小説集』P833~834≫


 この後、完全犯罪を企てるマダムの陰謀が明らかになり、殺人容疑で逮捕された木村の裁判を経て、物語は意外な結末を迎えます。
 ネタバレになるのでマダムの企みや木村の末路は書きませんが、本作は桃源社から刊行された『浜尾四郎全集』第1巻に収録されており、相互貸し出しを利用すれば同書を所蔵していない図書館にも取り寄せできるので、興味のある方は『浜尾四郎全集』で「マダムの殺人」を読んでみて下さい。
 今回は引用元のテキストには前掲書「現代大衆文学全集」を用いました。読み易さを優先して旧かな・旧漢字は現代文調に修正をし、総ルビ表記も読み難い漢字にのみルビをつける表記にしています。



【追記】仕事で国立国会図書館に出掛ける機会があったので、同館内のコンピュータ端末でのみ閲覧できる『朝日』昭和6年1月号のデジタルデータを確認したところ、「マダムの殺人」は初出発表時から伏字処理されていた事が判明しました。(2015年8月11日・記)

ハイミス美人秘書、危機一髪(西村京太郎「消えた巨人軍(ジャイアンツ)」より)

 西村京太郎氏は傘寿を過ぎた高齢でも衰えない執筆活動を展開していますが、年齢的な肉体の衰えや時代の進歩に対応できないのか近年は粗製乱造が目立ち、結末を曖昧にしたまま未完状態で終わらせる作品も珍しくありません。
 パソコン操作や携帯電話機能の描写に作者の無知ぶりを暴露する失笑物の記述が見られたり(「阿蘇・長崎「ねずみ」を探せ」、「外国人墓地を見て死ね」等)、物証もない推理だけで犯人を特定して物語を終わせたり(「岐阜羽島駅25時」等)、容疑者のアリバイ描写に矛盾があるまま解決編に突入したり(「日光・鬼怒川殺人ルート」)……。
 一時代を築いた流行作家の宿命からか、作者も各出版社も引き際を見誤っているようです。

 奇想天外な犯罪を描いた長編推理小説「消えた巨人軍(ジャイアンツ)」は、そんな西村氏が作家として最も脂の乗っていた1970年代に発表されました。
 数多い西村氏の誘拐物でも屈指の完成度を誇る本作は、三十人を超える屈強な野球選手が新幹線の車中から誘拐され、球団社長宅に身代金要求の電話が掛かる場面から始まります。
 誘拐トリックは物語中盤で解明されますが、それ以降も真犯人の追求や巨人軍選手監禁場所調査がスリリングに描かれており、最後の最後まで楽しめる娯楽超大作です。
 多少のアレンジはあるものの、昭和58年に日本テレビ系列でドラマ化されました。

 この壮大なスケールの誘拐事件に挑む私立探偵の名前は左文字(さもんじ)進。アメリカで私立探偵のライセンスを取得しており、まさに本職の探偵です。
 連携プレイが不可欠と見た左文字は、巨人軍球団から社長秘書の藤原史子(ふみこ)をサポート役として借りました。なかなかの美人で28歳という女盛りの秘書です。
 彼女は本作のヒロインとして大活躍し、時には危険な目に遭いながらも大量誘拐事件解決の功労を担いました。


 青木は社長室に入ると、すぐ、秘書の藤原史子を呼んだ。二十八歳のハイミスだが、美人で、頭が良くて、ちょっぴり皮肉屋だ。もちろん、有能な秘書である。
≪徳間ノベルス『消えた巨人軍(ジャイアンツ)』P38≫

【中略】美しい君を、危険な目にあわせたくない」
「美しい、っていってくれて有難う」
「自分から危険に飛び込むような真似はしないと約束してくれるね?」
「私は二十八歳」
「だから?」
「女の二十八歳は分別盛りよ」

≪徳間ノベルス『消えた巨人軍(ジャイアンツ)』P203≫


 秘密裏に捜査を展開する警察関係者と協力しながら事件の核心に迫る左文字と史子。
 誘拐トリックを暴き、選手の監禁場所を探す過程で首謀者の名前も明らかになりましたが、油断した一瞬の隙をつかれ、史子は絶体絶命の危機に陥ります。
 全身をロープで縛りつけられたうえ、真犯人の自室で爆殺されそうになるのです。
 幸い、左文字の閃きによって際どい所を助けられましたが、緊縛された美人秘書が爆弾によって絶体絶命の危機を迎えるというシチュエーションはリョナラーの被虐心を刺激すると思います。


 書斎の窓にたどりつく。アルミサッシの窓から、中をのぞいた。
 ドアの傍に椅子が置かれ、史子がロープで縛りつけられている。がんじがらめで、口には、猿ぐつわがかまされている。ドアの方に顔をねじ向けているのは、そこが、よほど気になるからだろう。
 左文字は、ガラス窓を叩いた。ほっとしたように、史子は、こちらを見た。
(ひどい顔だな)

【中略】
「呻き声で合図してくれたんで、君と心中せずにすんだよ」
「私だって、必死だったわ」
 ロープを解くと、史子は、極度の緊張感から解放されたとみえて、ヘナヘナと床にしゃがみ込んでしまった。

≪徳間ノベルス『消えた巨人軍(ジャイアンツ)』P214~215≫


 ちなみに、この場面も前述のドラマ版に見られます。
 ただし、ヒロイン役の水沢アキ女史が童顔のせいか、今一つ色気に欠けている点が残念です……。

密室で○○○○○する美少女探偵(早坂吝「○○○○○○○○殺人事件」より)

 幽霊探偵(斉藤栄「謎の幽霊探偵」)、幼稚園児探偵(二階堂黎人『私が捜した少年』他)、コンピューター探偵(内田康夫『パソコン探偵の名推理』)、シャム猫探偵(赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」他)、マリオネット探偵(我孫子武丸『人形はこたつで推理する』他)……。
 風変わりな探偵役が活躍する推理小説は数多く存在しますが、2014年に第50回メフィスト賞を受賞した早坂吝氏の長編ミステリー「○○○○○○○○殺人事件」の美少女探偵役も一風変わっています。
 彼女の名前は上木(かみき)らいち。18歳の女子高校生にして、日替わりの固定客すらついている援助交際の達人でもあるのです!
 講談社ノベルスより刊行されたシリーズ第2弾の連作短編集『虹の歯ブラシ』の帯では、らいちが『史上最もHな探偵』と紹介されており、彼女が超個性的な探偵役である事を出版社も承認したと言えるでしょう。

 冷静な分析と論理的な推理によって、上木らいちは様々な難事件を解決してきました。
 作品発表順での最初の事件は、あるブログを通じて知り合った男女がオフ会で訪れた個人所有の島での連続殺人事件です。
 公務員の青年を語り手にした一人称形式(一部に例外あり)を取っており、一人称視点による記述トリックを最大限に活用しながら、読者に「犯人当て」と「タイトル当て」を挑むという前代未聞の作品に仕上がっています。

 真夏の南国へ旅立つせいか、初登場時のらいちは肌の露出が多い過激な服装で現れ、主人公の煩悩を刺激しました。
 読者に向かい、主人公は初対面のらいちを次のように紹介しています。


 まず目を引くのは、新鮮な血液のように赤いウェーブロングの髪。
 年は十七、八といったところで、元々の美貌と厚化粧が相まって、ド派手な顔面になっている。好みの分かれるところだろうが、僕は苦手だ。
 服装も過激である。
 上半身は、ほとんどブラジャーのようなへそ出しキャミソールの上に、シースルーのブラウス。そのボタンは胸の下で一つだけ留められ、豊かな乳房を縛り上げる形で強調している。
 下半身は、見せパンをはみ出させたデニムのホットミニに、黒いオーバーニーソックス、ピンヒール。
 その全身から発せられるフェロモンが僕の煩悩の鐘を鳴らす。
 
≪講談社ノベルス『「○○○○○○○○殺人事件』P24~25≫


 和気藹々の旅行となるはずが不可解な失踪を皮切りに一転。残虐な殺人、連続して現れる密室、謎の昏睡事件が立て続けに発生し、外部との連絡も絶たれてしまいました。
 お互いが疑心暗鬼となる中、らいちは密室で二人っきりとなった主人公に性交を迫ります。
 巧みなフェラチオで射精させられた主人公は、お返しとばかりにらいちのアソコをガンガンと突きまくり、彼女を快楽の絶頂へと導きました。
 この性交場面を作者は事細かに描いており、「史上最もHな探偵」の面目躍如たる姿を読者へ見せてくれます。


 僕は反射的にらいちの全身を眺め回した。雨に濡れた彼女はとてもセクシーだった。俺は言い逃れできないレベルで勃起した。
 その体に触れてみたい――。

【中略】
 葛藤の末、俺の脳味噌は二つの答えを捻り出した。
 一つは、これは俺の欲望ではなく彼女が望んだことであって恋人が死んで取り乱している彼女を落ち着かせるために仕方のないことなんだということ。

【中略】
 俺たちは知り合って三日目とは思えないほど密着し、唇と舌を貪り合った。らいちは素早くしゃがみ込んで、フェラチオを始めた。左手で自分の股間をいじりながら、右手を俺のアナルに伸ばしてくる。そこは初めてだったので精神的な抵抗はあったが、実際の物はスムーズに俺の中に入ってきた。人差し指と中指だ。その二本が内側から俺を愛撫する。前後からの快感に耐え切れず、あっという間に口の中に射精した。
 慌ててティッシュを取りに行こうとすると、らいちは咽を鳴らして飲み下し、泣き笑いの顔で言った。
「滅茶苦茶にして。全部忘れさせて」
 その一言で生き残りの理性も殲滅させた。
 俺はらいちを丸太みたいに担ぎ上げると、ベッドの上に放り出した。スプリングが軋む。反射的に起き上がろうとするらいちにのしかかり、ぶち込んだ。
 さっきのお返しとあかりにガンガン突きまくると、悲鳴寸前の声で喘ぎまくる。その瞳からこぼれ落ちる涙を見て、言い訳が使命感に変わった。彼女を慰める。
 忘れろ。全部俺が忘れさせてやる。お前はただ気持ち良くなれ。イケっ。イケっ。イケっ。
 「イケよ、らいち!」
 らいちは一際高い声を上げると、全身を反らせて痙攣させた。俺も同時に達した。雨と汗で濡れた体を重ねて、ベッドに沈む。

≪講談社ノベルス『「○○○○○○○○殺人事件』P148~149≫


 貞操観念に拘らないドライな女子高生とも言えるらいちですが、男好きで淫乱な少女というわけではありません。
 一日5万円で契約した20歳近くも年齢(とし)の離れたフリーライターが殺された時には、「あの蘊蓄も、ミステリの話も、売れっ子ライターになりたいって野望も、もう聞けない。彼はもう戻らない」(講談社ノベルス『「○○○○○○○○殺人事件』P151)と嘘偽りのない言葉で愛人の死を嘆く心優しい一面も持っています。

 らいちの意外な正体は続編となる連作短編集『虹の歯ブラシ』で明かされます。
 これまでにない『史上最もHな探偵』に興味を持たれた方、是非とも『○○○○○○○○殺人事件』と『虹の歯ブラシ』を読んでみて下さい。
 どちらも技巧派の技を堪能できる本格ミステリであり、キャラ萌えなどの要素を抜きにしても楽しめる作品として推薦します!

数万匹の蛸に襲われる全裸の若妻(羽化仙史「新海底旅行」より)

 明治文化史研究家にしてSF作家でもある横田順彌氏の『近代日本奇想小説史 入門篇』を読んでいたところ、ヒロピン好きならば見逃せない明治時代の冒険小説が紹介されており、そのレビューを読んで心底興奮させられました。
 その作品とは、明治38年に大学館から刊行された「新海底旅行」という冒険小説です。
 横田氏の紹介文によれば、美貌の若妻が蛸の群れに襲われるシーンが見られるとの事!
 これはチェックしなければと思い、すぐにインターネットで情報検索したところ、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」で無料公開されている事がわかり、全ページのPDFデータをプリントアウトできるため、ワクワクしながら全てのページをプリンターで印刷しました(著作権消滅作品なので違法行為ではありません)。

 本作は国策物の一種であり、日本の領土拡大を海底に求める憂国の志士が様々な困難を乗り越え、広大な太平洋の開拓に成功するという内容です。
 横田氏の著書で紹介された場面は口絵(画家未詳)にもなっており、髪を振り乱した若妻が短刀を片手に蛸の群れと戦う姿が拝めましたw
 国会図書館提供の「近代デジタルライブラリー」で公開されているデータは画質が悪く、その点は何とも残念です……。

 若妻の名前はべに子。十九歳の職業婦人です。
 海底を開拓するという亭主の一大計画を支援し、女性とは思えない活躍を見せてくれます。
 大勢の男性陣に交じり、べに子も全裸になって海底探索の一員に加わりました。
 なぜ全裸なのか、その理由を著者は以下のように説明しています(以下、引用は新字・新カナとし、基本的にルビはふりません)


 【前略】太洋中にては、衣服は、凡て至大なる水の圧力を受くるの恐れあるゆえ、裸体に上越す法なし、裸体にて、重き金属を充てたる革製の胴巻を胴に纏えば、水圧を受くるの度を至て少なく、且(か)つ水面に浮き揚がる気遣いもなきゆえ、是れに優(まさ)る扮装(いでたち)はなかるべし【後略】
≪大学館『新海底旅行』P46~47≫


 未知の領域を命懸けで探索する一行ですが、ひょんな事からべに子は蛸の群れに襲われます。
 ヒロピン好き読者が最も気になる場面ですので、長くなりますが問題のシーン(?)を可能な限り引用紹介する事にしましょう。


 べに子は、スッカリ熟睡(ねこけ)て居る中(うち)、フト何やら太腿へ触っわったのに気が付いて、驚いて目を覚まして見ると、上野の摺鉢山(すりばちやま)よりも大きいかと思われるような巨大な二匹の蛸が二間半(にけんはん)もある長い足を、彼女の左右の太腿へ確(しっ)かりと捲き付けて、ズンズンと引き摺って行くのであった。
 べに子は、吃驚して、心の中に『此様(こん)な大きな蛸が海岸に居る牛の足へ、此の長い足を捲き付けて海中へ引摺り込んで、血を吸うという話は、毎度聞いても居れば、書籍(ほん)でも見て居るが、妾(わたし)の血も、今に吸って仕舞おうというのだろう、眞正(ほんとう)に憎らしいッちゃありゃあしないわ、…… お生憎さま、短剣を持って居てよ。』
 と、素早く抜こうと思って、手を動かそうとすると、如何しても動かない、『アラ変だわ!』と、能(よ)く能(よ)く視(み)れば、釣鐘へ足の生えたような二匹の蛸が、疾(とう)にべに子の後方(うしろ)へ来て、両手を確(しっ)かりと捲いて、動かすことの出来ないようにして居るのであった。べに子は、ギョッとして、最早(もう)望を絶って仕舞った。けれども、セメテ心ゆかせに、呼んで見ようと、精一杯大きな声を出して、『所天(あなた)!武丸(たけまる)さん!』と何遍も呼び、又『兄さん! 芒太(ぼうた)さん!』と何遍も叫んだ、だけれども、チットモ応じて呉れそうにもしない。
 其地(そち)此地(こち)する中(うち)、前面(まえ)に居る大蛸と、後方(うしろ)の中蛸とで、到頭青藻の生茂って居る藪の中へべに子を引摺り込んで仕舞った、スルト其処に無慮(およそ)五六百も群がって居る小蛸が吾れ勝ちにべに子の身体へ取付いたので、全身一面に蛸で隙間がなくなって仕舞った。
 べ『アラ此の沢山な大蛸小蛸に血を吸われちゃあ耐(たま)らないわ…』
 と、如何かして、身を摩り抜けようとすれども、イッカナこと、一寸も動くことが出来ない。
 モウ五六百の小蛸は、血を吸い始めた、痛くもあり、痒くもあり、クスグッたくももって
(ママ)、何の事も思えなくなって仕舞った。
 けれども、マダ其の中(うち)は、宜(よ)かったが、愈々大蛸が口を喇叭のようにして吸いに掛った。
 べに子は、もはや夢中の状況(ありさま)になり、目も見えないようになって居たが、それでも、マダ眞正(ほんとう)に正気を失ったのではないから、此の状況(ありさま)を見て、今更らのようにギョッとして、思わず『アーッ』と一声叫んだ。

≪大学館『新海底旅行』P56~58≫


 辛うじて蛸軍団の襲撃から逃れられたべに子。助かった彼女は夫に向かって海底での危機を詳しく話します。

 (ここ)に其の大略(あらまし)を挙げようものなら、彼女(かれ)は、さ(※原文は漢字ですが判読できず)きに数万の蛸に襲われて、青藻の藪へ引き込まれ、全身(そうみ)へベッタリと小蛸に取付かれたので、痒いとも、クスグッたいとも、何とも言いようがなく、アワヤ人事不省の有様に陥ろうとしたが、夢中のようでも、マダ本性はあったものと見えて、大蛸が吸い付こうとした時、『コリャ大変!』と、刎ね起きようとした、だがしかし中々以て刎ね起きられればこそ! 手も足も押え付けられて居て、一寸はおろか、一分でも動かれないのである、流石気丈なべに子も、『アア情けない、到頭(とうとう)目的も遂げられず、吾が所夫(つま)にも逢えないで、空しく虫類(むしけら)の為めに責め殺されることの悲しさよ!』と、思わず潸然(さめざめ)と泣いた。
≪大学館『新海底旅行』P67~68≫


 この後も受難は続き、ある時は無法者に襲われたり(同書P79)、ある時は悪魚に肉を食われたり(同書P93)、ある時は海賊に辱められそうになったり(同書P130)、ある時は電気鰻によって体が感電したり(同書P141~143)、ある時は他人の夢に全裸姿で登場させられたり(同書P149~150)……。
 終盤では、海底開拓を邪魔する残虐な荒くれ者に命懸けの戦いを挑み、幾度となく危機に見舞われます(同書P157,P159,P160~164,P179~180)。

 べに子さんの受難場面は膨大な量のテキストを費やして描かれており、その全部を紹介する事はできません。
 前記のように本作は「近代デジタルライブラリー」で無料公開されているため、PDF閲覧ソフトがインストールされているオンライン接続パソコンがあれば、自宅にいながら「新海底旅行」の全文が読めます。
 蛸に襲われるシーン以外の受難場面をチェックしたいという方は御自身の目で確認してみて下さい。

独特過ぎる好みを持った精神的マゾヒストの青年(葛山二郎「股から覗く」より)

 92歳の長寿を全うした葛山二郎氏は約四半世紀に及ぶ作家生活で約20編の創作小説を書きました。
 マラソン競走中の殺人事件を描いた「股から覗く」は数少ない葛山作品の中でも知名度の高い短編であり、卒寿を迎える平成4年に初めて刊行された単著の表題作に選ばれています。
 創作探偵小説の懸賞に一等当選しただけあり、江戸川乱歩氏を始めとする諸作家からは手厳しい評価が下されているものの、奇抜なトリックと手堅い構成は現代のミステリー愛好者の鑑賞に耐えられるのではないでしょうか。

 内容も見事ですが、それ以上に私が感心したのは加宮(かみや)真棹(まさお)というキャラクターの人物造形です。
 彼は物語冒頭から登場し、股下越しに「世間を逆さまに見る」奇癖を持っています。
 この癖がタイトルの由来となっており、股から覗く癖について加宮自身は「世の中を逆さに見ますとね、真実(ほんとう)が見えますよ、有の儘の世間が」(論創社『葛山二郎探偵小説選』P22)と述べていました。
 股下覗きで頭に血がのぼる苦痛も彼にとっては快楽であり、この苦痛に耐えてまで股越しの景色を見入っているそうです。


 【前略】頭に血が下って息苦しく、ぼうッとして来ます。私達は、この苦痛を忍んでまでも、股の下に展開される景色を見ていたいとは思いません。
 それですのに、これが加宮君には素晴らしい魅力だったのです。前にもお話ししましたおゆに、ある種の変態的な人間である加宮君には、じわじわと真綿で首を締めるように迫って来るそれ等の苦痛が、既に、到底私達の窺(うかがい)知ることの出来ない喜びだったのです。
【後略】
≪論創社『論創ミステリ叢書58 葛山二郎探偵小説選』P20≫


 股下から覗き見する奇癖と頭に血がのぼった際の苦しみに快楽を覚える性癖だけでなく、加宮は他人が受け入れ難(がた)い好みを持っている事も物語序盤で明かされます。
 独特過ぎる加宮の好みとは「醜い物や臭い物を愛好する」ということです。
 幼少期の経験が加宮を奇人として成長させ、遂には殺人事件の関係者にさせてしまいました。
 加宮真棹の独特過ぎる好みと変わった好みに目覚めるキッカケは以下のように書かれています。


 では、どんな風にひねくれていて、気味が悪かったかと云いますと、例えば、花見、宝石、美容術――といったような有閑者流の美とするものは、加宮君には有触れていて詰まらないのです。いえ、そうではないのです。むしろそれ等のものを憎しみに似た反感をさえ伴った眼で見、そっぽ(三字傍点、、、)を向いてしまうのです。【中略】加宮君は暗さの中にのみ美を見出そうと勉めるようになって、香水の薫香(かおり)よりも腋臭(わきが)の方を加宮君は好みました。それどころではありません。私はしばしば塵箱に首を突込んで、あの鼻向けもならない、芥(ごみ)のいきり(三字傍点、、、)を心行くだけ吸込む加宮君を見かけたことがあります。
 「どうです! 百花繚乱……」そう云って加宮君は、黄緑色の膿汁、薄桃色の血液、真ッ赤な筋肉などの入混って爛れたある患者の皮膚を指差し、飽かず眺め入った事もありました。玉のような女性の肌よりも、ずるずるによろけた天刑病者の皮膚の方が、どれほどか大いな魅力となって加宮君の気を唆(そそ)るのでしたろう。

≪論創社『論創ミステリ叢書58 葛山二郎探偵小説選』P18~19≫

 「ちょっと見て、仮令それが心にそぐわないものであっても、その煩しい限度を超えると、そこには得も云われる美があるものです。そろそろ、嘔吐の催しそうな塵箱の臭気だて、ぐッと堪えていますと、仕舞いにはその臭気に酔い痴れて、とろんとして来るのです。そして、そうなると始めて、熟柿(じゅくし)のような、酔泥(よいどれ)の吐く噯気(げっぷ)のような、熟れて熟れて熟れ抜いた甘ッたるい快美な香りだけが感じられてくるのです。【後略】
≪論創社『論創ミステリ叢書58 葛山二郎探偵小説選』P20≫

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Author:新 京史朗
好きな技(1):バスター技
好きな技(2):股裂き関節技
好きなシチュエーション:リョナ

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