「魔法少女まどか☆マギカ Another」 ある日の魔法少女
【はじめに】
久しぶりとなる「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作SSです。2011年11月18日付でpixivに「魔法少女まどか☆マギカ Another ある日の魔法少女」の総題で投稿した短編三作をブログへ転載しました。
新作映画に興奮した時の余韻も醒めてきたせいか「まど☆マギ」関連記事を書く意欲が弱まってきたので、自分自身へ喝を入れる意味も含め、pixivだけで公開していたSSを転載した次第です。
基本的に本文の加筆や修正はありませんが、唯一の例外として、マミのストラップを引き当てたほむらの心の声を「(これは巴マミへ渡す事にしましょう)」から「ほむら(これは……巴さんへのプレゼントにすればいいわ)」と書き変えました(第一話参照)。また、本作の【あとがき】はpixiv公開時の説明文を加筆・再構成しています。
過去の二次創作SSと同じく、原作の基礎設定や世界観を大きく改変しています。オリジナル要素の強い「まど☆マギ」の二次創作小説が苦手な方、キャラクターの個性を誇張・曲解した描写が嫌いな方は御注意下さい。
第一話「ほむらとガチャポン」
魔獣の脅威から見滝原市を守る魔法少女達の活躍を描いた超人気アニメ「魔法少女まどか☆マギカ Second」の関連グッズとして「お喋りストラップ」が発売された。
鹿目まどかストラップを手に入れようと、暁美ほむらは百円玉が詰まった小銭入れを片手にガチャポン販売機の前へ歩み寄る。
ほむら(まどか……)
最初の一回でまどかストラップが当たるように祈りながら、ほむらは三枚の百円玉をコイン投入口へ差し込んでハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から赤いカプセルが出てきた。
カパッ。
カプセルを開けた中には佐倉杏子のストラップが封入されていた。
ほむら「佐倉杏子……。あなたを最初に引当てるとは思ってもみなかったわ」
ストラップ先端の小さな突起を押すと杏子の声が聞こえてくる。
杏 子『いいよ、一緒にいてやるよ。一人ぼっちは……寂しいもんな』
ほむら「一緒にいてくれなくても結構よ。わたしに必要なのはまどかだけ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは美樹さやかへのプレゼントで決定ね)
小銭入れから追加の百円玉を三枚取り出してコイン投入口へ入れ、強く握り締めたハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から黄色いカプセルが出てきた。
ほむら「嫌な予感がするわ」
カパッ。
カプセルを開けた中には巴マミのストラップが封入されていた。
ほむら「やっぱりね。どうやらカプセルの色はキャラクターのイメージカラーと対応しているんだわ」
ガッカリしながらカプセルの法則に気付いたほむらはストラップ先端の小さな突起を押した。
マ ミ『もう何も怖くない。わたし、一人ぼっちじゃないもの』
ほむら「カップル不在のボッチは黙っていなさい」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは……Qべえに押し付ければいいわ)
小銭入れから三度(みたび)百円玉を三枚取り出し、コイン投入口へ入れてからハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から青いカプセルが出てきた。
ほむら「青いカプセル……。美樹さやかね」
カパッ。
カプセルの中身は予想した通り美樹さやかのストラップだった。
ほむら「くッ。またハズレだわ」
取りあえずヴォイスだけは聴いておこうとストラップ先端の小さな突起を押した。
さやか『あたしって……ほんとバカ』
ほむら「そうよ。あなたは魔女化してみんなを危険な目に遭わせた大バカ者よ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは佐倉杏子へのプレゼントにしましょう)
気を取り直して四度目の挑戦。二千円札を二十枚の百円玉に両替し、そこから取り出した三枚をコイン投入口へ入れてハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から黒いカプセルが出てきた。
ほむら「黒いカプセルって事はわたしのストラップかしら」
カパッ。
カプセルを開けた中には暁美ほむら、つまり自分のストラップが封入されていた。
ほむら「やっぱり」
苦笑しながらストラップ先端の小さな突起を押す。
ほむら『一体、何度忠告させるの。どこまで貴女は愚かなの』
ほむら「自分に忠告されていては世話ないわね」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは丁寧に梱包して愛するまどかへのプレゼントにしましょう)
制服のポケットから両替したばかりの百円玉を新たに三枚取り出し、コイン投入口へ入れてハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から青いカプセルが出てきた。
ほむら「また青いカプセル……。ダブリね」
カパッ。
カプセルの中には今回も美樹さやかのストラップが入っていた。
ほむら「ふん。まあ、せっかく引き当てたんだから一回くらいは再生してあげるわ。感謝しなさい」
負け惜しみのように言い、ほむらはストラップ先端の小さな突起を押す。
さやか『えっへへ~。残念、さやかちゃんでした~』
ほむら「これは……VersionBのセリフみたいね。そうよ、あなたを引き当ててしまって残念だわ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ乱暴に投げ入れた。
ほむら(これも佐倉杏子へのプレゼントで決定ね)
キラキラと銀色に輝く真新しい三枚の百円玉をコイン投入口に入れ、ほむらは力を込めてハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から白いカプセルが出てきた。
ほむら「白いカプセルだわ。これがシークレットね」
カパッ。
カプセルの中身はシークレットのQべえだった。ほむらは湧き上がる怒りを必死になって抑えながら呟く。
ほむら「このケダモノがシークレット? ふざけないでッ! シークレットに相応しいのは女神まどかだけよ」
そう言いながらもストラップ先端の小さな突起を押して収録ヴォイスを再生する。
Qべえ『僕と契約して魔法少女になってくれないかい?』
ほむら「地獄に堕ちなさい。この淫獣ッ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ投げ入れた。
ほむら(これは……巴さんへのプレゼントにすればいいわ)
この後もほむらはガチャポンに挑み続けたが目当てのブツは引き当てられず、鞄の中は大量の不用品に占拠されてしまった。
ほむら(どうして……。どうして九回もやっているのにまどかのストラップだけが出てこないの)
怒りで我を忘れたほむらは時間を止めてガチャポン販売機を破壊しようと決意した。
周囲に人影がない事を確認したほむらは魔法少女へ変身する。
ほむら「時間よ止まれ!」
カチッ。
ほむらの言葉と共にシールドに埋め込まれた砂時計が回転し全宇宙の時間が停止した。
ほむら「人をバカにするのも大概にしなさい」
かつて愛用してたゴルフクラブをシールドから取り出し、機械を叩き壊そうと大きく振りかぶった。
……その時。
ほむら「そうだわ。今回の散財を戒める為にも台紙だけは貰って帰りましょう。エイッ」
気合の一声と同時にゴルフクラブでガチャポン販売機の屋根部分を叩きつけた。
バキャッ。
鈍い音をさせながら屋根部分が破損した瞬間、ほむらは愚かな自分の行為に気がついた。
ほむら「そうよ。あんな散財をしなくても、こうやって中身の確認をすればよかったんだわ」
合計三千円近い無駄金を消費したバカな自分を呪いつつ、ほむらは機械の中に詰まっているカプセルをチェックする。
しかし、ピンク色のカプセルは入っていない。どれも見覚えのあるカラーカプセルばかりである。
ほむら「そんな。嘘でしょう。どうして……どうしてピンクのカプセルがないの?」(まさか、アニメのようにまどかの存在が抹消されてしまったの? いいえ、そんな事はある筈がない。あれはアニメでの設定、まどかは現実世界に存在するわ。今日だって学校で会っているもの)
台紙で景品ラインナップを確認するほむら。そんな彼女の目に信じられない文字が飛び込んできた。
まどかストラップのイメージ写真の下には次のような一文を印字した小さなシールが貼られていた。
『鹿目まどかストラップは商品製造過程において動作不良品が多数見つかりましたので初期出荷分には含まれておりません。御了承下さい』
第二話「恐怖のパズル」
マ ミ「ジグソーパズルは楽しいわねぇ。一人ぼっちでも遊べるんだもの」
巴マミはクーラーの冷風が涼しい自宅マンションのリビングで500ピースのジグソーパズルに挑戦していた。
魔法少女となった自分の立ち姿が描かれた「萌え萌えパズル」最新作である。新発売の商品としてメーカーからプレゼントされたのだ。
断片的な絵柄が印刷されたピースを一つ一つ指で摘み、思考錯誤しながら次々と空スペースに嵌めていく。
Qべえ「慣れたもんだね。まだ一時間ちょっとしか経っていないのに完成図が見え始めてきたじゃないか」
一緒に暮らすQべえがマミの肩に乗っかり、完成しつつあるパズルを俯瞰しながら言った。
マ ミ「当然よ。小学生の頃に「全日本ジグソーパズル選手権」の小学生部門で三回連続優勝した事があるんだから」
ドヤ顔でQべえに自慢するマミ。
Qべえ「そ、そうかい。それは凄いね」
マ ミ「うふふふふ。もっと褒めてくれてもいいのよ」
Qべえ「僕には感情がない。君を尊敬する気持ちになれないし、嘲る気持ちにもなれないよ」
マ ミ「最後の一言は聞き捨てならないわね」
夫婦漫才(めおとまんざい)のような会話をしながらもマミの手は休まらず、ジグソーパズルは刻一刻と完成に近づいてきた。
二時間後。
マ ミ「もうちょっとで完成よ」
Qべえ「頑張れ~」
惰性で応援を続けていたQべえが間延びした声で最後の声援を送る。
マ ミ「うん。頑張るわ。残りの10ピースを速攻で片付けるわよ!」
ウィンクしながらQべえの声援に応えるマミ。完全に自分の世界へ没頭しているようだ。
一つ、また一つ。マミの左手に握られたパズルのピースが減っていく。
残り5ピース。4ピース。3ピース。
その時だった。
マ ミ「あら」
Qべえ「どうしたんだい? マミ」
マ ミ「変ねえ。パズルのピースが足りないのよ」
Qべえ「ピースが足りない?」
マ ミ「ええ。空きは三箇所なのにピースは二つしか残っていないわ」
Qべえ「パズルのピースは手の中さぁぁ」
マ ミ「え? なにを言っているの?」
Qべえ「……。そっか、マミの年齢では知らないよね。これはアニメ版「名探偵コナン」第1期のエンディングテーマ「STEP BY STEP」の歌詞の一節だよ」
マ ミ「そ、そうなの? わたしはアニメ番組を見ないから言っている事が理解できないわ」
Qべえ「ふ~ん」
マ ミ「それよりピースを探すの手伝ってくれないかしら?」
二人で部屋中を探してみたが不足分のピースは見つからなかった。
Qべえ「これだけ探しても見つからないんだ、きっとパーツ不足だったんだよ」
マ ミ「そうみたいね。しかたがないわ、メーカーに連絡して足りないピースを取り寄せないと」
決断を下したマミは残る2つのピースをパズルの空白箇所に埋め込んだ。その時……。
マ ミ「ひぃぃ~」
Qべえ「どうしたの、マミ」
キッチンでアイスコーヒーを飲んでいたQべえが大急ぎでリビングへ引き返す。
マ ミ「く、首が……」
Qべえ「首? 首がどうしたんだい? ちゃんと体と頭を繋いでいるじゃないか。過去のトラウマは忘れなよ」
マ ミ「パズルを……。パズルを見て」
Qべえ「パズル?」
言われるままに視線を未完のパズルへ移すQべえ。
Qべえ「こ、これは……」
そこには首の部分が空洞となっている巴マミの姿があった。どうやら首を描いたピースが欠けていたらしい。
Qべえ(よりにもよって首の描れた部分が足りないなんて……。これはキツイ皮肉だね)
第三話「大いなる過ち」
店 員「ありがとうございました~。またお越し下さいませぇ」
元気な女性店員の声を背後に聞きながら暁美ほむらはアニメショップの自動ドアから店の外へ出た。
手に提げた大きな紙袋の中には十二個の「まどパン」が入っている。
ほむら(まどか……。あなたのパンティは全て買い占めたわ)
あらぬ妄想をしながら帰路につき、無人の我が家へ帰り着いた頃には陽もとっぷりと暮れていた。
そもそものキッカケは、まどかグッズを買いに「魔法少女まどか☆マギカ」グッズ専売コーナーへ足を踏み入れた時から始まる。
関節パーツが新しくなった再販フィギュア「フル稼働アクション 鹿目まどか ~パンチラもパンモロもあるんだよ~」を買いに来たのだが、フィギュア系グッズの脇に「食料品コーナー」が新設されていたのでフィギュアの購入は後にし、新発売のまどかグッズが並んでいないかチェックの目を光らせた。
ほむら「えッ? なによ、これ……」
万引きGメンのように鋭く商品をチェックしていたほむらの目は信じられない商品名を見つけた。
その名も「まどパン」。円形のアルミ缶に横長の紙を巻き付けた缶詰め食品である。紙には各キャラクターが大きく描かれており、五人全員分が揃っていた。
ほむらの目当ては言うまでもなく鹿目まどかのみ。
愛しいまどかのイラストを見ようとアルミ缶を手に取った瞬間、再びほむらの目は信じられない文字を見つけた。
アルミ缶の周囲を巻いた紙にはイラストと一緒にポップ体のフォントで『まどか「わたしの【特価シールにより五文字分判読不能】はイチゴ味だよ」』と書かれていたのだ。どの缶も同じ箇所に特価シールが貼ってあり、その下に書かれている文字は読めないが、妄想を逞しくしたほむらは「わたしの履いた下着はイチゴ味だよ」と勝手に解釈した。
ほむら「まどパン。イチゴ味。これは買い占めるしかないわね」
通常価格は八百円だが、売行きが悪いのか全て特価価格の五百円になっている。
ほむら(全部で十二缶あるわ。五百円×十二個で六千円。決して安い買物ではない……。でも、フィギュアの購入費を廻せば買えない値段ではないわね。再販フィギュアは日を改めて買いに来ればいい。よし、決めたッ。ここにある「まどパン」を買い占める事にしましょう。もちろん、まどかだけを!)
このような経緯があり、ほむらは大きな紙袋を手にアニメショップから出てきたのだった。
しかし、ほむらは知らなかった。「まどパン」の本当の意味を。その中身が彼女の妄想する「イチゴ味のまどかパンティ」ではない事を。
帰宅したほむらはキッチンへ向かい、紙袋から一個のアルミ缶を取り出して開封した。
パッカン。
ほむら「まどか……。まどか……。まどか……」
飢えた獣のように荒々しい息遣いで缶を逆さまにして中身を取り出そうとする。
ポトン。
ほむら「……。こ、これが中身?」
テーブルの上に落ちたのは一口サイズのパンだった。
ほむら「どういう事……。ひどいわ。あんまりだわ。こんなのってないわ」
残る十一個の缶を次々と開封してみたが、中身は全て一口サイズのパンであった。
ほむら「まさかッ」
文房具ケースからシール剥がしを取り出し、それで【特価シール】を剥がしてみると……。
ほむら「くッ。わたしとした事が……」
シールの下には「わたしの絵柄のパンはイチゴ味だよ」と書かれていた。
【あとがき】
ゆる~い日常の一場面を描いた短い物語ですが、お楽しみいただけましたでしょうか。
第一話「ほむらとガチャポン」を書くにあたっては、pixivのマイピク・パリジャン氏の作品「【ソウルジェム】一回300円はおおきい【ストラップ】」よりヒントを得ました。
第二話「恐怖のパズル」の本文中に書かれているジグソーパズルが完成するまでの大まかな所要時間は「ほいほい書いちゃうんだ まったりオタクライフを満喫中」の記事「東方 八雲紫(ゆかりん) 500ピースパズル製作 PartⅠ」(2011年1月2日 (日)付け更新)を参照させて頂きました。
第三話「大いなる過ち」は、アニメイトの某店で販売されていた「まど☆マギ」関連の食品を目にした時に思いついたネタです。
インスピレーションを与えて下さったパリジャン氏、データ参照したブログ管理人のトナカイ氏、お二人には記して感謝いたします。
なお、トナカイ氏のブログは2012年6月20日より「ほいほい書いちゃうんだ②」としてリニューアルされました。更新終了となった旧ブログも過去記事の閲覧は可能です(2014年2月22日現在)。
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久しぶりとなる「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作SSです。2011年11月18日付でpixivに「魔法少女まどか☆マギカ Another ある日の魔法少女」の総題で投稿した短編三作をブログへ転載しました。
新作映画に興奮した時の余韻も醒めてきたせいか「まど☆マギ」関連記事を書く意欲が弱まってきたので、自分自身へ喝を入れる意味も含め、pixivだけで公開していたSSを転載した次第です。
基本的に本文の加筆や修正はありませんが、唯一の例外として、マミのストラップを引き当てたほむらの心の声を「(これは巴マミへ渡す事にしましょう)」から「ほむら(これは……巴さんへのプレゼントにすればいいわ)」と書き変えました(第一話参照)。また、本作の【あとがき】はpixiv公開時の説明文を加筆・再構成しています。
過去の二次創作SSと同じく、原作の基礎設定や世界観を大きく改変しています。オリジナル要素の強い「まど☆マギ」の二次創作小説が苦手な方、キャラクターの個性を誇張・曲解した描写が嫌いな方は御注意下さい。
第一話「ほむらとガチャポン」
魔獣の脅威から見滝原市を守る魔法少女達の活躍を描いた超人気アニメ「魔法少女まどか☆マギカ Second」の関連グッズとして「お喋りストラップ」が発売された。
鹿目まどかストラップを手に入れようと、暁美ほむらは百円玉が詰まった小銭入れを片手にガチャポン販売機の前へ歩み寄る。
ほむら(まどか……)
最初の一回でまどかストラップが当たるように祈りながら、ほむらは三枚の百円玉をコイン投入口へ差し込んでハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から赤いカプセルが出てきた。
カパッ。
カプセルを開けた中には佐倉杏子のストラップが封入されていた。
ほむら「佐倉杏子……。あなたを最初に引当てるとは思ってもみなかったわ」
ストラップ先端の小さな突起を押すと杏子の声が聞こえてくる。
杏 子『いいよ、一緒にいてやるよ。一人ぼっちは……寂しいもんな』
ほむら「一緒にいてくれなくても結構よ。わたしに必要なのはまどかだけ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは美樹さやかへのプレゼントで決定ね)
小銭入れから追加の百円玉を三枚取り出してコイン投入口へ入れ、強く握り締めたハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から黄色いカプセルが出てきた。
ほむら「嫌な予感がするわ」
カパッ。
カプセルを開けた中には巴マミのストラップが封入されていた。
ほむら「やっぱりね。どうやらカプセルの色はキャラクターのイメージカラーと対応しているんだわ」
ガッカリしながらカプセルの法則に気付いたほむらはストラップ先端の小さな突起を押した。
マ ミ『もう何も怖くない。わたし、一人ぼっちじゃないもの』
ほむら「カップル不在のボッチは黙っていなさい」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは……Qべえに押し付ければいいわ)
小銭入れから三度(みたび)百円玉を三枚取り出し、コイン投入口へ入れてからハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から青いカプセルが出てきた。
ほむら「青いカプセル……。美樹さやかね」
カパッ。
カプセルの中身は予想した通り美樹さやかのストラップだった。
ほむら「くッ。またハズレだわ」
取りあえずヴォイスだけは聴いておこうとストラップ先端の小さな突起を押した。
さやか『あたしって……ほんとバカ』
ほむら「そうよ。あなたは魔女化してみんなを危険な目に遭わせた大バカ者よ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは佐倉杏子へのプレゼントにしましょう)
気を取り直して四度目の挑戦。二千円札を二十枚の百円玉に両替し、そこから取り出した三枚をコイン投入口へ入れてハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から黒いカプセルが出てきた。
ほむら「黒いカプセルって事はわたしのストラップかしら」
カパッ。
カプセルを開けた中には暁美ほむら、つまり自分のストラップが封入されていた。
ほむら「やっぱり」
苦笑しながらストラップ先端の小さな突起を押す。
ほむら『一体、何度忠告させるの。どこまで貴女は愚かなの』
ほむら「自分に忠告されていては世話ないわね」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ入れた。
ほむら(これは丁寧に梱包して愛するまどかへのプレゼントにしましょう)
制服のポケットから両替したばかりの百円玉を新たに三枚取り出し、コイン投入口へ入れてハンドルを廻す。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から青いカプセルが出てきた。
ほむら「また青いカプセル……。ダブリね」
カパッ。
カプセルの中には今回も美樹さやかのストラップが入っていた。
ほむら「ふん。まあ、せっかく引き当てたんだから一回くらいは再生してあげるわ。感謝しなさい」
負け惜しみのように言い、ほむらはストラップ先端の小さな突起を押す。
さやか『えっへへ~。残念、さやかちゃんでした~』
ほむら「これは……VersionBのセリフみたいね。そうよ、あなたを引き当ててしまって残念だわ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ乱暴に投げ入れた。
ほむら(これも佐倉杏子へのプレゼントで決定ね)
キラキラと銀色に輝く真新しい三枚の百円玉をコイン投入口に入れ、ほむらは力を込めてハンドルを廻した。
ガチャ、ガチャ。ポン。
取り出し口から白いカプセルが出てきた。
ほむら「白いカプセルだわ。これがシークレットね」
カパッ。
カプセルの中身はシークレットのQべえだった。ほむらは湧き上がる怒りを必死になって抑えながら呟く。
ほむら「このケダモノがシークレット? ふざけないでッ! シークレットに相応しいのは女神まどかだけよ」
そう言いながらもストラップ先端の小さな突起を押して収録ヴォイスを再生する。
Qべえ『僕と契約して魔法少女になってくれないかい?』
ほむら「地獄に堕ちなさい。この淫獣ッ」
空カプセルを回収箱に放り投げ、ストラップは鞄の中へ投げ入れた。
ほむら(これは……巴さんへのプレゼントにすればいいわ)
この後もほむらはガチャポンに挑み続けたが目当てのブツは引き当てられず、鞄の中は大量の不用品に占拠されてしまった。
ほむら(どうして……。どうして九回もやっているのにまどかのストラップだけが出てこないの)
怒りで我を忘れたほむらは時間を止めてガチャポン販売機を破壊しようと決意した。
周囲に人影がない事を確認したほむらは魔法少女へ変身する。
ほむら「時間よ止まれ!」
カチッ。
ほむらの言葉と共にシールドに埋め込まれた砂時計が回転し全宇宙の時間が停止した。
ほむら「人をバカにするのも大概にしなさい」
かつて愛用してたゴルフクラブをシールドから取り出し、機械を叩き壊そうと大きく振りかぶった。
……その時。
ほむら「そうだわ。今回の散財を戒める為にも台紙だけは貰って帰りましょう。エイッ」
気合の一声と同時にゴルフクラブでガチャポン販売機の屋根部分を叩きつけた。
バキャッ。
鈍い音をさせながら屋根部分が破損した瞬間、ほむらは愚かな自分の行為に気がついた。
ほむら「そうよ。あんな散財をしなくても、こうやって中身の確認をすればよかったんだわ」
合計三千円近い無駄金を消費したバカな自分を呪いつつ、ほむらは機械の中に詰まっているカプセルをチェックする。
しかし、ピンク色のカプセルは入っていない。どれも見覚えのあるカラーカプセルばかりである。
ほむら「そんな。嘘でしょう。どうして……どうしてピンクのカプセルがないの?」(まさか、アニメのようにまどかの存在が抹消されてしまったの? いいえ、そんな事はある筈がない。あれはアニメでの設定、まどかは現実世界に存在するわ。今日だって学校で会っているもの)
台紙で景品ラインナップを確認するほむら。そんな彼女の目に信じられない文字が飛び込んできた。
まどかストラップのイメージ写真の下には次のような一文を印字した小さなシールが貼られていた。
『鹿目まどかストラップは商品製造過程において動作不良品が多数見つかりましたので初期出荷分には含まれておりません。御了承下さい』
第二話「恐怖のパズル」
マ ミ「ジグソーパズルは楽しいわねぇ。一人ぼっちでも遊べるんだもの」
巴マミはクーラーの冷風が涼しい自宅マンションのリビングで500ピースのジグソーパズルに挑戦していた。
魔法少女となった自分の立ち姿が描かれた「萌え萌えパズル」最新作である。新発売の商品としてメーカーからプレゼントされたのだ。
断片的な絵柄が印刷されたピースを一つ一つ指で摘み、思考錯誤しながら次々と空スペースに嵌めていく。
Qべえ「慣れたもんだね。まだ一時間ちょっとしか経っていないのに完成図が見え始めてきたじゃないか」
一緒に暮らすQべえがマミの肩に乗っかり、完成しつつあるパズルを俯瞰しながら言った。
マ ミ「当然よ。小学生の頃に「全日本ジグソーパズル選手権」の小学生部門で三回連続優勝した事があるんだから」
ドヤ顔でQべえに自慢するマミ。
Qべえ「そ、そうかい。それは凄いね」
マ ミ「うふふふふ。もっと褒めてくれてもいいのよ」
Qべえ「僕には感情がない。君を尊敬する気持ちになれないし、嘲る気持ちにもなれないよ」
マ ミ「最後の一言は聞き捨てならないわね」
夫婦漫才(めおとまんざい)のような会話をしながらもマミの手は休まらず、ジグソーパズルは刻一刻と完成に近づいてきた。
二時間後。
マ ミ「もうちょっとで完成よ」
Qべえ「頑張れ~」
惰性で応援を続けていたQべえが間延びした声で最後の声援を送る。
マ ミ「うん。頑張るわ。残りの10ピースを速攻で片付けるわよ!」
ウィンクしながらQべえの声援に応えるマミ。完全に自分の世界へ没頭しているようだ。
一つ、また一つ。マミの左手に握られたパズルのピースが減っていく。
残り5ピース。4ピース。3ピース。
その時だった。
マ ミ「あら」
Qべえ「どうしたんだい? マミ」
マ ミ「変ねえ。パズルのピースが足りないのよ」
Qべえ「ピースが足りない?」
マ ミ「ええ。空きは三箇所なのにピースは二つしか残っていないわ」
Qべえ「パズルのピースは手の中さぁぁ」
マ ミ「え? なにを言っているの?」
Qべえ「……。そっか、マミの年齢では知らないよね。これはアニメ版「名探偵コナン」第1期のエンディングテーマ「STEP BY STEP」の歌詞の一節だよ」
マ ミ「そ、そうなの? わたしはアニメ番組を見ないから言っている事が理解できないわ」
Qべえ「ふ~ん」
マ ミ「それよりピースを探すの手伝ってくれないかしら?」
二人で部屋中を探してみたが不足分のピースは見つからなかった。
Qべえ「これだけ探しても見つからないんだ、きっとパーツ不足だったんだよ」
マ ミ「そうみたいね。しかたがないわ、メーカーに連絡して足りないピースを取り寄せないと」
決断を下したマミは残る2つのピースをパズルの空白箇所に埋め込んだ。その時……。
マ ミ「ひぃぃ~」
Qべえ「どうしたの、マミ」
キッチンでアイスコーヒーを飲んでいたQべえが大急ぎでリビングへ引き返す。
マ ミ「く、首が……」
Qべえ「首? 首がどうしたんだい? ちゃんと体と頭を繋いでいるじゃないか。過去のトラウマは忘れなよ」
マ ミ「パズルを……。パズルを見て」
Qべえ「パズル?」
言われるままに視線を未完のパズルへ移すQべえ。
Qべえ「こ、これは……」
そこには首の部分が空洞となっている巴マミの姿があった。どうやら首を描いたピースが欠けていたらしい。
Qべえ(よりにもよって首の描れた部分が足りないなんて……。これはキツイ皮肉だね)
第三話「大いなる過ち」
店 員「ありがとうございました~。またお越し下さいませぇ」
元気な女性店員の声を背後に聞きながら暁美ほむらはアニメショップの自動ドアから店の外へ出た。
手に提げた大きな紙袋の中には十二個の「まどパン」が入っている。
ほむら(まどか……。あなたのパンティは全て買い占めたわ)
あらぬ妄想をしながら帰路につき、無人の我が家へ帰り着いた頃には陽もとっぷりと暮れていた。
そもそものキッカケは、まどかグッズを買いに「魔法少女まどか☆マギカ」グッズ専売コーナーへ足を踏み入れた時から始まる。
関節パーツが新しくなった再販フィギュア「フル稼働アクション 鹿目まどか ~パンチラもパンモロもあるんだよ~」を買いに来たのだが、フィギュア系グッズの脇に「食料品コーナー」が新設されていたのでフィギュアの購入は後にし、新発売のまどかグッズが並んでいないかチェックの目を光らせた。
ほむら「えッ? なによ、これ……」
万引きGメンのように鋭く商品をチェックしていたほむらの目は信じられない商品名を見つけた。
その名も「まどパン」。円形のアルミ缶に横長の紙を巻き付けた缶詰め食品である。紙には各キャラクターが大きく描かれており、五人全員分が揃っていた。
ほむらの目当ては言うまでもなく鹿目まどかのみ。
愛しいまどかのイラストを見ようとアルミ缶を手に取った瞬間、再びほむらの目は信じられない文字を見つけた。
アルミ缶の周囲を巻いた紙にはイラストと一緒にポップ体のフォントで『まどか「わたしの【特価シールにより五文字分判読不能】はイチゴ味だよ」』と書かれていたのだ。どの缶も同じ箇所に特価シールが貼ってあり、その下に書かれている文字は読めないが、妄想を逞しくしたほむらは「わたしの履いた下着はイチゴ味だよ」と勝手に解釈した。
ほむら「まどパン。イチゴ味。これは買い占めるしかないわね」
通常価格は八百円だが、売行きが悪いのか全て特価価格の五百円になっている。
ほむら(全部で十二缶あるわ。五百円×十二個で六千円。決して安い買物ではない……。でも、フィギュアの購入費を廻せば買えない値段ではないわね。再販フィギュアは日を改めて買いに来ればいい。よし、決めたッ。ここにある「まどパン」を買い占める事にしましょう。もちろん、まどかだけを!)
このような経緯があり、ほむらは大きな紙袋を手にアニメショップから出てきたのだった。
しかし、ほむらは知らなかった。「まどパン」の本当の意味を。その中身が彼女の妄想する「イチゴ味のまどかパンティ」ではない事を。
帰宅したほむらはキッチンへ向かい、紙袋から一個のアルミ缶を取り出して開封した。
パッカン。
ほむら「まどか……。まどか……。まどか……」
飢えた獣のように荒々しい息遣いで缶を逆さまにして中身を取り出そうとする。
ポトン。
ほむら「……。こ、これが中身?」
テーブルの上に落ちたのは一口サイズのパンだった。
ほむら「どういう事……。ひどいわ。あんまりだわ。こんなのってないわ」
残る十一個の缶を次々と開封してみたが、中身は全て一口サイズのパンであった。
ほむら「まさかッ」
文房具ケースからシール剥がしを取り出し、それで【特価シール】を剥がしてみると……。
ほむら「くッ。わたしとした事が……」
シールの下には「わたしの絵柄のパンはイチゴ味だよ」と書かれていた。
【あとがき】
ゆる~い日常の一場面を描いた短い物語ですが、お楽しみいただけましたでしょうか。
第一話「ほむらとガチャポン」を書くにあたっては、pixivのマイピク・パリジャン氏の作品「【ソウルジェム】一回300円はおおきい【ストラップ】」よりヒントを得ました。
第二話「恐怖のパズル」の本文中に書かれているジグソーパズルが完成するまでの大まかな所要時間は「ほいほい書いちゃうんだ まったりオタクライフを満喫中」の記事「東方 八雲紫(ゆかりん) 500ピースパズル製作 PartⅠ」(2011年1月2日 (日)付け更新)を参照させて頂きました。
第三話「大いなる過ち」は、アニメイトの某店で販売されていた「まど☆マギ」関連の食品を目にした時に思いついたネタです。
インスピレーションを与えて下さったパリジャン氏、データ参照したブログ管理人のトナカイ氏、お二人には記して感謝いたします。
なお、トナカイ氏のブログは2012年6月20日より「ほいほい書いちゃうんだ②」としてリニューアルされました。更新終了となった旧ブログも過去記事の閲覧は可能です(2014年2月22日現在)。

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原案:MagicaQuartet/漫画:みゃま「見滝原★アンチマテリアルズ」
ブログ更新停止中、遅ればせながら『見滝原★アンチマテリアルズ』(マンガタイムKRコミックス)を購入しました。
原案はMagica Quartet。漫画はみゃま氏。タイトルからも明らかですが、本作は「魔法少女まどか☆マギカ」の公式二次創作漫画となっています。
原作のif設定(「ほむらとマミが敵対せず、ルームシェアをしていたら」という設定)漫画ですが、少女たちが背負う過酷な運命の描写よりも女子中学生の日常生活を描く事に比重が置かれ、基本的に殺伐としたシーンは見られません。

(C)みゃま/Magica Quartet/芳文社
ストーリー構成やキャラクターの描き方が上手く、画力も文句なしの高レベル。
キャラクター人気だけに依存しない作品に仕上がっており、amazonでの評価が高いのも納得できます。
サブキャラクターとして杏子たちも登場しますが、公開名さんがレビューで書かれているように「どのキャラもネタ扱いしていない」描き方となっており、作者の原作愛が細部にまで感じられました。
こうした細やかな配慮が漫画全編に活かされており、絶妙なバランスで見滝原五人娘の日常を描ている点が、本家「まど☆マギ」ファンにも高評価される理由の一つでしょう。
本作は『まんがタイム きらら☆マギカ』創刊号から連載されており、現在も好評連載中です。
11月8日に発売された第10号は残念ながら休載でしたが、来月発売される第11号の連載再開を楽しみに待っています。
最後にコミックス第1巻収録作品から、お気に入りのコマを2点ばかりピックアップしてみました。
ほむらとマミの魂が入れ替わる第2話より、「のんびりモードの巴ほむら」、「怖い顔の暁美マミ」です。

(C)みゃま/Magica Quartet/芳文社
【付記】
2013年11月30日17時50分現在、amazonでの在庫は品切れ状態です。各書店の店頭在庫や各ネット書店の流通在庫はあるかも知れませんので、新品を購入されたい方は近所の書店などで在庫を確認してみて下さい。
原案はMagica Quartet。漫画はみゃま氏。タイトルからも明らかですが、本作は「魔法少女まどか☆マギカ」の公式二次創作漫画となっています。
原作のif設定(「ほむらとマミが敵対せず、ルームシェアをしていたら」という設定)漫画ですが、少女たちが背負う過酷な運命の描写よりも女子中学生の日常生活を描く事に比重が置かれ、基本的に殺伐としたシーンは見られません。


(C)みゃま/Magica Quartet/芳文社
ストーリー構成やキャラクターの描き方が上手く、画力も文句なしの高レベル。
キャラクター人気だけに依存しない作品に仕上がっており、amazonでの評価が高いのも納得できます。
サブキャラクターとして杏子たちも登場しますが、公開名さんがレビューで書かれているように「どのキャラもネタ扱いしていない」描き方となっており、作者の原作愛が細部にまで感じられました。
こうした細やかな配慮が漫画全編に活かされており、絶妙なバランスで見滝原五人娘の日常を描ている点が、本家「まど☆マギ」ファンにも高評価される理由の一つでしょう。
本作は『まんがタイム きらら☆マギカ』創刊号から連載されており、現在も好評連載中です。
11月8日に発売された第10号は残念ながら休載でしたが、来月発売される第11号の連載再開を楽しみに待っています。
最後にコミックス第1巻収録作品から、お気に入りのコマを2点ばかりピックアップしてみました。
ほむらとマミの魂が入れ替わる第2話より、「のんびりモードの巴ほむら」、「怖い顔の暁美マミ」です。

(C)みゃま/Magica Quartet/芳文社
【付記】
2013年11月30日17時50分現在、amazonでの在庫は品切れ状態です。各書店の店頭在庫や各ネット書店の流通在庫はあるかも知れませんので、新品を購入されたい方は近所の書店などで在庫を確認してみて下さい。
『PUELLA MAGI ORIKO☆MAGICA』(全2巻)
今日は「魔法少女まどか☆マギカ」の同人誌即売会「もう何も恐くない12」の開催日でした。
場所は大田区産業プラザPioの大展示場。午前11時から午後3時まで即売会が行われ、午後3時15分からアフターイベントとなり、午後4時に閉場したようです(イベント詳細は告知サイト「魔まマONLYもう何も恐くない 魔法少女まどか☆マギカオンリーイベント即売会」を参照しました)。
会場は京急蒲田駅近くなので地理的には問題なかったのですが……諸事情あって参加できませんでした(泣)。
上記のような理由から予定していたイベント参加報告ができなくなったので、同じ「まど☆マギ」繋がりのネタとして英語版『魔法少女おりこ☆マギカ』のコミックスを紹介しようと思います。
内容は日本語版と同一ですが、関連書籍という事で取り上げる事にしました。

(C)ムラ黒江/Magica Quartet/芳文社/YenPress
英語版『魔法少女おりこ☆マギカ』のタイトルは『PUELLA MAGI ORIKO☆MAGIKA』です。ニューヨークにあるYenPress社から刊行されました。
翻訳はWilliam Flanagan、全編のレタリングはCarlVanstiphoutが担当しています。
オリジナル版は「まど☆マギ」のTV放送終了直後、2011年5月から6月にかけて2冊連続刊行されましたが、英語版コミックスは約2年遅れで刊行されました。
奥付によれば、第1巻の初版発行は2013年7月、第2巻の初版発行は2013年10月となっています。
アメコミ専門カタログ『Previews』に掲載された広告の切り抜きが見つかったのでスキャンしてみました(第1巻の広告は2013年5月号に掲載。第2号の広告掲載号はメモしておらず不詳)。
タイトル脇にある「GN」は「Graphic novel」の略で主に長編コミックスを意味します。日本のコミックスを英訳したペーパーバックの漫画本紹介時に使用される事が多いです。

(C)Previes/ムラ黒江/Magica Quartet/芳文社/YenPress
amazonの洋書新刊情報によれば、ドイツ語版『魔法少女おりこ☆マギカ』の第1巻が2013年に刊行されるそうです。
お手頃価格なのでコレクターズアイテムとして購入する価値はあると思います。
※2013年11月17日現在、在庫切れによる入荷待ち。
場所は大田区産業プラザPioの大展示場。午前11時から午後3時まで即売会が行われ、午後3時15分からアフターイベントとなり、午後4時に閉場したようです(イベント詳細は告知サイト「魔まマONLYもう何も恐くない 魔法少女まどか☆マギカオンリーイベント即売会」を参照しました)。
会場は京急蒲田駅近くなので地理的には問題なかったのですが……諸事情あって参加できませんでした(泣)。
上記のような理由から予定していたイベント参加報告ができなくなったので、同じ「まど☆マギ」繋がりのネタとして英語版『魔法少女おりこ☆マギカ』のコミックスを紹介しようと思います。
内容は日本語版と同一ですが、関連書籍という事で取り上げる事にしました。

(C)ムラ黒江/Magica Quartet/芳文社/YenPress
英語版『魔法少女おりこ☆マギカ』のタイトルは『PUELLA MAGI ORIKO☆MAGIKA』です。ニューヨークにあるYenPress社から刊行されました。
翻訳はWilliam Flanagan、全編のレタリングはCarlVanstiphoutが担当しています。
オリジナル版は「まど☆マギ」のTV放送終了直後、2011年5月から6月にかけて2冊連続刊行されましたが、英語版コミックスは約2年遅れで刊行されました。
奥付によれば、第1巻の初版発行は2013年7月、第2巻の初版発行は2013年10月となっています。
アメコミ専門カタログ『Previews』に掲載された広告の切り抜きが見つかったのでスキャンしてみました(第1巻の広告は2013年5月号に掲載。第2号の広告掲載号はメモしておらず不詳)。
タイトル脇にある「GN」は「Graphic novel」の略で主に長編コミックスを意味します。日本のコミックスを英訳したペーパーバックの漫画本紹介時に使用される事が多いです。

(C)Previes/ムラ黒江/Magica Quartet/芳文社/YenPress
amazonの洋書新刊情報によれば、ドイツ語版『魔法少女おりこ☆マギカ』の第1巻が2013年に刊行されるそうです。
お手頃価格なのでコレクターズアイテムとして購入する価値はあると思います。
![]() | Puella Magi Oriko Magica, Vol. 1 (Puella Magi Kazumi Magica) (2013/07/23) Kuroe Mura 商品詳細を見る |
![]() | Puella Magi Oriko Magica, Vol. 2 (Puella Magi Kazumi Magica) (2013/10/29) Kuroe Mura 商品詳細を見る |
夢と希望の落ちモノ対戦「まぎ☆まぎ」(このタイトルは架空のゲームです)
pixivで「魔法少女まどか☆マギカ」の関連イラストを閲覧中、あるようでなかった(と思います)究極のコラボレーションが実現したイラストを見つけました。
タイトルは「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」。名作アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」と名作ゲーム「ぷよぷよ」をコラボさせたイラストです。
180度違う両作品の世界観を見事に融合しただけでなく、可愛らしいタッチのイラストで再現されたキャラクターも両作品の『らしさ』を失っていません。
該当イラストへの直リンクは貼りませんが、作者であるORGEL氏の管理ページへアクセスすれば投稿イラストの中に「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」を見つけられる為、SD系イラストが好きな「まど☆マギ」ファンの方にはお薦めの作品です!
ORGEL氏のアイディアをパクってしまい恐縮ではありますが、自分なりに考えた「まど☆マギ」と「ぷよぷよ」のコラボネタを架空のゲーム紹介記事にしてみました。
よろしければ、新境地の「まど☆マギ」ネタをご覧下さい。
今回は「ストーリーモード」における対戦前の会話を暁美ほむら視点で書きますが、ネタが思うかべば「魔法少女おりこ☆マギカ」の主要メンバーも含めた全8人、それぞれの視点による対戦前の会話を書いてみようと思います。
それぞれの対戦前セリフを考えるにあたっては「魔法少女まどか☆マギカ WIKI」を参照させていただきました。
各キャラクターのセリフをテキスト化して下さった方々、サイト管理人様に心より感謝いたします。
【ストーリー】
たった一人の大切な友達・鹿目まどか。自らの命を捨て世界を救おうとする彼女の運命を変えるため、暁美ほむらは時を遡り、仲間と協力して最凶の敵『ワルプルギスの夜』を倒そうと決意した。
【ステージ1:VS美樹さやか】
さやか「あんたも魔法少女だったんだね、転校生」
ほむら「ええ。そうよ」
さやか「何考えてんだか知らないけど、まどかやマミさんの邪魔をするってんなら容赦しないわ」
ほむら「別に邪魔をする気なんてないわ。むしろ、彼女達の力を借りたいと思っているのよ」
さやか「どうだか。あんたの言葉、ど~も信用できないんだよねぇ。油断させておいて、後ろからバッサリ。グリーフシードを横取りしようと思ってんじゃないの? そんな事、あたしが許さないからね」
ほむら「随分と大口を叩くのね。それなりの実力があっての事かしら? それとも、口先だけかしら?」
さやか「今の言葉、聞き捨てならないわね」
ほむら「ちょうどいい機会だわ。貴方(あなた)の実力、見極めさせてもらうわね」
さやか「ナメるんじゃないわよ!」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ2:VS巴マミ】
マ ミ「美樹さんと戦ったそうね。どういう理由(わけ)があったかは知らないけれど、同じ魔法少女を傷つける行為は見逃せないわ」
ほむら「気は進みませんでしたが、美樹さやかが戦力になるかを判定させていただきました。彼女にも『ワルプルギスの夜』討伐に加わっていただきたいので」
マ ミ「その言葉、私が信用すると思って?」
ほむら「信用していただけなくても結構です。巴さん、あなたの実力も試させてもらいます」
マ ミ「魔法少女狩りの次の標的は私ってわけね」
ほむら「……巴さん、意外と人の話を聞かないタイプなんですね」
マ ミ「いいわ、相手をしてあげる。でも、あまり暴れるようならソウルジェムが無事である事は保障しかねるわよ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ3:VS佐倉杏子】
杏 子「マミから聞いたよ。『ワルプルギスの夜』と戦う仲間を探してるってんだな」
ほむら「ええ」
杏 子「確かに一人じゃ手強い相手だが、見滝原(ここ)の魔法少女が一致団結すりゃあ勝てるかもな」
ほむら「『ワルプルギスの夜』が来るのは二週間後。あいつを倒せば、私の戦いは終わる」
杏 子「なんか理由(わけ)ありみたいだな」
ほむら「あなたなら分別がありそうだから単刀直入に言うわ。佐倉杏子、私に力を貸してくれないかしら」
杏 子「いいよ、力を貸してやっても。ただし……あたしに勝てたらね」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ4:VS鹿目まどか】
まどか「どうして? どうして……ほむらちゃんと戦わなきゃいけないの?」
ほむら「貴方(あなた)を死なせたくないからよ。『ワルプルギスの夜」を倒すにはまどかの力が必要なの」
まどか「い、言っている事の意味がわからないよ。ほむらちゃん。わたしを死なせたくないなら、戦う必要なんてないよ」
ほむら「魔法少女になったばかりの貴方(あなた)には戦闘経験が足りない。だから、わたしがまどかの戦闘スタイルに合った戦い方のコツを言葉ではなく、その体に教えてあげるのよ。ふふふ、心配しないで。ソウルジェムを破壊されない限り魔法少女は死なないわ。実践レッスンが終わったら、たっぷりと……サ、サ、サービスをしてあげる❤」
まどか「え? ええ~? ちょっと待って。ほむらちゃんの言ってること、ついていけない。全然納得できないよ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【最終ステージ:VSワルプルギスの夜】
さやか「あ、あれが……『ワルプルギスの夜』」
マ ミ「話には聞いていたけれど、予想以上の大物だわ」
まどか「か、勝てるかなぁ。あんな魔女を相手にして」
杏 子「あたしら五人が力を合わせれば負ける相手じゃないよ。いっちょ派手にいこうじゃない」
ほむら(誰一人欠ける事なく『ワルプルギスの夜』と戦う。ようやく理想の戦闘態勢が整ったわ。わたしの長い旅……この時間軸で終わらせる)
ほむら「『ワルプルギスの夜』……レッツまぎ勝負よ!」
【エクストラステージ:VSインキュベーター】
ほむら「そこにいるのはわかっているわよ。出てきなさい、インキュベーター」
Q B「キュウ?」
ほむら「純真無垢な少女を騙し、絶望の連鎖へと導く者。その報い、今こそ受けるといいわ」
Q B「キュウ?」
ほむら「話せないふりをしても無駄よ。お前が人間の言葉を理解できている事は知っているわ」
Q B「キュウ~」
ほむら「あくまでシラをきり通すつもりね」
Q B「キュキュウ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【追記】ORGEL氏が新作「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ ほむらストーリーモード」をpixivへアップされました。「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」を漫画形式にした作品です。ポップな絵柄のSDまどかとSDほむらが可愛く、ディフォルメされた「まど☆マギ」キャラが好きな方は必見です。(2013年11月17日・記)
タイトルは「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」。名作アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」と名作ゲーム「ぷよぷよ」をコラボさせたイラストです。
180度違う両作品の世界観を見事に融合しただけでなく、可愛らしいタッチのイラストで再現されたキャラクターも両作品の『らしさ』を失っていません。
該当イラストへの直リンクは貼りませんが、作者であるORGEL氏の管理ページへアクセスすれば投稿イラストの中に「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」を見つけられる為、SD系イラストが好きな「まど☆マギ」ファンの方にはお薦めの作品です!
ORGEL氏のアイディアをパクってしまい恐縮ではありますが、自分なりに考えた「まど☆マギ」と「ぷよぷよ」のコラボネタを架空のゲーム紹介記事にしてみました。
よろしければ、新境地の「まど☆マギ」ネタをご覧下さい。
今回は「ストーリーモード」における対戦前の会話を暁美ほむら視点で書きますが、ネタが思うかべば「魔法少女おりこ☆マギカ」の主要メンバーも含めた全8人、それぞれの視点による対戦前の会話を書いてみようと思います。
それぞれの対戦前セリフを考えるにあたっては「魔法少女まどか☆マギカ WIKI」を参照させていただきました。
各キャラクターのセリフをテキスト化して下さった方々、サイト管理人様に心より感謝いたします。
【ストーリー】
たった一人の大切な友達・鹿目まどか。自らの命を捨て世界を救おうとする彼女の運命を変えるため、暁美ほむらは時を遡り、仲間と協力して最凶の敵『ワルプルギスの夜』を倒そうと決意した。
【ステージ1:VS美樹さやか】
さやか「あんたも魔法少女だったんだね、転校生」
ほむら「ええ。そうよ」
さやか「何考えてんだか知らないけど、まどかやマミさんの邪魔をするってんなら容赦しないわ」
ほむら「別に邪魔をする気なんてないわ。むしろ、彼女達の力を借りたいと思っているのよ」
さやか「どうだか。あんたの言葉、ど~も信用できないんだよねぇ。油断させておいて、後ろからバッサリ。グリーフシードを横取りしようと思ってんじゃないの? そんな事、あたしが許さないからね」
ほむら「随分と大口を叩くのね。それなりの実力があっての事かしら? それとも、口先だけかしら?」
さやか「今の言葉、聞き捨てならないわね」
ほむら「ちょうどいい機会だわ。貴方(あなた)の実力、見極めさせてもらうわね」
さやか「ナメるんじゃないわよ!」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ2:VS巴マミ】
マ ミ「美樹さんと戦ったそうね。どういう理由(わけ)があったかは知らないけれど、同じ魔法少女を傷つける行為は見逃せないわ」
ほむら「気は進みませんでしたが、美樹さやかが戦力になるかを判定させていただきました。彼女にも『ワルプルギスの夜』討伐に加わっていただきたいので」
マ ミ「その言葉、私が信用すると思って?」
ほむら「信用していただけなくても結構です。巴さん、あなたの実力も試させてもらいます」
マ ミ「魔法少女狩りの次の標的は私ってわけね」
ほむら「……巴さん、意外と人の話を聞かないタイプなんですね」
マ ミ「いいわ、相手をしてあげる。でも、あまり暴れるようならソウルジェムが無事である事は保障しかねるわよ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ3:VS佐倉杏子】
杏 子「マミから聞いたよ。『ワルプルギスの夜』と戦う仲間を探してるってんだな」
ほむら「ええ」
杏 子「確かに一人じゃ手強い相手だが、見滝原(ここ)の魔法少女が一致団結すりゃあ勝てるかもな」
ほむら「『ワルプルギスの夜』が来るのは二週間後。あいつを倒せば、私の戦いは終わる」
杏 子「なんか理由(わけ)ありみたいだな」
ほむら「あなたなら分別がありそうだから単刀直入に言うわ。佐倉杏子、私に力を貸してくれないかしら」
杏 子「いいよ、力を貸してやっても。ただし……あたしに勝てたらね」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【ステージ4:VS鹿目まどか】
まどか「どうして? どうして……ほむらちゃんと戦わなきゃいけないの?」
ほむら「貴方(あなた)を死なせたくないからよ。『ワルプルギスの夜」を倒すにはまどかの力が必要なの」
まどか「い、言っている事の意味がわからないよ。ほむらちゃん。わたしを死なせたくないなら、戦う必要なんてないよ」
ほむら「魔法少女になったばかりの貴方(あなた)には戦闘経験が足りない。だから、わたしがまどかの戦闘スタイルに合った戦い方のコツを言葉ではなく、その体に教えてあげるのよ。ふふふ、心配しないで。ソウルジェムを破壊されない限り魔法少女は死なないわ。実践レッスンが終わったら、たっぷりと……サ、サ、サービスをしてあげる❤」
まどか「え? ええ~? ちょっと待って。ほむらちゃんの言ってること、ついていけない。全然納得できないよ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【最終ステージ:VSワルプルギスの夜】
さやか「あ、あれが……『ワルプルギスの夜』」
マ ミ「話には聞いていたけれど、予想以上の大物だわ」
まどか「か、勝てるかなぁ。あんな魔女を相手にして」
杏 子「あたしら五人が力を合わせれば負ける相手じゃないよ。いっちょ派手にいこうじゃない」
ほむら(誰一人欠ける事なく『ワルプルギスの夜』と戦う。ようやく理想の戦闘態勢が整ったわ。わたしの長い旅……この時間軸で終わらせる)
ほむら「『ワルプルギスの夜』……レッツまぎ勝負よ!」
【エクストラステージ:VSインキュベーター】
ほむら「そこにいるのはわかっているわよ。出てきなさい、インキュベーター」
Q B「キュウ?」
ほむら「純真無垢な少女を騙し、絶望の連鎖へと導く者。その報い、今こそ受けるといいわ」
Q B「キュウ?」
ほむら「話せないふりをしても無駄よ。お前が人間の言葉を理解できている事は知っているわ」
Q B「キュウ~」
ほむら「あくまでシラをきり通すつもりね」
Q B「キュキュウ」
ほむら「何はともあれ……レッツまぎ勝負よ!」
【追記】ORGEL氏が新作「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ ほむらストーリーモード」をpixivへアップされました。「まどマギ☆ぷよぷよ 漫才デモ」を漫画形式にした作品です。ポップな絵柄のSDまどかとSDほむらが可愛く、ディフォルメされた「まど☆マギ」キャラが好きな方は必見です。(2013年11月17日・記)
魔法少女VSインキュベーター、決着の刻
久しぶりに立ち寄った秋葉原の同人誌ショップで『さよなら絶望少女たち』(発行=ジャム王国)を手に取り、ジャム王子氏による「魔法少女まどか☆マギカ」の二次創作長編漫画が約1年半かけて完結した事を知りました。
狡猾なインキュベーターと見滝原魔法少女の壮絶な戦いを描いた全3分冊に及ぶ大作であり、まずは複雑に入り組んだ物語を最後まで描き終えたジャム王子氏に「お疲れ様でした」と労いの言葉をかけさせていただきます。
前述のようにジャム王子氏の「まど☆マギ」二次創作長編漫画は3分冊形式で発行されました。
以下、簡単に初版発行年月と初売りイベント情報、簡単な内容紹介を記します。
在庫状況は不明ですが、いずれも入手可能な本ではあると思われますので、購入を希望される方は発行サークルへ問い合わせてみて下さい。
第1弾『ロマンと呼ぶには熱すぎて』は2011年11月の発行。初売りは2011年11月27日に開催された「もう何も怖くない3」です。
物語序盤はアニメ第8話「あたしって、ほんとバカ」をベースに展開され、ほむらと杏子の連携プレーによってさやかが魔女化せずに奇跡の帰還を果てしてからは独自のifストーリーへとシフトしてきます。
絶望の連鎖を終わらせるべく、覚悟を決めたまどかはキュゥべえと契約。見滝原魔法少女が五人揃ったところで第1部は終了しました。
第2弾『オペラツィオーネ・スペランツァ』は2012年5月の発行。初売りは2012年5月3日に開催された「もう何も恐くない5」です。
ワルプルギスの夜を倒す為、一致団結した五人の魔法少女はチームワークを活かした作戦で戦いに臨むものの、圧倒的な力の差を見せつけられ絶体絶命の危機に陥ります。
キュゥべえがワルプルギスの夜と一体化し、さやかのソウルジェムが濁りきるという最悪の状況下、まどかの願った奇跡が発動。
少女達を蝕む絶望が希望によって払拭され、攻守の形勢が逆転する直前で第2部は終了します。
第3弾『さよなら絶望少女たち』は2013年5月の発行。初売りは2013年5月3日に開催された「もう何も恐くない9」です。
まどかの願った奇跡によってダメージが癒えた魔法少女達は希望を取り戻し、新たな技でキュゥべえを追い詰めます。
力量を軽んじていた相手が予想以上に手強い事を悟ったキュゥべえは魔法少女達を絶望させるべく、大勢の市民が集まる避難所の襲撃を目論み、巨大な体を避難所に向かって飛び立たせました。
ここから先はネタバレになるので書きませんが、最終決戦らしい場所でのラストバトルでキュゥべえと魔法少女の因縁にケリがつき、長かった物語はグランドフィナーレを迎えます。
オリジナル魔法やコスチュームは原作アニメの雰囲気が再現されており、これらも本書の見所の一つと言えるでしょう。
細部まで考え抜かれたプロットと迫力あるアクションシーン。そして、大団円の結末。
鬱展開に始終しながらも斬新な趣向を随所に盛り込んだ原作の長所を自家薬籠中の物とし、並行世界の一つとして「あり得た世界」を描き出したジャム王子氏の手腕には一人の「まど☆マギ」ファンとして拍手を送ります。
巻末のコメントによれば、次回作として「脱力しまくったギャグ本」を構想中との事。
肩の凝らないギャグ作品にも期待ができ、一日も早い刊行の実現を待っています。
狡猾なインキュベーターと見滝原魔法少女の壮絶な戦いを描いた全3分冊に及ぶ大作であり、まずは複雑に入り組んだ物語を最後まで描き終えたジャム王子氏に「お疲れ様でした」と労いの言葉をかけさせていただきます。
前述のようにジャム王子氏の「まど☆マギ」二次創作長編漫画は3分冊形式で発行されました。
以下、簡単に初版発行年月と初売りイベント情報、簡単な内容紹介を記します。
在庫状況は不明ですが、いずれも入手可能な本ではあると思われますので、購入を希望される方は発行サークルへ問い合わせてみて下さい。
第1弾『ロマンと呼ぶには熱すぎて』は2011年11月の発行。初売りは2011年11月27日に開催された「もう何も怖くない3」です。
物語序盤はアニメ第8話「あたしって、ほんとバカ」をベースに展開され、ほむらと杏子の連携プレーによってさやかが魔女化せずに奇跡の帰還を果てしてからは独自のifストーリーへとシフトしてきます。
絶望の連鎖を終わらせるべく、覚悟を決めたまどかはキュゥべえと契約。見滝原魔法少女が五人揃ったところで第1部は終了しました。
第2弾『オペラツィオーネ・スペランツァ』は2012年5月の発行。初売りは2012年5月3日に開催された「もう何も恐くない5」です。
ワルプルギスの夜を倒す為、一致団結した五人の魔法少女はチームワークを活かした作戦で戦いに臨むものの、圧倒的な力の差を見せつけられ絶体絶命の危機に陥ります。
キュゥべえがワルプルギスの夜と一体化し、さやかのソウルジェムが濁りきるという最悪の状況下、まどかの願った奇跡が発動。
少女達を蝕む絶望が希望によって払拭され、攻守の形勢が逆転する直前で第2部は終了します。
第3弾『さよなら絶望少女たち』は2013年5月の発行。初売りは2013年5月3日に開催された「もう何も恐くない9」です。
まどかの願った奇跡によってダメージが癒えた魔法少女達は希望を取り戻し、新たな技でキュゥべえを追い詰めます。
力量を軽んじていた相手が予想以上に手強い事を悟ったキュゥべえは魔法少女達を絶望させるべく、大勢の市民が集まる避難所の襲撃を目論み、巨大な体を避難所に向かって飛び立たせました。
ここから先はネタバレになるので書きませんが、最終決戦らしい場所でのラストバトルでキュゥべえと魔法少女の因縁にケリがつき、長かった物語はグランドフィナーレを迎えます。
オリジナル魔法やコスチュームは原作アニメの雰囲気が再現されており、これらも本書の見所の一つと言えるでしょう。
細部まで考え抜かれたプロットと迫力あるアクションシーン。そして、大団円の結末。
鬱展開に始終しながらも斬新な趣向を随所に盛り込んだ原作の長所を自家薬籠中の物とし、並行世界の一つとして「あり得た世界」を描き出したジャム王子氏の手腕には一人の「まど☆マギ」ファンとして拍手を送ります。
巻末のコメントによれば、次回作として「脱力しまくったギャグ本」を構想中との事。
肩の凝らないギャグ作品にも期待ができ、一日も早い刊行の実現を待っています。
「ラブ☆MAGI」 最終話:雨降って、地固まる
Part1.杏子の頼み、キリカの条件
友人A「オッハヨー、アンコ。朝から難しい顔しちゃって何読んでんの?」
杏 子「これか? せ、生徒会の書類だよ」
マミから押し付けられた「恋愛実習プログラム」だとは言えず、とっさにゴマカす杏子。
杏 子「こんな分厚い書類読まなきゃいけねーんだから、生徒会役員ってメンドーだよ」
友人A「そんなこと言って。ホントは楽しんでるくせにー」
杏 子「た、楽しんでなんか……」
友人A「今まで『学校なんてツマンネー』が口癖だったのに、役員になってからは一度も言ってないじゃん。あんたがそんなにマジメで仕事熱心だったとはねぇ」
杏 子(そう言えば……役員になってから学校がツマンナイって思わなくなったなぁ。補佐になったのもマミのゴーインな押し付けだったし、ホントにイヤなら行かなければいいだけだもんな)
ゆ ま「し、失礼します。あの、佐倉先輩……い、いらっしゃるでしょうか」
杏 子「なんだ、ゆまじゃないか。ここにいるよ。どうしたんだ」
ゆ ま「佐倉先輩。た、大変です。巴先輩が体育の授業中に倒れて保健室へ運ばれたそうです」
杏 子「なんだって」
ゆまと一緒に保健室へ急ぐ杏子。
杏 子「マミッ!!」
保健医「静かに!」
杏 子「ス、スミマセン」
奥のベッドには青い顔で横たわるマミの姿があった。
杏 子「マ、マミ……」
ゆ ま「巴先輩……」
保健医「過労と寝不足ね。この学校の生徒会は仕事が多いから」
杏 子「か、過労……」
保健医「巴さん、責任感が強くて抱え込みタイプだから気をつけてあげてね」
杏 子(知らなかった……)
保健医「その辺をサポートすることも補佐の役目よ」
杏 子(ウソだ。知ってた……。知ってたけど、あたしはマミの好意に甘えていた)
真実の寝顔を見た杏子は駆けだして保健室を出た。
ゆ ま「佐倉先輩!」
キリカ「第一項、魅力的なうなじの見せ方……。何回読んでも理解できないわ」
織莉子「男のコの気を引くテクとか素敵な出会い方とか、バッカみたいよねぇ」
執行部室から持ち出した冊子のコピーを手にする織莉子とキリカ。
織莉子「明日の委員長会議で使う資料にコレを混ぜて、読んで騒然としているトコに私が登場する。そうすれば、マミも私を無視できな……」
キリカ「イヤガラセの犯人にさぁ」
織莉子「え?」
キリカ「連想されなかったのはいいことじゃないの? 織莉子はそんな卑怯なマネをしないと思われてるってことでしょ? フツーなら気づかれるよ」
織莉子「……」
キリカ「まぁ、単に忘れられてるだけって気もするけど、前向きに考えてみたわ」
織莉子「最後の一言は余計よ」
キリカ「この作戦、あたしは卑怯な作戦だって思うんだけど、織莉子はホントにそれでいいわけ?」
織莉子「……。い、いいに決まってるでしょう。そろそろコピー室の予約時間になったから、混ぜる分のコピーをとってくるわ」
織莉子が廊下の向うへ消えるのと入れ違いに、今度は杏子が姿を現わした。
杏 子「見つけたッ! 守銭奴!」
キリカ「初対面の先輩に向かって守銭奴とは失礼な後輩だねぇ」
杏 子(やべえ。ついホンネを口にしちまった)
キリカ「どうしたのさ。あたしに用があるんじゃないの?」
杏 子「く、呉先輩」
キリカ「へえ、あたしのこと知ってるんだ。どこかで会ったっけ?」
杏 子「いいえ、マミから聞いたんです。あなたが生徒会の会計だったこと」
キリカ「そうだったの。それじゃ守銭奴って言われても仕方ないわね」
杏 子「生徒会の会計に……戻りませんか?」
キリカ「この守銭奴に会計を任せる? どういう風の吹き廻しよ」
杏 子「……マミが倒れたんです」
キリカ「!」
杏 子「先輩は仕事が早いってマミが言ってました。だから……」
キリカ「だから?」
杏 子「マミを……手伝ってやって下さい」
キリカ「……」
杏 子「……」
キリカ「いいよ。でも、一つだけ条件がある」
杏 子「ま、まさか。金を自由に使われろなんて言うんじゃ……」
キリカ「あっはははは。まあ、いきなり守銭奴なんて言うくらいだ、そう思われても仕方ないわね」
杏 子「あ、あれは違くて。その……」
キリカ「こっちの条件は簡単よ。織莉子を会長に戻してくれないかしら?」
杏 子「織莉子を……会長に戻せ? 織莉子って誰です?」
キリカ「うわ。そっから説明しなきゃダメなんだ」
ゆ ま「み、美国先輩のことですか? 元会長の……」
杏 子「元会長? すると先輩達はグルだったのかよ。二人はどーいうカンケーなんだよ」
キリカ「ど、どういうって、幼馴染……」
杏 子「幼馴染が手を組んで生徒会を乗っ取ろうってハラか? あんたが会計に戻るのが目的じゃないのかよ」
キリカ「急にタメ口になったわね。あたしが会計に戻りたいってのもあるけど、本当は織莉子を生徒会長に復帰させ……」
杏 子「次々と新事実を出すんじゃねーよ。こっちはマミが倒れたってだけで混乱してんだぞッ」
Part2.交渉決裂
杏 子(マミの奴、何が心当たりがないだッ。コイツと仲いい元会長なんて怪しすぎるよ)
キリカ「条件、のんでくれる?」
杏 子「……あたしは『会長の』マミを手伝ってほしいんです。マミが会長じゃなくなるなら頼みません。取引になってませんから」
キリカ「マミが会長? それは違うわね。会長は織莉子よ。そう思っている生徒はいないだろうけど」
杏 子「それは当然です。職務を放棄したんだから」
キリカ「確かにね。でもさぁ、居座る前に織莉子を怒って説得すればよかったのに。会長代行になったら全部一人でやろうとしてるじゃない」
杏 子「それは……そうだけど」
キリカ「マミが有能のは認めるけど人を信用しなさすぎ。織莉子とは違うわ」
杏 子「……」
ゆ ま「……」
キリカ「まあ、肝心なところが抜けてて、子どもっぽくて、ワガママで、カンシャク起こしてばかりだけどね」
杏 子「短所の方が上回ってないか?」
織莉子「『恋愛研究成果』は普通の資料みたいにまとめてある。出てくる名前も『会長』や『補佐』だし。混ぜてしまえばパッと見は気づかない……」
コピーを取りながら「資料」の一部に目を通す織莉子。
織莉子(でも、キリカの言う通り卑怯かも。人の日記を勝手に公開するようなものだし……)
早乙女「美国さん、割り込みで申し訳な……ん? 『議題1。ハンカチ落とし』?」
ビリッ。
背後から早乙女先生に声をかけれ、動揺した織莉子は持っていたコピーを引き裂いてしまった。
織莉子「さ、さ、早乙女先生。あの……これは……その……明日の委員長会議で使う資料なんです。激論をかわすんですッ」
早乙女(な、何を話し合うのかしら……)
織莉子「コ、コピーでしたら、私がとりますから置いといて下さい」(焦ったわ。事前に使用時間を申請してたから誰も来ないと思ってたのに)
早乙女「あら、いいの?」
織莉子「はい」
早乙女「それじゃ、お願いしようかしら。五時からの職員会議で使う追加資料なのよ。各十部づつコピーして、そこの棚に置いておいてね。後で取りにくるわ」
織莉子「わかりました」
早乙女「ホントに美国さんは頼りになるわね」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
狭い室内に響くコピー音が織莉子に虚しさと寂しさを覚えさせる。
織莉子(キリカ、来ないわね……)
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「……」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「……」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「し、仕方がないわね。迎えに行ってあげるわッ」
織莉子「まったく、キリカったら……」
コピー室を出て廊下を走る織莉子。曲がり角近くまで来た時、キリカの声が聞こえてきた。
キリカ「織莉子は私がいい加減なことをしたら、ちゃんと怒ってくれる」
織莉子(えッ? 何よ、この状況?)
廊下で見知らぬ生徒と真面目な顔で話すキリカ。曲がり角の影に身を隠しながら、織莉子は彼女達のやりとりに耳を傾ける。
キリカ「でもね、また信じて任せてくれるよ。私はマミよりも織莉子が会長の方がいい」
織莉子(キリカ……)
キリカ「まあ、それを補って余りある程の欠点は問題だけどね」
杏 子「子どもっぽかったり、ワガママだったり、カンシャク起こしたり?」
キリカ「まだあるわ。八つ当たりも早とちりもするし、泣き虫だし……」
織莉子「ちょっと、キリカ。いくらなんでも言い過ぎじゃなくて?」
内心の怒りを隠しながら、織莉子は曲がり角から姿を現わした。
キリカ「あッ。彼女が織莉子。噂の会長様よ」
織莉子「え?」
キリカ「織莉子、彼女が噂の会長補佐だ。挨拶したら?」
織莉子「は、はじめまして。美国織莉子です」
杏 子「どうも。会長補佐の佐倉杏子です」
ゆ ま「しょ、書記の千歳ゆまです」
織莉子「話の展開が見えないんだけど、私の方が会長にふさわしいってことよね。当然だわ」
杏 子「でも、自分のプライドのために職務放棄したんだろう?」
織莉子「そ、それは……」
杏 子「確かにマミもよくないとこはある。だけど、無責任に仕事を投げ出したりはしない」
織莉子「……」
杏 子「あたしが会長にふさわしいと思うのはアンタじゃない。マミだけだ」
キリカ(言ってくれるねー)
ゆ ま(さっすがー。チェリーブロッサム)
織莉子「マミが……会長に……ふさわしい? そんなこと、私が一番よくわかっているわ。だから……。少し困らせて、私を頼ってきたら、『仕方ないわね』って補佐するつもりだったのに……」
杏 子「いやがらせの犯人はアンタだったのか」
織莉子「そうよ。私の実績を無視し、生徒会とは無関係な同級生を会長補佐に指名するから、いやがらせをしたのよ」
杏 子「つまり……マミに頼られたかったのに無視されたうえ、あたしを補佐に指名したのがムカついたってわけ?」
キリカ「子どもっぽいでしょ?」
杏 子「ホントだな」
織莉子「と、とにかく。あなたは補佐を辞めなさい。そしたら意地悪するのを止(や)めるわ」
杏 子「いやーだね。アッカンベー」
織莉子「こ、子どもっぽい事を……」
杏 子「アンタに言われたくねーよ」
織莉子「いいわ。交渉決裂ね。覚えていなさい。きっと後悔させてあげるから。行くわよ、キリカ」
捨てゼリフを残し、キリカの手を取って走り去る織莉子。
杏 子「やれやれ。そういうことだったのか。ゆま。これからはマミに無理させないよう、二人でサポートしようぜ。あたしも生徒会の仕事を手伝うから教えてくれ」
ゆ ま「は、はい」
杏 子「生徒会役員の先輩として頼りにしてるぜ」
ゆ ま「はいッ!」(うわ~い。チェリーブロッサムから頼りにされたぁ)
杏 子「それからさぁ、あたしのことは佐倉先輩って呼ばなくてもいいぜ。好きなように呼んでくれ」
ゆ ま「えッ? いいんですか?」
杏 子「ああ」
ゆ ま「じゃあ『チェリー先輩』と呼ばせて下さい」
杏 子「な、なんでだよ……」
Part3.委員長会議にて
マ ミ「そうだったんですか。美国先輩が……」
杏 子「そんなわけで人手はふえねーけどさ」
ゆ ま「これからは二人で巴先輩をサポートさせて下さい」
マ ミ「で、でも……」
ベッドから身を起こし、マミは遠慮がちに口を開いた。
マ ミ「二人に迷惑をかけるわけにはいきません。キョーコは仕事をしないって条件で会長補佐になってもらいましたし」
杏 子「うるせー。お前はもっと人を頼れってーの」
マミの額を指で弾きながら杏子が言った。
マ ミ「い、痛いです。キョーコ」
杏 子「困った時に助け合うのも『友達』だろう。だから、遠慮しないで仕事を言いつけてくれよ」
マ ミ「……はい。ありがとうございます。それでは……」
杏 子「ん?」
マ ミ「明日までに恋愛練習教材を各自10案ずつ出して下さい」
杏 子「そこを頼るのは控えよーぜ、マミさんよぉ」
マ ミ「あら、ごめんなさい」
杏 子「ふふふふ。あ~っははははは(笑)」
マ ミ「うふふふふ(笑)」
ゆ ま「あはははは(笑)」
マ ミ「でも、ホントによかった。いやがらせが続いたから、もう来てくれないんじゃないかと思っていました。キョーコは元々、ムリして役員になってもらいましたし」
杏 子「あたしは別にムリなんか……」
マ ミ「誰かとワイワイやるの……初めてで……すっごく楽しくて……。だから、絶対になくしたくなかったんです」
杏 子「マ、マミ……」
マ ミ「キョーコがいなくなったら、千歳さんもいなくなっちゃうんじゃにかって不安だったんです」
ゆ ま「そ、そんな。私なんか……」
マ ミ「今まで、ずっと一人でやっていたから。だから、友達と一緒に仕事するの、すっごく楽しいんです」
杏 子(そうか。マミは人を信用しないんじゃなくて、頼り方を知らないだけなんだ)
マ ミ「有能すぎるのも困ったものですわね」
杏 子(まあ、この性格に問題がありそうだけど……)
キリカ「まったく。織莉子ってば、ホントにワガママだねー。会長に戻りたいって言ったり、補佐が辞めなきゃ戻らないって言ったり」
織莉子「お黙りなさい!」
キリカ「私……笑えるアホをする織莉子は面白くて好きだけど、笑えないアホをする織莉子は好きじゃないな」
織莉子「……」
キリカ「……」
織莉子「決めたわ。もう、つまらない小細工は止(や)める! 明日の会議で生徒会に戻りたいことを正々堂々と言うわ。それで支持がなければ潔く諦める」
キリカ「マミに認めさせなくていーの?」
織莉子「いいのよ」
キリカの方へ向き直り、笑顔で応える織莉子。
織莉子「会長になれなかったら、副会長の座を狙うから!」
キリカ「それって潔いの?」
織莉子(会長に戻れなくてもいいわ。「織莉子が会長の方がいい」。あなたから、もっと嬉しい言葉を聞いたから……)
織莉子「そうと決まればコピーを処分しないと」
キリカ「例の『恋愛研究成果』?」
織莉子「ええ。すぐに回収してくるわ」
そう言ってUターンし、織莉子はコピー室めざして走りだした。
織莉子「あら? コピーが二束ある。そうだわ。早乙女先生に職員会議用資料のコピーを頼まれていたんだわ」
部屋を出る前、作業用ラックに置いたコピーの束は『恋愛研究成果』の一束だけだった。それが二束に増えている。
普段の彼女ならば変に思っただろうが、コピーを処分するばかり考えていたのでコピーの束が二つになっていることを疑問に感じなかった。
織莉子「えーと、私のコピーは……」
早乙女「あら、美国さん。さっきは助かったわ」
織莉子「さ、早乙女先生」
早乙女「会議用資料のコピーだけど……」
織莉子「先生の資料は作業用ラックの上です。それでは失礼しまーす」
早乙女「み、美国さん。ちょっと待ちなさい」
早乙女先生の言葉が聞こえないのか、織莉子は猛ダッシュで廊下の向うへと走り去って行った。
早乙女「美国さんが頑張り屋だけど、落ち着きないのがネックなのよねぇ」
織莉子の背中を見つめながら早乙女先生が呟いた。
早乙女「ちょっと前に室内を覗いた時、コピーが終わっていたから複写資料は貰っていったと言うつもりだったのに。きっと、これが明日の委員長会議で使う資料ね。巴さんは保健室で休んでいるようだし、部室の鍵も私が預かっているから、執行部室へ届けておきましょう」
アバウトな性格の早乙女先生、書類の内容も確認せず執行部室へ『恋愛研究成果』のコピーを運んで行った。
翌日。
視聴覚室に各委員会の委員長が集まり、生徒会の司会進行による委員長会議が始まった。
マ ミ「お手元の資料を御覧下さい。各委員会の活動成果、目標や課題。今春から校内各所へ設置された目安箱への投書など、生徒会の見解をまじえてまとめてあります」
ゆ ま「これが目安箱です。校内十五箇所に設置してあります」
マ ミ「ご質問やご意見はのちほど……」
ガラッ。
織莉子「異議あり!」
機材準備室のドアが豪快に開き、織莉子とキリカが現れた。
杏 子(ゲッ。厄介な連中が出て来たなぁ)
ゆ ま(先輩達、ずっと準備室に隠れいたのかなぁ。気がつかなかった……)
マ ミ「美国先輩!? 異議って、まだ議論してませんわよ」
杏 子「そこはどーでもいいだろう。ツッコムところが違ってんぞ」
マ ミ「か、関係ない方の入室はお断りして……」
織莉子「関係なくないわ。正式には私がまだ会長でマミは私を補佐する副会長よ!」
マ ミ「で、ですが……」
織莉子「私がここへ来たのは……」
生徒A「あのぅ、美国会長」
織莉子「あら、私? 何かしら」
生徒A「この恋愛研究成果って……なんですか?」
織莉子「え?」
マ ミ「え?」
杏 子「え?」
ゆ ま「え?」
キリカ「……」
マミは慌てて手元の冊子を手に取り、ページをパラパラと捲ってみた。表紙と最初の数ページは会議用資料だったが、残り十ページは『恋愛研究成果』のコピーであった。
生徒B「巴さん、こんなことをしてたんですか?」
マ ミ「こ、これは……」
杏 子(あいつらの仕業か。ヒドイことしやがって)
ゆ ま「と、巴先輩……」
杏 子(どうする。どうすれば……そうだッ)「違う。この会長ってのは美国織莉子のことだ」
織莉子「えッ。な、何を言い出すの。私は関係ないわ」
杏 子 「たった今、自分で言ったじゃねーか。『会長』はまだ自分で、マミは『補佐』だって!」
生徒C「恋愛研究って……生徒会で?」
生徒D「ちょっと見せて」
生徒E「この学校、男女恋愛禁止なのに大胆ねー」
キリカ「ちょっと……」
織莉子「いいのよ、キリカ。黙っていて……」
何か言おうと身を乗り出したキリカだったが、それを織莉子は制止した。
衝撃の資料を目にした各委員長と副委員長のザワメキは、ますます大きくなっていく。
生徒F「こんなこと真剣に取り組んでたのー?」
生徒G「文面読むとマジメよね」
生徒H「でも美国さんならやりそうよねぇ」
織莉子「……」
杏 子(せ、先輩……)
生徒I「確かに。ちょっと思い込みが激しいとこあるし」
生徒J「ついてくの大変そう」
生徒K「本気でやってたのかなぁ、これ」
生徒L「ウソでしょー」
織莉子「うッ……うぐッ……」
容赦ない言葉に瞳をうるませる織莉子。だが、彼女は黙ってヤジに堪えている。
杏 子(……)
生徒M「コレって、なんかハズかしーわね」
生徒N「ちょっと幻滅だなぁ」
嘲りの言葉や嘲笑も聞こえ始めた時、杏子はマイクを手にして会場を一括した。
杏 子「うるせぇぇぇぇぇ!!」
マ ミ「キョ、キョーコ」
ゆ ま「うわッ! びっくりした~」
織莉子「……」
キリカ「……」
杏 子「みんなのために頑張ってきた奴を簡単に笑うな! そうやって笑ってるけど、カッコいい彼氏が欲しいとか、可愛く思われたいとか、一度も妄想したことない奴はいるのか?」
杏子の一言に室内は水を打ったように静まり返る。
杏 子「恥ずかしいけど、あたしだって妄想したことあるよ。そんなのフツーだろ。生徒会役員だろーが、優等生だろーが、同じ年頃の女だったら一緒じゃねーか。だから……その……」
キリカ「だから調べてあげたんだよね。『匿名希望の一生徒』のために」
杏 子「はッ?」(コイツ、何を言い出すんだ……)
キリカ「そういうこと知り立って投書があったんだよね。ここ(目安箱)に」
目安箱を軽く叩きながらキリカがフォローをする。
キリカ「そのコのために調べてたんだよね。恋愛研究って」
杏 子「そう! そのコのために調べてたんだよ。『恋愛研究成果」ってのは、その調査に関する資料なんだ。製本過程でまぎれこんだのかも。お騒がせして申し訳ない」
生徒A「そーだったんだ」
生徒B「優しいのね。美国さんも、巴さんも」
生徒C「お二人とも面倒見がいいものねぇ」
生徒D「早まって悪いこと言っちゃったわ」
生徒E「ホントねー」
ゆ ま(よ、よかったぁ)
杏 子「(小声で)……た、助かったよ。先輩」
キリカ「(小声で)どういたしまして」
杏 子「(小声で)でもさぁ、もっと早く言ってくれよ」
キリカ「(小声で)だって、これ(目安箱)を見てて思いついたんだもん」
杏 子「(小声で)ウソくせーなぁ」
キリカ「(小声で)やれやれ。信用ないなぁ」
会場のざわめきが一段落したタイミングを見計らい、杏子は再びマイクを握った。
杏 子「いろいろ不備があってスミマセン。後日仕切り直すってことで、今日は解散とさせて下さい」
生徒F「そうね」
生徒G「部活の夏季特別予算なんかで生徒会も大変みたいだし、今月の委員長会議は中止でいいんじゃない?」
生徒H「私も賛成」
生徒I「それじゃ今日は解散しましょう」
杏 子「せっかく集まってくれたのに申し訳ありません。今回の件は「一生徒」の気持ちを考えて秘密に願います。それからエラソーに怒鳴ってスミマセン」
生徒J「気にしないで」
生徒K「これからも会長補佐、頑張ってね」
杏 子「ふぅ。危なかったけど、なんとかなってよかったな」
生徒会メンバーを除く生徒全員が視聴覚室を出て行った後、ガラガラの会場を見まわしながら杏子はマミに向かって声をかけた。
杏 子「マ、マミ……?」
返事がないのでマミの方を振り向くと、彼女は目から涙を流して泣いていた。
杏 子「お、おい……泣くなよ。ショックだったろうけどさ―」
マ ミ「キョーコ、ありがとう」
杏 子「え?」
マ ミ「私は何もできなくて……。でも、あんなふうに怒ってくれて……。私、すごく嬉しい……」
杏 子「マミ……」
マ ミ「あの時、キョーコに見られてホントによかった。ホントに……。うわ~ん。ごれがらも仲(なが)よぐじてくだざい~」
杏 子「あ、当たり前だろう。あたしら友達じゃねーか。だから泣くな、バカッ」
マ ミ「当たり前だって……。嬉しいですぅ。うわ~ん」
ゆ ま「チェリー先輩、男前ですぅぅぅぅ」
さりげなく本音をもらしながら、ゆままで貰い泣きを始めた。
杏 子「あー、もう。デュエットするなぁ」
エピローグ
織莉子「私のせいで大変なことになってしまって……。ホントにごめんなんさい」
騒ぎを引き起こしてしまった織莉子は神妙な面持ちで三人に謝罪した。
深々と頭を下げる織莉子を見ながら、マミは優しく言う。
マ ミ「もう、いいんですわ。今回の件、私にも責任がありますから」
杏 子「あたしこそ、そっちのせいにして悪かったよ」(否定せずに耐えてくれたし……)
織莉子「お詫びにバリバリ働くわ。もちろん、副会長としてね」
キリカ「それじゃ、私も会計やるー」
マ ミ「美国先輩。呉先輩」
杏 子「ちょっと待てッ。なんだよ、それ。ドサクサまぎれに復帰宣言するんじゃねー」
ゆ ま「お、落ち着いて下さい。チェリー先輩」
キリカ「プッ。チェリー先輩? へえ、そう呼ばれてるんだぁ」
杏 子「ち、ちげーよ。ゆま、誤解されるよな発言すんな」
ゆ ま「す、すみません」
マ ミ「うふふふ(笑)」
織莉子「くすくすくす(笑)」
キリカ「ふふッ。あ~っはははは(笑)」
ゆ ま「あはははは(笑)」
杏 子「あはッ。あ~っはははは(笑)」
朗らかな笑い声が視聴覚室に響く頃、校舎内に設置された目安箱の一つへ恋愛相談の手紙が投函されようとしていた。
周囲を気にしながら素早く投書を投げ込む一人の女子生徒。
わだかまりをなくして笑い合う五人が、後に『恋愛(ラブ)ラボ』と呼ばれる芳文女子中学校の最初の依頼を目にするのは、もう少し先のことであった……。
『好きな人に贈り物をしたいのですが、どんなものがいいでしょうか? 匿名希望』
【あとがき】
終盤は急ぎ足となりましたが、どうにか「ラブ☆MAGI」を完結させられました。【はじめに】にも書きましたが、本作は宮原るり先生の学園ラブコメディ『恋愛ラボ』第1巻を元ネタにしています。全体の2/3程度にダイジェストし、セリフや状況の一部を加筆・修正しながら『恋愛ラボ』第1巻の内容を再構成しました。
主役メンバーを「魔法少女おりこ☆マギカ」で再現している為、鹿目まどかと美樹さやか、そしてキュゥべえの出番はありません(脇役扱いで出演させてもよかったのですが……)。
好きな作品をコラボレーションさせるという試みが成功している保証はありませんが、自分としては力の限りを尽くしたつもりです。
アニメ放送を今夏に控えた「恋愛ラボ」、新作映画公開を今秋に控える「魔法少女まどか☆マギカ」、if物語の漫画連載が好評の「魔法少女おりこ☆マギカ」。これら三作品からは、まだまだ目が離せません。
友人A「オッハヨー、アンコ。朝から難しい顔しちゃって何読んでんの?」
杏 子「これか? せ、生徒会の書類だよ」
マミから押し付けられた「恋愛実習プログラム」だとは言えず、とっさにゴマカす杏子。
杏 子「こんな分厚い書類読まなきゃいけねーんだから、生徒会役員ってメンドーだよ」
友人A「そんなこと言って。ホントは楽しんでるくせにー」
杏 子「た、楽しんでなんか……」
友人A「今まで『学校なんてツマンネー』が口癖だったのに、役員になってからは一度も言ってないじゃん。あんたがそんなにマジメで仕事熱心だったとはねぇ」
杏 子(そう言えば……役員になってから学校がツマンナイって思わなくなったなぁ。補佐になったのもマミのゴーインな押し付けだったし、ホントにイヤなら行かなければいいだけだもんな)
ゆ ま「し、失礼します。あの、佐倉先輩……い、いらっしゃるでしょうか」
杏 子「なんだ、ゆまじゃないか。ここにいるよ。どうしたんだ」
ゆ ま「佐倉先輩。た、大変です。巴先輩が体育の授業中に倒れて保健室へ運ばれたそうです」
杏 子「なんだって」
ゆまと一緒に保健室へ急ぐ杏子。
杏 子「マミッ!!」
保健医「静かに!」
杏 子「ス、スミマセン」
奥のベッドには青い顔で横たわるマミの姿があった。
杏 子「マ、マミ……」
ゆ ま「巴先輩……」
保健医「過労と寝不足ね。この学校の生徒会は仕事が多いから」
杏 子「か、過労……」
保健医「巴さん、責任感が強くて抱え込みタイプだから気をつけてあげてね」
杏 子(知らなかった……)
保健医「その辺をサポートすることも補佐の役目よ」
杏 子(ウソだ。知ってた……。知ってたけど、あたしはマミの好意に甘えていた)
真実の寝顔を見た杏子は駆けだして保健室を出た。
ゆ ま「佐倉先輩!」
キリカ「第一項、魅力的なうなじの見せ方……。何回読んでも理解できないわ」
織莉子「男のコの気を引くテクとか素敵な出会い方とか、バッカみたいよねぇ」
執行部室から持ち出した冊子のコピーを手にする織莉子とキリカ。
織莉子「明日の委員長会議で使う資料にコレを混ぜて、読んで騒然としているトコに私が登場する。そうすれば、マミも私を無視できな……」
キリカ「イヤガラセの犯人にさぁ」
織莉子「え?」
キリカ「連想されなかったのはいいことじゃないの? 織莉子はそんな卑怯なマネをしないと思われてるってことでしょ? フツーなら気づかれるよ」
織莉子「……」
キリカ「まぁ、単に忘れられてるだけって気もするけど、前向きに考えてみたわ」
織莉子「最後の一言は余計よ」
キリカ「この作戦、あたしは卑怯な作戦だって思うんだけど、織莉子はホントにそれでいいわけ?」
織莉子「……。い、いいに決まってるでしょう。そろそろコピー室の予約時間になったから、混ぜる分のコピーをとってくるわ」
織莉子が廊下の向うへ消えるのと入れ違いに、今度は杏子が姿を現わした。
杏 子「見つけたッ! 守銭奴!」
キリカ「初対面の先輩に向かって守銭奴とは失礼な後輩だねぇ」
杏 子(やべえ。ついホンネを口にしちまった)
キリカ「どうしたのさ。あたしに用があるんじゃないの?」
杏 子「く、呉先輩」
キリカ「へえ、あたしのこと知ってるんだ。どこかで会ったっけ?」
杏 子「いいえ、マミから聞いたんです。あなたが生徒会の会計だったこと」
キリカ「そうだったの。それじゃ守銭奴って言われても仕方ないわね」
杏 子「生徒会の会計に……戻りませんか?」
キリカ「この守銭奴に会計を任せる? どういう風の吹き廻しよ」
杏 子「……マミが倒れたんです」
キリカ「!」
杏 子「先輩は仕事が早いってマミが言ってました。だから……」
キリカ「だから?」
杏 子「マミを……手伝ってやって下さい」
キリカ「……」
杏 子「……」
キリカ「いいよ。でも、一つだけ条件がある」
杏 子「ま、まさか。金を自由に使われろなんて言うんじゃ……」
キリカ「あっはははは。まあ、いきなり守銭奴なんて言うくらいだ、そう思われても仕方ないわね」
杏 子「あ、あれは違くて。その……」
キリカ「こっちの条件は簡単よ。織莉子を会長に戻してくれないかしら?」
杏 子「織莉子を……会長に戻せ? 織莉子って誰です?」
キリカ「うわ。そっから説明しなきゃダメなんだ」
ゆ ま「み、美国先輩のことですか? 元会長の……」
杏 子「元会長? すると先輩達はグルだったのかよ。二人はどーいうカンケーなんだよ」
キリカ「ど、どういうって、幼馴染……」
杏 子「幼馴染が手を組んで生徒会を乗っ取ろうってハラか? あんたが会計に戻るのが目的じゃないのかよ」
キリカ「急にタメ口になったわね。あたしが会計に戻りたいってのもあるけど、本当は織莉子を生徒会長に復帰させ……」
杏 子「次々と新事実を出すんじゃねーよ。こっちはマミが倒れたってだけで混乱してんだぞッ」
Part2.交渉決裂
杏 子(マミの奴、何が心当たりがないだッ。コイツと仲いい元会長なんて怪しすぎるよ)
キリカ「条件、のんでくれる?」
杏 子「……あたしは『会長の』マミを手伝ってほしいんです。マミが会長じゃなくなるなら頼みません。取引になってませんから」
キリカ「マミが会長? それは違うわね。会長は織莉子よ。そう思っている生徒はいないだろうけど」
杏 子「それは当然です。職務を放棄したんだから」
キリカ「確かにね。でもさぁ、居座る前に織莉子を怒って説得すればよかったのに。会長代行になったら全部一人でやろうとしてるじゃない」
杏 子「それは……そうだけど」
キリカ「マミが有能のは認めるけど人を信用しなさすぎ。織莉子とは違うわ」
杏 子「……」
ゆ ま「……」
キリカ「まあ、肝心なところが抜けてて、子どもっぽくて、ワガママで、カンシャク起こしてばかりだけどね」
杏 子「短所の方が上回ってないか?」
織莉子「『恋愛研究成果』は普通の資料みたいにまとめてある。出てくる名前も『会長』や『補佐』だし。混ぜてしまえばパッと見は気づかない……」
コピーを取りながら「資料」の一部に目を通す織莉子。
織莉子(でも、キリカの言う通り卑怯かも。人の日記を勝手に公開するようなものだし……)
早乙女「美国さん、割り込みで申し訳な……ん? 『議題1。ハンカチ落とし』?」
ビリッ。
背後から早乙女先生に声をかけれ、動揺した織莉子は持っていたコピーを引き裂いてしまった。
織莉子「さ、さ、早乙女先生。あの……これは……その……明日の委員長会議で使う資料なんです。激論をかわすんですッ」
早乙女(な、何を話し合うのかしら……)
織莉子「コ、コピーでしたら、私がとりますから置いといて下さい」(焦ったわ。事前に使用時間を申請してたから誰も来ないと思ってたのに)
早乙女「あら、いいの?」
織莉子「はい」
早乙女「それじゃ、お願いしようかしら。五時からの職員会議で使う追加資料なのよ。各十部づつコピーして、そこの棚に置いておいてね。後で取りにくるわ」
織莉子「わかりました」
早乙女「ホントに美国さんは頼りになるわね」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
狭い室内に響くコピー音が織莉子に虚しさと寂しさを覚えさせる。
織莉子(キリカ、来ないわね……)
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「……」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「……」
ウイーン。ウイーン。ウイーン。
織莉子「し、仕方がないわね。迎えに行ってあげるわッ」
織莉子「まったく、キリカったら……」
コピー室を出て廊下を走る織莉子。曲がり角近くまで来た時、キリカの声が聞こえてきた。
キリカ「織莉子は私がいい加減なことをしたら、ちゃんと怒ってくれる」
織莉子(えッ? 何よ、この状況?)
廊下で見知らぬ生徒と真面目な顔で話すキリカ。曲がり角の影に身を隠しながら、織莉子は彼女達のやりとりに耳を傾ける。
キリカ「でもね、また信じて任せてくれるよ。私はマミよりも織莉子が会長の方がいい」
織莉子(キリカ……)
キリカ「まあ、それを補って余りある程の欠点は問題だけどね」
杏 子「子どもっぽかったり、ワガママだったり、カンシャク起こしたり?」
キリカ「まだあるわ。八つ当たりも早とちりもするし、泣き虫だし……」
織莉子「ちょっと、キリカ。いくらなんでも言い過ぎじゃなくて?」
内心の怒りを隠しながら、織莉子は曲がり角から姿を現わした。
キリカ「あッ。彼女が織莉子。噂の会長様よ」
織莉子「え?」
キリカ「織莉子、彼女が噂の会長補佐だ。挨拶したら?」
織莉子「は、はじめまして。美国織莉子です」
杏 子「どうも。会長補佐の佐倉杏子です」
ゆ ま「しょ、書記の千歳ゆまです」
織莉子「話の展開が見えないんだけど、私の方が会長にふさわしいってことよね。当然だわ」
杏 子「でも、自分のプライドのために職務放棄したんだろう?」
織莉子「そ、それは……」
杏 子「確かにマミもよくないとこはある。だけど、無責任に仕事を投げ出したりはしない」
織莉子「……」
杏 子「あたしが会長にふさわしいと思うのはアンタじゃない。マミだけだ」
キリカ(言ってくれるねー)
ゆ ま(さっすがー。チェリーブロッサム)
織莉子「マミが……会長に……ふさわしい? そんなこと、私が一番よくわかっているわ。だから……。少し困らせて、私を頼ってきたら、『仕方ないわね』って補佐するつもりだったのに……」
杏 子「いやがらせの犯人はアンタだったのか」
織莉子「そうよ。私の実績を無視し、生徒会とは無関係な同級生を会長補佐に指名するから、いやがらせをしたのよ」
杏 子「つまり……マミに頼られたかったのに無視されたうえ、あたしを補佐に指名したのがムカついたってわけ?」
キリカ「子どもっぽいでしょ?」
杏 子「ホントだな」
織莉子「と、とにかく。あなたは補佐を辞めなさい。そしたら意地悪するのを止(や)めるわ」
杏 子「いやーだね。アッカンベー」
織莉子「こ、子どもっぽい事を……」
杏 子「アンタに言われたくねーよ」
織莉子「いいわ。交渉決裂ね。覚えていなさい。きっと後悔させてあげるから。行くわよ、キリカ」
捨てゼリフを残し、キリカの手を取って走り去る織莉子。
杏 子「やれやれ。そういうことだったのか。ゆま。これからはマミに無理させないよう、二人でサポートしようぜ。あたしも生徒会の仕事を手伝うから教えてくれ」
ゆ ま「は、はい」
杏 子「生徒会役員の先輩として頼りにしてるぜ」
ゆ ま「はいッ!」(うわ~い。チェリーブロッサムから頼りにされたぁ)
杏 子「それからさぁ、あたしのことは佐倉先輩って呼ばなくてもいいぜ。好きなように呼んでくれ」
ゆ ま「えッ? いいんですか?」
杏 子「ああ」
ゆ ま「じゃあ『チェリー先輩』と呼ばせて下さい」
杏 子「な、なんでだよ……」
Part3.委員長会議にて
マ ミ「そうだったんですか。美国先輩が……」
杏 子「そんなわけで人手はふえねーけどさ」
ゆ ま「これからは二人で巴先輩をサポートさせて下さい」
マ ミ「で、でも……」
ベッドから身を起こし、マミは遠慮がちに口を開いた。
マ ミ「二人に迷惑をかけるわけにはいきません。キョーコは仕事をしないって条件で会長補佐になってもらいましたし」
杏 子「うるせー。お前はもっと人を頼れってーの」
マミの額を指で弾きながら杏子が言った。
マ ミ「い、痛いです。キョーコ」
杏 子「困った時に助け合うのも『友達』だろう。だから、遠慮しないで仕事を言いつけてくれよ」
マ ミ「……はい。ありがとうございます。それでは……」
杏 子「ん?」
マ ミ「明日までに恋愛練習教材を各自10案ずつ出して下さい」
杏 子「そこを頼るのは控えよーぜ、マミさんよぉ」
マ ミ「あら、ごめんなさい」
杏 子「ふふふふ。あ~っははははは(笑)」
マ ミ「うふふふふ(笑)」
ゆ ま「あはははは(笑)」
マ ミ「でも、ホントによかった。いやがらせが続いたから、もう来てくれないんじゃないかと思っていました。キョーコは元々、ムリして役員になってもらいましたし」
杏 子「あたしは別にムリなんか……」
マ ミ「誰かとワイワイやるの……初めてで……すっごく楽しくて……。だから、絶対になくしたくなかったんです」
杏 子「マ、マミ……」
マ ミ「キョーコがいなくなったら、千歳さんもいなくなっちゃうんじゃにかって不安だったんです」
ゆ ま「そ、そんな。私なんか……」
マ ミ「今まで、ずっと一人でやっていたから。だから、友達と一緒に仕事するの、すっごく楽しいんです」
杏 子(そうか。マミは人を信用しないんじゃなくて、頼り方を知らないだけなんだ)
マ ミ「有能すぎるのも困ったものですわね」
杏 子(まあ、この性格に問題がありそうだけど……)
キリカ「まったく。織莉子ってば、ホントにワガママだねー。会長に戻りたいって言ったり、補佐が辞めなきゃ戻らないって言ったり」
織莉子「お黙りなさい!」
キリカ「私……笑えるアホをする織莉子は面白くて好きだけど、笑えないアホをする織莉子は好きじゃないな」
織莉子「……」
キリカ「……」
織莉子「決めたわ。もう、つまらない小細工は止(や)める! 明日の会議で生徒会に戻りたいことを正々堂々と言うわ。それで支持がなければ潔く諦める」
キリカ「マミに認めさせなくていーの?」
織莉子「いいのよ」
キリカの方へ向き直り、笑顔で応える織莉子。
織莉子「会長になれなかったら、副会長の座を狙うから!」
キリカ「それって潔いの?」
織莉子(会長に戻れなくてもいいわ。「織莉子が会長の方がいい」。あなたから、もっと嬉しい言葉を聞いたから……)
織莉子「そうと決まればコピーを処分しないと」
キリカ「例の『恋愛研究成果』?」
織莉子「ええ。すぐに回収してくるわ」
そう言ってUターンし、織莉子はコピー室めざして走りだした。
織莉子「あら? コピーが二束ある。そうだわ。早乙女先生に職員会議用資料のコピーを頼まれていたんだわ」
部屋を出る前、作業用ラックに置いたコピーの束は『恋愛研究成果』の一束だけだった。それが二束に増えている。
普段の彼女ならば変に思っただろうが、コピーを処分するばかり考えていたのでコピーの束が二つになっていることを疑問に感じなかった。
織莉子「えーと、私のコピーは……」
早乙女「あら、美国さん。さっきは助かったわ」
織莉子「さ、早乙女先生」
早乙女「会議用資料のコピーだけど……」
織莉子「先生の資料は作業用ラックの上です。それでは失礼しまーす」
早乙女「み、美国さん。ちょっと待ちなさい」
早乙女先生の言葉が聞こえないのか、織莉子は猛ダッシュで廊下の向うへと走り去って行った。
早乙女「美国さんが頑張り屋だけど、落ち着きないのがネックなのよねぇ」
織莉子の背中を見つめながら早乙女先生が呟いた。
早乙女「ちょっと前に室内を覗いた時、コピーが終わっていたから複写資料は貰っていったと言うつもりだったのに。きっと、これが明日の委員長会議で使う資料ね。巴さんは保健室で休んでいるようだし、部室の鍵も私が預かっているから、執行部室へ届けておきましょう」
アバウトな性格の早乙女先生、書類の内容も確認せず執行部室へ『恋愛研究成果』のコピーを運んで行った。
翌日。
視聴覚室に各委員会の委員長が集まり、生徒会の司会進行による委員長会議が始まった。
マ ミ「お手元の資料を御覧下さい。各委員会の活動成果、目標や課題。今春から校内各所へ設置された目安箱への投書など、生徒会の見解をまじえてまとめてあります」
ゆ ま「これが目安箱です。校内十五箇所に設置してあります」
マ ミ「ご質問やご意見はのちほど……」
ガラッ。
織莉子「異議あり!」
機材準備室のドアが豪快に開き、織莉子とキリカが現れた。
杏 子(ゲッ。厄介な連中が出て来たなぁ)
ゆ ま(先輩達、ずっと準備室に隠れいたのかなぁ。気がつかなかった……)
マ ミ「美国先輩!? 異議って、まだ議論してませんわよ」
杏 子「そこはどーでもいいだろう。ツッコムところが違ってんぞ」
マ ミ「か、関係ない方の入室はお断りして……」
織莉子「関係なくないわ。正式には私がまだ会長でマミは私を補佐する副会長よ!」
マ ミ「で、ですが……」
織莉子「私がここへ来たのは……」
生徒A「あのぅ、美国会長」
織莉子「あら、私? 何かしら」
生徒A「この恋愛研究成果って……なんですか?」
織莉子「え?」
マ ミ「え?」
杏 子「え?」
ゆ ま「え?」
キリカ「……」
マミは慌てて手元の冊子を手に取り、ページをパラパラと捲ってみた。表紙と最初の数ページは会議用資料だったが、残り十ページは『恋愛研究成果』のコピーであった。
生徒B「巴さん、こんなことをしてたんですか?」
マ ミ「こ、これは……」
杏 子(あいつらの仕業か。ヒドイことしやがって)
ゆ ま「と、巴先輩……」
杏 子(どうする。どうすれば……そうだッ)「違う。この会長ってのは美国織莉子のことだ」
織莉子「えッ。な、何を言い出すの。私は関係ないわ」
杏 子 「たった今、自分で言ったじゃねーか。『会長』はまだ自分で、マミは『補佐』だって!」
生徒C「恋愛研究って……生徒会で?」
生徒D「ちょっと見せて」
生徒E「この学校、男女恋愛禁止なのに大胆ねー」
キリカ「ちょっと……」
織莉子「いいのよ、キリカ。黙っていて……」
何か言おうと身を乗り出したキリカだったが、それを織莉子は制止した。
衝撃の資料を目にした各委員長と副委員長のザワメキは、ますます大きくなっていく。
生徒F「こんなこと真剣に取り組んでたのー?」
生徒G「文面読むとマジメよね」
生徒H「でも美国さんならやりそうよねぇ」
織莉子「……」
杏 子(せ、先輩……)
生徒I「確かに。ちょっと思い込みが激しいとこあるし」
生徒J「ついてくの大変そう」
生徒K「本気でやってたのかなぁ、これ」
生徒L「ウソでしょー」
織莉子「うッ……うぐッ……」
容赦ない言葉に瞳をうるませる織莉子。だが、彼女は黙ってヤジに堪えている。
杏 子(……)
生徒M「コレって、なんかハズかしーわね」
生徒N「ちょっと幻滅だなぁ」
嘲りの言葉や嘲笑も聞こえ始めた時、杏子はマイクを手にして会場を一括した。
杏 子「うるせぇぇぇぇぇ!!」
マ ミ「キョ、キョーコ」
ゆ ま「うわッ! びっくりした~」
織莉子「……」
キリカ「……」
杏 子「みんなのために頑張ってきた奴を簡単に笑うな! そうやって笑ってるけど、カッコいい彼氏が欲しいとか、可愛く思われたいとか、一度も妄想したことない奴はいるのか?」
杏子の一言に室内は水を打ったように静まり返る。
杏 子「恥ずかしいけど、あたしだって妄想したことあるよ。そんなのフツーだろ。生徒会役員だろーが、優等生だろーが、同じ年頃の女だったら一緒じゃねーか。だから……その……」
キリカ「だから調べてあげたんだよね。『匿名希望の一生徒』のために」
杏 子「はッ?」(コイツ、何を言い出すんだ……)
キリカ「そういうこと知り立って投書があったんだよね。ここ(目安箱)に」
目安箱を軽く叩きながらキリカがフォローをする。
キリカ「そのコのために調べてたんだよね。恋愛研究って」
杏 子「そう! そのコのために調べてたんだよ。『恋愛研究成果」ってのは、その調査に関する資料なんだ。製本過程でまぎれこんだのかも。お騒がせして申し訳ない」
生徒A「そーだったんだ」
生徒B「優しいのね。美国さんも、巴さんも」
生徒C「お二人とも面倒見がいいものねぇ」
生徒D「早まって悪いこと言っちゃったわ」
生徒E「ホントねー」
ゆ ま(よ、よかったぁ)
杏 子「(小声で)……た、助かったよ。先輩」
キリカ「(小声で)どういたしまして」
杏 子「(小声で)でもさぁ、もっと早く言ってくれよ」
キリカ「(小声で)だって、これ(目安箱)を見てて思いついたんだもん」
杏 子「(小声で)ウソくせーなぁ」
キリカ「(小声で)やれやれ。信用ないなぁ」
会場のざわめきが一段落したタイミングを見計らい、杏子は再びマイクを握った。
杏 子「いろいろ不備があってスミマセン。後日仕切り直すってことで、今日は解散とさせて下さい」
生徒F「そうね」
生徒G「部活の夏季特別予算なんかで生徒会も大変みたいだし、今月の委員長会議は中止でいいんじゃない?」
生徒H「私も賛成」
生徒I「それじゃ今日は解散しましょう」
杏 子「せっかく集まってくれたのに申し訳ありません。今回の件は「一生徒」の気持ちを考えて秘密に願います。それからエラソーに怒鳴ってスミマセン」
生徒J「気にしないで」
生徒K「これからも会長補佐、頑張ってね」
杏 子「ふぅ。危なかったけど、なんとかなってよかったな」
生徒会メンバーを除く生徒全員が視聴覚室を出て行った後、ガラガラの会場を見まわしながら杏子はマミに向かって声をかけた。
杏 子「マ、マミ……?」
返事がないのでマミの方を振り向くと、彼女は目から涙を流して泣いていた。
杏 子「お、おい……泣くなよ。ショックだったろうけどさ―」
マ ミ「キョーコ、ありがとう」
杏 子「え?」
マ ミ「私は何もできなくて……。でも、あんなふうに怒ってくれて……。私、すごく嬉しい……」
杏 子「マミ……」
マ ミ「あの時、キョーコに見られてホントによかった。ホントに……。うわ~ん。ごれがらも仲(なが)よぐじてくだざい~」
杏 子「あ、当たり前だろう。あたしら友達じゃねーか。だから泣くな、バカッ」
マ ミ「当たり前だって……。嬉しいですぅ。うわ~ん」
ゆ ま「チェリー先輩、男前ですぅぅぅぅ」
さりげなく本音をもらしながら、ゆままで貰い泣きを始めた。
杏 子「あー、もう。デュエットするなぁ」
エピローグ
織莉子「私のせいで大変なことになってしまって……。ホントにごめんなんさい」
騒ぎを引き起こしてしまった織莉子は神妙な面持ちで三人に謝罪した。
深々と頭を下げる織莉子を見ながら、マミは優しく言う。
マ ミ「もう、いいんですわ。今回の件、私にも責任がありますから」
杏 子「あたしこそ、そっちのせいにして悪かったよ」(否定せずに耐えてくれたし……)
織莉子「お詫びにバリバリ働くわ。もちろん、副会長としてね」
キリカ「それじゃ、私も会計やるー」
マ ミ「美国先輩。呉先輩」
杏 子「ちょっと待てッ。なんだよ、それ。ドサクサまぎれに復帰宣言するんじゃねー」
ゆ ま「お、落ち着いて下さい。チェリー先輩」
キリカ「プッ。チェリー先輩? へえ、そう呼ばれてるんだぁ」
杏 子「ち、ちげーよ。ゆま、誤解されるよな発言すんな」
ゆ ま「す、すみません」
マ ミ「うふふふ(笑)」
織莉子「くすくすくす(笑)」
キリカ「ふふッ。あ~っはははは(笑)」
ゆ ま「あはははは(笑)」
杏 子「あはッ。あ~っはははは(笑)」
朗らかな笑い声が視聴覚室に響く頃、校舎内に設置された目安箱の一つへ恋愛相談の手紙が投函されようとしていた。
周囲を気にしながら素早く投書を投げ込む一人の女子生徒。
わだかまりをなくして笑い合う五人が、後に『恋愛(ラブ)ラボ』と呼ばれる芳文女子中学校の最初の依頼を目にするのは、もう少し先のことであった……。
『好きな人に贈り物をしたいのですが、どんなものがいいでしょうか? 匿名希望』
【あとがき】
終盤は急ぎ足となりましたが、どうにか「ラブ☆MAGI」を完結させられました。【はじめに】にも書きましたが、本作は宮原るり先生の学園ラブコメディ『恋愛ラボ』第1巻を元ネタにしています。全体の2/3程度にダイジェストし、セリフや状況の一部を加筆・修正しながら『恋愛ラボ』第1巻の内容を再構成しました。
主役メンバーを「魔法少女おりこ☆マギカ」で再現している為、鹿目まどかと美樹さやか、そしてキュゥべえの出番はありません(脇役扱いで出演させてもよかったのですが……)。
好きな作品をコラボレーションさせるという試みが成功している保証はありませんが、自分としては力の限りを尽くしたつもりです。
アニメ放送を今夏に控えた「恋愛ラボ」、新作映画公開を今秋に控える「魔法少女まどか☆マギカ」、if物語の漫画連載が好評の「魔法少女おりこ☆マギカ」。これら三作品からは、まだまだ目が離せません。
「ラブ☆MAGI」 幕間:放課後の危機
インターミッション
マ ミ「ふぁ……」
杏 子「眠むそうだな。大丈夫か」
マ ミ「あッ、いえ。昨夜、ちょっと徹夜してしまって……」
杏 子「そんなに仕事が溜まってるのか?」
マ ミ「そうじゃないんです。夏季予算の仕事を早く終わらせてしまえば、呉先輩もあきらめるのではないかと思ったものですから」
杏 子「また一人でムリしやがって……」
マ ミ「大丈夫です、有能ですから」
杏 子「最後の一言は余計だ! それよりもさぁ、元会計の呉先輩……仕事は早いんだろう」
マ ミ「ええ」
杏 子「ならさぁ、しばらく会計に戻せばいいじゃん。イヤガラセもなくなるだろうし、金の管理さえ気をつけてりゃ問題なくね?」
マ ミ「なんてことを! 呉先輩が執行部室にいたら、恋の練習できずに鈍っちゃいます~」
杏 子「そういう問題かよ。だったら、目を盗んでやりゃあいいだろ」
マ ミ「あの方は神出鬼没なんです。気配を消すのが上手いし、音もなく近寄って金庫の前に立っていたり」
杏 子「忍者みてーなヤツだな」
マ ミ「呉先輩が敵方にいるなら、うかつなマネはできませんわ。明日にでも『恋愛研究成果』を狙って、ここ(執行部室)へ忍び込んでくるかも知れません」
杏 子「なんで明日って思うんだ」
マ ミ「あら、忘れたんですか。一年生は放課後に学年集会、二年生は野外学習の日ですよ。三年生が自由に動き回れる日じゃありませんか」
杏 子「そーだった。すっかり忘てた」
マ ミ「早乙女先生に部外者へ部室の鍵を渡さないよう頼んでおきます。呉先輩は生徒会役員を馘首されたも同然ですから、簡単に鍵は手に入れられないでしょう」
同じ頃、三年生の教室では……。
織莉子「キリカ。明日の放課後、執行部室へ行くわよ」
キリカ「明日?」
織莉子「そうよ。野外学習で二年生は登校しないでしょう。絶好のチャンスだわ。マミ達が放課後の部室で何をしてるのか手掛かりを探すのよ」
キリカ「そんなドロボーみたいなマネ、やりたくないわ」
織莉子「人聞きの悪い言い方はよしてよ。潜入調査と言ってほしいわね」
キリカ「言い方を変えたって、やってる事は同じだと思うけどなぁ」
翌日の放課後。
早乙女「執行部室の鍵? 確かに巴さんから預かっているけれど」
織莉子「至急、内容を調べたい書類があるので鍵を貸して下さい」
早乙女「ごめんなさい。現役員以外に鍵は貸し出さないよう巴さんから強く言われていて……」
織莉子「……せ、先生は……私を会長どころか、生徒会役員としても認めて下さらないのですか」
早乙女「そ、そんな事はないわ。ただ……」
織莉子「確かに役職を放棄した事は悪いと思っています。でも、今は自分の軽率な行動を悔いているんです。ですから、途中放棄した仕事を片付けようと思い、鍵をお借りしたいのです」
早乙女「困ったわねぇ」
織莉子「早乙女先生は一度でも過ちを犯した生徒を信用せず、更生の機会さえ与えては下さらないのですか」
目に涙を溜めながら織莉子は訴える。
早乙女「わ、わかったわ。わかりました。鍵を貸します。だから泣かないで。ねッ、美国さん」
そう言いながら、早乙女先生は大急ぎで職員室へ向かう。
織莉子「どう? 迫真の演技だったでしょう」
キリカ「うん。スゴかった。織莉子なら将来、泣き落としで男もモノにできそーだね」
織莉子「ちょ、ちょっと。人聞きの悪い言い方はやめてくれないかしら」
泣き落としで執行部室の鍵を手に入れた織莉子は、キリカを連れて無人の部室へ足を踏み入れた。
織莉子「ゆっくりしているヒマないわよ。急いで証拠をさが……って、何してるのよ」
キリカ「野球部の希望予算、これは多すぎる。サッカー部の申請も無駄な項目が多いわね」
織莉子「夏季特別予算案の書類なんか見てないでよ。急いでるんだから」
キリカ「一円を笑う者は一円に泣くのよ。追加予算の決定は慎重にやんないと」
織莉子「はいはい。キリカの意見はもっともだわ。でも、今は証拠探しに専念して!」
キリカ「わかったよ」
織莉子「まったく。……あら? このファイルはなにかしら。ラベルが貼っていない」
織莉子が手にした一冊のファイル。
織莉子「『恋愛研究成果』? 何かしら、これは」
ついに大切な秘密が・・・。
織莉子「うなじを見せる? ハンカチは少しハミ出させる?」
今まさに暴かれようとしていた。
【付記】
予想よりも更新停止が長引き、二十日近くも放置した状態となってしまいました。もうしばらくタイトスケジュールが続き、7月下旬まで不意の更新停止期間が増えるかも知れません。5月中に「ラブ☆AMGI」を完結させた後、それからの紹介作品や更新内容は全く決まっておらず、暇を見つけてはネタを考えています。久しぶりにアメコミや小説を扱いとは思っているのですが……。夏になればpixivへの投稿も再開できそうですし、ブログ更新も頻繁に行えるかも知れません。それまでの間、御無沙汰が続くかと思いますが見捨てずに応援いただければ幸いです。
マ ミ「ふぁ……」
杏 子「眠むそうだな。大丈夫か」
マ ミ「あッ、いえ。昨夜、ちょっと徹夜してしまって……」
杏 子「そんなに仕事が溜まってるのか?」
マ ミ「そうじゃないんです。夏季予算の仕事を早く終わらせてしまえば、呉先輩もあきらめるのではないかと思ったものですから」
杏 子「また一人でムリしやがって……」
マ ミ「大丈夫です、有能ですから」
杏 子「最後の一言は余計だ! それよりもさぁ、元会計の呉先輩……仕事は早いんだろう」
マ ミ「ええ」
杏 子「ならさぁ、しばらく会計に戻せばいいじゃん。イヤガラセもなくなるだろうし、金の管理さえ気をつけてりゃ問題なくね?」
マ ミ「なんてことを! 呉先輩が執行部室にいたら、恋の練習できずに鈍っちゃいます~」
杏 子「そういう問題かよ。だったら、目を盗んでやりゃあいいだろ」
マ ミ「あの方は神出鬼没なんです。気配を消すのが上手いし、音もなく近寄って金庫の前に立っていたり」
杏 子「忍者みてーなヤツだな」
マ ミ「呉先輩が敵方にいるなら、うかつなマネはできませんわ。明日にでも『恋愛研究成果』を狙って、ここ(執行部室)へ忍び込んでくるかも知れません」
杏 子「なんで明日って思うんだ」
マ ミ「あら、忘れたんですか。一年生は放課後に学年集会、二年生は野外学習の日ですよ。三年生が自由に動き回れる日じゃありませんか」
杏 子「そーだった。すっかり忘てた」
マ ミ「早乙女先生に部外者へ部室の鍵を渡さないよう頼んでおきます。呉先輩は生徒会役員を馘首されたも同然ですから、簡単に鍵は手に入れられないでしょう」
同じ頃、三年生の教室では……。
織莉子「キリカ。明日の放課後、執行部室へ行くわよ」
キリカ「明日?」
織莉子「そうよ。野外学習で二年生は登校しないでしょう。絶好のチャンスだわ。マミ達が放課後の部室で何をしてるのか手掛かりを探すのよ」
キリカ「そんなドロボーみたいなマネ、やりたくないわ」
織莉子「人聞きの悪い言い方はよしてよ。潜入調査と言ってほしいわね」
キリカ「言い方を変えたって、やってる事は同じだと思うけどなぁ」
翌日の放課後。
早乙女「執行部室の鍵? 確かに巴さんから預かっているけれど」
織莉子「至急、内容を調べたい書類があるので鍵を貸して下さい」
早乙女「ごめんなさい。現役員以外に鍵は貸し出さないよう巴さんから強く言われていて……」
織莉子「……せ、先生は……私を会長どころか、生徒会役員としても認めて下さらないのですか」
早乙女「そ、そんな事はないわ。ただ……」
織莉子「確かに役職を放棄した事は悪いと思っています。でも、今は自分の軽率な行動を悔いているんです。ですから、途中放棄した仕事を片付けようと思い、鍵をお借りしたいのです」
早乙女「困ったわねぇ」
織莉子「早乙女先生は一度でも過ちを犯した生徒を信用せず、更生の機会さえ与えては下さらないのですか」
目に涙を溜めながら織莉子は訴える。
早乙女「わ、わかったわ。わかりました。鍵を貸します。だから泣かないで。ねッ、美国さん」
そう言いながら、早乙女先生は大急ぎで職員室へ向かう。
織莉子「どう? 迫真の演技だったでしょう」
キリカ「うん。スゴかった。織莉子なら将来、泣き落としで男もモノにできそーだね」
織莉子「ちょ、ちょっと。人聞きの悪い言い方はやめてくれないかしら」
泣き落としで執行部室の鍵を手に入れた織莉子は、キリカを連れて無人の部室へ足を踏み入れた。
織莉子「ゆっくりしているヒマないわよ。急いで証拠をさが……って、何してるのよ」
キリカ「野球部の希望予算、これは多すぎる。サッカー部の申請も無駄な項目が多いわね」
織莉子「夏季特別予算案の書類なんか見てないでよ。急いでるんだから」
キリカ「一円を笑う者は一円に泣くのよ。追加予算の決定は慎重にやんないと」
織莉子「はいはい。キリカの意見はもっともだわ。でも、今は証拠探しに専念して!」
キリカ「わかったよ」
織莉子「まったく。……あら? このファイルはなにかしら。ラベルが貼っていない」
織莉子が手にした一冊のファイル。
織莉子「『恋愛研究成果』? 何かしら、これは」
ついに大切な秘密が・・・。
織莉子「うなじを見せる? ハンカチは少しハミ出させる?」
今まさに暴かれようとしていた。
【付記】
予想よりも更新停止が長引き、二十日近くも放置した状態となってしまいました。もうしばらくタイトスケジュールが続き、7月下旬まで不意の更新停止期間が増えるかも知れません。5月中に「ラブ☆AMGI」を完結させた後、それからの紹介作品や更新内容は全く決まっておらず、暇を見つけてはネタを考えています。久しぶりにアメコミや小説を扱いとは思っているのですが……。夏になればpixivへの投稿も再開できそうですし、ブログ更新も頻繁に行えるかも知れません。それまでの間、御無沙汰が続くかと思いますが見捨てずに応援いただければ幸いです。
「ラブ☆MAGI」 第4話:二人の三年生
Part1.織莉子とキリカ
生徒会長補佐・佐倉杏子は、会長代理・巴マミの指名で就任した異色の生徒会役員。
杏 子「ん?」
友人A「どうしたの、アンコ(註:親しい友人が杏子を呼ぶ時の渾名)」
杏 子「いや……。なんか最近、視線を感じんだよなー」
友人A「……」
杏 子「気のせいかなぁ?」
廊下ですれ違う生徒、教室の窓越しに杏子を見つめる同級生。
生徒A(小声で)「あら、佐倉さんだわ」
生徒B(小声で)「『チェリーブロッサム』だわ。今日もワイルドねぇ」
生徒C(小声で)「『チェリーブロッサム』だー」
友人A(これだけ視線を浴びてれば当然だって)
それは気のせいでもなく、最近の事でもないと思う友人であった。
廊下の曲がり角に隠れて杏子の後姿を見つめる人影。
???『あの子が佐倉杏子ね』
人影は手にした紙飛行機を杏子の後頭部に向けて勢いよく放った。
シュッ。
友人A「危ない、アンコ!」
杏 子「え?」
コスン。
狙いたがわず、紙飛行機は杏子の後頭部を直撃した。
場所は変わって生徒会執行部室。
マ ミ「イヤガラセ?」
杏 子「……なのかわかんねーけどさぁ。これ」
最前の紙飛行を折る前の状態に戻し、杏子はマミに紙片を手渡す。
その紙には豪快な文字で次のように書かれていた。
『このスリムめ!!!』
マ ミ「なんなんですの、これ?」
杏 子「さーな」
マ ミ「よ、よくわかりませんわね。文体と書体的にはイヤガラセっぽいんですが……」
杏 子「だろー? いやぁ、まいるよ。ホント」
スリムと言われてマンザラでもない杏子。口から出た言葉には僅かに喜びも混じっているようだ。
コンコン。
ゆ ま「失礼します」
ガチャ。
ゆ ま「巴会長。学年主任から冊子を預かってきました」
マ ミ「どうもありがとう。……あら?」
ヒラリ。
受け取った冊子の間から一枚の紙が落ちた。
杏 子「もしかして、マミにもか?」
床へ落ちた紙上には次の文字が認められた。
『巴マミはスリムすぎ!!! 胸以外は』
マ ミ「まあ、なんてはハレンチなイヤガラセ!」
杏 子「マミ。顔が笑ってんぞ」
マ ミ『まいりましたわー』
杏 子『ホントだよなー』
紙片を手に笑顔で語り合うマミと杏子。
そんな二人の姿を屋上から双眼鏡で見ている人影。
織莉子「ちょっとキリカ! あの二人、全然ショックをうけてないわよ!?」
彼女の名前は美国織莉子。芳文女子中学校の三年生にして、名目上の生徒会長でもある。
キリカ「えー。そうかなぁ」
前髪を掻き上げながら返事をしたのは呉キリカ。織莉子の親友で、マミから生徒会への出入り禁止を告知された元・会計担当である。
織莉子「『そうかなぁ』じゃないわよ。あんたが『この文言なら傷つけられるんじゃない』って言うから、わざわざ書道部から墨汁を借りて墨書きしたのよ」
キリカ「こんなストーカーまがいのイヤガラセして、織莉子の経歴は確実に傷ついたと思うけど」
織莉子「私じゃない。あいつらの事よ!!(怒)」
人気(ひとけ)がない放課後の屋上で夫婦漫才のような会話を続ける、かつての生徒会役員二人。
織莉子「だいたい、おかしいと思ったのよ。マミ達がマッチョになりたがってるなんて!」
キリカ「織莉子ってさぁ、いい加減な情報を鵜呑みにして痛い目を見るタイプだね。頭はいいのに。サギには気をつけなよ」
織莉子「この情報源はあなたでしょう!」
キリカ「あたしの情報網はいい加減じゃないんだけどなぁ。ちゃんと聞いたし」
織莉子「ホントに? マミ達が『なりたい』って言ってたの?」
キリカ「わけわかんない事を言っての聞いて、あたしがテキトーに推理したんだけどね」
織莉子「いい加減な情報もいいとこじゃないのよ!!(怒)」
頭にカーッと血が上ってしまった織莉子だが、さすがは元・生徒会長。すぐに落ち着きを取り戻した。
織莉子「それで、いったい何を聞いたの?」
キリカ「えーッと……」
キリカは頬に指を当てながら昨日の会話を思い出そうとする。
キリカ「思い出したわ」
織莉子「言ってみて」
キリカ「腹ァ!!」
びくッ。
織莉子「お、脅かさないでよ。」
キリカ「上目遣い!!」
織莉子「腹? 上目遣い?」
キリカ「目力!!」
織莉子「め、目力? 何よ、それ??」
キリカ「以上の単語からマッチョになりたがっているという結論に達しました」
織莉子「何よ、それ。そもそも、上目遣いは関係ないでしょ」
キリカ「聞いたカンジでは筋トレ風だったから」
織莉子「それにしても推理が飛躍し過ぎよ」
キリカ「そうかなぁ?」
織莉子「キリカの推理はさておき、執行部室で筋トレなんて怪しいわね。あそこ(執行部室)でマミ達が変な事をしてるのは間違いなさそうだけど、言い訳できない証拠を掴まないとゴマカされそうだわ」
キリカ「……」
織莉子「そういうわけで、引き続き、調査を頼むわよ! キリカ」
キリカ(ここでまた、あたしに頼んじゃう織莉子ってアホだよなぁ。まあ、そういうとこが可愛いくて好きなんだけど)
その頃、執行部室では……。
杏 子「マミ、なんか心当たりはあるか?」
マ ミ「いいえ」
ゆ ま「あれ? 裏になんか書いてある」
マ ミ「え?」
杏 子「読んでみてくれ、千歳」
ゆ ま「佐倉先輩のには『平役員』、巴先輩の方は『副会長』、と書いてあります」
杏 子「『平役員』? 役員の時点で平じゃねーじゃん」
ゆ ま「それじゃ間違いですかね? どちらにしてもイヤガラセではなさそう」
マ ミ「……ひ、ひどい……イヤガラセですわ……」
杏 子「えー!?」
ゆ ま「えー!?」
杏 子「なんだ『副会長』がイヤガラセになんのさー」
マ ミ「もともと、私は副会長だったんです。前会長が職務放棄したので、再選挙が決定するまで代理として会長になってるんです」
杏 子「例のブチ切れた会長か」
マ ミ「ですから、正式には生徒会長代理の副会長なんです。キョーコに対する『平役員』というのは、私の独断で会長補佐になった事へのイヤミ」
杏 子「……」
ゆ ま「……」
マ ミ「要するに、私達を快く思ってない人がいるんです」
再び、屋上。
織莉子「さあ! 証拠集め開始よ」
キリカ「ねえ、織莉子」
織莉子「何なしら」
キリカ「証拠を集めてさぁ、どーするわけ?」
織莉子「決まってるでしょッ! 全校生徒に公開してわからせるのよ。 会長にふさわしいのは巴マミではなく、この美国織莉子である事を」
決めゼリフを言った後、再び双眼鏡に目を当てて執行部室の監視を再開する織莉子。
キリカ「双眼鏡で覗き見している織莉子が言っても説得力ないなぁ」
織莉子「お黙りなさいッ」
Part2.織莉子の陰謀
織莉子「とにかく! あの三人が執行部室で何してるのかを暴いて、生徒会の評判を地に落とすのよッ」
キリカ「うーん。コソコソ動き回るのは気が乗らないなぁ。それにメンドイ」
織莉子「キリカだって会計に戻りたいでしょう?」
キリカ「一大イベントの年間部費分配は終わったし、別にいーかな」
織莉子「えッ!? お金の計算、好きなんでしょ?」
キリカ「好きなのは計算じゃなくて『お金』よ。現ナマさわれん計算はヘビの生殺しもドーゼン!」
織莉子「お金が絡むとキリカも危ない人になるわよね」
生徒会執行部室。
杏 子「マミ。なあ、マミってば」
マ ミ「えッ? あッ。スミマセン」
杏 子「大丈夫かぁ? あんま考え過ぎんなよ。気のせーかも知んねーし」
ゆ ま「そうですよ! 会長に不満を持っている生徒なんていませんよ。イヤガラセは何かの間違いです。もし、いたとしても見当違いの逆恨みか妬みですよッ」
三年生用昇降口付近。
織莉子「さあ、帰って作戦を……。はくちょッ」
キリカ「相変わらず可愛いくしゃみだねー。風の強い屋上で覗き見なんかしてるから、カゼひいたんじゃない?」
ずずッ。
織莉子「もしかして、マミが噂してるのかも」
キリカ「なんで?」
織莉子「彼女に不満を持つライバルなんて私くらいでしょ。私の事を思い出してるのよ、きっと」
杏 子「ホントに心当たりがねーのか」
マ ミ「全くもって。心の底から思い当たりませんわ」
杏 子「そーか」
マ ミ「心当たりもないのに疑心暗鬼になるのはよくありませんわね。ご心配かけて、スミマセン」
ゆ ま(よかったー。会長が普段通りに戻ってくれて)
マ ミ「紙一枚に貴重な時間をさかれましたが、これから仕事にかかります。今日は書類審査が多くて忙しくなりますから」
杏 子「そんじゃ、あたしも手伝うよ」
ゆ ま「ユマもお手伝いします」
マ ミ「ありがとうございます。えーッと、まずは……夏季部活動の特別予算について……」
予算案のプリントを手に取った時、マミの脳裏に『容疑者』の顔が浮かび上がった。
マ ミ「……心当たりがありました」
ゆ ま「ええぇぇ」
杏 子「マジかよ」
織莉子(キリカが会計に執着しないとは誤算だわ。もっと本気で協力してほしいのに)
キリカ(あ~あ。春のせいか眠いなぁ)
織莉子(何か良い方法は……。あッ)「ね、ねえ。キリカ」
キリカ「ん?」
織莉子(気合の入った声で)「お金、好きよね!」
生徒D「わッ。驚いた」
キリカ(気合の入った声で)「大好き!!!」
生徒E「えぇぇぇ?」
織莉子「年間の部費配分は終わった。でもね、夏季大会に向けての臨時金が出るじゃない」
キリカ「あッ! そう言われてみれば……」
織莉子「だから、今すぐ会計に戻れば現金を扱えるのよ!」
マ ミ「・・・と言うわけで、お金に執着のある出禁にした会計の呉先輩が怪しいですわ」
杏 子「他に考えられる奴はいるか?」
マ ミ「いいえ、全然。つゆほどに」
完全に存在を忘れられている織莉子……。
キリカ「現金を扱える! そうなれば話は別だよ。なにがなんでも戻らないといけない」
織莉子「さすがキリカ」
キリカ「さっきまではテキトーっていうか、織莉子の寄行が面白いから、このままでいいと思ってたけど」
織莉子「どさくさにまぎれてヒドイ事を言ってのけるわね……」
キリカ「明日から真剣にやるわ。お金と織莉子への愛は無限に有限だからね」
織莉子「最後の方の言葉は理解できないけど、まあいいわ。がんばりましょう!」
野望成就に向けて気合を入れる二人だが……。
生徒F「ねえ、織莉子とキリカの会話、聞いた?」
生徒D「現金どうとか……」
生徒E「お金が好きって叫んでたわ」
生徒F「キリカが役員じゃなくなったの、それが理由かもよ」
敵より先に自分達の評判を落とした事は知る由(よし)もない。
【付記】
いよいよ主要メンバー5人が出揃いました。もう2~3話で「ラブ☆MAGI」は一応の完結(『恋愛ラボ』第1巻のエピソードを『魔法少女おりこ☆マギカ』メインキャラで再現する予定で始めたコラボSSでしたので)をみますが、クライマックスへ突入する前に更新の一時停止を告知させて頂きます。本日より10日から2週間程度、更新ができそうもない状況となる為、次回更新は早くても5月18日となる予定です。コメント返信も時間を要する場合があるかも知れませんが御容赦下さい。
生徒会長補佐・佐倉杏子は、会長代理・巴マミの指名で就任した異色の生徒会役員。
杏 子「ん?」
友人A「どうしたの、アンコ(註:親しい友人が杏子を呼ぶ時の渾名)」
杏 子「いや……。なんか最近、視線を感じんだよなー」
友人A「……」
杏 子「気のせいかなぁ?」
廊下ですれ違う生徒、教室の窓越しに杏子を見つめる同級生。
生徒A(小声で)「あら、佐倉さんだわ」
生徒B(小声で)「『チェリーブロッサム』だわ。今日もワイルドねぇ」
生徒C(小声で)「『チェリーブロッサム』だー」
友人A(これだけ視線を浴びてれば当然だって)
それは気のせいでもなく、最近の事でもないと思う友人であった。
廊下の曲がり角に隠れて杏子の後姿を見つめる人影。
???『あの子が佐倉杏子ね』
人影は手にした紙飛行機を杏子の後頭部に向けて勢いよく放った。
シュッ。
友人A「危ない、アンコ!」
杏 子「え?」
コスン。
狙いたがわず、紙飛行機は杏子の後頭部を直撃した。
場所は変わって生徒会執行部室。
マ ミ「イヤガラセ?」
杏 子「……なのかわかんねーけどさぁ。これ」
最前の紙飛行を折る前の状態に戻し、杏子はマミに紙片を手渡す。
その紙には豪快な文字で次のように書かれていた。
『このスリムめ!!!』
マ ミ「なんなんですの、これ?」
杏 子「さーな」
マ ミ「よ、よくわかりませんわね。文体と書体的にはイヤガラセっぽいんですが……」
杏 子「だろー? いやぁ、まいるよ。ホント」
スリムと言われてマンザラでもない杏子。口から出た言葉には僅かに喜びも混じっているようだ。
コンコン。
ゆ ま「失礼します」
ガチャ。
ゆ ま「巴会長。学年主任から冊子を預かってきました」
マ ミ「どうもありがとう。……あら?」
ヒラリ。
受け取った冊子の間から一枚の紙が落ちた。
杏 子「もしかして、マミにもか?」
床へ落ちた紙上には次の文字が認められた。
『巴マミはスリムすぎ!!! 胸以外は』
マ ミ「まあ、なんてはハレンチなイヤガラセ!」
杏 子「マミ。顔が笑ってんぞ」
マ ミ『まいりましたわー』
杏 子『ホントだよなー』
紙片を手に笑顔で語り合うマミと杏子。
そんな二人の姿を屋上から双眼鏡で見ている人影。
織莉子「ちょっとキリカ! あの二人、全然ショックをうけてないわよ!?」
彼女の名前は美国織莉子。芳文女子中学校の三年生にして、名目上の生徒会長でもある。
キリカ「えー。そうかなぁ」
前髪を掻き上げながら返事をしたのは呉キリカ。織莉子の親友で、マミから生徒会への出入り禁止を告知された元・会計担当である。
織莉子「『そうかなぁ』じゃないわよ。あんたが『この文言なら傷つけられるんじゃない』って言うから、わざわざ書道部から墨汁を借りて墨書きしたのよ」
キリカ「こんなストーカーまがいのイヤガラセして、織莉子の経歴は確実に傷ついたと思うけど」
織莉子「私じゃない。あいつらの事よ!!(怒)」
人気(ひとけ)がない放課後の屋上で夫婦漫才のような会話を続ける、かつての生徒会役員二人。
織莉子「だいたい、おかしいと思ったのよ。マミ達がマッチョになりたがってるなんて!」
キリカ「織莉子ってさぁ、いい加減な情報を鵜呑みにして痛い目を見るタイプだね。頭はいいのに。サギには気をつけなよ」
織莉子「この情報源はあなたでしょう!」
キリカ「あたしの情報網はいい加減じゃないんだけどなぁ。ちゃんと聞いたし」
織莉子「ホントに? マミ達が『なりたい』って言ってたの?」
キリカ「わけわかんない事を言っての聞いて、あたしがテキトーに推理したんだけどね」
織莉子「いい加減な情報もいいとこじゃないのよ!!(怒)」
頭にカーッと血が上ってしまった織莉子だが、さすがは元・生徒会長。すぐに落ち着きを取り戻した。
織莉子「それで、いったい何を聞いたの?」
キリカ「えーッと……」
キリカは頬に指を当てながら昨日の会話を思い出そうとする。
キリカ「思い出したわ」
織莉子「言ってみて」
キリカ「腹ァ!!」
びくッ。
織莉子「お、脅かさないでよ。」
キリカ「上目遣い!!」
織莉子「腹? 上目遣い?」
キリカ「目力!!」
織莉子「め、目力? 何よ、それ??」
キリカ「以上の単語からマッチョになりたがっているという結論に達しました」
織莉子「何よ、それ。そもそも、上目遣いは関係ないでしょ」
キリカ「聞いたカンジでは筋トレ風だったから」
織莉子「それにしても推理が飛躍し過ぎよ」
キリカ「そうかなぁ?」
織莉子「キリカの推理はさておき、執行部室で筋トレなんて怪しいわね。あそこ(執行部室)でマミ達が変な事をしてるのは間違いなさそうだけど、言い訳できない証拠を掴まないとゴマカされそうだわ」
キリカ「……」
織莉子「そういうわけで、引き続き、調査を頼むわよ! キリカ」
キリカ(ここでまた、あたしに頼んじゃう織莉子ってアホだよなぁ。まあ、そういうとこが可愛いくて好きなんだけど)
その頃、執行部室では……。
杏 子「マミ、なんか心当たりはあるか?」
マ ミ「いいえ」
ゆ ま「あれ? 裏になんか書いてある」
マ ミ「え?」
杏 子「読んでみてくれ、千歳」
ゆ ま「佐倉先輩のには『平役員』、巴先輩の方は『副会長』、と書いてあります」
杏 子「『平役員』? 役員の時点で平じゃねーじゃん」
ゆ ま「それじゃ間違いですかね? どちらにしてもイヤガラセではなさそう」
マ ミ「……ひ、ひどい……イヤガラセですわ……」
杏 子「えー!?」
ゆ ま「えー!?」
杏 子「なんだ『副会長』がイヤガラセになんのさー」
マ ミ「もともと、私は副会長だったんです。前会長が職務放棄したので、再選挙が決定するまで代理として会長になってるんです」
杏 子「例のブチ切れた会長か」
マ ミ「ですから、正式には生徒会長代理の副会長なんです。キョーコに対する『平役員』というのは、私の独断で会長補佐になった事へのイヤミ」
杏 子「……」
ゆ ま「……」
マ ミ「要するに、私達を快く思ってない人がいるんです」
再び、屋上。
織莉子「さあ! 証拠集め開始よ」
キリカ「ねえ、織莉子」
織莉子「何なしら」
キリカ「証拠を集めてさぁ、どーするわけ?」
織莉子「決まってるでしょッ! 全校生徒に公開してわからせるのよ。 会長にふさわしいのは巴マミではなく、この美国織莉子である事を」
決めゼリフを言った後、再び双眼鏡に目を当てて執行部室の監視を再開する織莉子。
キリカ「双眼鏡で覗き見している織莉子が言っても説得力ないなぁ」
織莉子「お黙りなさいッ」
Part2.織莉子の陰謀
織莉子「とにかく! あの三人が執行部室で何してるのかを暴いて、生徒会の評判を地に落とすのよッ」
キリカ「うーん。コソコソ動き回るのは気が乗らないなぁ。それにメンドイ」
織莉子「キリカだって会計に戻りたいでしょう?」
キリカ「一大イベントの年間部費分配は終わったし、別にいーかな」
織莉子「えッ!? お金の計算、好きなんでしょ?」
キリカ「好きなのは計算じゃなくて『お金』よ。現ナマさわれん計算はヘビの生殺しもドーゼン!」
織莉子「お金が絡むとキリカも危ない人になるわよね」
生徒会執行部室。
杏 子「マミ。なあ、マミってば」
マ ミ「えッ? あッ。スミマセン」
杏 子「大丈夫かぁ? あんま考え過ぎんなよ。気のせーかも知んねーし」
ゆ ま「そうですよ! 会長に不満を持っている生徒なんていませんよ。イヤガラセは何かの間違いです。もし、いたとしても見当違いの逆恨みか妬みですよッ」
三年生用昇降口付近。
織莉子「さあ、帰って作戦を……。はくちょッ」
キリカ「相変わらず可愛いくしゃみだねー。風の強い屋上で覗き見なんかしてるから、カゼひいたんじゃない?」
ずずッ。
織莉子「もしかして、マミが噂してるのかも」
キリカ「なんで?」
織莉子「彼女に不満を持つライバルなんて私くらいでしょ。私の事を思い出してるのよ、きっと」
杏 子「ホントに心当たりがねーのか」
マ ミ「全くもって。心の底から思い当たりませんわ」
杏 子「そーか」
マ ミ「心当たりもないのに疑心暗鬼になるのはよくありませんわね。ご心配かけて、スミマセン」
ゆ ま(よかったー。会長が普段通りに戻ってくれて)
マ ミ「紙一枚に貴重な時間をさかれましたが、これから仕事にかかります。今日は書類審査が多くて忙しくなりますから」
杏 子「そんじゃ、あたしも手伝うよ」
ゆ ま「ユマもお手伝いします」
マ ミ「ありがとうございます。えーッと、まずは……夏季部活動の特別予算について……」
予算案のプリントを手に取った時、マミの脳裏に『容疑者』の顔が浮かび上がった。
マ ミ「……心当たりがありました」
ゆ ま「ええぇぇ」
杏 子「マジかよ」
織莉子(キリカが会計に執着しないとは誤算だわ。もっと本気で協力してほしいのに)
キリカ(あ~あ。春のせいか眠いなぁ)
織莉子(何か良い方法は……。あッ)「ね、ねえ。キリカ」
キリカ「ん?」
織莉子(気合の入った声で)「お金、好きよね!」
生徒D「わッ。驚いた」
キリカ(気合の入った声で)「大好き!!!」
生徒E「えぇぇぇ?」
織莉子「年間の部費配分は終わった。でもね、夏季大会に向けての臨時金が出るじゃない」
キリカ「あッ! そう言われてみれば……」
織莉子「だから、今すぐ会計に戻れば現金を扱えるのよ!」
マ ミ「・・・と言うわけで、お金に執着のある出禁にした会計の呉先輩が怪しいですわ」
杏 子「他に考えられる奴はいるか?」
マ ミ「いいえ、全然。つゆほどに」
完全に存在を忘れられている織莉子……。
キリカ「現金を扱える! そうなれば話は別だよ。なにがなんでも戻らないといけない」
織莉子「さすがキリカ」
キリカ「さっきまではテキトーっていうか、織莉子の寄行が面白いから、このままでいいと思ってたけど」
織莉子「どさくさにまぎれてヒドイ事を言ってのけるわね……」
キリカ「明日から真剣にやるわ。お金と織莉子への愛は無限に有限だからね」
織莉子「最後の方の言葉は理解できないけど、まあいいわ。がんばりましょう!」
野望成就に向けて気合を入れる二人だが……。
生徒F「ねえ、織莉子とキリカの会話、聞いた?」
生徒D「現金どうとか……」
生徒E「お金が好きって叫んでたわ」
生徒F「キリカが役員じゃなくなったの、それが理由かもよ」
敵より先に自分達の評判を落とした事は知る由(よし)もない。
【付記】
いよいよ主要メンバー5人が出揃いました。もう2~3話で「ラブ☆MAGI」は一応の完結(『恋愛ラボ』第1巻のエピソードを『魔法少女おりこ☆マギカ』メインキャラで再現する予定で始めたコラボSSでしたので)をみますが、クライマックスへ突入する前に更新の一時停止を告知させて頂きます。本日より10日から2週間程度、更新ができそうもない状況となる為、次回更新は早くても5月18日となる予定です。コメント返信も時間を要する場合があるかも知れませんが御容赦下さい。
「ラブ☆MAGI」 第3話:ドジっ娘(こ)レッスン
Part1.素直になれて
一年生の書記に恋の練習を目撃され、ハンパない落ち込みのマミ。
マ ミ「しくしく。しくしく」
杏 子「なぁ……。あれから二日も経つんだし、大丈夫なんじゃねーか。同級生にも黙っててくれたみたいだし、変な噂も立ってねーじゃん」
マ ミ「ダメです。もう、おしまいです。おしまいですわぁぁぁぁ」
杏 子「………。そうだ!」
名案を思いついた杏子はロッカーからマミ愛用の抱き枕を持ち出した。
杏 子「ほらッ。大好きなダッキーとハグの練習でもしよーぜ」
マ ミ「キョーコ、何を言ってるの?」
杏 子「え?」
冷たい視線で杏子を見つめるマミ。いつもと立場が逆転してしまった。
杏 子(まったく、調子狂うよなぁ。いつもと立場が違うと)
マ ミ「あんな風に逃げられるくらいなら、笑われた方がマシでしたわ……。ケイベツされてしまったかしら……。いいコでしたのに……」
杏 子(う、うぜぇぇぇぇ。この上もなく、うぜー)
次の日。
杏子は一年二組の教室にゆまを訪ねた。
杏 子「あのさー」
生徒A「は、はい。なんでしょうか? チェ……佐倉先輩」
杏 子「千歳ゆまって子、教室にいるかい?」
生徒B「チェ……」
生徒C「チェ……」
生徒D「チェ……」
生徒E「ユマならトイレに言ってるみたいです。チェ……佐倉先輩」
杏 子「そ、そうかい。ありがと」(なんだ、この掛け声は? 一年で流行(はや)ってんのか?)
一年生の女子たちは「チェリーブロッサム」と言いかけていたのであった。
生徒F「あッ。チェ……佐倉先輩」
杏 子「悪いね。ちょっと邪魔するよ」
ゆ ま「チェリ……佐倉先輩。どうして、ここに?」
杏 子「あのさぁ、できればマミと一度話をしてやってくんねーか? あいつさぁ、ケーベツされたんじゃないかって、すげー気にしてんだ」
ゆ ま「えぇぇぇ。そ、そうなんですか。ユマ、ユマ……悪気はなくて……」
杏 子「わかってるって。今日の放課後にもで部室でマミと話してやってくれ。それでお互いの誤解も解けるだろうから。頼んだよ」
その日の放課後。
ゆ ま「会長の気持ち、考えてなかった……。ちゃんと謝ろう」
コンコン。
ゆ ま「失礼します」
ガチャ。
ゆ ま「あれ? 誰もいない。会長、まだ来てないのだ。待っていよう」
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ。
ゆ ま(ど、ど、どうしよう。胸のドキドキが止まらない。落ち着け、落ち着け、落ち着けぇぇぇぇ)
心を落ち着かせようと室内を歩き廻るゆま。
ゴツン。キイィィィ。
ゆ ま「キャッ。いたーい」
スチール製のロッカーにぶつかり、その衝撃で半開きだったロッカーの戸が開いた。
そして中から……。
ドサッ。
ゆ ま「きゃああああ」
杏 子「な、なんだ。今の悲鳴は」
マ ミ「執行部室から聞こえましたわ。急ぎましょう、キョーコ」
杏 子「うん」
執行部室へ急行する杏子とマミ。ドアを開けた二人が目にしたのはダッキーの下敷きになったゆまであった。
マ ミ「こ、これは……」
杏 子(ヤベッ。昨日はテキトーに突っ込んだから……)
マ ミ「見ましたか、キョーコ。ダッキーが浮気してますわよ!!」
杏 子「気にするトコはそこなのか?」
ゆ ま「????」
マ ミ「ち、千歳さん。その人形はですね……。その……えぇッと……」
言葉にならない言い訳をしながらダッキに走り寄ろうとするマミ。
しかし、あまりに慌てていたせいか何もないところで転んでしまった。
マ ミ「キャッ」
ばふん。
ゆまとは抱き枕を挟んだ反対側に倒れるマミ。
ゆ ま「……」
マ ミ「……」
杏 子「……」
マ ミ「これが間男!?」
杏 子「ちげーよ。アホかお前は。少し落ち着け!」
マ ミ「何かしら。この使い古しの間男は? 誰かが抱き飽きて捨てたのね。そうよ。そうに違いないわ!」
杏 子「生々しいゴマカシ方をすんな!」
ゆ ま「ぷッ」
憧れの先輩二人が目の前で繰り広げるコントに笑いの沸点を超えたゆまは思わず噴き出してしまった。
ゆ ま「ス、スミマセン……。ぷぷッ。お二人が面白くって……。クスクス」
マ ミ「あなたの笑った顔、初めて見まわしたわー」
杏 子「あたし、まもとに顔を見たのも初めてだ」(トイレじゃ顔を見る余裕なかったし)
ゆ ま「この前はスミマセンでした。急に逃げ出したりして」
マ ミ「いいのよ。それよりも……あの……ガッカリした? こんな生徒会長で」
ゆ ま「いいえ。あの時はビックリしたけど、普段とのギャップが素敵だと思います」
マ ミ「まあ……」
杏 子「良かったじゃねーか。案ずるより産むがやすし、ってヤツだなー」
マ ミ「キョーコ。次のレツィオーナは『ギャップでアプローチ』を研究しましょう!」
杏 子「調子にのんな!」
マミに軽い空手チョップでツッコミを入れる杏子。そして、間髪入れずにトドメの一言。
杏 子「それと妙なイタリア語を使うのはやめろ。知識をひけらかしてるみてーで引かれんぞ」
ゆ ま「?」
Part2.新たな特訓
芳文女子中学校生徒会長、巴マミ。
教師と生徒どちらにも人望が厚く、仕事は迅速にして的確。心配りも忘れない。
非の打ちどころがない万能少女だが、半年に一度は徹底的にドジる。
マ ミ「あれぇぇぇ。間違えてカバンに鳩を入れて来てしまったわ。私ったらドジ~ッ」
杏 子「……」
マ ミ「こんな私はどうでしょう?」
杏 子「お前は手品師か。だいたい、半年ペーズでドジる意味がわかんねー」
マ ミ「毎日じゃ迷惑かと……」
杏 子「分別もったドジなんだな。って言うか、まだ諦めてなかったのかよ。お前にドジっ娘(こ)は無理だからやめとけ。第一、才能がねーよ」
マ ミ「違います! 『ギャップ』です。しっかり者が時々ドジをするんです」
杏 子「ほー。どんなドジをするのさ」
マ ミ「例えば、優雅に紅茶を淹れようとして……」
マミはカバンの中から紅茶の茶葉が入った缶を取り出し、その蓋を開けた。
ぽんッ。
マ ミ「キャッ」
小気味良い音を響かせながら蓋が取れると同時に、缶の中からは勢いよく紙吹雪や糸で繋がった小さい国旗が出てきた。
マ ミ「いやだ、私ったら紅茶缶と間違えてしまいましたわー」
杏 子「なんでお前のドジはエンターテインメントなんだ? そもそも、紅茶缶は間違えてねーじゃん」
マ ミ「うッ。それは言わないのが『お約束』よ」
杏 子「まったく。そんな仕込みをしなくても、『紅茶を淹れたつもりが緑茶だったわ』とか、『砂糖と間違えて塩を入れちゃった』とか、定番ネタでいーだろーが!」
マ ミ「まあ。そんな非常識な……」
杏 子「その言葉、お前に言われたくねーよ」
マ ミ「でも、どんな事にだって仕込みは必要です」
杏 子「これだから優等生は困るよ。なんの細工もせず、そこにあるもので自然にドジる。それが正しい姿だ!」
マ ミ「細工なしでドジるなんて……。自信ありませんわ」
杏 子「その考え自体、ドジってると言えなくもないな」
マ ミ「自然なドジって、よくわかりませんわねー」
コンコン。
杏 子「ん? 誰だろう。どーぞ」
ガチャ。
ボケとツッコミが一段落ついたタイミングを見計らうように書記のゆまがドアを開けた。
ゆ ま「巴会長。チェ……佐倉先輩。こ、こんにち……」
ガゴン。
ゆ ま「わッ」
頭を下げると同時にゆまの額が半開きのドアに激突した。
大きな音が響き、彼女の手から書類の束が落ちる。
マ ミ(こ、この呼吸ですわ!)
杏 子(この一年、タダモンじゃねー)
マ ミ(自分が開けたドアにぶつかるなんて……。なんという高等テクニック)
ゆ ま「いたーい」
額を押さえながら頭を上げた次の瞬間、ゆまは足元に散乱したプリントに足を滑らせた。
ズルッ。
ゆ ま「あッ」
スッテーン。
ゆ ま「うぅぅ。痛いですぅ」
杏 子(バラ捲いたプリントで転ぶオチまでつけやがった)
マ ミ(このドジっぷり、高度すぎますわ)
ゆ ま(うわーん。お二人、絶対に呆れてるよ~)
マ ミ「……ち、千歳さん」
ゆ ま「はいッ!」
憧れの生徒会長に名前を呼ばれ、ビクっとするゆま。その手をマミはギュッと握りしめながら言った。
マ ミ「私のドジ師匠になってくれませんか?」
ゆ ま「はい?」
杏 子「諦めろ千歳。そーなったら逃げられん」
ゆ ま「ユマが会長に教えられる事なんてありませんよ。ここへ編入する前に通ってた小学校の時なんて、男の子が苦手で全然話せませんでしたし……」
マ ミ「その点は心配いりませんわ。男性への接し方は恋愛の達人がいますから。ねえ、キョーコ」
杏 子「うぐッ。ゴフ、ゴフ」
冷蔵庫に入っていたペットボトルの紅茶を飲んでいた杏子は、いきなり自分に話がふられたので焦ってしまい咳込んだ。
マ ミ「どうかしまして?」
杏 子(やべー。その設定、すっかり忘れてた)
ゆ ま「た、達人? 佐倉先輩がですか?」
マ ミ「そうなんですよ! 恋した人はみんなキョーコを好きになって」
男子A『なあ、佐倉。お前の友達がスキなんだ。とりもってくれねーか』
杏 子(うッ)
マ ミ「たくさんの彼氏を夢中にさせてきたんですって!」
男子B『お前ってさぁ、ホント、女ってカンジしねーよな』
杏 子(あうぅぅぅ)
マ ミ「どうかしまして?」
杏 子「……いや。別に……」(いつの間にか話が大きくなってやがる)
ゆ ま「佐倉先輩、スゴーイッ」
杏 子(っつーか、このままだと千歳にまで嘘をつく事になる。やっぱ嘘はよくねーよな。いつかバレるだろーし、この場で正直に打ち明けよう)
マ ミ「そうでしょう。なんと言ってもキョーコは私の恋愛インセニャンテ(註:Insegnante。イタリア語で「先生」の意味)ですもの」
尊敬の眼差しで杏子を見るマミとゆま。
そんな二人の期待に応えるべく、意地っ張り&見栄っ張り&期待を裏切れない性格の杏子は嘘を告白するチャンスを逸してしまった。
杏 子「ま、まあな。大した事じゃねーよ」(あ~。あたしのバカー。いくじない。見栄っ張りぃぃぃ)
次の日。
ゆ ま「こんにちはー。佐倉先輩」
杏 子「よう」
ゆ ま「今日はどんなレッスンをするんですか?」
杏 子「さーな。何を教えるかはマミの思いつきで決めてるから」
ゆ ま「そうなんですか」
杏 子「千歳も気張りすぎんなよ。真面目に付き合ってると大変な目にあっちまうから」(あたしみたいにな……)
そんな事を話し合いながら執行部室まで来た二人。
コンコン。
ゆ ま「失礼しま……。きゃぁッ」
杏 子「マ、マミ!」
ドアを開けた二人の目に映ったのは、窓際で倒れているマミの姿だった。
杏 子「どうしたんだ。マミ。しっかりしろッ! おいッ!」
ゆ ま「ど、どうしましょう。佐倉先輩」
杏 子「とにかく保健室へ運びこもう」
マ ミ「保健室へ運ぶなら、お姫様抱っこで運んで下さ……」
ベシッ。
マ ミ「い、痛い……」
杏 子「怒りの鉄拳、思い知ったか。本気で心配させやがって。いったい、なんのマネだよ」
マ ミ「お姫様抱っこの練習です」
杏 子「はぁ?」
マ ミ「乙女の憧れシチュエーション。ピンチに陥った私を颯爽と抱えながら、野を超え、山を越え、谷を超え、東海道五十三次を駆け巡る!」
杏 子「飛脚じゃねーか。ったく。お前はいつも予想外の事を考えつくなぁ」
ゆ ま「でも新鮮じゃないですか」
マ ミ「そう言うお二人は憧れた事はありませんか? お姫様抱っこ」
杏 子「……あ、あるよ」
ゆ ま「私もです」
マ ミ「そうでしょう。乙女を助ける定番と言えば、お姫様抱っこですものねー。さあ、練習の続きを……っと、その前に」
マミは部室のドアノブの鍵を閉め、薄い金属板の掛け金もおろした。
マ ミ「今までの出来事から学習して、ドアに掛け金をつけたんです。よほど大きな声を出さなければ外に声は漏れないし、これで不意の訪問者にも対応できます。今後は三人が揃ったら鍵をかけるようにしましょう。これなら、人に見られて恥ずかしい練習も安心してできますわ」
杏 子「学習するトコ、間違えてないか?」
マ ミ「お姫様抱っこされる定番設定といえば、やはり『女のコが気絶する』パターンですよね❤」
杏 子「それで倒れてたってわけか。あたしらが来るまで御苦労なこったなー」
マ ミ「でも、私は気絶した事がないので……。どんなカンジなんでしょうね、気絶するというのは」
杏 子「さーなぁ。あたしも経験ねーし」
ゆ ま「本当に気絶すると……」
杏 子「ん?」
ゆ ま「白目で薄笑いしてる事もあるそうですよ」
マ ミ「ほ、ホントですか?」
ゆ ま「はい。経験者ですから」
杏 子「そ、そうなのか……」
ゆ ま「ちなみに気絶した人はものすごく重いらしいので、五人がかりで両手両足を持って運ぶ事もあるそうです。その時の掛け声が『わっせ! わっせ!』と言うみたいです」
マ ミ「き、気絶の話はやめましょう。ねッ、キョーコ」
杏 子「そ、そうだな。大変なのに失礼だよな。マネするなんて」
マ ミ「気絶ではなく、設定を変えて『足をくじいて動けない』という事にしましょう」
杏 子「ああ。それがい……」
マ ミ「いたーい。足を挫いちゃったぁ」
前フリもなく足首を押さえながら、マミはその場にへたり込んだ。
杏 子「うおッ。いきなり始めんなよ」
ゆ ま「あ~、びっくりした」
マ ミ「ああ、誰か親切な殿方が運んで下さらないかしら」
杏 子「と、殿方って……。いつの時代設定だよ。それに運んでほしそうなポーズでスタンバるな」
マ ミ「え? これでは駄目ですか?」
杏 子「あたりめーだ。抱っこされる気マンマンより、自分で立ち上がろうと努力するんだ」
マ ミ「立ち上がる努力ですか」
杏 子「それに相手が手を差し伸べても、恥じらいながら一度は断るんだよ。『いいよ。大丈夫だから』とか言ってさぁ」
ゆ ま「なるほど」
杏 子「意地張ってたら強引に抱えられて……『お前、軽いな』なんて言われたりして……」
マ ミ「ずいぶんと具体的ですわね」
杏 子「ハッ」(し、しまった。よく妄想してたから……つい熱く語っちまった)
顔を真っ赤に火照らせ恥じらう杏子。しかし、そんな彼女の胸中を他の二人は知る筈がない。
マ ミ「すでにキョーコはお姫様抱っこを体験済みでしたのね」
ゆ ま「さすが達人」
杏 子(うぐッ。このままだと誤解がドンドン大きくなっていく)
ゆ ま「ユマも『軽い』なんて言われてみたいですぅ。五人がかりで運ばれた事、今でも忘れられなくて」
マ ミ「抱っこされた時、可愛く思われるポイントを教えて下さいッ」
杏 子「しょーがねーな。今日のレッスンはお姫様抱っこの秘訣でいくか」(あたしのアホーッ)
ゆ ま「どうしたら軽く感じてもらえるんでしょうか?」
杏 子(あたしが知るか。え~と、脱力すると重いんだから)「腹にグッと力を込めて気合を入れるんだ!」
ゆ ま「はいッ。気合ですね!」
マ ミ「可愛く思われるには?」
杏 子(こっちが聞きてーよ)「そうだなぁ……。まずは俯(うつむ)け」
マ ミ「俯きました」
ゆ ま「腹部に力を入れました」
杏 子「そ、そ、それから……時々だなぁ……え~と……顔を上げて」
マ ミ「顔を……」
ゆ ま「上げて?」
杏 子「目力(めぢから)だ!!」
マ ミ「目力!?」
ゆ ま「目力ですか!」
杏 子「復唱すんぞ! 腹ァ!!」
マ ミ「腹ッ!」
ゆ ま「腹ッ!」
ツッコミ役の杏子が自分を見失った事で……。
杏 子「俯いてぇ」
マ ミ「俯いてッ!」
ゆ ま「俯いてッ!」
外に漏れる程、大声を出している非常事態に……。
杏 子「目力ッ!!」
マ ミ「目力ッ!」
ゆ ま「目力ッ!」
全く気付いていないアホな三人であった。
???「へぇ。最近の生徒会は面白そうな事をしてるみたいね」
【付記】
5月6日の日計アクセス数が過去最高の219件を数えました(2013年3月13日の日計総アクセス216件の記録を更新!)。御訪問下さった皆様に厚く御礼申し上げます。
一年生の書記に恋の練習を目撃され、ハンパない落ち込みのマミ。
マ ミ「しくしく。しくしく」
杏 子「なぁ……。あれから二日も経つんだし、大丈夫なんじゃねーか。同級生にも黙っててくれたみたいだし、変な噂も立ってねーじゃん」
マ ミ「ダメです。もう、おしまいです。おしまいですわぁぁぁぁ」
杏 子「………。そうだ!」
名案を思いついた杏子はロッカーからマミ愛用の抱き枕を持ち出した。
杏 子「ほらッ。大好きなダッキーとハグの練習でもしよーぜ」
マ ミ「キョーコ、何を言ってるの?」
杏 子「え?」
冷たい視線で杏子を見つめるマミ。いつもと立場が逆転してしまった。
杏 子(まったく、調子狂うよなぁ。いつもと立場が違うと)
マ ミ「あんな風に逃げられるくらいなら、笑われた方がマシでしたわ……。ケイベツされてしまったかしら……。いいコでしたのに……」
杏 子(う、うぜぇぇぇぇ。この上もなく、うぜー)
次の日。
杏子は一年二組の教室にゆまを訪ねた。
杏 子「あのさー」
生徒A「は、はい。なんでしょうか? チェ……佐倉先輩」
杏 子「千歳ゆまって子、教室にいるかい?」
生徒B「チェ……」
生徒C「チェ……」
生徒D「チェ……」
生徒E「ユマならトイレに言ってるみたいです。チェ……佐倉先輩」
杏 子「そ、そうかい。ありがと」(なんだ、この掛け声は? 一年で流行(はや)ってんのか?)
一年生の女子たちは「チェリーブロッサム」と言いかけていたのであった。
生徒F「あッ。チェ……佐倉先輩」
杏 子「悪いね。ちょっと邪魔するよ」
ゆ ま「チェリ……佐倉先輩。どうして、ここに?」
杏 子「あのさぁ、できればマミと一度話をしてやってくんねーか? あいつさぁ、ケーベツされたんじゃないかって、すげー気にしてんだ」
ゆ ま「えぇぇぇ。そ、そうなんですか。ユマ、ユマ……悪気はなくて……」
杏 子「わかってるって。今日の放課後にもで部室でマミと話してやってくれ。それでお互いの誤解も解けるだろうから。頼んだよ」
その日の放課後。
ゆ ま「会長の気持ち、考えてなかった……。ちゃんと謝ろう」
コンコン。
ゆ ま「失礼します」
ガチャ。
ゆ ま「あれ? 誰もいない。会長、まだ来てないのだ。待っていよう」
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ、ドキ。
ゆ ま(ど、ど、どうしよう。胸のドキドキが止まらない。落ち着け、落ち着け、落ち着けぇぇぇぇ)
心を落ち着かせようと室内を歩き廻るゆま。
ゴツン。キイィィィ。
ゆ ま「キャッ。いたーい」
スチール製のロッカーにぶつかり、その衝撃で半開きだったロッカーの戸が開いた。
そして中から……。
ドサッ。
ゆ ま「きゃああああ」
杏 子「な、なんだ。今の悲鳴は」
マ ミ「執行部室から聞こえましたわ。急ぎましょう、キョーコ」
杏 子「うん」
執行部室へ急行する杏子とマミ。ドアを開けた二人が目にしたのはダッキーの下敷きになったゆまであった。
マ ミ「こ、これは……」
杏 子(ヤベッ。昨日はテキトーに突っ込んだから……)
マ ミ「見ましたか、キョーコ。ダッキーが浮気してますわよ!!」
杏 子「気にするトコはそこなのか?」
ゆ ま「????」
マ ミ「ち、千歳さん。その人形はですね……。その……えぇッと……」
言葉にならない言い訳をしながらダッキに走り寄ろうとするマミ。
しかし、あまりに慌てていたせいか何もないところで転んでしまった。
マ ミ「キャッ」
ばふん。
ゆまとは抱き枕を挟んだ反対側に倒れるマミ。
ゆ ま「……」
マ ミ「……」
杏 子「……」
マ ミ「これが間男!?」
杏 子「ちげーよ。アホかお前は。少し落ち着け!」
マ ミ「何かしら。この使い古しの間男は? 誰かが抱き飽きて捨てたのね。そうよ。そうに違いないわ!」
杏 子「生々しいゴマカシ方をすんな!」
ゆ ま「ぷッ」
憧れの先輩二人が目の前で繰り広げるコントに笑いの沸点を超えたゆまは思わず噴き出してしまった。
ゆ ま「ス、スミマセン……。ぷぷッ。お二人が面白くって……。クスクス」
マ ミ「あなたの笑った顔、初めて見まわしたわー」
杏 子「あたし、まもとに顔を見たのも初めてだ」(トイレじゃ顔を見る余裕なかったし)
ゆ ま「この前はスミマセンでした。急に逃げ出したりして」
マ ミ「いいのよ。それよりも……あの……ガッカリした? こんな生徒会長で」
ゆ ま「いいえ。あの時はビックリしたけど、普段とのギャップが素敵だと思います」
マ ミ「まあ……」
杏 子「良かったじゃねーか。案ずるより産むがやすし、ってヤツだなー」
マ ミ「キョーコ。次のレツィオーナは『ギャップでアプローチ』を研究しましょう!」
杏 子「調子にのんな!」
マミに軽い空手チョップでツッコミを入れる杏子。そして、間髪入れずにトドメの一言。
杏 子「それと妙なイタリア語を使うのはやめろ。知識をひけらかしてるみてーで引かれんぞ」
ゆ ま「?」
Part2.新たな特訓
芳文女子中学校生徒会長、巴マミ。
教師と生徒どちらにも人望が厚く、仕事は迅速にして的確。心配りも忘れない。
非の打ちどころがない万能少女だが、半年に一度は徹底的にドジる。
マ ミ「あれぇぇぇ。間違えてカバンに鳩を入れて来てしまったわ。私ったらドジ~ッ」
杏 子「……」
マ ミ「こんな私はどうでしょう?」
杏 子「お前は手品師か。だいたい、半年ペーズでドジる意味がわかんねー」
マ ミ「毎日じゃ迷惑かと……」
杏 子「分別もったドジなんだな。って言うか、まだ諦めてなかったのかよ。お前にドジっ娘(こ)は無理だからやめとけ。第一、才能がねーよ」
マ ミ「違います! 『ギャップ』です。しっかり者が時々ドジをするんです」
杏 子「ほー。どんなドジをするのさ」
マ ミ「例えば、優雅に紅茶を淹れようとして……」
マミはカバンの中から紅茶の茶葉が入った缶を取り出し、その蓋を開けた。
ぽんッ。
マ ミ「キャッ」
小気味良い音を響かせながら蓋が取れると同時に、缶の中からは勢いよく紙吹雪や糸で繋がった小さい国旗が出てきた。
マ ミ「いやだ、私ったら紅茶缶と間違えてしまいましたわー」
杏 子「なんでお前のドジはエンターテインメントなんだ? そもそも、紅茶缶は間違えてねーじゃん」
マ ミ「うッ。それは言わないのが『お約束』よ」
杏 子「まったく。そんな仕込みをしなくても、『紅茶を淹れたつもりが緑茶だったわ』とか、『砂糖と間違えて塩を入れちゃった』とか、定番ネタでいーだろーが!」
マ ミ「まあ。そんな非常識な……」
杏 子「その言葉、お前に言われたくねーよ」
マ ミ「でも、どんな事にだって仕込みは必要です」
杏 子「これだから優等生は困るよ。なんの細工もせず、そこにあるもので自然にドジる。それが正しい姿だ!」
マ ミ「細工なしでドジるなんて……。自信ありませんわ」
杏 子「その考え自体、ドジってると言えなくもないな」
マ ミ「自然なドジって、よくわかりませんわねー」
コンコン。
杏 子「ん? 誰だろう。どーぞ」
ガチャ。
ボケとツッコミが一段落ついたタイミングを見計らうように書記のゆまがドアを開けた。
ゆ ま「巴会長。チェ……佐倉先輩。こ、こんにち……」
ガゴン。
ゆ ま「わッ」
頭を下げると同時にゆまの額が半開きのドアに激突した。
大きな音が響き、彼女の手から書類の束が落ちる。
マ ミ(こ、この呼吸ですわ!)
杏 子(この一年、タダモンじゃねー)
マ ミ(自分が開けたドアにぶつかるなんて……。なんという高等テクニック)
ゆ ま「いたーい」
額を押さえながら頭を上げた次の瞬間、ゆまは足元に散乱したプリントに足を滑らせた。
ズルッ。
ゆ ま「あッ」
スッテーン。
ゆ ま「うぅぅ。痛いですぅ」
杏 子(バラ捲いたプリントで転ぶオチまでつけやがった)
マ ミ(このドジっぷり、高度すぎますわ)
ゆ ま(うわーん。お二人、絶対に呆れてるよ~)
マ ミ「……ち、千歳さん」
ゆ ま「はいッ!」
憧れの生徒会長に名前を呼ばれ、ビクっとするゆま。その手をマミはギュッと握りしめながら言った。
マ ミ「私のドジ師匠になってくれませんか?」
ゆ ま「はい?」
杏 子「諦めろ千歳。そーなったら逃げられん」
ゆ ま「ユマが会長に教えられる事なんてありませんよ。ここへ編入する前に通ってた小学校の時なんて、男の子が苦手で全然話せませんでしたし……」
マ ミ「その点は心配いりませんわ。男性への接し方は恋愛の達人がいますから。ねえ、キョーコ」
杏 子「うぐッ。ゴフ、ゴフ」
冷蔵庫に入っていたペットボトルの紅茶を飲んでいた杏子は、いきなり自分に話がふられたので焦ってしまい咳込んだ。
マ ミ「どうかしまして?」
杏 子(やべー。その設定、すっかり忘れてた)
ゆ ま「た、達人? 佐倉先輩がですか?」
マ ミ「そうなんですよ! 恋した人はみんなキョーコを好きになって」
男子A『なあ、佐倉。お前の友達がスキなんだ。とりもってくれねーか』
杏 子(うッ)
マ ミ「たくさんの彼氏を夢中にさせてきたんですって!」
男子B『お前ってさぁ、ホント、女ってカンジしねーよな』
杏 子(あうぅぅぅ)
マ ミ「どうかしまして?」
杏 子「……いや。別に……」(いつの間にか話が大きくなってやがる)
ゆ ま「佐倉先輩、スゴーイッ」
杏 子(っつーか、このままだと千歳にまで嘘をつく事になる。やっぱ嘘はよくねーよな。いつかバレるだろーし、この場で正直に打ち明けよう)
マ ミ「そうでしょう。なんと言ってもキョーコは私の恋愛インセニャンテ(註:Insegnante。イタリア語で「先生」の意味)ですもの」
尊敬の眼差しで杏子を見るマミとゆま。
そんな二人の期待に応えるべく、意地っ張り&見栄っ張り&期待を裏切れない性格の杏子は嘘を告白するチャンスを逸してしまった。
杏 子「ま、まあな。大した事じゃねーよ」(あ~。あたしのバカー。いくじない。見栄っ張りぃぃぃ)
次の日。
ゆ ま「こんにちはー。佐倉先輩」
杏 子「よう」
ゆ ま「今日はどんなレッスンをするんですか?」
杏 子「さーな。何を教えるかはマミの思いつきで決めてるから」
ゆ ま「そうなんですか」
杏 子「千歳も気張りすぎんなよ。真面目に付き合ってると大変な目にあっちまうから」(あたしみたいにな……)
そんな事を話し合いながら執行部室まで来た二人。
コンコン。
ゆ ま「失礼しま……。きゃぁッ」
杏 子「マ、マミ!」
ドアを開けた二人の目に映ったのは、窓際で倒れているマミの姿だった。
杏 子「どうしたんだ。マミ。しっかりしろッ! おいッ!」
ゆ ま「ど、どうしましょう。佐倉先輩」
杏 子「とにかく保健室へ運びこもう」
マ ミ「保健室へ運ぶなら、お姫様抱っこで運んで下さ……」
ベシッ。
マ ミ「い、痛い……」
杏 子「怒りの鉄拳、思い知ったか。本気で心配させやがって。いったい、なんのマネだよ」
マ ミ「お姫様抱っこの練習です」
杏 子「はぁ?」
マ ミ「乙女の憧れシチュエーション。ピンチに陥った私を颯爽と抱えながら、野を超え、山を越え、谷を超え、東海道五十三次を駆け巡る!」
杏 子「飛脚じゃねーか。ったく。お前はいつも予想外の事を考えつくなぁ」
ゆ ま「でも新鮮じゃないですか」
マ ミ「そう言うお二人は憧れた事はありませんか? お姫様抱っこ」
杏 子「……あ、あるよ」
ゆ ま「私もです」
マ ミ「そうでしょう。乙女を助ける定番と言えば、お姫様抱っこですものねー。さあ、練習の続きを……っと、その前に」
マミは部室のドアノブの鍵を閉め、薄い金属板の掛け金もおろした。
マ ミ「今までの出来事から学習して、ドアに掛け金をつけたんです。よほど大きな声を出さなければ外に声は漏れないし、これで不意の訪問者にも対応できます。今後は三人が揃ったら鍵をかけるようにしましょう。これなら、人に見られて恥ずかしい練習も安心してできますわ」
杏 子「学習するトコ、間違えてないか?」
マ ミ「お姫様抱っこされる定番設定といえば、やはり『女のコが気絶する』パターンですよね❤」
杏 子「それで倒れてたってわけか。あたしらが来るまで御苦労なこったなー」
マ ミ「でも、私は気絶した事がないので……。どんなカンジなんでしょうね、気絶するというのは」
杏 子「さーなぁ。あたしも経験ねーし」
ゆ ま「本当に気絶すると……」
杏 子「ん?」
ゆ ま「白目で薄笑いしてる事もあるそうですよ」
マ ミ「ほ、ホントですか?」
ゆ ま「はい。経験者ですから」
杏 子「そ、そうなのか……」
ゆ ま「ちなみに気絶した人はものすごく重いらしいので、五人がかりで両手両足を持って運ぶ事もあるそうです。その時の掛け声が『わっせ! わっせ!』と言うみたいです」
マ ミ「き、気絶の話はやめましょう。ねッ、キョーコ」
杏 子「そ、そうだな。大変なのに失礼だよな。マネするなんて」
マ ミ「気絶ではなく、設定を変えて『足をくじいて動けない』という事にしましょう」
杏 子「ああ。それがい……」
マ ミ「いたーい。足を挫いちゃったぁ」
前フリもなく足首を押さえながら、マミはその場にへたり込んだ。
杏 子「うおッ。いきなり始めんなよ」
ゆ ま「あ~、びっくりした」
マ ミ「ああ、誰か親切な殿方が運んで下さらないかしら」
杏 子「と、殿方って……。いつの時代設定だよ。それに運んでほしそうなポーズでスタンバるな」
マ ミ「え? これでは駄目ですか?」
杏 子「あたりめーだ。抱っこされる気マンマンより、自分で立ち上がろうと努力するんだ」
マ ミ「立ち上がる努力ですか」
杏 子「それに相手が手を差し伸べても、恥じらいながら一度は断るんだよ。『いいよ。大丈夫だから』とか言ってさぁ」
ゆ ま「なるほど」
杏 子「意地張ってたら強引に抱えられて……『お前、軽いな』なんて言われたりして……」
マ ミ「ずいぶんと具体的ですわね」
杏 子「ハッ」(し、しまった。よく妄想してたから……つい熱く語っちまった)
顔を真っ赤に火照らせ恥じらう杏子。しかし、そんな彼女の胸中を他の二人は知る筈がない。
マ ミ「すでにキョーコはお姫様抱っこを体験済みでしたのね」
ゆ ま「さすが達人」
杏 子(うぐッ。このままだと誤解がドンドン大きくなっていく)
ゆ ま「ユマも『軽い』なんて言われてみたいですぅ。五人がかりで運ばれた事、今でも忘れられなくて」
マ ミ「抱っこされた時、可愛く思われるポイントを教えて下さいッ」
杏 子「しょーがねーな。今日のレッスンはお姫様抱っこの秘訣でいくか」(あたしのアホーッ)
ゆ ま「どうしたら軽く感じてもらえるんでしょうか?」
杏 子(あたしが知るか。え~と、脱力すると重いんだから)「腹にグッと力を込めて気合を入れるんだ!」
ゆ ま「はいッ。気合ですね!」
マ ミ「可愛く思われるには?」
杏 子(こっちが聞きてーよ)「そうだなぁ……。まずは俯(うつむ)け」
マ ミ「俯きました」
ゆ ま「腹部に力を入れました」
杏 子「そ、そ、それから……時々だなぁ……え~と……顔を上げて」
マ ミ「顔を……」
ゆ ま「上げて?」
杏 子「目力(めぢから)だ!!」
マ ミ「目力!?」
ゆ ま「目力ですか!」
杏 子「復唱すんぞ! 腹ァ!!」
マ ミ「腹ッ!」
ゆ ま「腹ッ!」
ツッコミ役の杏子が自分を見失った事で……。
杏 子「俯いてぇ」
マ ミ「俯いてッ!」
ゆ ま「俯いてッ!」
外に漏れる程、大声を出している非常事態に……。
杏 子「目力ッ!!」
マ ミ「目力ッ!」
ゆ ま「目力ッ!」
全く気付いていないアホな三人であった。
???「へぇ。最近の生徒会は面白そうな事をしてるみたいね」
【付記】
5月6日の日計アクセス数が過去最高の219件を数えました(2013年3月13日の日計総アクセス216件の記録を更新!)。御訪問下さった皆様に厚く御礼申し上げます。
「ラブ☆MAGI」 第2話:生徒会の顔ぶれ
Part1.幻の生徒会役員達
生徒会長の巴マミは超有能。
マ ミ「生徒会からのお知らせです」
各種行事の企画運営。部活動の状況把握や予算算出・分配。委員会の総まとめ……。
マ ミ「これが予算案ですね。明日までに確認しておきます」
山ほどの業務を的確かつ迅速に遂行。
マ ミ「ふぅ、もう少しですわね。早く終わらせて恋のレッスンを始めたいですわ」
杏 子「……」(会長補佐は形だけとはいえ……やっぱ少しは手伝いしなきゃなー)
忙しそうなマミを見かねた杏子はソファーから立ち上がった。
杏 子「なあ、なんか手伝おーか?」
マ ミ「え?」
杏 子「あたしだけソファーに座ってるのもわりーから」
マ ミ「大丈夫ですよ。お気遣いなく」
杏 子「でもさー」
マ ミ「今は佐倉さんとの恋愛研究結果をまとめているだけですから❤」
杏 子「ばかやろー。すぐに破棄しろ! そんなもん、形に残すなー」
恥ずかしい『負の記録』を前に慌てる杏子であった。
杏 子「そーいや、他の生徒会役員はなにしてんだ? 出入り始めてから数日だけど、ココ(執行部室)で見たことねーぞ。副会長だけでも呼び出せよ。正式な補佐だろう」
マ ミ「副会長ですか? それは……無理ですわ」
杏 子「なんでだ? そんなにイヤな奴なのか?」
マ ミ「だって副会長も私ですから」
杏 子「はあ? どーいう事さぁ」
マ ミ「もともと会長は三年生で、私は副会長として先輩を補佐していたんです」
杏 子「それで?」
マ ミ「でも、私の方が仕事を早く完璧にこなせるものですから、ある日……」
???『ねえ、マミ。私の仕事は?』
マ ミ『全てやっておきましたわ』
???『予算案も?』
マ ミ『はい。全ての部に今年度の予算を通知しました』
???『それじゃ各委員会の……』
マ ミ『それも終わりました』
ブッチン(怒)。
???『マミは仕事が早いわね』
マ ミ『せ、先輩?』
???『これからはあなたが会長も兼任なさったら? 私は会長を辞めるわ』
マ ミ「私が有能だったばかりに会長の機嫌を損ねてしまいましたの」
杏 子「ブチ切れる会長も会長だけどさー、お前もお前だよ」
呆れ顔の杏子は率直な感想を述べた。
杏 子「他の奴は?」
マ ミ「会計の先輩がいました。お金の計算にかけてはズバ抜けてたのですが、ある日……」
マ ミ(あらッ。あれは今期の予算……)
???『まどマギ映画版のBD。ワン●ースのコミックス全巻揃い。PSヴィータ。スマプリのBD』
物凄い指の動きで札束を捲りながら、穏やかならぬ言葉を呟く少女。
その指遣いにマミは絶句しながら危険な『何か』を感じ取った。
マ ミ「お金を超高速で数えながら買える物をブツブツ呟いてまして」
杏 子「一番会計にしちゃいけない奴だな」
マ ミ「つい出入り禁止にしてしまいましたの」
杏 子「まったく。ココ(生徒会)にまともな奴はいねーのかよ」
マ ミ「一年生の書記の子は良いコですよ。でも……」
杏 子「でも?」
マ ミ「すっごい恥ずかしがり屋でして、まともに見た事がないんです」
杏 子「見た事がない? 大袈裟だなぁ」
マ ミ「大袈裟ではありませんわ。気付いたらドアの前に完成した書類が置かれていたり、やりかけの仕事がいつの間にか仕上がっていたり、朝来たら執行部室がキレイになっていたり……」
杏 子「そいつはホントに実在するのか? それこそ妖精だな」
マ ミ「まあ、少し大変な時もあるけど、一人でなんとかなっちゃうんで、自分だけでもいーかなって思っています」
杏 子「よくねーよ」
マ ミ「そうですか?」
杏 子「お前が有能なのは認めるけどさー、一人で抱え込んでダメだった時はどーすんだよ?」
マ ミ「いやですわ。有能だなんて。わかりきっている事ですもの」
杏 子「人の話は最後まで聞け!」
マ ミ「でも……今までダメだった事は一度もありませんでしたから」
杏 子「あーそー。有能だねー。拍手してやるよ」
パチ、パチ、パチ。
杏 子「でもさー、なんでも完璧にできちゃう女って男から敬遠されるぜ」
マ ミ「え? ま、まさか……」
杏 子「ちょっとぐらいドジふまねーと男にもてねーぞ」
マ ミ「お、お、男に……もて……な……い」
杏 子(うおッ。スゲー効いてる!)
Part2.書記登場
生徒A「あッ、佐倉先輩」
生徒B「やっぱりカッコいいね~。ワイルド❤」
生徒C「巴会長は、まさに『御前』ってカンジ! キレイ❤」
生徒A「真剣な顔して、どんな話してるんだろ」
生徒B「芳女(芳女=芳文女子中学の略)の未来とかじゃない?」
窓の向こうに見える二人を羨望の眼差しで見つめる女生徒達。しかし、二人が話し合っているのは……。
マ ミ「こっそりアピールでゲタ箱に手作りケーキってどうでしょう」
杏 子「マジかよ。靴は汚れるし、得体が知れんし、イヤガセ以外の何物でもねーぞ」
こんな話題。
生徒C「ねー、ユマ。あの二人と仲良くなったぁ? ……って、アレ?」
生徒B[な、なにしてんの。ユマ?」
???「だ……だって……」
うずくまっていた小柄な少女が恐る恐る顔を上げた。
彼女の名前は千歳ゆま。これでも生徒会の書記である。
ゆ ま「あそこにいたら……お二人のお目障りかとッ」
生徒B「あんた同じ役員でしょーが」
生徒C「ったく、恥ずかしがり屋なんだから」
生徒A「そうだよ。もっと堂々としなさいよ」
ゆ ま「だって、会長だけでもキンチョーするのに、会長補佐がユマの憧れてる『チェリーブロッサム』……略して『チェルノブ』が!! あ~、恥ずかしー」
生徒C「凄いネーミング。ホントに憧れてんの?」
生徒B「しかも略せてないよ……」
次の日。
生徒A『そんなんでちゃんと仕事してるの?』
ゆ ま「ユマ、ちゃんと仕事してるもん」
預かった書類を返しに執行部室を訪れるゆま。
ゆ ま「でも、面と向かって話す勇気がないから」
静かにドアを開けて部室に入る。
ゆ ま「誰もいない時に……」
生徒会長が使う机の上に預かった書類を置き、ゆまはホッと溜息をつく。
その時だった!
ガチャリ。
ゆ ま「ひぃぃぃ」
突然、部室のドアが開いた。ゆまは大急ぎでソファーの後ろに隠れる。
杏 子「あれ? マミは……まだみてーだな」
ゆ ま(囁くような小声で)「ど、ど、どうしよう。チェルノブ先輩だぁ」
杏 子「ココに一人って初めてだなぁ」
ゆ ま(囁くような小声で)「スミマセーン。一人じゃないですぅ~」
マ ミ「あら、佐倉さん。早いですわね」
杏 子「かたっくるしーな。杏子って呼ぶように言っただろう」
マ ミ「そ、そうでしたわね。失礼しました。キョーコ」
杏 子「なんか妙に間延びした呼び方だけど……まあ、いいか」
ゆ ま(囁くような小声で)「か、か、会長まで。どぉしよ~」
マ ミ「本日の恋愛レツィオーネ。テーマは『ドジっ娘(こ)』でーす❤」
杏 子「よくもまぁ、毎回毎回、くだんないネタを考えてくるなー。だいたいさぁ、レツィオーネってなんだよ。どこの国の言葉だよ?」
マ ミ「Letioneはイタリア語です。レッスンって意味なの」
ゆ ま(れ、恋愛レツィオーネ? イタリア語? ドジっ娘(こ)?)
マ ミ「前にキョーコも言ってたでしょ。ドジじゃないとモテないって」
杏 子「うッ。確かに言ったけどさぁ」
マ ミ「少女小説や漫画でも主役はドジっ娘(こ)が多いですし」
ゆ ま(????)
マ ミ「だから私はドジっ娘(こ)になる事を決意しました!」
杏 子「決意してなる類のもんじゃねーぞ」
マ ミ「そうでしょうか?」
杏 子「ドジな奴は上手くやろうとして、いつの間にか窮地に陥ってるもんなんだよ」
ゆ ま(……まさに今の私だぁぁぁぁ)
マ ミ「そう言わずに見て下さい。いろいろと仕込んできたんですから」
杏 子「ほー。どんな仕込みだ?」
マ ミ「落しモノが多くて困っちゃうわー」
そう言うマミのスカートの中から黒板消しやペンケースやノートが落ちる。
ガチャ。ドサ。ドサ。ゴン。ゴン。
杏 子「多いの意味を間違えてるぞー。って、どこに入れてたんだよ」
マ ミ「うふふふ。タネも仕掛けも魔法もありますのよ」
バチコン、とウィンクするマミ。
呆れ顔の杏子。
そして、出るに出られないゆま。
マ ミ「キャッ。落とし物につまずいちゃった」
パタッ。
杏 子「つまずいたわりには綺麗な倒れ方だな」
マ ミ「ドジをしていても華麗さは忘れませんわ」
杏 子「……お前のそんなアホ姿。他の奴らが見たら泣くぞ」
マ ミ「他の人達に知られたら私が泣きますわ」
杏 子「そりゃそーだ」
マ ミ「引きこもりになるかも❤」
杏 子「人生が狂いそうだな」
ゆ ま(ど、ど、どうしよう。大変なモノを見ちゃった)
杏 子「だいたいさー、お前はワザとらしいんだよ」
ゆ ま(と、とにかく……気付かれないように外へ出ないと)
二人の死角を利用して部室のドアへ急ぐゆま。しかし……。
杏 子「転ぶにしたって、もっと自然にやんないと」
ゆ ま「ぎゃん!?」
どべちょ。
何もないところで派手に転ぶゆま。
杏 子「そーそー、こーゆー感じに……って」
ゆ ま「……」
マ ミ「……」
杏 子「……」
ゆ ま「スイマセ~ンッ」
そう言い捨て、ゆまは猛ダッシュで執行部室から逃げて行く。
杏 子「おい、待てッ!」
足の早さには自信を持つ杏子だったがパニクったゆまには追いつけそうもなく、早々(そうそう)に追跡をあきらめた。
杏 子「あれが例の妖精書記か? いつから居たんだ。おい、どーするよ」
マ ミ「アレハ妖精サンデス。妖精サンデスノヨー」
杏 子「しっかりしろ! 現実逃避すんな。戻ってこーい」
生徒会長の巴マミは超有能。
マ ミ「生徒会からのお知らせです」
各種行事の企画運営。部活動の状況把握や予算算出・分配。委員会の総まとめ……。
マ ミ「これが予算案ですね。明日までに確認しておきます」
山ほどの業務を的確かつ迅速に遂行。
マ ミ「ふぅ、もう少しですわね。早く終わらせて恋のレッスンを始めたいですわ」
杏 子「……」(会長補佐は形だけとはいえ……やっぱ少しは手伝いしなきゃなー)
忙しそうなマミを見かねた杏子はソファーから立ち上がった。
杏 子「なあ、なんか手伝おーか?」
マ ミ「え?」
杏 子「あたしだけソファーに座ってるのもわりーから」
マ ミ「大丈夫ですよ。お気遣いなく」
杏 子「でもさー」
マ ミ「今は佐倉さんとの恋愛研究結果をまとめているだけですから❤」
杏 子「ばかやろー。すぐに破棄しろ! そんなもん、形に残すなー」
恥ずかしい『負の記録』を前に慌てる杏子であった。
杏 子「そーいや、他の生徒会役員はなにしてんだ? 出入り始めてから数日だけど、ココ(執行部室)で見たことねーぞ。副会長だけでも呼び出せよ。正式な補佐だろう」
マ ミ「副会長ですか? それは……無理ですわ」
杏 子「なんでだ? そんなにイヤな奴なのか?」
マ ミ「だって副会長も私ですから」
杏 子「はあ? どーいう事さぁ」
マ ミ「もともと会長は三年生で、私は副会長として先輩を補佐していたんです」
杏 子「それで?」
マ ミ「でも、私の方が仕事を早く完璧にこなせるものですから、ある日……」
???『ねえ、マミ。私の仕事は?』
マ ミ『全てやっておきましたわ』
???『予算案も?』
マ ミ『はい。全ての部に今年度の予算を通知しました』
???『それじゃ各委員会の……』
マ ミ『それも終わりました』
ブッチン(怒)。
???『マミは仕事が早いわね』
マ ミ『せ、先輩?』
???『これからはあなたが会長も兼任なさったら? 私は会長を辞めるわ』
マ ミ「私が有能だったばかりに会長の機嫌を損ねてしまいましたの」
杏 子「ブチ切れる会長も会長だけどさー、お前もお前だよ」
呆れ顔の杏子は率直な感想を述べた。
杏 子「他の奴は?」
マ ミ「会計の先輩がいました。お金の計算にかけてはズバ抜けてたのですが、ある日……」
マ ミ(あらッ。あれは今期の予算……)
???『まどマギ映画版のBD。ワン●ースのコミックス全巻揃い。PSヴィータ。スマプリのBD』
物凄い指の動きで札束を捲りながら、穏やかならぬ言葉を呟く少女。
その指遣いにマミは絶句しながら危険な『何か』を感じ取った。
マ ミ「お金を超高速で数えながら買える物をブツブツ呟いてまして」
杏 子「一番会計にしちゃいけない奴だな」
マ ミ「つい出入り禁止にしてしまいましたの」
杏 子「まったく。ココ(生徒会)にまともな奴はいねーのかよ」
マ ミ「一年生の書記の子は良いコですよ。でも……」
杏 子「でも?」
マ ミ「すっごい恥ずかしがり屋でして、まともに見た事がないんです」
杏 子「見た事がない? 大袈裟だなぁ」
マ ミ「大袈裟ではありませんわ。気付いたらドアの前に完成した書類が置かれていたり、やりかけの仕事がいつの間にか仕上がっていたり、朝来たら執行部室がキレイになっていたり……」
杏 子「そいつはホントに実在するのか? それこそ妖精だな」
マ ミ「まあ、少し大変な時もあるけど、一人でなんとかなっちゃうんで、自分だけでもいーかなって思っています」
杏 子「よくねーよ」
マ ミ「そうですか?」
杏 子「お前が有能なのは認めるけどさー、一人で抱え込んでダメだった時はどーすんだよ?」
マ ミ「いやですわ。有能だなんて。わかりきっている事ですもの」
杏 子「人の話は最後まで聞け!」
マ ミ「でも……今までダメだった事は一度もありませんでしたから」
杏 子「あーそー。有能だねー。拍手してやるよ」
パチ、パチ、パチ。
杏 子「でもさー、なんでも完璧にできちゃう女って男から敬遠されるぜ」
マ ミ「え? ま、まさか……」
杏 子「ちょっとぐらいドジふまねーと男にもてねーぞ」
マ ミ「お、お、男に……もて……な……い」
杏 子(うおッ。スゲー効いてる!)
Part2.書記登場
生徒A「あッ、佐倉先輩」
生徒B「やっぱりカッコいいね~。ワイルド❤」
生徒C「巴会長は、まさに『御前』ってカンジ! キレイ❤」
生徒A「真剣な顔して、どんな話してるんだろ」
生徒B「芳女(芳女=芳文女子中学の略)の未来とかじゃない?」
窓の向こうに見える二人を羨望の眼差しで見つめる女生徒達。しかし、二人が話し合っているのは……。
マ ミ「こっそりアピールでゲタ箱に手作りケーキってどうでしょう」
杏 子「マジかよ。靴は汚れるし、得体が知れんし、イヤガセ以外の何物でもねーぞ」
こんな話題。
生徒C「ねー、ユマ。あの二人と仲良くなったぁ? ……って、アレ?」
生徒B[な、なにしてんの。ユマ?」
???「だ……だって……」
うずくまっていた小柄な少女が恐る恐る顔を上げた。
彼女の名前は千歳ゆま。これでも生徒会の書記である。
ゆ ま「あそこにいたら……お二人のお目障りかとッ」
生徒B「あんた同じ役員でしょーが」
生徒C「ったく、恥ずかしがり屋なんだから」
生徒A「そうだよ。もっと堂々としなさいよ」
ゆ ま「だって、会長だけでもキンチョーするのに、会長補佐がユマの憧れてる『チェリーブロッサム』……略して『チェルノブ』が!! あ~、恥ずかしー」
生徒C「凄いネーミング。ホントに憧れてんの?」
生徒B「しかも略せてないよ……」
次の日。
生徒A『そんなんでちゃんと仕事してるの?』
ゆ ま「ユマ、ちゃんと仕事してるもん」
預かった書類を返しに執行部室を訪れるゆま。
ゆ ま「でも、面と向かって話す勇気がないから」
静かにドアを開けて部室に入る。
ゆ ま「誰もいない時に……」
生徒会長が使う机の上に預かった書類を置き、ゆまはホッと溜息をつく。
その時だった!
ガチャリ。
ゆ ま「ひぃぃぃ」
突然、部室のドアが開いた。ゆまは大急ぎでソファーの後ろに隠れる。
杏 子「あれ? マミは……まだみてーだな」
ゆ ま(囁くような小声で)「ど、ど、どうしよう。チェルノブ先輩だぁ」
杏 子「ココに一人って初めてだなぁ」
ゆ ま(囁くような小声で)「スミマセーン。一人じゃないですぅ~」
マ ミ「あら、佐倉さん。早いですわね」
杏 子「かたっくるしーな。杏子って呼ぶように言っただろう」
マ ミ「そ、そうでしたわね。失礼しました。キョーコ」
杏 子「なんか妙に間延びした呼び方だけど……まあ、いいか」
ゆ ま(囁くような小声で)「か、か、会長まで。どぉしよ~」
マ ミ「本日の恋愛レツィオーネ。テーマは『ドジっ娘(こ)』でーす❤」
杏 子「よくもまぁ、毎回毎回、くだんないネタを考えてくるなー。だいたいさぁ、レツィオーネってなんだよ。どこの国の言葉だよ?」
マ ミ「Letioneはイタリア語です。レッスンって意味なの」
ゆ ま(れ、恋愛レツィオーネ? イタリア語? ドジっ娘(こ)?)
マ ミ「前にキョーコも言ってたでしょ。ドジじゃないとモテないって」
杏 子「うッ。確かに言ったけどさぁ」
マ ミ「少女小説や漫画でも主役はドジっ娘(こ)が多いですし」
ゆ ま(????)
マ ミ「だから私はドジっ娘(こ)になる事を決意しました!」
杏 子「決意してなる類のもんじゃねーぞ」
マ ミ「そうでしょうか?」
杏 子「ドジな奴は上手くやろうとして、いつの間にか窮地に陥ってるもんなんだよ」
ゆ ま(……まさに今の私だぁぁぁぁ)
マ ミ「そう言わずに見て下さい。いろいろと仕込んできたんですから」
杏 子「ほー。どんな仕込みだ?」
マ ミ「落しモノが多くて困っちゃうわー」
そう言うマミのスカートの中から黒板消しやペンケースやノートが落ちる。
ガチャ。ドサ。ドサ。ゴン。ゴン。
杏 子「多いの意味を間違えてるぞー。って、どこに入れてたんだよ」
マ ミ「うふふふ。タネも仕掛けも魔法もありますのよ」
バチコン、とウィンクするマミ。
呆れ顔の杏子。
そして、出るに出られないゆま。
マ ミ「キャッ。落とし物につまずいちゃった」
パタッ。
杏 子「つまずいたわりには綺麗な倒れ方だな」
マ ミ「ドジをしていても華麗さは忘れませんわ」
杏 子「……お前のそんなアホ姿。他の奴らが見たら泣くぞ」
マ ミ「他の人達に知られたら私が泣きますわ」
杏 子「そりゃそーだ」
マ ミ「引きこもりになるかも❤」
杏 子「人生が狂いそうだな」
ゆ ま(ど、ど、どうしよう。大変なモノを見ちゃった)
杏 子「だいたいさー、お前はワザとらしいんだよ」
ゆ ま(と、とにかく……気付かれないように外へ出ないと)
二人の死角を利用して部室のドアへ急ぐゆま。しかし……。
杏 子「転ぶにしたって、もっと自然にやんないと」
ゆ ま「ぎゃん!?」
どべちょ。
何もないところで派手に転ぶゆま。
杏 子「そーそー、こーゆー感じに……って」
ゆ ま「……」
マ ミ「……」
杏 子「……」
ゆ ま「スイマセ~ンッ」
そう言い捨て、ゆまは猛ダッシュで執行部室から逃げて行く。
杏 子「おい、待てッ!」
足の早さには自信を持つ杏子だったがパニクったゆまには追いつけそうもなく、早々(そうそう)に追跡をあきらめた。
杏 子「あれが例の妖精書記か? いつから居たんだ。おい、どーするよ」
マ ミ「アレハ妖精サンデス。妖精サンデスノヨー」
杏 子「しっかりしろ! 現実逃避すんな。戻ってこーい」